愛知県名古屋市で遺言・相続、借金問題、成年後見なら司法書士なかしま事務所!

3.相続放棄と法定単純承認

夫の遺産の一部を売却してしまったのですが、相続放棄の申述をすることはできるのですか?
 遺産の一部を処分したときは、相続を承認したものとみなされることになり、相続放棄は認められません。もっとも、処分した内容、理由などによっては、相続放棄の申述が受理されることもあります。

(1)法定単純承認

 相続には、単純承認、限定承認、相続放棄の3通りの選択肢があります。このうち、単純承認がもっとも原則的な相続の形態であり、単純承認をした人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するものとされています。

 相続放棄や限定承認をする際には、家庭裁判所での手続きが必要ですが、相続人が熟慮期間内に相続放棄または限定承認をしなかったとき、相続人は、単純承認をしたものとみなされますので、単純承認する場合には、とくに自発的に行動を起こす必要はありません。

 相続人は、次に掲げる場合には、単純承認をしたものとみなされます。これを、「法定単純承認」といいます。

 

(2)相続財産の処分

 相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます。

 単純承認とみなされる処分とは、「相続人が自己のために相続の開始した事実を知りまたは確実視しながらの相続財産を処分すること」(最判昭和42年4月27日)をいいます。

 また、相続財産の処分には、遺産を売却するといった法律上処分だけでなく、物を壊す等の事実上の処分を含みます。また経済的価値が高い美術品や衣類の形見分け(軽微な形見分けは除く)や、被相続人の有していた債権を取り立てて収受領得したこと(最判昭和37年6月21日)も処分に該当します。

 一方で、相続財産ではあっても、交換価値がない物、多額遺産中のわずかな物を、形見分けとしてもらうのは「相続財産の処分」に該当しません。もっとも、新品同様の洋服毛皮等を含む被相続人の遺品すべてを持ち帰るなど、形見分けを超える行為は、相続財産の「隠匿」にあたり単純承認とみなされます(東京地判平成12年3月21日)。

①「処分」に該当しないとされた例

●軽微な慣習上の形見分け(大阪高判昭和54年3月22日)
●葬式費用としての支出(東京高判昭和11年9月21日)
●相続人が受取人の生命保険金の受領(山口地徳山支判昭和40年5月13日)
●期限の到来した相続債務の弁済(有力説)

②「処分」に該当するとされた例

●経済的価値の高い美術品や衣類の形見分け(松山簡判昭和52年4月25日)
●相続債務の代物弁済としての相続財産たる不動産の譲渡(大判昭和12年1月30日)
●相続債権の取立て受領(最判昭和37年6月21日)

 

(3)熟慮期間の経過

 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、単純承認、限定承認、または相続放棄をしなければならなりません。この3ヶ月の期間のことを「熟慮期間」といいます。

 熟慮期間内に、家庭裁判所へ限定承認または相続放棄の申述をしなかったときは、単純承認したものとみなされます。

 

(4)限定承認・相続放棄後の、相続財産の隠匿、消費、財産目録不記載

 相続人が限定承認または相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠したり、ひそか(※1)にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときには、単純承認したものとみなされます。

 つまり、いったんは適法に相続放棄や限定承認の申述が受理された後でも、上記のような被相続人の債権者や受遺者に対しての背信行為をおこなったときには、単純承認したものとみなされるわけです。

 (※1)条文では、「私に」と書いて、ひそかと読みます。

お気軽にお問い合わせください。 TEL 050-5891-6050 受付時間 9:30 - 18:30(土・日・祝日も可)

  • Facebook
  • Hatena
  • twitter
  • Google+
PAGETOP
Copyright © 司法書士なかしま事務所 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.