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一人遺産分割協議の可否(H28.3.5更新)

一人遺産分割協議の可否(H28.3.5更新)

甲の死亡により,配偶者乙と甲乙の子丙が共同相続人となったが,相続登記未了の間に乙が死亡(遺産分割協議前に共同相続人の一部が死亡)した場合(乙の相続人は丙のみ)において,甲から丙に相続を原因とする所有権の移転の登記をするには,丙を相続人とする遺産分割協議書があればよいものと考えるが,乙死亡後の遺産分割協議も可能であり,この場合は丙が二重の肩書(相続人丙及び相続人亡乙相続人丙)により遺産分割協議に出席したことを明確にした丙単独協議書を提供すれば受理されるものと考えるがいかがか。
下記の判決の概要のとおり、乙死亡後の遺産分割協議はできないので、甲から丙への相続登記が一件で申請された場合、遺産分割協議書又は特別受益証明書等の提供がないときは、登記原因を「年月日(甲死亡の日)相続」とする申請は、不動産登記法25条9号により却下され、登記原因を「年月日乙及び丙相続、年月日相続」とする登記申請は、不動産登記法25条5号により却下されます。

所有権の登記名義人甲が死亡し,甲の法定相続人が乙及び丙のみである場合において,甲の遺産の分割の協議がされないまま乙が死亡し,乙の法定相続人が丙のみであるときは,丙は甲の遺産の分割をする余地はないことから,丙が甲及び乙の死後に甲の遺産である不動産の共有持分を直接全て相続し,取得したことを内容とする丙が作成した書面は,登記原因証明情報としての適格性を欠く(東京高裁平成26年9月30日判決及び東京地裁平成26年3月13日判決)

上記の場合において,乙と丙の間で丙が単独で甲の遺産を取得する旨の甲の遺産の分割の協議が行われた後に乙が死亡したときはどうか。
遺産の分割の協議は要式行為ではないことから,乙の生前に乙と丙の間で遺産分割協議書が作成されていなくとも当該協議は有効であり,また,丙は当該協議の内容を証明することができる唯一の相続人であるから,当該協議の内容を明記して丙が乙の死後に作成した遺産分割協議証明書は,登記原因証明情報としての適格性を有し,これが丙の印鑑証明書とともに提供されたときは,相続による所有権の移転の登記の申請に係る登記をすることができる〔平成28年3月2日付法務省民二第154号〕

第1 判決

1.事件番号

東京高裁判平成 26年(行コ)第 116号処分取消等請求控訴事件
(原審・東京地裁平成 25年(行ウ)第 372号)

2.事案の概要

本件は,亡Aとその妻の亡Bの唯一の子である控訴人が,亡A及び亡Bの死亡に伴い,亡Aが所有していた本件各不動産について,本件遺産処分決定書を登記原因証明情報として,亡Aの相続を原因とする本件各共有持分全部移転登記の申請(本件各登記申請)をしたところ,処分行政庁から,不登法61条所定の登記原因証明情報の提供がないとして,不登法25条9号に基づき,本件各登記申請を却下する旨の処分(本件各処分)を受けたため,処分行政庁の所属する国に対し,本件各処分の取消しを求めている事案である。

3.判事事項

被相続人甲の遺産について遺産分割未了のまま他の相続人が死亡したから当該遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してされた当該遺産に属する不動産に係る相続を原因とする所有権移転登記申請に対し,登記官が登記原因証明情報の提供がないとしてした却下決定が,適法とされた事例

4.裁判要旨

被相続人甲の相続人が乙及び丙の2人であり,被相続人甲の死亡に伴う第1次相続について遺産分割未了のまま乙が死亡し,乙の死亡に伴う第2次相続における相続人が丙のみである場合において,丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してした当該遺産に属する不動産に係る第1次相続を原因とする所有権移転登記申請については,被相続人甲の遺産は,第1次相続の開始時において,丙及び乙に遺産共有の状態で帰属し,その後,第2次相続の開始時において,その全てが丙に帰属したというべきであり,上記遺産分割決定書によって丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続したことを形式的に審査し得るものではないから,登記官が登記原因証明情報の提供がないとして不動産登記法25条9号に基づき上記申請を却下した決定は,適法である。

 

第2 考察(司法書士中嶋剛士による考察)

本件判決による第1次相続による登記は、いわゆる「遺産共有状態の登記」か。
 共有者名義で、相続を原因として所有権移転登記がある場合には、それが遺産共有状態なのか、物権共有状態なのかは、登記記録上は判明しません。しかしながら、一般的には、共有者名義で、相続を原因として所有権移転登記がある場合には、物権共有状態の登記と考えられる。その理由は、遺産共有状態の登記は、あくまで暫定的な登記であり、遺産共有状態の登記をする実益がある場合は限定されているためである。
本件判決においても、第1次相続による登記は、遺産共有状態の登記ではないと考えられます。本件判決の趣旨によると、(1)相続人が一人になった場合には、遺産分割協議ができなくなり、そのため遺産共有状態が解消され、法定相続分の割合で物権共有化する。その結果、(2)第1次相続による登記は、法定相続分の割合で「物権共有状態の登記」として入れることになる、ということのようである。
被相続人甲の第1次相続後に相続人乙が相続人丙に対して、「相続分の譲渡(売買又は贈与)」をしたとすれば、先例は、共同相続登記がされていない限り、丙を単独所有者とする相続を原因とする移転登記を申請することを認めている(昭59.10.15民三第5196号民事局第三課長回答)。当該先例と当該判決の整合性はどのように考えるか。
 民法905条1項には、「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」との定めがあります。つまり、相続人は、相続開始から遺産分割協議終了(遺産共有状態の解消)までの間は、いつでもその相続分を他の共同相続人又は第三者に譲渡することができます。
したがって、乙から丙に対する相続分の譲渡(遺産共有状態の解消)が、第2次相続発生日(遺産共有状態の解消)前に行われていれば、丙を単独所有者とする相続を原因とする移転登記を申請することを認められると考えられる。
乙の死亡による第2次相続の開始前に第1次相続の相続人丙が相続分の放棄の意思表示をしていたことを証する証明書を添付し、丙の登記申請の登記原因を「年月日(第1次相続日)乙相続 年月日(第2次相続日)相続」と記載して申請したとすれば、数次相続先例(昭30.12.16民甲第2670号民事局長通達:飛沢隆志「不動産登記先例百選第二版」p54(有斐閣))の適用を受け、中間の相続登記を圧縮公示する形で、その申請は適法なものと判断しなければならないことになるのではないか。
 そのとおりだと考えられます。
本件判決により「遺産分割協議をする地位の相続」が認められなくなったのですか。
 そのような趣旨の判決ではないと考えられます。本件判決は、あくまで「一人に相続分が帰属した場合、遺産共有状態の解消がなされる」との考えのようです。
数次相続後の「唯一の相続人」がさらに死亡し、その相続人が複数いる場合においても、中間者である「唯一の相続人」に至るまでは、法定相続分での数件の登記を強いられることになるのか。
 そのとおりだと考えられます。「遺産分割協議をする地位の相続」は、認められるものの、中間者である「唯一の相続人」で遺産共有状態の解消が発生しているためです。
数次相続の場合に、中間の相続が単独相続のときに限り、「年月日A相続、年月日相続」を原因として、中間省略して直接現在の相続人に相続登記ができる(昭30.12.16民事甲第2670号民事局長通達)が、当該先例と当該判決の整合性はどのように考えるか。例えば、被相続人甲の相続人乙が死亡し、乙の相続人が丙及び丁の場合には、従前通り、数次相続として、中間省略して相続できるのか。
 当該事例の場合には、中間の相続が単独相続であるため、従前通り、数次相続として、中間省略して相続できると考えられます。一方、本件判決は、中間の相続が単独相続ではないため、中間省略して登記できないものと考えられます。
甲の死亡により,配偶者乙と甲乙の子丙が共同相続人となり,乙と丙の間で丙が単独で甲の遺産を取得する旨の甲の遺産の分割の協議が行われた後に乙が死亡したときは,当該協議の内容を明記した遺産分割協議証明書で相続登記を行うことになるが〔平成28年3月2日付法務省民二第154号〕,当該協議内容には,日付の特定が必要か。また,仮に,日付の特定が必要であるとしても「年月日頃に遺産分割協議をした」という記載で足りるか。
登記原因証明情報(本件の場合,遺産分割協議証明書)には要件事実を記載します。そして,過去に遺産分割協議をした日付は,要件事実論でいう時的要素と考えられます。

※なぜ時的因子ではなく,時的要素かと言うと,遺産分割の要件事実には,①被相続人が死亡した事実,②相続人全員が遺産分割協議をした事実が必須であると考えられ,上記①②の事実だけでなく,その先後関係の事実をも含めて法律効果を発生させる要件となっているからです。このように時間の前後が時的要素である場合,その前後が明らかになるように事実を主張すれば足り,単に「甲の事実は,乙の事実に先立って生じた」程度に事実を主張することが許されます。

したがって、①被相続人が死亡した事実,②相続人全員が遺産分割協議をした事実の先後関係を明らかにすれば,②については「年月日頃に遺産分割協議をした」等の記載で許されると考えられます。なお,もちろん,具体的な日付が特定できるなら具体的な日付を記載すべきでしょう。

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