平成31年4月17日より,少しずつ「配偶者居住権のQ&A」を作成しております(過去の記事の一覧)

 なお,配偶者居住権及び配偶者配偶者短期居住権の新設等の施行日は,2020年4月1日(令和2年4月1日)になります。



建物賃借権の場合には,賃借権の登記がなくても,建物の引渡しがあったときは,その後その建物について第三者に対抗(主張)することができはずですが,配偶者居住権では引渡しは第三者に対抗するための要件ではないのですか?
 配偶者居住権では,建物の賃借権と異なり,居住建物引き渡しを対抗要件とすることとはしていません(借地借家法31条参照)。
 なぜならば,配偶者居住権は相続開始時に配偶者が居住建物に居住していたことがその成立要件とされているため,居住建物の引き渡しを対抗要件とすると,建物の外見上は何の変化もないことになり,公示手段として極めて不十分なものになるものと考えられるからです。
 また,配偶者居住権は無償で居住建物を使用することができる権利であるから,配偶者が対抗要件を取得した後に居住建物所有権を譲り受けた者や居住建物を差し押さえをした債権者等の第三者は,賃借権の場合とは異なり存続期間中は建物使用の対価すら取得することができないこととなるため第三者に権利の内容を適切に公示すべき必要性が高いからです。

配偶者居住権の登記申請は,配偶者居住権を取得した配偶者が単独で行うのですか?それとも,配偶者居住権を取得した配偶者と建物所有者が共同で登記申請を行うのですか?
 原則として,配偶者居住権の設定の登記は,配偶者と居住建物所有者とが共同して申請しなければなりません(不動産登記法60条)。
 もっとも,配偶者が遺産分割に関する審判や調停によって配偶者居住権を取得したときはその審判書や調停調書には,配偶者が単独で配偶者居住権の設定の登記手続きをすることはできるように所用の記載がされるのが通常であるから,配偶者は,その審判書や調停調書に基づき,単独で配偶者居住権の設定の登記の申請をすることができます(不動産登記法63条1項)。
 なお,遺産分割に関する審判や調停によらずに,遺贈又は死因贈与により配偶者居住権を取得した配偶者は,居住建物所有者が登記の申請に協力しない場合には,配偶者は居住建物の所有者に対して登記義務の履行を求める訴えを提起することができ(民法1031条1項),これを認容する判決が確定すれば配偶者はその判決に基づき単独で登記の申請をすることができます(不動産登記法63条1項)。

配偶者居住権が設定されるより前の順位で抵当権設定登記があり,当該建物につき,当該抵当権に基づいて競売されたとき,配偶者居住権を取得した配偶者は,建物の競売における買受人の買受けの時から6か月間は,建物の引渡しを猶予されるのでしょうか?
 配偶者居住権については,民法395条1項の抵当建物使用者の引渡しの猶予の適用はありません。なぜならば,配偶者居住権は無償で居住することができる権利であるからです。したがって,配偶者居住権が抵当権に対抗することができない場合に,居住建物が抵当権に基づいて競売されたときは,競落人は配偶者に対して直ちに居住用建物明け渡しを請求することができることになります。

司法書士なかしま事務所
司法書士 中嶋 剛士


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