目次【平成29年3月23日付法務省民二第175号】

「相続登記」の窓口

第1 相続登記とは-わかりやすく詳しく解説 第2 相続登記のメリットとデメリット 第3 相続登記の費用(報酬と実費) 第4 相続登記の手続の流れ 第5 相続登記のよ…

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相続登記では,登記記録上の所有者と被相続人の同一性を証する書面が必要となるようですが,その同一性を証する書面とはどのようなものですか?

原則として,被相続人の住所証明書(住民票の写し,戸籍の附票の写し)になりますが,様々な理由で,住所証明書が取得できないことがあります。その場合には,下記の通り,住所証明書以外の方法で,被相続人の同一性を証明しましょう。

「被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について(通知)」〔平成29年3月23日付法務省民二第175号〕

「相続による所有権の移転の登記の申請において,所有権の登記名義人である被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なる場合には,相続を証する市区町村長が職務上作成した情報の一部として,被相続人の同一性を証する情報の提出が必要であるところ,当該情報として,住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。),戸籍の附票の写し(登記記録上の住所が記載されているものに限る。)又は所有権に関する被相続人名義の登記済証の提供があれば,不在籍証明書及び不在住証明書など他の添付情報の提供を求めることなく被相続人の同一性を確認することができ,当該申請に係る登記をすることができる」

1.原則《被相続人の同一性を証する書面》

 登記事項証明書には,所有者を特定するために住所と氏名が記録されています。一方で,戸籍謄本には住所の記録がなく,本籍と氏名と生年月日が記録されています。したがって,登記事項証明書と戸籍謄本で共通する事項は氏名のみですので,登記事項証明書に記録されている被相続人と戸籍に記録されている人物が同一人物であることの証明としては十分ではありません。

 したがって,相続登記においては,登記事項証明書に記録されている被相続人と戸籍に記録されている人物が同一の人物であることの証明が必要となります。当該証明のために,次のいずれかの書面を添付します。ただし,登記事項証明書に記録されている住所が本籍と一致するときは,これらの証明書は必要ありません

 また,平成29年3月23日付法務省民二第175号によると,次の(1)(2)(3)の添付書類があれば,その他に,被相続人と登記名義人が同一である証拠を提出する必要がなくなりました。

(1)住民票の除票の写し

 被相続人の住民票の除票の写しに記録されている住所(または前住所)および氏名と登記事項証明書に記録されている住所および氏名が一致していることが必要です。なお,この住民票は,本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限ります(平成29年3月23日付法務省民二第175号)。

(2)戸籍の附票の写し

 戸籍の附票の写しには,氏名,本籍,住所が記録されていますので,それに記録されている被相続人の住所氏名と登記事項証明書に記録されている住所氏名が一致することが必要です。

(3)所有権に関する被相続人名義の登記済証

 所有権に関する被相続人名義の登記済証が必要となります。なお,登記識別情報通知または登記識別情報で可能かどうかは定かではないです。司法書士中嶋剛士の見解になりますが,登記識別情報通知または登記識別情報でも登記申請を認めるべきだと思います。

2.例外《被相続人の同一性を証する書面》

 上記第1の(1)(2)の情報を保存期間の経過等により提供できない場合及び第1の(3)所有権に関する被相続人名義の登記済証を提供できない場合には,下記の証明書等が必要になりますが,必要書面は,各法務局によって異なりますので,管轄法務局へ連絡をして確認しましょう。

(1)不在籍証明・不在住証明

 「登記記録上の住所地に相続人の本籍及び住所がない」旨の市区町村長の証明書(いわゆる「不在籍不在住証明書」)

(2)被相続人の同一性に関する上申書

 「登記名義人と戸籍に記載された被相続人とが同一人である」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明書付)

【被相続人の同一性に関する上申書の見本・記載例】

被相続人の同一性を証する書面(上申書)
被相続人の同一性を証する書面(上申書)

(3)納税証明書

 過去3年間の納税証明書など

名古屋市の納税証明書を取得する場合

3.余談《被相続人の同一性を証する書面》

(1)相続登記の前提登記としての名変【昭和43年5月7日民甲第1260号】

被相続人が登記名義を取得した後に住所または氏名を変更していた場合でも,相続登記の前提として登記名義人表示(住所または氏名)変更登記をする必要がありますか?

 同一性を証する情報を提供することにより,被相続人が登記名義を取得した後に住所または氏名を変更していた場合でも,相続登記の前提として登記名義人表示(住所または氏名)変更登記をする必要はありません(昭和43年5月7日民甲第1260号参照)。

(2)遺贈の登記の前提登記としての名変

被相続人が登記名義を取得した後に住所または氏名を変更していた場合でも遺贈の登記の前提として登記名義人表示(住所または氏名)変更登記をする必要がありますか?

 遺贈の登記の場合には,原則どおり,登記名義人表示(住所または氏名)変更登記は必要です。