連載第1回:民事裁判デジタル化で変わる「訴訟委任状・必要書類」の実務

【司法書士のための民事裁判デジタル化[1回]】

 明日、令和8年5月21日から民事裁判手続のデジタル化(フェーズ3)が全面施行されます。この連載記事では、新人司法書士の皆さんや司法書士受験生の皆さんのために、実務の現場で直面する変更点を備忘録としてまとめていきます。

 第1回のテーマは、裁判業務の入り口となる「訴訟委任状と必要書類」です。これまでの「書面(紙)による提出」の時代から実務がどう変わったのか、特に「簡裁代理」と「本人訴訟支援」での違いに着目して整理しておきましょう。

連載第1回:デジタル化で変わる「訴訟委任状・必要書類」の実務

民事訴訟法の改正にともない、訴訟代理人が訴えを提起する場合は裁判所の専用システム(mints)を用いたオンライン申立てが義務化されました 。 これにともない、依頼者からいただく委任状や裁判所に提出する付随書類の手続きが、書面提出時代とは大きく異なっています

業務への関わり方(簡裁代理か、本人訴訟支援か)によって必要書類が全く異なりますので、実務上のトラップに引っかからないよう注意しましょう

1. 「簡裁代理」の場合:記載内容は従前のとおり、ただし原本は事務所保管

簡易裁判所の管轄(訴額140万円以下)で、司法書士が「簡裁訴訟代理等関係業務」として関与する場合です

  • 訴訟委任状の記載内容は従前のとおり
    • 代理権の範囲や委任事項など、委任状に記載する文章自体はこれまでの書面時代と変わりません。
    • 下記の訴訟委任状はアコム株式会社に対する過払い金返還請求事件になります。
  • 提出はPDFアップロード、原本は手元に置く
    • 紙で作成してもらった委任状をスキャンしてPDF化し、mints上にアップロードして提出します 。オンライン申立ての場合、紙の委任状の原本を裁判所に提出する必要は原則としてなくなりました 。
  • 【注意】原本の破棄は絶対NG
    • 「原本提出不要」ですが、裁判所から提示を求められる可能性があるため、預かった原本は事務所で厳重に保管しておく義務があります 。
訴訟委任状
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2. 「本人訴訟支援(書類作成者)」の場合:ここが最大の変更ポイント!

地方裁判所の管轄や訴額超過などで、司法書士が「裁判書類等作成関係業務」として関与し、mints上で「サポータ」として書類を提出する場合です

書面提出の時代は「送達場所の届出書」を1枚出しておけば、司法書士事務所宛てに裁判書類が届いていました。しかし、デジタル化以降はこの仕組みがガラリと変わり、複数のデジタル対応書類が必要になります

本人訴訟支援の場合、これまでの「送達場所の届出書」に代わり、以下の書類をセットで提出することになります 。

サポータ(書類作成者)に必要な5つの書類

  1. 事実行為の委任状(手続冒頭のみ) 「システム(mints)への入力・提出」という、司法書士が行う事実行為そのものを委任されたことを証明する書類です 。
  2. システム送達を受ける旨の届出 裁判所から出される書類(電子判決書など)を、郵送ではなくmints(オンライン)上で受け取ることを希望・同意するための届出です 。
  3. システム送達受取人の届出 オンラインで届く裁判書類を、サポータである司法書士自身が責任を持って受け取る(ダウンロード等を行う)ために指定する書類です 。
  4. 送達場所等の届出 万が一、システム障害等でオンライン送達が利用できず、裁判所から「書面(紙)」で書類が送られてくる場合に備え、従来通り司法書士事務所を送達場所に指定するための届出です 。
  5. 入力依頼書(申立・提出のたびに毎回必要) 民事訴訟規則第52条の11第1項に基づく「依頼書」のことです 。これは手続冒頭だけでなく、答弁書や準備書面など、サポータとしてmintsに書類をアップロードするたびに、毎回毎回添付して提出しなければならない実務上きわめて重要な書類です 。

💡 実務のヒント

これらの書式テンプレートは、最高裁判所の公式ウェブサイト内にある「民事裁判手続きのデジタル化に関係する資料(外部リンク)」ページからダウンロードが可能です。実務に出る際は必ず最新の書式を確認し、事前にひな形として用意しておきましょう。

🎓 新人・受験生へのアドバイス

  • 受験生の皆さんへ: 「代理人」として動く場合と、「使者・サポータ」として動く場合とで、システムへのログインや必要書類の規律が細かく分かれている点に注目してください 。実務家登用試験である口述試験などでも、こうした「オンラインにおける権限証明の考え方」は非常に現代的なテーマと言えます 。
  • 新人司法書士の皆さんへ: 地裁案件の書類作成(本人訴訟支援)をシステムで行う場合、冒頭の「事実行為の委任状」だけでなく、その後の書面提出ごとの「入力依頼書」の貰い忘れにくれぐれも注意しましょう 。依頼者との打合せの段階で、あらかじめ複数枚の入力依頼書(または各書面用の依頼書)に署名・押印をいただいておくなど、事務所ごとのワークフローを組み立てておくのが効率的な実務のコツです 。

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