目次【(要件事実)せり上がり】

1.せり上がり とは

 せり上がり(せりあがり)とは,民事訴訟の要件事実論において用いられる用語で,例えば,請求原因事実を主張するに当たって,当該請求原因事実に当該請求原因に対する抗弁を構成する事実が含まれる場合に,当然に当該抗弁に対する再抗弁を構成する事実を併せて主張するこという。つまり,本来,被告の抗弁主張を待ってすれば足りるはずではあるが,原告の再抗弁事実の主張を,原告が請求原因の主張の段階で前もって主張せざるをえなくなることを、要件事実論において「せり上がり」と呼ぶ。

2.せり上がり の具体例

(1)売買代金債務の履行遅滞に基づいて損害賠償を請求する場合

 売買契約等の双務契約では,請求原因事実において,契約の成立を主張すると反対債務の存在が現れてしまい,同時履行の抗弁権が付着していることも主張することになる。しかし,履行遅滞に基づいて損害賠償を請求する場合,この反対債務が履行遅滞であり,違法であることを主張立証しなければならない。したがって,売買代金債務の履行遅滞に基づいて損害賠償を請求する場合,請求原因事実において,契約の成立の主張とともに,“目的物の引渡し(の提供)”を主張立証することにより,同時履行の抗弁権をなくし,反対債務が履行遅滞であり,違法であることを主張立証することとなる。

(2)売買代金債権を自働債権とする相殺による債権の消滅を主張する場合

 売買契約等の双務契約では,請求原因事実において,契約の成立を主張すると反対債務の存在が現れてしまい,反対債務に同時履行の抗弁権があることをも主張することになる。しかし,同時履行の抗弁権が付着した債権は相殺の用に供することはできないとされている。したがって,売買代金債権を自働債権とする相殺による債権の消滅を主張する場合,請求原因事実において,契約の成立の主張とともに,“目的物の引渡し(の提供)”を主張立証することにより,同時履行の抗弁権をなくし,自働債権の相殺を主張立証することとなる。