目次【「遺言」の窓口】

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解説者「司法書士 中嶋 剛士」のプロフィール

司法書士 中嶋剛士(シホウショシ ナカシマコウジ)
司法書士中嶋剛士

❖「司法書士なかしま事務所」代表司法書士
❖名古屋市の法務大臣認定司法書士
❖依頼は“相続・相続対策”と“借金問題”が中心
❖司法書士実務は2011年から
❖特別研修のチューターを4年経験
❖テレビ出演:2021年3月30日:CBCテレビ[チャント!]
登録番号 愛知 第1924号
簡裁訴訟代理等関係業務 認定番号 第1318043号

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第1 遺言とは-わかりやすく詳しく解説

1.遺言の特徴

遺言の制度

遺言とはどのような制度なのですか?

 遺言とは,一般的には,亡くなった人(これを「被相続人」といいます。)の意志を相続人等に伝えるものとされています。法律上の遺言は,亡くなった人の意志を相続人等に伝えるものですが,単に,亡くなった人の意志を相続人等に伝えるのみではありません。法律上の遺言とは,「亡くなった人の相続財産の処分方法を定める」などのことをいいます。

遺言の効果

遺言があると、どのような効果があるのですか?

遺言の作成のメリットとしては、(1)相続対策(法定相続の修正)ができる、(2)遺贈など相続以外の方法で財産の処分ができる、(3)認知など身分関係に関する事項を定めることができる、(4)遺言執行に関する事項を定めることができる、(5)相続税対策ができる、などがあります。
図解_遺言作成のメリット【©司法書士なかしま事務所】

 遺言の作成のメリットとしては、(1)相続対策(法定相続の修正)ができる、(2)遺贈など相続以外の方法で財産の処分ができる、(3)認知など身分関係に関する事項を定めることができる、(4)遺言執行に関する事項を定めることができる、(5)相続税対策ができる、などがあります。

遺言の作成のデメリットとしては、(1)遺言は要式行為であり厳格であること、(2)遺留分を考慮しないと「争続」になるかもしれない、ということがあります。
図解_遺言作成のデメリット【©司法書士なかしま事務所】

 一方で、遺言の作成のデメリットとしては、(1)遺言は要式行為であり厳格であること、(2)遺留分を考慮しないと「争続」になるかもしれない、ということがあります。

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2.遺言のメリット

(1)相続対策(法定相続の修正)ができる

メリット1の「相続対策(法定相続の修正)ができる」とはどういうことですか?

 「相続対策(法定相続の修正)ができる」とは,遺言を作成することによって,「被相続人の相続財産の処分方法を決めることができる」,ということを意味します。
 具体的には,①相続人の廃除(民法893条,民法894条),②相続分の指定(民法902条),③遺産分割方法の指定・禁止(民法908条),④特別受益の持ち戻しの免除(民法903条3項),⑤遺産分割における担保責任に関する別段の意思表示(民法914条)などによって,相続の法定原則を修正することができるようになります。
 代表的な効果としては,「遺言を書くことで相続人間で遺産分割が不要になる」という効果です。これは,上記②相続分の指定か③遺産分割方法の指定によって行われます。

(2)遺贈など相続以外の財産の処分ができる

メリット2の「遺贈など相続以外の財産の処分ができる」とはどういうことですか?

 「相続以外の財産の処分ができる」とは,遺言を作成することによって,「相続人以外にも財産を渡すことができる」,ということを意味します。
 具体的には,①遺贈(民法964条等),②財団法人の設立のための寄付行為(一般社団・財団法人法152条),③信託の設定(信託法3条)などによって,相続人以外にも財産を渡すことができるようになります。
 代表的な効果としては,「世話になった知人等に相続財産を渡す」という効果です。これは,一般的には,上記①遺贈によって行われます。

(3)認知など身分関係に関する事項を定めることができる

メリット3の「認知など身分関係に関する事項を定めることができる」とはどういうことですか?

 「認知など身分関係に関する事項を定めることができる」とは,遺言を作成することによって,「認知等の身分関係を定め,後のトラブルを避ける」,ということを意味します。
 具体的には,①認知(民法781条2項),未成年後見人の指定(民法839条1項),未成年後見監督人の指定(民法848条)などによって,後のトラブルを避けることができます。
 代表的な効果としては,「遺言でする認知によって相続人を確定する」という効果です。これは,一般的には,上記①認知によって行われます。認知は,認知をされた相続人以外の他の相続人にとっては,認知自体がトラブルといえますが,認知をされる相続人にとっては,ときに非常に助かるものです。

(4)遺言執行に関する事項を定めることができる

メリット4の「遺言執行に関する事項を定めることができる」とはどういうことですか?

 「遺言執行に関する事項を定めることができる」とは,遺言を作成することによって,「遺言を実行する人を定めることができる」,ということを意味します。
 具体的には,①遺言執行者の指定(民法1006条)を定めることによって,遺言を実行する人を定めることができます。
 遺言執行者の定めは,法律専門家(弁護士・認定司法書士)に相談せずに作成された自筆証書遺言で欠けていることが多い規定ですが,「この遺言執行者の定めがないと,自筆証書遺言を作成した意味がなくなることも多い」ため,ほぼ必須の規定となります。

(5)相続税対策ができる

メリット5の「相続税対策ができる」とはどういうことですか?

 「相続税対策ができる」とは,遺言を作成することによって,「相続税の支払い額の総額を少なくする」,ということを意味します。
 具体的には,①一次相続(親の一方の相続)と二次相続(親のもう一方の相続)のバランスをとることによって相続税対策をすることや,②配偶者居住権(民法1028条)を設定することによって,相続税の支払総額を少なくすることができます。
 なお,相続税対策ということで,“相続税申告”の話になりますので,税理士の協力が不可欠になります。具体的には,①一次相続(親の一方の相続)と二次相続(親のもう一方の相続)のバランスをとることによって相続税対策をすることについては,主に税理士が担当し,場合によっては司法書士が関わることもあります。一方で,②配偶者居住権(民法1028条)を設定することについては,税理士と司法書士が共同して行うことになります。
 相続税がかかりそうな家庭であれば,相続財産の金額にもよりますが,専門家(税理士と司法書士)に依頼をして,相続税対策をすべきです。特に,配偶者居住権の設定に関しては,令和2年(2020年)からの制度であり,10数万円で大きな節税効果が期待できる制度となっています。

3.遺言のデメリット

(1)遺言は要式行為であり厳格である

デメリットの「遺言は要式行為であり厳格である」とはどういうことですか?

 「遺言は要式行為であり厳格である」とは,遺言を作成したからといって,「法律上の要件に適合しない限り遺言として機能しない(無効になる)」,ということを意味します。
 具体的には,遺言は,主に①普通方式遺言と②特別方式遺言があります。①普通方式遺言遺言の中には(Ⅰ)自筆証書遺言(民法968条),(Ⅱ)公正証書遺言(民法969条),(Ⅲ)秘密証書遺言(民法970条)があります(令和2年(2020年)7月10日から自筆証書遺言を法務局に保管する法務局遺言保管制度も創設されることになりました。)。②特別方式遺言には,(Ⅰ)緊急時遺言【(ⅰ)死亡緊急者遺言(民法976条),(ⅱ)船舶遭難者遺言(民法979条)】,(Ⅱ)隔絶地遺言【(ⅰ)伝染病隔離者遺言(民法977条),(ⅱ)在船者遺言(民法978条)】があります。
 これらの遺言にはそれぞれ方式が定めれており,その方式に従っていない遺言は無効になります。したがって,十分に注意のうえ,遺言を作成しなければなりません。

(2)遺留分を考慮しないと「争続」になるかも…

遺留分を考慮しないと、「争続」になるかもしれないというのは、どういうことですか?

 「遺留分を考慮しないと、「争続」になるかもしれない」とは、遺留分を考慮していない遺言を作成することによって、「遺留分額を侵害されている相続人が、遺言により多くの財産をもらった相続人に対し、遺留分侵害額請求をする可能性が出てくる」,ということを意味します。
 具体的には、父が死亡し、その相続人が子2名(兄と弟)の場合で、父が、兄に対し、相続財産の全部(4,000万円)を相続させる旨の遺言をした場合、弟は、兄に対し、自己の遺留分(法定相続分(2分の1)の2分の1=4,000万×4分の1=1,000万円)を侵害しているとのことで、1,000万円の請求をするかもしれません。
 なお、遺留分の考慮した遺言を作成の仕方は、下記のQ&Aをご覧ください。

4.遺言の報酬及び費用

遺言の報酬及び費用は、いくらくらいですか?

 下記の表のとおりとなります。

報酬及び費用_「遺言」の窓口
報酬及び費用_「遺言」の窓口

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5.遺言の手続の流れ

遺言の手続の流れはどのようになるのでしょうか?

 一般的に下記のとおりとなります。

①お客様と司法書士が相談
 ご相談内容から最適な「遺言」の方法をご提案いたします。その上で,ご納得いただけたら「委任契約」を締結いたします。また,相続税対策を目的とした「遺言(配偶者居住権の設定等)」の利用の場合には,司法書士に加え税理士も相談も一緒にご相談いたします。
【ご相談内容】
○目的(遺言する目的)
…どのような目的で遺言を利用しようとしているかを伺います。遺言はメリットも多いですが,デメリットもありますので,目的によっては別の法的解決方法を提案することもあります。
○財産
…遺言で相続・遺贈させる土地建物に関してお聞きします。どのような土地建物でも遺言書を作成することが良い方法とは限らないので,注意が必要です。
推定相続人
…遺言書を作成した場合の利害関係者についてお聞きします。遺言は財産を譲り受ける受遺者にとってはメリットですが,その他の相続人の期待を裏切るものでもあります。また,遺留分を侵害している場合には,遺留分減殺請求にも気をつけなければなりません。
○遺言の付言事項
…遺言の付言事項は,必須のものではありませんが,遺言の付言事項があることにより,死後に紛争が生じにくくなるものです。遺言の付言事項は,ぜひ検討しておきましょう。
○税金等
…相続税対策を目的として遺言の作成する場合には,司法書士と税理士がお互いに協力してプランを練る必要があります。
【相談時に持ってきていただく資料等】
○ご相談社様の本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)
○印鑑
②お客様が必要書類を収集
遺言を作成するためには下記の【必要書類】が必要になります。
【必要書類】
○戸籍謄本
…遺言を作成する人の出生から現在までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍),遺言により財産を貰う人が推定相続人の場合には,その推定相続人の戸籍謄本
○印鑑証明書
…遺言を作成する人の印鑑証明書
○住民票
…遺言により財産を貰う人が推定相続人以外の場合には,その受遺者の住民票(本籍地記載あり,世帯全員分)
○固定資産の評価証明書(評価通知書)・納税通知書
…毎年4月上旬に固定資産税の納付書とともに送られてくる納税通知書又は各市区町村で取得できる固定資産の評価証明書(評価通知書)
○登記簿(登記記録)
…原則として当事務所が取得した方が安いので当事務所が取得します。
○通帳の表紙などの資料
…預貯金その他の財産に関する遺言を作成する場合にはその資料
③司法書士が遺言の文案を作成
 ご依頼者様が集めていただいた資料に基づき,司法書士が遺言の文案を作成します。また,相続税対策を目的とした遺言の作成の場合には,司法書士と税理士が協力して遺言の文案を作成します。
④公証役場(または法務局)で遺言の作成
 司法書士(及び税理士)が遺言の文案を作成し,ご依頼者様との最終確認が終わりましたら,公証役場(または法務局)で遺言の作成します。
 この場合,私文書(普通の紙)での遺言を作成することもできますが,私文書で作成すると後に本人が作成したかが争われることも少なくありません。したがって,公証役場(または法務局)で作成すべきでしょう。
 なお,死因贈与契約に基づく配偶者居住権の仮登記を行う場合には,この時点で,登記の申請を行います(【参考】配偶者居住権と登記)。
⑤相続の開始(本人の死亡)
 本人が死亡し,相続の開始がなされると,遺言を作成していた場合には,遺言の効力が発生することになります。
 すみやかに,司法書士に本人が亡くなった旨を伝え,書類を集め,「相続登記」や「配偶者居住権設定登記」などを申請しなくてはなりません。なぜならば,(Ⅰ)相続登記は相続による法定相続分を超える権利の承継については対抗要件(登記)を備えなければ第三者に対抗できない旨の規定(民法899条の2)があり,(Ⅱ)配偶者居住権は「第三者対抗要件」に過ぎないからです(詳細は「配偶者居住権」の配偶者居住権のQ&Aをご覧ください。)。
相続登記配偶者居住権設定登記の申請
 遺言を作成されていた場合には,司法書士が「遺言書」に基づいて「相続登記」や「配偶者居住権設定登記」の申請を行います。
 なお,登記に関しては【「相続登記」の窓口】【「配偶者居住権と登記」】をご覧ください。

第2 遺言のよくあるQ&A

❖公正証書遺言・自筆証書遺言のどちらがいいか

(1)公正証書遺言の方が断然良い

遺言を書こうと思うのですが、公正証書遺言と自筆証書遺言(法務局遺言保管制度を利用した遺言を含む)のどちらが、いいですか?

私としては、断然、公正証書遺言の方が良いと考えています。

その理由は、「公正証書遺言については、厳正な方式・手続がとられていることから、遺言執行の際に問題となることはほとんどないから」です。

つまり、自筆証書遺言は、遺言執行の際に、トラブルになることが多く、遺言執行ができないケースもとても多いのです。また、自筆証書遺言は、遺言書の紛失、隠匿、偽造、変造等の問題が生ずることもあります。

(2)秘密を知られたくないのですが

公正証書遺言にすると、赤の他人に、自分の秘密を明かしているようで、嫌ですが、どうすればよいですか?

遺言において重要な事項である「財産のある場所の明示・財産の分配の内容・財産の分配をする人(遺言執行者)」などに関しては、公正証書遺言で作成し、その他は、自筆証書遺言を作成するという方法があります。

例えば、典型例として、【実は、隠し子がいる】等の内容に関しては、たしかに、相続人としては重要な事項ではあるものの、当該隠し子に財産を分配するつもりがない場合には、公正証書遺言に記載する必要はありません。

❖遺言書の書き方-簡単な一般的な書き方

簡単な一般的な書き方でいいので、遺言書の書き方を教えて下さい。

 遺言書の記載内容は、①相続財産の内容、②相続させたい方法、③その他希望、などによって大きくことなります。したがって、「簡単な記載」「いわゆる一般的な記載方法」「テンプレ(テンプレート)」という記載例はありません。

注意「簡単!遺言書キット」などの一般的な書籍では、具体的な書き方については、詳細に記載がありません。例えば、比較的典型化されている物件目録の記載のうちの一つである「敷地権が2個あるマンション(一棟の建物の名称がない)」場合の記載例などは書いていないでしょう。

法律専門家(弁護士・司法書士)に遺言書の作成を依頼するメリット

「遺言を書きたい」という相談者の中で、その相談者様の希望を叶えるための方法が、実は、「遺言の作成」以外にあることも多いです。そして、その相談者様の希望を叶えるための方法を知っているということが、法律専門家(弁護士・司法書士)に依頼するメリットとなります。

(1)遺言書の書き方-物件目録 [ pdf と word ]

比較的典型化されている物件目録だけでいいので、遺言書の書き方を教えて下さい。

 下記のPDFとWORDファイルをご覧ください。

(2)ネットにある「遺言書の文例」の注意点

インターネットにある「遺言書の文例」を見て、遺言書を書こうと思いますが、何か気をつけた方がいいですか?

 2021年10月現在では、インターネットには、多くの「遺言書の文例」が記載されていますが、近年の民法の大改正(2020年債権法の改正・2019年と2021年相続法の改正・2021年物権法の改正)に対応しているサイトはほとんどないと思われます。

 つまり、インターネットにある「遺言書の文例」自体が誤りであることがあるということに気をつけるべきです。

❖遺言書の件数

相続事件の件数_公正証書遺言+自筆証書遺言検認+遺産分割調停
相続事件の件数_公正証書遺言+自筆証書遺言検認+遺産分割調停

(1)自筆証書遺言の件数

『終活』が一般用語化し、遺言書の作成も増えているとのことですが、どのくらいの増えているのですか?

遺言には、公正証書遺言のほかにも自筆証書遺言、秘密証書遺言がありますが、家庭裁判所における遺言書(自筆証書遺言および秘密証書遺言)の検認件数(新受件数)は、平成3年に「6,169件」であったのが、平成17年には「1万2,347件」、平成30年には「1万7,487件」に増加しています。

今後も、遺言書の作成は、増えるのでしょうか?

「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年法律第73号。以下「遺言書保管法」という)により、法務局における自筆証書遺言書の保管制度が創設されたことから、自筆証書遺言も今後さらに増加するものと思われます。

(2)公正証書遺言の件数

『終活』が一般用語化し、公正証書遺言書の作成も増えているとのことですが、どのくらいの増えているのですか?

遺言公正証書の作成件数も増加の一途をたどっており、平成元年に「約4万1,000件」であったものが、平成17年には「約6万9,000件」と増加し、平成30年には「約11万件」になっています。

(3)遺産分割調停事件の件数

遺言があることで、遺産分割調停などの事件が起きる可能性がなくなるようですが、遺産分割調停事件も増えているのですか?

遺産相続をめぐる争いも、年々増加しており、全国の家庭裁判所で取り扱った遺産分割調停事件の新受件数は、平成元年に「7,047件」であったものが、平成17年には「1万130件」、平成30年には「1万3,739件」と増加しています。

❖自筆証書遺言の要件

(1)遺言者の全文・日付・氏名の自署、押印

自筆証書遺言を作成したいと考えていますが、自筆証書遺遺言には、何が必要ですか?

自筆証書遺言を有効に作成するためには、遺言者が、その全文(財産目録を除く)、日付および氏名を自書し、これに押印する必要があり、自筆証書中の加除その他の変更についても方式が定められています(民法968条)。

【条文】民法968条

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

(2)自筆証書遺言の要件の趣旨

自筆証書遺言は、なぜ、厳格な作成要件が定められているのですか?

自書証書遺言の厳格な作成要件の趣旨は、「自筆証書遺言に厳格な作成要件を定めることによって、遺言書の変造、偽造による紛争を防止しようとすること」にあります。具体的には、自筆をすることで、遺言者の筆跡がわかりますし、押印により遺言者の真意を明確にすることもできます。また、日付により遺言の成立時期も明確になります。

❖自筆証書遺言の方式を緩和【平成31年1月13日施行】

(1)自筆証書遺言は遺言者にとって負担

自筆証書遺言の場合には、遺言の内容を全文自筆し、日付、氏名を自署する必要があると聞きましたが、私の財産が多く、書くだけでも大変です。どうにかなりませんか?

ご自身で書くのが大変な場合には、公正証書遺言を作成した方が、楽ですし、安全なのでよいと思います。

なお、自筆証書遺言をする場合には、これまで、遺言者が、遺言書の全文、日付および氏名を自書して、これに印を押さなければならない(旧法第968条第1項)とされていましたが、このような全文自書は、遺言者にとって負担であり、自筆証書遺言の利用を妨げる要因の一つであると指摘されていました。したがって、相続法の改正により、全文の自書という自筆証書遺言の方式が一部緩和され、自筆証書に添付する財産目録については自書でなくてもよいものになりました。

(2)自筆証書遺言をパソコンで作成できる?!

自筆証書遺言をパソコン(PC)で作成して、印刷して、日付、氏名を自署すればよいということですか?

自筆証書遺言のうち、財産目録のみ、パソコン(PC)で作成して、印刷することができるようになりました。

なお、相続法の改正により、財産目録には、目録の形式については特段の定めはなく、自筆証書に、パソコン等で作成したり、遺言者以外の者が代書したりした目録を添付することも、また、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付することもできるようになった。ただし、この場合でも財産目録の各頁には署名押印することが必要(民法第968条第2項)とされています。

遺言書の財産目録の添付方法

  • パソコン等で作成
  • 遺言者以外の者が代書
  • 銀行通帳のコピー
  • 不動産の登記事項証明書等

❖遺言書の日付の自署

(1)遺言書の日付の自署はなぜ必要?

遺言書の日付の自署は、なぜ、必要なのですか?

遺言書の日付は、遺言の成立時期を明確にするために必要となるものです。遺言の成立時期を明確にする理由は、遺言の有効性に関係するからです。特に、複数の遺言がある場合には、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす(民法1023条1項)とされていることからも、その前後を判断するためには日付の自書が求められているのです。

【条文】民法1023条1項

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

(2)「年月」の記載はあるが、「日」の記載のない遺言【最判昭和52年11月29日】

例えば、「年月」の記載はあるが、「日」の記載のない遺言は、無効になるのですか?

日付のない遺言書について、判例は、「年月」の記載はあるが、「日」の記載のない遺言は、遺言成立の時を日まで区別する必要のない場合であっても、無効です(最判昭和52年11月29日家裁月報30巻4号100頁)。

最判昭和52年11月29日家裁月報30巻4号100頁

「年月」の記載はあるが、「日」の記載のない遺言は、遺言成立の時を日まで区別する必要のない場合であっても、無効

(3)「昭和〇〇年〇月吉日」とした遺言【最判昭和54年5月31日】

例えば、「年月」の記載はあるが、「日」の記載のない遺言は、無効になるのですか?

「昭和〇〇年〇月吉日」とした遺言は、具体的にいつ作成されたのか特定できませんので、日付の記載を欠くものとして無効です(最判昭和54年5月31日民集33巻4号445頁)。

最判昭和54年5月31日民集33巻4号445頁

「昭和〇〇年〇月吉日」とした遺言は、特定の日を表示したものといえず、日付の記載を欠くものとして無効

(4)日付の記載のない遺言による登記【昭和26年8月31日民事甲1754号】

日付の記載のない遺言で、不動産登記(相続登記)は可能ですか

不動産登記実務においては、最高裁での判決が出される前から、日付の記載のない遺言書は無効であるから、それに基づく遺贈の登記申請は受理すべきでない(昭和26年8月31日民事甲第1754号民事局長通達)としています。したがって、日付の記載のない遺言で、不動産登記(相続登記)はできません。

昭和26年8月31日民事甲第1754号民事局長通達

日付の記載のない遺言書は無効であるから、それに基づく遺贈の登記申請は受理すべきでない(昭和26年8月31日民事甲第1754号民事局長通達)

(5)遺言書の記載により年号が確認できるとき【登記研究107号48頁】

遺言書の記載により年号が確認できるときでも、不動産登記(相続登記)はできませんか

遺言書の記載により年号が確認できるとき(例えば、大震災等があった年に遺言がなされた場合等)で、そのことが、遺言書の記載の内容により知ることができると考えられます。したがって、遺言書の記載により年号が確認できるときは、不動産登記(相続登記)はできると考えられます。しかし、金融機関等によっては、拒否される可能性もあるため、特殊な記載方法をすることは好ましくありません。

質疑応答・登記研究107号48頁

年号の記載が全然ない場合には無効であるが、遺言書の記載により年号が確認できるとき(例えば、大震災等があった年に遺言がなされた場合等)で、そのことが、遺言書の記載の内容により知ることができるときは無効といえない(質疑応答・登記研究107号48頁)

❖遺言書の署名の自署

(1)遺言書の署名に「自署」がない場合

亡父の自筆証書遺言が見つかったのですが、署名がありませんでした。署名がない場合は、遺言と認められないのでしょうか?

 遺言書には遺言者の署名押印が必要です。自筆証書遺言(民法968条)、公正証書遺言(民法969条)、秘密証書遺言(民法970条)のいずれでも署名押印が必須の条件となっています。したがって、遺言書(自筆証書遺言)に署名(自署)がなければ「無効」になります。

(2)戸籍上の氏名以外で署名した場合

戸籍上の氏名以外、例えば、通称名、ペンネーム、芸名などで、遺言の署名をした場合には、遺言は無効ですか?

民法上、氏名という以上は、氏(姓)と名前が併記されることが原則です。しかし、氏名の自書を必要とするのは、遺言者を特定するためであることから、必ずしも氏名を厳格に記載する必要はないと考えられています。公正証書遺言においても、氏名は、戸籍上の氏名と同一であることは要せず、通称名、ペンネーム、芸名などであっても、遺言者本人の同一性を識別することができるものであればよいとされています。もっとも、有名人等でない限り、通称名、ペンネーム、芸名などで署名することは避けるべきでしょう。

(3)遺言者の名のみで相続登記ができた事例【登記研究671号213頁】

遺言書に氏の記載がなく、遺言者に名だけが自署された自筆証書遺言書による相続登記(遺贈による登記)は可能ですか?

不動産登記実務においては、氏の記載がなく、遺言者の名だけが自署された自筆証書遺言書(検認済み)であっても、遺言者本人を明確に示している場合には、これを添付してされた所有権移転登記の申請は受理される(質疑応答・登記研究671号213頁)との実例があるようです。しかし、遺言者の名だけが自署された自筆証書遺言を作成することは避けるべきでしょう。

質疑応答・登記研究671号213頁

氏の記載がなく、遺言者の名だけが自署された自筆証書遺言書(検認済み)であっても、遺言者本人を明確に示している場合には、これを添付してされた所有権移転登記の申請は受理される(質疑応答・登記研究671号213頁)

(4)カーボン複写と遺言【最三小判平成5年1月19日】

亡父の自筆証書遺言が見つかったのですが、見つかった遺言書がカーボン複写によるものでした。カーボン複写の場合でも、遺言書の署名の要件は満たされているのでしょうか?

 判例は、「カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言は、民法九六八条一項にいう「自書」の要件に欠けるものではない(最三小判平成5年1月19日民集第47巻1号1頁)。」としています。したがって、カーボン複写の場合でも、遺言書の署名の要件は満たされることになります。もっとも、カーボン複写による遺言書の作成は、保存等のしやすさを考慮すると相応しくないことは確かであるので、カーボン複写による遺言書の作成はしないようにしましょう。

Carbon paper

カーボン紙…複写機(コピー機)が無かった時代、事務作業には一般に黒色または青色で文字を複写するのにカーボン紙が用いられた。筆記する紙と複写させる紙の間にカーボン紙を挟んで上から筆記すると筆圧で転写したい紙のほうに転写される。実際の事務ではボールペンも普及していない時代から用いられたが、簡単に消すことができる鉛筆書きの文書を正本の記録にすることを避けるため、紙を3枚を重ねてその間にカーボン紙を挟んで使用された。この場合、1枚目が鉛筆書きとなり、2枚目を正本、3枚目を控えとした。ボールペンが普及すると紙を2枚重ねてその間にカーボン紙を挟んで用いるようになった。このように用紙に挟んで使用するカーボン紙はワンタイムカーボン紙という。

❖遺言書の押印

(1)遺言書に「押印」がない場合の効力

亡父の自筆証書遺言が見つかったのですが、押印がありませんでした。押印がない場合は、遺言と認められないのでしょうか?

 遺言書には遺言者の署名押印が必要です。自筆証書遺言(民法968条)、公正証書遺言(民法969条)、秘密証書遺言(民法970条)のいずれでも署名押印が必須の条件となっています。したがって、遺言書(自筆証書遺言)に押印がなければ無効になります。

(2)認印や指印は、遺言書の「押印」か【最一小判平成元年2月16日民集第43巻2号45頁】

亡父の自筆証書遺言が見つかったのですが、実印での押印はなく、拇印でした。実印での押印がない場合は、遺言と認められないのでしょうか?

 判例は、「自筆証書によつて遺言をするには、遺言者が遺言の全文、日附及び氏名を自書した上、押印することを要するが(民法九六八条一項)、右にいう押印としては、遺言者が印章に代えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺すること(以下「指印」という。)をもつて足りるものと解するのが相当である。(~中略~)。指印については、通常、押印者の死亡後は対照すべき印影がないために、遺言者本人の指印であるか否かが争われても、これを印影の対照によつて確認することはできないが、もともと自筆証書遺言に使用すべき印章には何らの制限もないのであるから、印章による押印であつても、印影の対照のみによつては遺言者本人の押印であることを確認しえない場合があるのであり、印影の対照以外の方法によつて本人の押印であることを立証しうる場合は少なくないと考えられるから、対照すべき印影のないことは前記解釈の妨げとなるものではない(最一小判平成元年2月16日民集第43巻2号45頁)。」としています。したがって、拇印による押印によって作成された遺言でも、遺言と認められます。

(3)本文には押印がないが封印に押印がある【最二小判平成6年6月24日集民第172号733頁】

亡父の自筆証書遺言が見つかったのですが、遺言の本文には押印がないのですが、遺言を入れた封印に押印がある場合、遺言と認められないのでしょうか?

 判例は、「遺言者が、自筆証書遺言をするにつき書簡の形式を採ったため、遺言書本文の自署名下には押印をしなかったが、遺言書であることを意識して、これを入れた封筒の封じ目に押印したものであるなど原判示の事実関係の下においては、右押印により、自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはない(最二小判平成6年6月24日集民第172号733頁)。」としています。したがって、遺言の本文には押印がなくても、遺言を入れた封印に押印がある場合、遺言と認められます。もっとも、遺言書の本文に押印をしない遺言書がふさわしくないのに変わりはないので、遺言書の本文には、自署し、押印をしましょう。

(4)花押は、遺言書の押印か【最二小判平成28年6月3日民集第70巻5号1263頁】

亡父の自筆証書遺言が見つかったのですが、遺言書に花押がありましたが、押印がありませんでした。花押は、押印のようなものだと思いますので、遺言と認められないのでしょうか?

 判例は、「花押を書くことは,印章による押印と同視することはできず,民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである(最二小判平成28年6月3日民集第70巻5号1263頁)。」としています。したがって、押印の代わりに花押をしても、その花押は、押印とは認められないので、遺言書は無効になります。

初代から44代まで

花押(かおう、華押)は、署名の代わりに使用される記号・符号である。日本では、初めは名を楷書体で自署したが、次第に草書体にくずした署名(草名(そうみょう)という)となり、それを極端に形様化したものを花押と呼んだ。

日本国政府の閣議における閣僚署名は、明治以降も花押で行うことが慣習となっている。多くの閣僚は閣議における署名以外では花押を使うことは少ないため、閣僚就任とともに花押を用意しているケースが多い。

 なお、印章による押印に代えて花押を書くことが認められない理由を判例は、「民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書のほかに,押印をも要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ(最高裁昭和62年(オ)第1137号平成元年2月16日第一小法廷判決・民集43巻2号45頁参照),我が国において,印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い(最二小判平成28年6月3日民集第70巻5号1263頁)。」としています。

❖遺言書と封筒

(1)遺言書は封筒に入れないといけないか

遺言書を作成したら、封筒に入れなければならないのでしょうか?

 自筆証書遺言の場合、遺言書を封筒に入れる必要はありません。正しく作成されていれば、裸で保管されていても有効です。もっとも、トラブルを避けるためには遺言書を封筒に入れて保管をすべきです。なお、秘密証書遺言の場合には自分で封入して公証役場へ持参し、認証してもらう必要があります。

(2)遺言書を入れる封筒の選び方

遺言書を入れる封筒には、決まりはあるのですか?

 遺言書を入れる封筒に特に決まりはありません。自宅にある封筒や低価格の茶封筒などでも法律的な問題はありません。なお、封入の際、遺言書を折りたたんでも構いません。小さく折りたたみたくないなら、大きめの封筒を使うことをおすすめします。

(3)遺言書を入れる封筒の封印の方法

遺言書を入れる封筒の封印の方法には、決まりはあるのですか?

 遺言書を入れる封筒の封印の方法に特に決まりはありません。

 しかし、下記のように封印の方法をしておくと、後のトラブルを回避できるでしょう。

  • 封筒の表紙に「遺言書」と記載する
  • 封筒に「検認」をするよう注意書きをする
  • 封筒に「日付」と「署名押印」をする
  • 封筒に「封印」をする

封筒の表紙に「遺言書」と記載するのは、なぜですか?

 封筒の表紙に「遺言書」と記載するのは、封筒の中に遺言書が入っていることがわかるようにするためです。そうでないと、発見した人が知らずに開封してしまう可能性がありますし、ゴミと間違えられて捨てられる可能性もあります。なお、遺言発見者が「検認」を受けずに遺言書を開封すると違法行為(5万円以下の過料)となってしまいます(民法1004条及び民法1005条)。

封筒に「検認」をするよう注意書きをするのは、なぜですか?

 封筒に「検認」をするよう注意書きをするのは、自筆証書遺言(法務局遺言保管制度による自筆証書遺言を除く)や秘密証書遺言を発見した人は、必ず開封前に家庭裁判所で「検認」を受けなければならないからです。例えば、封筒には「開封前に必ず家庭裁判所で検認を受けるように」などと書いて注意を促しましょう。なお、検認については、詳細は、【「遺言書の検認」の窓口】をご覧ください。

封筒に「日付」と「署名押印」をするのは、なぜですか?

 遺言書と同じ日付を記入し、署名押印しておくと、誰がいつ遺言書を書いたかがわかりやすいですし、相続人に遺言書が真実のものであると信用してもらいやすいからです。なお、遺言書の封筒に日付の記入や署名押印はしなくても、直接的には、遺言書の有効・無効には影響を及ぼしません。

封筒に「封印」をするのは、なぜですか?

 封印とは、封筒に押印することです。封印は、法律上の要件ではありませんが、封印しておくと相続人たちへ丁寧な印象を与えて信用してもらいやすくなる効果があります。封印の方式も決まりはないですが、蝋での封印(封蝋・シーリングワックス)は、中身の遺言に影響を及ぼしかねませんので、避けるべきです。一般的には、遺言書に使ったものと同じ印鑑で、裏面の綴じ代のところにまたがるように印鑑を押して封印をします。

封蝋(ふうろう、シーリングワックス、英: Sealing wax)とは、ヨーロッパにおいて、手紙の封筒や文書に封印を施したり、主に瓶などの容器を密封したりするために用いる蝋である。

手紙や文書の場合は、この上に印璽(シール)で刻印することで、中身が手つかずである証明を兼ねる。

(4)遺言書を封筒に入れて保管した方が良い理由

なぜ遺言書を封筒に入れて保管した方が良いのですか?

 遺言書を封筒に入れて保管した方が良い理由は、①書き換えや破棄のリスク、②遺産トラブルのリスクなどがあるからです。

 ①書き換えや破棄のリスクについては、具体的には、遺言書をそのままで保管していると、見つけた人に簡単に書き換えられたり、破棄されたり、隠されたりするリスクも高くなってしまいます。また、紙切れだと思われて間違って捨てられる可能性もあります。

 ②遺産トラブルのリスクについては、例えば、一般的に、「遺言書」はきちんと封入されて厳重に保管されているイメージを持たれていますが、もしも遺言書を裸で置いていたら、見つけた相続人が「こんなのは遺言書ではない、偽物だ!」と疑うかもしれません。そして、「遺言書が有効」と主張する相続人と「遺言書が無効」と主張する相続人が対立し、裁判をすることになるかもしれません。

 このように、遺言書をそのまま保管すると上記のような問題があるので、封入して大切に保管しておくべきです。

❖遺言の効力

(1)遺贈の効力を第三者に主張するには【最三小判昭和46年11月16日民集第25巻8号1182頁】

亡父が、生前、自宅不動産を姉である私に贈与すると言っていたのに、妹にもこれを遺贈しました。そして、妹は、その遺言を使って、自宅不動産を第三者に売却してしまいました。私は、その自宅不動産の名義を取り返したいのですが、なんとかならないのでしょうか?

 判例は、「被相続人が、生前、不動産をある相続人に贈与するとともに、他の相続人にもこれを遺贈したのち、相続の開始があつた場合、右贈与および遺贈による物権変動の優劣は、対抗要件たる登記の具備の有無をもつて決すると解するのが相当である。(三小判昭和46年11月16日民集第25巻8号1182頁)」としています。したがって、登記を得ていないお姉様は、第三者にその権利を対抗(主張)することはできないので、自宅不動産の名義を取り返すことはできません。

(2)特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言の解釈【最二小判平成3年4月19日民集第45巻4号477頁】

「自宅を長男に相続させる」旨の遺言があった場合、この意味を「遺贈」と考えるか、もしくは「遺産分割の方法の指定」されたものと考えるか、どちらの方が適切なのでしょうか?

 判例は、「特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきである(最二小判平成3年4月19日民集第45巻4号477頁)」としています。したがって、「自宅を長男に相続させる」旨の遺言があった場合、「遺産分割の方法の指定」がされたものと考えます。

(3)特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合における当該遺産の承継【最二小判平成3年4月19日民集第45巻4号477頁】

「自宅を長男に相続させる」旨の遺言があった場合、「被相続人の死亡の時」に遺産を承継するのですか? それとも、長男が「遺言の遺言の趣旨を受け容れる意思を他の共同相続人に対し明確に表明した時」ですか?

 判例は、「特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される(最二小判平成3年4月19日民集第45巻4号477頁)。」としています。したがって、「自宅を長男に相続させる」旨の遺言があった場合、「被相続人の死亡の時」に遺産を承継すると考えます。

❖共同遺言の効力

(1)共同遺言の効力

亡父と亡母が同一の書面で遺言を書いて、連名で自署し、押印がされているのですが、この遺言書は有効ですよね?

 お父様とお母様が同一の書面で共同で遺言を書いた場合、その遺言のことを共同遺言といい、共同遺言は民法975条の「遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。」という定めで禁止されています。したがって、形式的に要件が整っていないため遺言書は無効となります。

【条文】民法975条

(共同遺言の禁止)
第九百七十五条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

(2)共同遺言の一方が方式の違背【最二小判昭和56年9月11日民集第35巻6号1013頁】

亡父と亡母が同一の書面で遺言を書いて、亡父のみ自署し、押印がされているのですが、亡母の自署がない場合、亡母の遺言部分が無効ですので、亡父の遺言部分は有効ですので、この遺言書は、亡父の遺言として有効ですよね?

 判例は、「同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方につき氏名を自書しない方式の違背があるときでも、右遺言は、民法九七五条により禁止された共同遺言にあたる(最二小判昭和56年9月11日民集第35巻6号1013頁)。」としています。したがって、その遺言書は、お父様の遺言としても無効とされます。

(3)容易に切り離すことができる共同遺言【最三小判平成5年10月19日集民第170号77頁】

「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない」とのことですが、その証書が、容易に切り離すことができる場合でも、やはりダメですか?

 判例は、「一通の証書に二人の遺言が記載されている場合であっても、その証書が各人の遺言書の用紙をつづり合わせたもので、両者が容易に切り離すことができるときは、右遺言は、民法九七五条によって禁止された共同遺言に当たらない(最三小判平成5年10月19日集民第170号77頁)。」としています。したがって、遺言書が容易に切り離すことができる場合、その遺言書は共同遺言に当たらないため、それぞれの要件が満たしていれば、有効であるといえます。しかしながら、形式的に整っていない遺言書を作成してしまうと、その遺言の有効性が裁判で明らかにされない限り認められないことも多いので、やはり、遺言は法律専門家(弁護士・司法書士)に依頼すべきでしょう。

❖遺言の解釈

(1)遺言の解釈の方法①【最二小判昭和58年3月18日集民第138号277頁】

遺言の作成に際しては、形式的な面が重要であることはわかったのですが、文言上も常に形式的に解釈されるのでしょうか?

 判例は、「遺言の解釈に当たって、遺言者の真意の探求こそが重要であり、遺言書の文言を形式的に判断するのでなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情などを考慮して遺言者の真意を探求し、当該条項の趣旨を確定すべきものである(最二小判昭和58年3月18日集民第138号277頁)」としています。したがって、遺言書は、常に形式的に判断されるわけではありません。しかしながら、形式的に文言が整っていない遺言書を作成してしまうと、その遺言の有効性が裁判で明らかにされない限り認められないことも多いので、やはり、遺言は法律専門家(弁護士・司法書士)に依頼すべきでしょう。

最二小判昭和58年3月18日集民第138号277頁

遺言の解釈にあたつては、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたつても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである(最二小判昭和58年3月18日集民第138号277頁)

(2)遺言の解釈の方法②【最三小判平成5年1月19日民集第47巻1号1頁】

受遺者の選定を遺言執行者に委託する旨の遺言は、有効でしょうか?

 判例は、「受遺者の選定を遺言執行者に委託する旨の遺言は、遺産の利用目的が公益目的に限定されているため、右目的を達成することができる被選定者の範囲が国又は地方公共団体等に限定されているものと解されるときは、有効である(最三小判平成5年1月19日民集第47巻1号1頁)。」としています。したがって、受遺者の選定を遺言執行者に委託する旨の遺言は、受遺者の範囲が定まっていれば、有効と考えることが多いと思われます。

(3)遺言の解釈の方法③【最二小判平成17年7月22日集民第217号581頁】

遺言者である亡父Aは,亡母Bとの間に子がなかったため,亡父Aの兄夫婦(実の父母)の間に出生した私を亡父Aと亡母Bの夫婦の実子として養育する意図で,私につき亡夫Aの嫡出子として出生の届出をしました。また,私は,昭和18年1月20日に出生してから学齢期に達するまで,九州在住の実の父母の下で養育され,その後,神戸市在住の亡父Aと亡母Bに引き取られたが,私が上記の間、実の父母の下で養育されたのは,戦中戦後の食糧難の時期であったためであり,私は,亡父Aと亡母Bに引き取られた後亡父Aが死亡するまでの約39年間,亡父Aと亡母Bとは実の親子と同様の生活をしていました。そして,亡父Aが死亡するまで,本件遺言書が作成されたころも含め,亡父Aと私との間の上記生活状態に変化が生じておりません。この場合、亡父Aが遺言書に「特定の財産について特定人を指定して贈与等する旨」を記載し、またさらに「遺言者は法的に定められたる相續人を以って相續を与へる。」と記載した場合、遺言者の法定相続人は、遺言者の兄弟姉妹であり、遺言書の文言を形式的に読むと、遺言書は、遺言者の兄弟姉妹らに法定相続分で財産を渡す意味に読めますが、私には、相続を受ける権利はないのでしょうか? 私は、養子ではないのでしょうか?

 まず、判例は、「養子とする意図で他人の子を嫡出子として届けても、それによつて養子縁組が成立することはない(最二小判昭和25年12月28日民集第4巻13号701頁)。」としています。したがって、あなたは亡父Aと亡母Bと養子縁組が成立するわけではありませんので、養子として相続人になることはありません。

 たしかに、判例は、「戸籍上Xと亡夫との夫婦の嫡出子として記載されているYがXの実子ではない場合において,YとXとの間には,XがYに対して実親子関係不存在確認調停を申し立てるまでの約51年間にわたり実親子と同様の生活の実体があり,その間,XはYがXの実子であることを否定したことがないこと,判決をもって実親子関係の不存在が確定されるとYが軽視し得ない精神的苦痛及び経済的負担を受ける可能性が高いこと,XがYに対して実親子関係不存在確認を求める本件訴訟を提起したのは,上記調停の申立てを取り下げて約10年が経過した後であり,Xが本件訴訟を提起するに至ったことについて実親子関係を否定しなければならないような合理的な事情があるとはうかがわれないことなど判示の事情の下では,上記の事情を十分検討することなく,XがYとの間の上記実親子関係不存在確認請求をすることが権利の濫用に当たらないとした原審の判断には,違法がある(最二小判平成18年7月7日集民第220号673頁)。」としています。したがって、実親子関係不存在確認請求をすることが権利の濫用にあたる可能性もあります。

 そして、遺言に関する判例では、「丁の遺言書中の特定の遺産を一部の親族に遺贈等をする旨の条項に続く「遺言者は法的に定められたる相続人を以って相続を与へる。」との条項について,丁は,その妻戊との間に子がなかったため,丁の兄夫婦の子甲を実子として養育する意図で丁戊夫婦の嫡出子として出生の届出をしたこと,丁と甲とは,遺言書が作成されたころを含めて,丁が死亡するまで,実の親子と同様の生活をしていたとみられること,遺言書が作成された当時,甲は,戸籍上,丁の唯一の相続人であったことなど判示の事情を考慮することなく,遺言書の記載のみに依拠して,上記の遺贈等の対象とされた特定の遺産を除く丁の遺産を甲に対して遺贈する趣旨ではなく,これを単に法定相続人に相続させる趣旨であるとした原審の判断には,違法がある(最二小判平成17年7月22日集民第217号581頁)。」としています。つまり、あなたは遺贈を受け取れる地位にあるかもしれません。

❖特定財産承継遺言

(1)特定財産承継遺言とは

特定財産承継遺言とは、どのような遺言ですか?

特定財産承継遺言とは、「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人または数人に承継させる旨の遺言」のことをいいます(民法1014条2項)。

【条文】民法1014条

(特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(2)特定財産承継遺言の特徴

特定財産承継遺言の特徴は、何ですか?

改正相続法では、この「相続させる」旨の遺言による場合も含め、相続による権利の承継にあっては、法定相続分を超える権利の承継については、対抗要件の具備なくして第三者に権利の取得を対抗することができない(民法第899条の2第1項)こととされました。

したがって、特定財産承継遺言の場合では、速やかに登記をするなどの対抗要件を備える必要が高まることから、この対抗要件具備行為については、原則として遺言執行者の権限に含めることとされました(民法1014条2項)。

【条文】民法899条の2

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

相続させる旨の遺言

遺産分割の方法の指定があったものと解される、いわゆる「相続させる」旨の遺言は、特定の遺産を特定の相続人に承継させるためのものとして、この特定財産承継遺言に該当するものです。

(3)相続させる旨の遺言と登記実務【昭和47年8月21日民事甲第3565号】

特定財産承継遺言の制度は、登記実務に変更を及ぼしましたか?

不動産登記実務の取扱いは、従前から、「相続させる」旨の遺言がされた場合には、受益相続人が単独で相続による所有権移転登記をすることができる(昭和47年8月21日民事甲第3565号民事局長回答)としており、遺言執行者の登記申請権限は認められていませんでした。しかし、この相続法の改正の結果、不動産を目的とする特定財産承継遺言がされた場合は、遺言執行者は、被相続人が遺言で特段の意思表示をしたときを除き、単独で、法定代理人として、相続による権利の移転の登記を申請することができることになり、不動産登記実務の取扱いが変更されました。

相続させる旨の遺言と登記実務の変更

従前の先例【昭和47年8月21日民事甲第3565号】

「相続させる」旨の遺言がされた場合には、受益相続人が単独で相続による所有権移転登記をすることができる(昭和47年8月21日民事甲第3565号民事局長回答)ので、遺言執行者の登記申請権限は認められない。

相続法の改正後

相続させる遺言は、特定財産承継遺言であるので、遺言執行者は、単独で、法定代理人として、相続による権利の移転の登記を申請することができる。

❖遺言執行者

(1)遺言執行者とは

遺言執行者とは、どのようなことをする人ですか?

遺言執行者とは、かんたんにいうと、遺言の内容を実現する者のことです。

(2)遺言執行者の法的地位

遺言執行者は、遺言書の代理人ですか? それとも、相続人の代理人ですか?

❖従前の判例【最判昭和30年5月10日】

遺言執行者は、従前は、「相続人の代理人とみなす」と規定(旧法第1015条)されていました。しかし、遺言執行者は、遺言者の意思を実現するために、遺言執行をするのであり、その遺言者の意思が相続人の意思と対立することもあります。

判例も、遺言執行者の法的地位を明確にする観点から、遺言執行者は遺言の内容を実現することを職務とするもので、必ずしも相続人の利益のために職務を行うものではないという判断(最判昭和30年5月10日民集9巻6号657頁)をしていました。

最判昭和30年5月10日民集9巻6号657頁

遺言執行者は遺言の内容を実現することを職務とするもので、必ずしも相続人の利益のために職務を行うものではない

また、遺贈についても、従前は、遺言執行者の権限が規定上必ずしも明確ではないとの指摘があり、この点についても、判例は、特定遺贈がされた場合において、遺言執行者があるときには遺言執行者のみが遺贈義務者となる旨の判示(最判昭和43年5月31日民集22巻5号1137頁)をしていました。

最判昭和43年5月31日民集22巻5号1137頁

遺言執行者は遺言の内容を実現することを職務とするもので、必ずしも相続人の利益のために職務を行うものではない

遺言執行者を相続人の代理人とみなしていた理由

遺言執行者は、遺言者の意思を実現することを職務とする者であって、本来は「遺言者」の代理人としての立場を有するものです。しかし、遺言の効力が生じた時点では、遺言者は既に死者となっています。そこで、『遺言執行者を被相続人の法的地位を包括的に承継した「相続人」の代理人とみなすこととされているもの』と考えられていました。

❖相続法の改正【遺言執行者の職務権限】

そこで、相続法の改正で、遺言執行者がその任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない(民法第1007条第2項)とされ、その上で、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法第1012条第1項)と定められ、遺言執行者の法的地位に関し、判例の趣旨が明文化されました。

また、改正相続法では、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる(民法第1012条第2項)とされ、ここでも判例の趣旨が明文化されました。

❖不動産登記法実務の取り扱い【昭和43年8月3日民事甲第1837等】

不動産登記実務の取扱いは、従前から、特定遺贈、包括遺贈ともに、遺贈による所有権移転の登記については、遺言執行者がある場合には遺言執行者が登記義務者となり、遺言執行者があるにもかかわらず相続人が登記義務者となって登記申請がされた場合には受理することができない(昭和43年8月3日民事甲第1837号民事局長回答、昭和44年10月16日民事甲第2204号民事局等回答)としていたので、相続法の改正の影響はないといえます。

(3)遺言執行者の行為の効果

遺言執行者がした行為が気に入らないのですが、相続人として遺言執行者の行為を取り消すことは可能ですか?

遺言執行者の一般的な権限として、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生じます(民法1015条)。

【条文】民法1015条

(遺言執行者の行為の効果)
第千十五条 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。

遺言執行者は、従前は、遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有する(旧民法第1012条第1項)とされていたが、遺言執行者の権限の内容は、結局のところ遺言の内容によることになるところ、遺言の記載内容からだけでは、遺言者が遺言執行者にどこまでの権限を付与する趣旨であったのかその意思が必ずしも明確でない場合も多く、そのために、遺言執行者の権限の内容をめぐって争いになる場合があるとの指摘がされていました。

(4)遺言の執行の妨害行為の禁止

遺言執行者がした行為が気に入らないので、相続人として遺言執行者の行為を妨害したいと思いますが、妨害できますか?

遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができません。また、仮に、当該妨害行為をしても、無効となります(民法10)。

【条文】民法1013条

(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。

遺言執行の妨害行為について、従前は、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない(旧法第1013条)とされていましたが、この規定に違反した場合の効果については、必ずしも明確ではありませんでした。

❖特定遺贈と包括遺贈

(1)特定遺贈とは

遺贈には、特定の名義でされる特定遺贈と包括の名義でされる包括遺贈とがあるようですが、特定遺贈とは、どのような遺贈の方式ですか?

特定遺贈特定遺贈とは、指定された具体的な財産的利益を与える遺贈をいいます。
特定遺贈の遺言書では、「遺言者は、遺言者の所有する次の土地を、遺言者の姪A(生年月日、住所)に遺贈する。」というような記載になります。

(2)包括遺贈とは

遺贈には、特定の名義でされる特定遺贈と包括の名義でされる包括遺贈とがあるようですが、包括遺贈とは、どのような遺贈の方式ですか?

包括遺贈とは、遺言者が、遺贈の目的の範囲を、積極財産と消極財産の双方を含む遺言者の財産の全部と表示した遺贈または遺言者の財産全体に対する割合をもって表示した遺贈をいいます。

全部包括遺贈の場合の遺言書には、「遺言者は、遺言者の有する財産の全部を、遺言者の内縁の妻A(生年月日、住所)に包括して遺贈する。」というような記載になります。

また、割合的包括遺贈の場合には、「遺言者は、遺言者の有する財産の全部を、次の者らに、次の割合で、それぞれ包括して遺贈する。1/3A、1/3B、1/3C。」というような記載になります。

(3)遺贈と権利放棄【昭和40年7月31日民事甲1899】

叔父が、遺言で「ある特定の預貯金の口座と、ある特定の農地を遺贈する」旨を遺して亡くなりました、金銭ならまだしも、農地は、私も不要なのでいりません。農地のみの放棄はできるのでしょうか?

特定遺贈の場合には、遺贈の放棄をすることができます。一方で、包括遺贈の場合には、遺贈の放棄の放棄をすることはできず、相続放棄をすることになります。

昭和40年7月31日民事甲第1899号民事局長通達

民法990条は「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と規定しているため、包括受遺者は、遺贈の効力発生とともに、遺言者の一身に専属していたものを除き、物権、債権、知的財産権その他の積極財産および債務その他の義務などを単独で承継し、他に包括受遺者、相続人があるときは、それらの者と遺産共有の状態で承継します。したがって、包括遺贈には、特定遺贈と異なり、相続についての承認、限定承認、放棄等の規定の適用があります(民法915条以下)。

民法990条は「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と規定しているため、包括受遺者は、遺贈の効力発生とともに、遺言者の一身に専属していたものを除き、物権、債権、知的財産権その他の積極財産および債務その他の義務などを単独で承継し、他に包括受遺者、相続人があるときは、それらの者と遺産共有の状態で承継します。したがって、包括遺贈には、特定遺贈と異なり、相続についての承認、限定承認、放棄等の規定の適用があります(民法915条以下)。

❖農地法と遺言

(1)相続人に対する遺贈

相続人に対して、特定の農地を遺贈する旨の遺言をした場合には、農地法の許可が必要であると聞いたのですが、本当ですか

相続人の対する遺贈の場合には、特定遺贈であれ、包括遺贈であれ、農地法の許可は不要です(農地法施行規則第15条第5号)。

平成24年12月14日民二第3486号民事局長通達

相続人を受遺者とする農地または採草放牧地の特定遺贈による所有権の移転の登記については、添付情報として、農業委員会の許可を受けたことを証する情報の提供をすることを要せず、登記原因の日付は、民法第985条の規定により当該特定遺贈の効力が生じた日となる。なお、昭和43年3月2日付け民三第170号法務省民事局第三課長回答および昭和52年12月27日付け民三第6278号法務省民事局第三課長回答は、本通達により変更された(平成24年12月14日民二第3486号民事局長通達)。

【条文】農地法施行規則第15条第5号

(農地又は採草放牧地の権利移動の制限の例外)
第十五条 法第三条第一項第十六号の農林水産省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 (省略)
二 (省略)
三 (省略)
四 (省略)
五 包括遺贈又は相続人に対する特定遺贈により法第三条第一項の権利が取得される場合


十三(省略)

平成24年12月14日改正農地法以前は、「特定遺贈による農地の移転については、包括遺贈による農地の移転とは異なり、農業委員会または都道府県知事の許可を受ける必要がある(昭和43年3月2日付け民三第170号法務省民事局第三課長回答および昭和52年12月27日付け民三第6278号法務省民事局第三課長回答)」とされていました。

(2)相続人以外の者に対する特定遺贈

相続人以外の者に対して、特定の農地を遺贈する旨の遺言をした場合には、農地法の許可が必要であると聞いたのですが、本当ですか

相続人以外の者に対して、特定の農地を遺贈する旨の遺言をした場合には、平成24年12月14日改正農地法以前と同様に、農地法の許可を得る必要があります。

(3)相続人以外の者に対する包括遺贈

相続人以外の者に対して、包括遺贈をした場合には、農地法の許可が不要であると聞いたのですが、本当ですか

相続人以外の者に対して、包括遺贈をした場合には、農地法の許可は不要です(農地法施行規則第15条第5号)。

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