【完全網羅版】登記原因証明情報の特別委任方式に関する統合Q&A集[260225版]
内容の概要
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令和8年(2026年)3月1日より、不動産登記のフルオンライン申請を促進するため、「登記原因証明情報の特別委任方式」の運用が開始されました。この制度は、一定の要件を満たす場合、司法書士(または司法書士法人)が登記義務者から登記原因証明情報の作成について「特別の委任」を受け、自ら登記原因となる事実を確認して作成・電子署名した電磁的記録を、登記義務者本人の電子署名がなくても適式な登記原因証明情報として取り扱うものです。
【主なポイント】
対象者: 司法書士および司法書士法人のみ(※弁護士や複数の司法書士による合同事務所形態は対象外)。
対象となる登記: 共同申請による、売買・贈与を原因とする所有権(共有持分を含む)移転登記、および抵当権(根抵当権を含む)の設定・抹消登記。
委任の要件: 委任情報(書面も可)に、登記原因となる予定の事実を具体的に特定し、特定の司法書士が作成名義人となって登記原因証明情報を作成する旨の「特別の委任」が明示されていること。
事実の確認と作成: 特別の委任を受けた司法書士自身が、契約・決済への立会いや聴取等の相当な方法により事実確認を行い、その確認方法を記録したデータに自ら電子署名すること(※他の司法書士等への確認委任は不可)。
その他の要件: 申請情報に「特別委任方式」である旨を記録すること。また、原則として登録免許税が電子納付されていること(口座の金額上限超過等で電子納付できない特段の事情がある場合を除く)。
これまで、代金決済後に登記義務者へ電子署名を求めることが実務上困難であることが、フルオンライン申請を阻む要因となっていました。本方式の導入により、この課題が解消され、書面の原本提出等に頼らない完全なオンライン申請をより円滑に行うことが可能となります。
なお、以下、「登記原因証明情報の特別委任方式に関するQ&A(日本司法書士連合会)」を(日司連Q&A)といい、「司法書士等が電子申請の方法により権利に関する登記の申請をする場合における電磁的記録で作成する登記原因証明情報の取扱い(特別委任方式)に関する質疑事項集」を(質疑事項集)といいます。
1. 対象者・事務所形態について
Q1-1:特別委任方式の要件
Q: 特別委任方式を利用できる要件は?
A: 下記の表のとおりになります(日司連Q&A)
| □ | 司法書士等が代理人として電子申請(特例方式を含む)すること |
| □ | 登記の目的が次のいずれかであること ① 売買又は贈与を登記原因とする所有権(共有持分を含む)の移転の登記 ② 抵当権(根抵当権を含む)の設定又は抹消の登記 |
| □ | 司法書士等が、登記義務者から、登記原因証明情報の作成名義人となることにつ いて具体的な内容まで含めた特別の委任を受け、その旨が委任情報に記録されて いること |
| □ | 司法書士等が、委任に基づいて自らが確認した登記原因となる事実等を記録した 登記原因証明情報を電磁的記録で作成し、電子署名をしていること |
| □ | 確認方法が、契約の締結や金銭の授受の現認、登記義務者からの聴取その他の相 当と認められる方法であること |
| □ | 登記原因証明情報を作成した司法書士等が、代理人としてその登記原因に基づく 登記を申請し、その添付情報として当該登記原因証明情報を提供していること |
| □ | 申請情報に特別委任方式である旨が記録されていること |
| □ | 登録免許税が電子納付の方式により納付されていること |
Q1-2:特別委任方式の記載例
Q: 特別委任方式の記載例は?
A: 下記のページをご覧ください。
Q1-3:対象となる資格者の範囲
Q: 特別委任方式を利用できる「司法書士等」とは誰を指しますか?弁護士は対象ですか?
A: 司法書士および司法書士法人のみです。現時点では弁護士は対象外ですが、今後弁護士会から同様の要望が寄せられた場合には、同様のスキームで対応することが可能かどうかを検討することとされています。(日司連Q&A・質疑事項集)
Q1-4:合同事務所の取扱い
Q: 複数の司法書士が合同で事務所を開設している「合同事務所形態」の場合、司法書士法人と同様の取扱いは認められますか?
A: 認められません。合同事務所形態は、それぞれの司法書士が独立して司法書士業務を行っているものであり、司法書士法人とはその性質が異なることから、司法書士法人と同様の取扱いはできません。(質疑事項集)
Q1-5:復代理人の可否
Q: 代理人には「復代理人」は含まれますか?
A: 含まれません。復代理人や代理人の使者は、登記義務者からの直接の委任関係がなく、本方式による作成はできません。(日司連Q&A)
2. 対象となる登記・申請手続について
Q2-1:対象となる登記の目的
Q: 対象となる登記の目的は何ですか?
A: 共同申請による以下の登記に限られます。
①売買又は贈与を登記原因とする所有権(共有持分を含む)の移転登記
②抵当権(根抵当権を含む)の設定又は抹消の登記
※交換や寄付による移転、抵当権の変更、住所変更などは対象外です。(日司連Q&A)
Q2-2:仮登記・本登記の取扱い
Q: 売買・贈与による「仮登記」や、「仮登記の本登記」は対象になりますか?
A: いずれも対象外です。(日司連Q&A)
Q2-3:報告形式以外の証明情報
Q: 遺言書に基づく所有権移転登記など、報告形式以外の登記原因証明情報でも利用できますか?
A: 利用できません。本方式は「報告形式」の登記原因証明情報に関する取扱いであるため、一定の形式による情報提供が必要な登記は対象外となります。(日司連Q&A)
Q2-4:共有者の一部のみの適用
Q: 登記義務者が複数いる場合、一部の共有者のみを特別委任方式とすることは可能ですか?
A: 可能です。例えば、共有者甲のみを特別委任方式とし、乙については乙自身が作成(署名又は記名押印)した報告形式の登記原因証明情報を添付して申請することができます。(日司連Q&A・質疑事項集)
Q2-5:三為契約・地位譲渡の場合
Q: 第三者のためにする売買契約(三為契約)や買主の地位譲渡による移転の場合、適用はありますか?
A: 適用があります。第三者のために契約をした者や地位の譲渡人(登記義務者に準じて扱われる者)から特別の委任を受け、事実確認をした上で作成します。ただし、これらの者は不動産登記法上の登記義務者ではないため、委任情報を法務局へ提供する必要はありません。(日司連Q&A)
3. 委任情報(特別の委任)について
Q3-1:委任情報の媒体(電磁的記録と書面)
Q: 委任情報は電磁的記録(電子委任状)である必要がありますか?
A: 書面も含まれます。フルオンライン申請促進の観点からは電磁的記録が望ましいですが、実務の現状を踏まえ書面も許容されています。(日司連Q&A)
Q3-2:委任状の記載事項(特別の委任の明示)
Q: 委任状の記載事項として「登記申請に関する一切の件」とあれば足りますか?
A: 足りません。登記原因となる予定の事実等を具体的に特定した上で、「司法書士何某が作成名義人となって登記原因証明情報を作成することに関する一切の件」などと具体的に明示する必要があります。(日司連Q&A)
Q3-3:法律行為の予定日の記載方法
Q: 法律行為の予定日を「7月中」などと記載してもよいですか?
A: 認められません。日を特定しない概括的な表記では要件を満たさないと判断されます。(日司連Q&A・質疑事項集)
Q3-4:委任状の分割作成
Q: 登記申請の委任状と、特別委任の委任状を別々に作成・添付してもよいですか?
A: 差し支えありません。一つの委任情報に併せて記載されるのが通常ですが、別々の情報として提供しても受理されます。(日司連Q&A・質疑事項集)
Q3-5:委任情報の作成時期と特段の事情
Q: 委任情報の作成時期は「登記原因が生じた日から1か月以内」が原則ですが、特段の事情(海外居住、農地法許可等)がある場合はどうなりますか?
A: 個別に判断されます。海外居住者ならパスポートなどの添付で郵送等に期間を要することが確認でき、農地法許可なら許可証の記載日で確認できるため、1か月を超えても適式と認められる場合があります。(日司連Q&A・質疑事項集)
Q3-6:予定日が変更になった場合
Q: 委任状作成後に予定日が変わった場合でも、作成日から1か月以内なら有効ですか?
A: 有効です。登記原因証明情報に変更となった旨を記載することで要件を満たします。(日司連Q&A・質疑事項集)
Q3-7:登記原因発生後の委任状作成
Q: 登記原因が生じた「後」に作成された委任状でも認められますか?
A: 認められます。(質疑事項集)
Q3-8:法定代理人からの委任
Q: 登記義務者の法定代理人から特別の委任を受けることはできますか?
A: 可能です。作成名義人となれる法定代理人には適用されます。(日司連Q&A)
Q3-9:委任者の死亡と代理権不消滅
Q: 特別の委任を受けた後、登記原因証明情報を作成する前に委任者(登記義務者)が死亡した場合はどうなりますか?
A: 登記原因が発生した「後」に死亡したのであれば、代理権不消滅(不登法第17条)の適用によりそのまま作成可能です。ただし、登記原因が発生する「前」(農地法許可前など)に死亡した場合は、事実確認ができないため、改めて相続人から特別の委任を受け直す必要があります。(日司連Q&A・質疑事項集)
4. 事実確認と登記原因証明情報の作成について
Q4-1:事実確認の第三者への委任
Q: 事立確認を他の司法書士や第三者に任せることはできますか?
A: できません。特別の委任を受けた司法書士自身が確認する必要があります。共同事務所の他の司法書士であっても不可です。(日司連Q&A)
Q4-2:司法書士法人の場合の電子署名
Q: 司法書士法人の場合、電子署名は誰が行いますか?
A: 司法書士法人の電子署名に加え、実際に事実確認を行った社員または使用人である司法書士個人の電子署名の両方が必要です。(日司連Q&A)
Q4-3:具体的な事実確認の方法
Q: 具体的な事実確認の方法としては何が認められますか?
A: (1)契約・代金決済への立会い、(2)登記義務者から提供された契約書の確認、(3)登記義務者からの直接の聴取などが相当と認められます。他方で、登記権利者からの聴取や登記権利者が作成した資料のみによる確認は不相当とされます。(日司連Q&A)
Q4-4:電子署名の日付
Q: 作成した登記原因証明情報の電子署名の日付が、登記原因の発生日より「前」でもよいですか?
A: 認められません。必ず登記原因が発生した後に作成・署名する必要があります。(質疑事項集)
Q4-5:申請情報との一体署名
Q: 申請情報と登記原因証明情報を一体として電子署名できますか?
A: できません。本人確認情報と同様の取扱いであり、別々に作成・署名する必要があります。(日司連Q&A)
5. 他制度との関係・オンライン申請実務について
Q5-1:特例方式と特別委任方式の違い
Q: 特例方式(書面添付の特例)と特別委任方式の違いは何ですか?
A: 特例方式は「申請方式の特例」であるのに対し、特別委任方式は「添付情報の特例」です。特別委任方式では、司法書士の電子署名付き電磁的記録を提出するため、特例方式で求められる「書面をPDF化したデータ(作成者の電子署名不要)」の提供は不要となります。(質疑事項集)
Q5-2:本人確認情報との関係・一体化
Q: 本人確認情報の提供をもって、特別委任方式による登記原因証明情報の提供を兼ねる(または一体化する)ことはできますか?
A: できません。両者は性質が異なるため、本人確認情報の提供のみで要件を満たすことはなく、一体化した記録を作成することも混乱を招くため相当ではないとされています。ただし、本人確認情報を提供する登記で本方式を「併用」することは可能です。(日司連Q&A・質疑事項集)
Q5-3:わかれ取引での利用
Q: わかれ取引(複数の司法書士が関与)の場合、特別委任方式は使えますか?
A: 「共同代理方式(義務者代理人と権利者代理人が共同して申請)」であれば使えます。「復代理方式(義務者代理人が権利者代理人に復代理する)」では、登記原因証明情報を作成した司法書士自身が申請代理人になるという要件に適合しないため利用できません。(日司連Q&A)
Q5-4:特例方式への切り替え(本人署名版の利用)
Q: 特別の委任を受けたにもかかわらず、登記義務者本人が署名した原因証明情報を用いて「特例方式」で申請してもよいですか?
A: 可能です。特例方式で申請すること自体は当然にあり得るものと考えられています。(日司連Q&A)
Q5-5:提出後の補正
Q: 申請後、特別委任方式で提出した情報に不備があった場合、司法書士自身で補正できますか?
A: 可能です。特例方式のPDF補正は原則不可ですが、特別委任方式においては、特別に受けた委任の範囲内である限り、作成者である司法書士自身が補正を行うことができます。(日司連Q&A・質疑事項集)
Q5-6:申請情報への記録方法
Q: 申請情報には特別委任方式であることをどのように記録しますか?
A: 申請情報の添付情報欄に「登記原因証明情報(特別委任方式)」などと記録します。記録がない場合、登記官から特別委任方式に基づくものかどうかの確認や、補正の指示が入ることがあります。(日司連Q&A)
6. 登録免許税・運用開始日について
Q6-1:電子納付の上限超過時の対応
Q: 金融機関の口座設定の上限を超えてしまい、登録免許税の電子納付ができない場合は、特別委任方式の利用はできますか?
A: 「登録免許税を電子納付することができない場合」の例外に該当し、本方式の利用が可能です。登記官が上限を確認したり、申請情報等に電子納付できない理由を記載させたりする必要はなく、電子納付がされていないという理由だけで却下されることはありません。(日司連Q&A・質疑事項集)
Q6-2:運用開始日(令和8年3月1日)の取扱い
Q: 運用開始日は令和8年3月1日(日)ですが、3月1日に登記原因証明情報を作成し、3月2日(月)に申請することは可能ですか?
A: 可能です。(質疑事項集)

