昔、私の曽祖父は昭和20年に亡くなったようですが、曽祖父名義の土地建物の相続登記は可能でしょうか?
可能です。もっとも、明治31年7月16日から昭和22年5月2日以前に亡くなっている方の相続登記は、下記のとおり現在の民法とは異なる規定で相続手続きを行います。

2.家督相続

(1)家督相続とは

 家督相続とは、戸籍上の家の長として、これまで戸主がもっていた地位(前戸主の一身に専属するものを除いた一切の権利義務)を、次に戸主となる者が1人で承継する制度です。①戸主たる身分関係の相続であるから、その相続人は1人に限られる。②家督相続の効力として、前戸主に属する一切の権利義務(但し、前戸主の一身に専属するものを除く)を包括的に承継する(旧民法986条本文)。③戸主の身分関係の承継という関係から、系譜・祭具及び墳墓の所有権は家督相続人の特権に属するものとされている(旧民法987条)という点で現在の民法とは異なります。

 家督相続は、①戸主の死亡・隠居又は国籍を喪失した場合、②戸主が婚姻又は養子縁組の取消しによりその家を去った場合、③女戸主の入夫婚姻又は入夫の離婚をした場合に開始する(旧民法964条)。家督相続は、被相続人(戸主)が死亡しなくとも、相続が発生する点で、現在の民法とは異なります。

(2)家督相続の順位

第1順位;第一種法定推定家督相続人

 相続開始当時被相続人の戸籍に同籍している直系卑属で、直系卑属が数人いるときは、法定された順序によってそのうちの一人が相続する(旧民法970条)

第2順位;前戸主が生前に又は遺言で指定した者(旧民法979条)

第3順位;第一種選定家督相続人

 父・母又は親族会によって、家族の中から選定された者(旧民法982条)

第4順位;第二種法定推定家督相続人

 家にある直系尊属中最も親等の近い者(旧民法984条)

第5順位;第二種選定家督相続人

 親族会によって被相続人の親族・家族・分家戸主・本家又は分家の家族・他人の中から選定された者(旧民法985条)

(3)家督相続と登記原因

 家督相続の場合の登記原因は「家督相続」であり、日付は家督相続の開始した日です。

 民法附則第25条第2項の規定により相続に関して新法が適用される場合には、、登記原因は「相続」とし、日付は戸主の死亡の日(家督相続の開始した日)となります。また、家督相続人の選定は選定によって効力が生じ、その届出は効力要件ではないため、家督相続人を選定しても必ずしも戸籍の届出があるとは限りません。そのため戸籍だけでは家督相続人が選定されていないことが確認できないため、登記実務では民法附則25条2項の適用により相続登記を申請する場合は、原則として相続証明書面の一部として家督相続人が選定されていないことを証明する書面(相続人全員の印鑑証明書付)を添付する必要があります。

(4)家督相続の先例

■ 民法施行前の隠居者が退隠当時所有の不動産につき何等の手続をしていない場合には、その不動産に対する相続登記は、申請に従い遺産相続又は家督相続の登記をなすべきである。(大正2年6月30日民第132号法務局長回答)

■ 隠居者が隠居後に取得した特有財産であることが登記簿上明らかな場合においては、当該財産についての(家督)相続登記の申請は、却下すべきである。(大正2年6月30日第132号法務局長回答)

■ 隠居者が隠居後に所有権保存の登記を受けた不動産については、家督相続によ る所有権移転の登記又は遺産相続による所有権移転の登記のいずれの申請があっても受理されるが、隠居後の日付の売買を原因として所有権移転の登記を受けた不動産につい ては、家督相続による所有権移転の登記の申請は受理されない。(登研219号63頁)

■ 旧民法施行中戸主死亡し法定推定家督相続人なく直系尊属のみ存する場合、その届出による家督相続事項の記載なき戸籍謄本を添付して直系尊属への家督相続による所有権移転の登記の申請があった場合受理して差し支えない。(昭和34年1月29日民事甲第150号民事局長回答)

■ 旧民法施行中に戸主死亡し、法定推定家督相続人なく、その家に直系尊属乙のみが存したが、その乙も家督相続届をしないまま新法後に死亡している場合、乙の相続人丙が乙の家督相続を承認したときは、乙は甲の家督相続人となる。(昭和37年10月26日民事甲第3069号回答)

■ ①除(戸)籍謄本に家督相続人たるべき者が誤って記載されているときは、当該家督相続の開始後20年を経ている場合であっても、関係戸籍を訂正しない限り家督相続の登記をすることができない。なお、この場合、法定の推定家督相続人からされた家督相続の登記申請も受理できない。
 ②上記の場合、関係戸籍の訂正は、戸籍法第113条(利害関係人が家庭裁判所の許可を得てする戸籍の訂正)によるべきであるが、訂正の手続きをする者がないときは同法24条第2項(市町村長が監督法務局の長の許可を得てする訂正)の規定により処理する。(昭和40年9月22日民事甲第2536号民事局長回答)

To Be Continued…

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