司法書士等が電子申請の方法により権利に関する登記の申請をする場合における電磁的記録で作成する登記原因証明情報の取扱いの留意事項について[令和7年12月9日付法務省民二第1578号関連・法務省民事局民事第二課事務連絡]

内容の要約

令和8年3月1日より、不動産登記のフルオンライン申請を促進するため、「特別委任方式」の運用が開始されます。

これにより、一定要件を満たす場合、司法書士等が代理人として電子申請を行う際の「登記原因証明情報(電磁的記録)」について、登記義務者の電子署名が行われていなくても、司法書士等の電子署名のみで適式なものとして取り扱われるようになります。

対象となるのは、売買又は贈与を原因とする所有権(共有持分を含む)の移転登記、および抵当権(根抵当権を含む)の設定・抹消登記の共同申請です。適用には、司法書士等が登記義務者から特別な委任を受け、自ら登記原因となる事実を確認して電子署名を行うことや、登録免許税の電子納付などの要件を満たす必要があります。

[令和7年12月9日付法務省民二第1578号関連・法務省民事局民事第二課事務連絡]

司法書士等が電子申請の方法により権利に関する登記の申請をする場合における電磁的記録で作成する登記原因証明情報の取扱いの留意事項について

1 趣旨等

(1) 現状

不動産登記法(平成16年法律第123号。以下「法」という。)第18条第1号の規定による電子情報処理組織を使用する方法(以下「電子申請の方法」という。)による申請については、直近の利用率は約78%に上っており、その多くは司法書士又は司法書士法人(以下「司法書士等」という。)が代理人として申請しているものである。

不動産登記の申請をオンラインの環境のみで完結させる申請(以下「フルオンライン申請」という。)は、紙媒体でのやり取りがなく、登録免許税も電子納付されるため、利用者の手続の円滑化や登記所の業務の効率化に資するものである。

しかし、現在の電子申請の方法による権利に関する登記申請の大半は、添付情報が書面で作成されることが多いため、司法書士等が添付情報をスキャンしてPDF化し、デジタルデータで作成した申請情報に当該PDFを添付して登記所に電子申請の方法により申請し、書面の原本を登記所に別途提出する特例方式による申請 (不動産登記令(平成16年政令第379号。以下「令」という。)附則第5条第1項の規定による申請をいう。以下同じ。)となっている。

(2) 報告形式の登記原因証明情報

権利に関する登記の申請をする場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、申請情報と併せて登記原因を証する情報(以下「登記原因証明情報」という。)を提供しなければならないとされている(法第61条)。

これまでの登記実務では、登記の原因となる事実又は法律行為の発生後に登記申請用に作成される報告形式の登記原因証明情報については、その証明力の根拠が登記により直接に不利益を受ける登記義務者が登記原因を自認していることにあるとの考え方を踏まえ、少なくとも登記義務者がその作成名義人となる必要があるとして取り扱われていた。

また、電子申請の方法により権利に関する登記の申請 (特例方式による申請を含む。以下同じ。)をする場合における添付情報は、作成者による電子署名が行われているものでなければならないとされている (令第12条第2項)。

このため、報告形式の登記原因証明情報を電磁的記録で作成するためには、登記の原因となるべき事実又は法律行為が生じた後に、登記義務者となる者が電子署名を行う必要があったが、代金決済後に登記義務者に対して電子署名を求めることが不動産取引の実務上困難であるなどの理由により、報告形式の登記原因証明情報を電磁的記録で作成することができず、フルオンライン申請を阻む要因になっているとの指摘がある。

(3) 趣旨

登記義務者がその作成名義人となっていなくとも、司法書士法(昭和25年法律第197号)に基づく職責等を有する司法書士等が、特定の登記原因に基づく登記申請が予定されている場合において、登記原因証明情報を電磁的記録で作成することについて登記義務者から直接特別の委任を受け、かつ、その委任に基づいて自ら登記の原因となる事実又は法律行為を相当な方法で確認し、登記原因証明情報を作成したときは、登記義務者が登記原因証明情報を作成した場合と比較してその証明力に大きな差はないと考えられる。

そこで、今般、司法書士等が代理人として行う電子申請の方法による登記申請手続の利便性の向上を図るとともに、フルオンライン申請を促進するため、日本司法書士会連合会との調整を経て、司法書士等が登記義務者から特別の委任を受けて作成した登記原因証明情報の取扱いについて、依命通知が発出された。

なお、この取扱いは、書面で作成された報告形式の登記原因証明情報の取扱いや、特例方式により申請をする場合に申請情報と併せて当該登記原因証明情報を記録した電磁的記録を提供する場合の取扱いを変更するものではない。また、登記識別情報の通知及び登記完了証の交付についても、電子申請の方法による権利に関する登記の申請があった場合の取扱いを変更するものでもない。

2 登記原因証明情報の作成者の特例 (依命通知1関係)

司法書士等が代理人として行う電子申請の方法による登記申請手続の利便性の向上を図るとともに、フルオンライン申請を促進するため、司法書士等が代理人として電子申請の方法によりする権利に関する登記の申請が、依命通知2に掲げる要件のいずれにも該当するときは、当該申請の添付情報として提供される登記原因証明情報については、登記義務者の電子署名が行われていないものであっても、適式なものとして取り扱うこととされた(以下この取扱いを「特別委任方式」という。)。

司法書士等は、その職責上、品位保持義務を負い、登記の申請を代理するときには、不実な登記を出現させないようにする具体的な義務を負っているものと解されている (司法書士法第1条及び第2条)。このような司法書士等の職責等を前提に、登記原因証明情報の真正性を確保しつつ、電子申請の方式による登記申請手続の利便性の向上を図ることを目的として、特別委任方式による運用を実施することとされた。

3 特別委任方式の要件(依命通知2関係)

(1) 登記権利者及び登記義務者が共同申請によりする権利に関する登記の申請であって、その登記の目的が次のいずれかであること

  • ア 売買又は贈与を登記原因とする所有権 (共有持分を含む。)の移転の登記
  • イ 抵当権(根抵当権を含む。)の設定又は抹消の登記

依命通知では、現行の司法書士等の実務を踏まえて手続の円滑化を図る必要性が高く、対応が可能と考えられる類型の登記において特別委任方式を行うこととされた。具体的には、登記権利者及び登記義務者が共同申請によりする権利に関する登記の申請のうち、登記の目的が、①売買又は贈与を登記原因とする所有権 (共有持分を含む。)の移転の登記又は②抵当権(根抵当権を含む。)の設定又は抹消の登記の申請において提供する登記原因証明情報のみを対象とすることとされている。

このため、①又は②以外の登記の申請は特別委任方式の対象には含まれない。

また、報告形式の登記原因証明情報についての取扱いであることから、登記原因の証明について、登記官その他の公務員が職務上作成した情報の提供が必要な登記 (登記名義人の住所等の変更の登記等)や、一定の形式により作成された情報の提供が必要な登記(遺言書に基づく登記等)については対象には含まれない。

なお、対象とする登記の目的の範囲については、今後の運用状況を踏まえ、引き続き検討することとしている。

(2) 登記義務者が、司法書士等に対し、登記原因証明情報の作成に係る特別の委任をした旨が代理人の権限を証する情報(以下「委任情報」という。)に記録されていること

ア 委任情報の作成時期

特別委任方式では、多くの場合において、委任情報が、登記原因が生ずるよりも前に作成されることが想定される。

一般に、登記原因が発生した日付よりも前の日付で作成された委任情報であっても、委任内容が具体性・特定性に欠けるものでないと解されるときは、有効な委任情報として取り扱われるが、委任情報の作成日付が登記原因の発生日付よりも相当前である場合には、その有効性に疑義が生ずるおそれがあるとされている。

このような考え方を踏まえ、特別委任方式に適合する委任情報の作成時期については、その有効性を確保するため、委任情報の作成された日から登記の原因が生じた日までの期間が1か月以内であることを原則としつつ、海外居住者や農地法の転用許可を要するなどの特段の事情を示す添付情報が提供された場合には、個別に判断するといった運用として差し支えない。

なお、フルオンライン申請の促進の観点からは、委任情報は電磁的記録で作成されていることが望ましいが、現時点における公的個人認証サービスの利用状況、不動産取引や融資の慣行等を踏まえると、委任情報が書面で作成されている場合が依然として多いことが想定されることから、特別委任方式の対象には、特例方式による申請を含むものとされている。

イ 特別の委任

これまでの登記実務では、前述のとおり、報告形式の登記原因証明情報については、その証明力の根拠が、登記義務者が登記原因を自認していることにあるとの考え方を踏まえた取扱いがされている。特別委任方式を採用するに当たっては、司法書士等が作成名義人となる登記原因証明情報の証明力が、登記義務者が作成名義人となる場合と同水準であることが求められ、これを確保するためには、登記義務者が特定の代理人に対して登記原因証明情報の作成を自らの意思で明確に委任したことが必要であると考えられる。

そこで、依命通知では、特別委任方式の要件として、司法書士等が登記義務者から登記原因証明情報を作成することについて特別の委任を受けることが必要とされた。この特別の委任は、例えば、委任条項に「登記申請に関する一切の件」という条項があるだけでは足りず、委任情報において登記の原因となるべき事実又は法律行為(委任情報の作成後に発生するものを含む。)が具体的に特定された上で、「司法書士何某が作成名義人となって登記原因証明情報を作成することに関する一切の件」などと具体的に明示されていることが必要である。したがって、登記原因証明情報を作成することについての特別の委任があることが明らかでないときは、特別委任方式による申請は認められないこととなる。

また、登記原因証明情報の作成に関する特別の委任を受けた代理人から委任を受けた復代理人や代理人の使者は、登記義務者からの直接の委任関係がなく、登記義務者が作成名義人となる場合の登記原因証明情報と同水準の証明力が必ずしも確保されないことから、登記原因証明情報を作成することはできない。

なお、第三者のためにする売買契約による第三者への所有権の移転に関する登記の申請にあっては第三者である買主のために契約をした者が、買主の地位の譲渡契約による譲受人への所有権の移転に関する登記の申請にあっては買主の地位の譲渡人が、それぞれ登記義務者に準じて扱われ、登記原因証明情報の作成名義人とする必要があるとされている(平成19年1月12日付け法務省民二第52号法務省民事局民事第二課長通知) こととの関係で、特別委任方式においても、これらの者からの登記原因証明情報の作成に係る特別の委任が必要と考えられる。もっとも、これらの者は、不動産登記法上の登記義務者には当たらず、その代理権限証明情報は提供されないため、登記原因証明情報にその特別の委任を受けた旨を記載する必要がある。

(3) 司法書士等が、(2)の委任に基づき電磁的記録で作成した登記原因証明情報に、自らが確認した登記の原因となる事実又は法律行為及びその確認方法、当該司法書士等の職名及び氏名並びに電磁的記録の作成年月日を記録し、当該司法書士等の電子署名をしていること

前述のとおり、特別委任方式においては、司法書士等が作成名義人となる登記原因証明情報の証明力が、登記義務者が作成名義人となる場合と同水準であることが求められる。これを確保するためには、司法書士法に基づく職責等を有する司法書士等が、自ら登記の原因となる事実又は法律行為を確認した上で登記原因証明情報を作成しなければならず、かつ、その確認方法が相当なものであることを登記官において確認可能である必要があると考えられる。また、電子申請の方法により権利に関する登記の申請をする場合における添付情報は、作成者による電子署名が行われているものでなければならない (令第12条第1項)。

そこで、依命通知では、特別委任方式の要件として、司法書士等が作成した登記原因証明情報に、自らが確認した登記の原因となる事実又は法律行為及び確認方法、当該司法書士等の職名及び氏名並びに電磁的記録の作成年月日が記録され、当該司法書士等の電子署名がされている必要があることとされた。

登記の原因となる事実又は法律行為の確認方法については、例えば、「契約への立会い及び契約書の確認により売買の事実を現認した。」「決済への立会いにより代金支払の事実を現認した。」、「登記義務者からの聴取及び登記義務者から提供された資料により契約及び代金支払の事実を確認した。」などの記載をすることが考えられる。

登記義務者が司法書士法人に登記原因証明情報の作成に係る特別の委任をした場合において、登記の原因となる事実又は法律行為を確認する主体は、当該司法書士法人の代表社員である司法書士のほか、代表社員以外の社員又は使用人である司法書士も想定される。後者の場合には、登記原因証明情報の作成に係る特別の委任を受けた司法書士法人の電子署名に加えて、登記の原因となる事実又は法律行為を確認した社員又は使用人である司法書士の電子署名が必要であると考えられる。

なお、この司法書士等の職名及び氏名の記録並びに電子署名は、司法書士法施行規則(昭和53年法務省令第55号)第28条第2項の規定による職名及び氏名の記録並びに電子署名を兼ねるものである。

(4) (3)の確認方法が、契約の締結や金銭の授受の現認、登記義務者からの聴取その他の相当と認められる方法であること

前述のとおり、特別委任方式においては、司法書士等が作成名義人となる登記原因証明情報の証明力が、登記義務者が作成名義人となる場合と同水準であることが求められる。これを確保するためには、司法書士等が登記原因証明情報を作成する際における登記の原因となる事実又は法律行為の確認方法が、登記により直接に不利益を受ける登記義務者が登記原因を自認していることと同視し得る程度の相当性が認められることが必要であると考えられる。

そこで、依命通知では、特別委任方式の要件として、司法書士等により行われた確認方法が、契約の締結や金銭の授受の現認、登記義務者からの聴取その他の相当と認められる方法である必要があることとされた。

登記の原因となる事実又は法律行為の確認方法としては、司法書士等がその事実又は法律行為を直接現認する方法のほか、登記により直接に不利益を受ける登記義務者からの聴取が考えられる。例えば、契約や代金決済への立会い、登記義務者から提供された契約書等の確認、登記義務者からの聴取等による確認をしている場合には、相当と認められる方法に当たると考えられる。

他方で、登記権利者からの聴取や登記権利者が作成した資料のみに基づいて登記の原因となる事実又は法律行為を確認している場合には、その確認方法は相当とは認められないと考えられる。

(5) (3)の登記原因証明情報を作成した司法書士等が、代理人としてその登記原因に基づく登記を申請し、その添付情報として当該登記原因証明情報を提供していること

特別委任方式は、特定の登記原因に基づく登記申請が予定されている場合において、登記義務者から特別の委任を受けた特定の司法書士等が登記原因を確認することによって、登記義務者が登記原因証明情報を作成した場合と同水準の証明力を確保するというものであるが、この証明力を確保するためには、登記原因の確認から登記を申請するまでの一連の行為を同一の司法書士等が行う必要がある。

そこで、依命通知では、特別委任方式の要件として、登記原因証明情報を作成した司法書士等が、代理人としてその登記原因に基づく登記を申請し、その添付情報として当該登記原因証明情報を提供している必要があることとされた。

なお、司法書士法人の場合には、登記申請の代理及び登記原因証明情報の作成の依頼は、司法書士法人に対してされるものであるため、司法書士法人の社員又は使用人である司法書士が登記原因を証する事実の確認をして登記原因証明情報を電磁的記録で作成した後に、当該司法書士法人の社員又は使用人である他の司法書士が登記の申請の代理人となって、当該登記原因証明情報を添付情報として提供することも許容されると考えられる。

(6) 申請情報に特別委任方式である旨が記録されていること

特別委任方式により電子申請をする場合には、申請情報にその旨が明示されていれば、添付情報も特別委任方式を前提とした確認をすることができるなど、事務の効率化に資することとなる。

そこで、依命通知では、特別委任方式の要件として、申請情報に特別委任方式である旨を記録することとされた。

具体的には、申請情報の添付情報欄に「登記原因証明情報(特別委任方式)」などと記録することが考えられる。

なお、申請情報とともに提供された登記原因証明情報について、登記義務者の電子署名が行われておらず、司法書士等の電子署名のみが行われている場合において、申請情報に特別委任方式である旨が記録されていないときは、電子申請の代理人である司法書士等に対し、当該電子申請が特別委任方式に基づくものかどうかを確認する必要があると考えられるが、登記官は、その確認も含めて補正を指示することとして差し支えない。

(7) 登録免許税が電子納付の方式で納付されていること(登録免許税を電子納付することができない場合又は登録免許税が課されない場合を除く。)

特別委任方式は、電子申請の方法による登記の申請手続の利便性の向上を図るとともに、フルオンライン申請を促進するため、司法書士等が代理人として行う登記申請に限って特別の取扱いを認めるものであるが、特別委任方式を利用する場合の登録免許税の納付方法については、登記所における事務処理の効率化を図るため、電子納付に限定することとされた。

なお、金融機関によっては、電子納付金額に上限を設けている場合もあり、このような場合には電子納付をすることができないことから、登録免許税を電子納付することができない場合については除外することとされた。

もっとも、電子納付がされていない場合であっても、金融機関や司法書士等に電子納付金額の上限を確認する必要はなく、登録免許税を電子納付することができない場合に該当するものとして取り扱って差し支えない。

4 特別委任方式の運用開始日

特別委任方式の運用は、司法書士等に対する周知期間を考慮して、令和8年3月1日から実施することとされた。

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