土地や建物を購入・相続などしたときに登記をしなければならないのは、どうしてですか?
 日本の民法では、土地建物(=不動産)の所有権の移転は当事者の意思表示のみで行うことができるとされています。これを意思主義(※1)といいます。しかし、一般に財産的な価値の高い不動産においては、当事者の意思表示のみでは安全な取引はできません。

 例えば、あなたがある不動産業者からA不動産を購入したいと思った場合、売主である不動産業者と買主であるあなたとの間で、「いくらで売ります。」「いくらで買います。」という合意があれば、不動産の権利(所有権)は買主であるあなたに移ります。しかし、それをわかっているのは意思表示した売主の不動産業者と買主のあなただけで、そのほかの人たちは、A不動産が誰のものかはさっぱりわかりません。そうなると、売主の不動産業者が悪い業者で、あなたが購入したはずのA不動産を他の買主にも二重に売り渡してしまった場合、その不動産が先に購入したあなたのものであるか、後から購入した別の買主のものになるかで、トラブルとなってしまいます。

 そこで、売買などで不動産の権利が移転した場合には、きちんと所有権移転の登記申請をして、不動産の権利関係を明確にする必要があるわけです。さらに、この不動産登記記録を一般に公開することで、誰でも安心して不動産の取引をすることができるようになっているのです。

 これは、相続であっても、同じです。相続の場合にも、誰がその不動産を所有しているかを公示していないと、後々トラブルになることになります。相続などで不動産の権利が移転した場合には、きちんと所有権移転の登記申請をして、不動産の権利関係を明確にする必要があります。

(※1)一方、当事者の合意のほかに何らかの形式を要求する「形式主義」といいます。意思主義はフランス法において採用され、形式主義はドイツ法で採用されているが、日本の民法では意思主義を採用しています。