被後見人名義の不動産の処分(売却、賃貸、担保権設定等)を検討する場合の注意点はありますか?
【非居住用不動産】
 非居住用不動産の場合には、後見人の財産管理の一環として、被後見人のために必要な場合には後見人の判断で処分することができます。その際には、不動産の処分(売却、賃貸、担保権設定等)の『必要性』と『相当性』について注意を要します。
【居住用不動産】
 また、居住用不動産の場合には、不動産を処分(売却、賃貸、担保権設定等)するとき、上記『必要性』と『相当性』に加えて、家庭裁判所の許可が必要となります。
【後見監督人の同意】
 さらに、後見人が被後見人に代わって民法13条1項各号に記載されている行為をする際に、後見監督人が選任されているときは、後見監督人の同意を要します。不動産の処分は「不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為」に該当するため、後見人が被後見人の不動産を処分する際には、後見監督人が選任されているときはその同意を得なければなりません。
【保佐人、補助人が処分する場合】
 加えて、保佐人、補助人が、被保佐人、被補助人の所有する不動産を処分するには、審判によって当該処分についての代理権が付与されている場合でなければなりません。
不動産の処分(売却、賃貸、担保権設定等)の『必要性』とは何ですか?
 不動産の処分(売却、賃貸、担保権設定等)の『必要性』とは、被後見人の生活費や施設入所費、入院費、医療費を捻出するために不動産を売却する等、その処分が被後見人の生活の維持、よりよい生活の実現のために必要であることです。
 親族や第三者を援助するために被後見人の不動産を低価格で売却したり贈与したりすること、他人の債務を担保するために抵当権を設定すること、土地や家屋を無料で貸すことは、被後見人の負担で第三者を利するものであるから、基本的にはできないと考えるべきです。
 被後見人が扶養義務を負っている者のために扶養義務の履行としてする場合はともかく、そうでない場合は、被後見人が受ける負担被後見人とその者との関係、これまでの経緯、援助することによってもたらされる被後見人の便益、社会生活上の立場等を慎重に検討しても、後見人がなし得る処分と判断されうるケースは稀です。
不動産の処分(売却、賃貸、担保権設定等)の『相当性』とは何ですか?
 不動産の処分(売却、賃貸、担保権設定等)の『相当性』とは、不動産の売却の場合は、売却価格、代金支払方法、履行条件、その他の売却条件が、市場価格や一般の取引慣行に照らして被後見人に不利なものとなっていないかどうかを後見人において調査し、処分の結果、被後見人に不利益が生じないよう、相当であることです。不動産の賃貸の場合も、『相当性』が求められます。
なぜ、居住用不動産の処分(売却、賃貸、担保権設定等)には、家庭裁判所の許可が必要なのですか?
 居住環境の変化は、精神医学的見地からは被後見人の精神面に多大の影響を与えるものとされており、これを考盧して後見人の包括的な代理権(民859条1項)に一定の制限を加えたものである。
 なお、後見監督人、保佐人、補助人が被後見人、被保佐人、被補助人の居住用不動産を処分する場合も同様に、家庭裁判所の許可が必要になります。
居住用不動産とは、どのような不動産ですか?別荘も含まれますか?
 「居住の用に供する建物又はその敷地」とは、生活の本拠として現に居住の用に供している、又は居住の用に供する予定がある建物及びその敷地をいいます。
 被後見人が現在は施設入所中であるが入所直前まで居住していた建物、被後見が現在は病院に入院中であるが退院後に帰る予定の建物、被後見人が近い将来転居する予定で建築(購入)した建物で居住実績のない建物は、居住用不動産に含まれます。
 反対に、被後見人が生活の本拠として現に居住しておらず、かつ居住する可能性が全くない建物は含まれません。
 したがって、別荘や転居前の建物はこれに含まれません。転居前の建物とは、例えば、現在居住している建物に転居する前に居住していた建物、施設に入所直前まで居住していた建物に転居する前に居住していた建物などです。
不動産の『処分』とは、具体的にどのようなことが該当しますか?
 不動産の処分には、(負担付き)贈与、被後見人が貸主である場合の使用貸借契約による貸渡し、被後見人が借受人である場合の使用貸借契約の解除、抵当権の設定以外の担保権(譲渡担保・仮登記担保・不動産質権)の設定、建物を取り壊すことなどが考えられます。
家庭裁判所の許可を得ずに、不動産の処分をした場合には、どうなりますか?
 家庭裁判所の許可は、処分行為の効力要件であるから、家庭裁判所の許可を欠く居住用不動産の処分は無効であると解されています。
家庭裁判所の許可の申立ては、どの家庭裁判所に対し行いますか?
 後見開始の審判をした家庭裁判所になります。
家庭裁判所の許可の申立てに必要な書類は何がありますか?
(1)申立書
 申立書には不動産処分の必要性等を記載します。
(2)当該不動産の全部事項証明書、固定資産評価証明書
(3)当該処分に関する契約書(案)の写し
 契約書(案)ではなく、家庭裁判所の許可があることを条件とする売買契約を締結し、その契約書の写しを添付する扱いも多くなってきている。
(4)不動産業者作成の査定書
(5)処分の必要性を証する書面
 被後見人の現在の生活状況や将来の居住環境に関する見通しについての報告書
(6)後見監督人の同意書
 後見監督人が選任されている場合は、当該不動産を処分することについての後見監督人の同意書
 ※ 事案によってはこれら以外にも提出を要する書類があります。
不動産の処分(売却、賃貸、担保権設定等)にあたって、家庭裁判所の許可以外に、注意すべき点はありますか?
 後見人等は契約を進めるに当たって、買主や賃借人となる者に対し、当該物件が被後見人の居住用不動産であり、家庭裁判所の許可が必要となることを自ら若しくは不動産業者を通じて説明しておく必要があります。
不動産の処分に対する家庭裁判所の許可の審判に対して、不服申立ては可能でしょうか?
 認容審判、却下審判のいずれに対しても不服申立て(即時抗告)はできません。