自動車の残価設定ローンと自己破産

残価設定ローンの車を残して自己破産は可能ですか?

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相談者

《質問》残価設定ローンの車を残して自己破産は可能ですか?

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司法書士

《回答》残価設定ローンの車を残して自己破産はできません。もっとも、特定の条件下では可能性が残されています。鍵となるのは「所有権留保」の存在と、それをいかに解消するかです。自己判断で行動すると、破産手続き自体が失敗に終わる重大なリスクも伴います。

当事務所は、過払い金請求消滅時効の援用・任意整理自己破産個人再生を含む債務整理業務に15年以上のキャリアをもつ司法書士中嶋剛士が電話相談・面談・交渉、業務終了まで直接皆様の担当をさせて頂きます。安心してお任せ頂けたらと思います。

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本記事のポイント

  1. 残価設定ローンの車は、完済までローン会社の所有物であり、自己破産をすると原則として引き揚げられます。
  2. 例外的に車を残す方法として「第三者弁済」がありますが、ローン完済後に車の価値が20万円を超える場合は、さらに金銭の支払いが必要になるという二段階のハードルがあります。
  3. 自己判断でローンを支払い続けたり(偏頗弁済)、名義変更をしたり(財産隠し)する行為は、破産が認められなくなるだけでなく、犯罪に問われる可能性もある絶対的な禁止行為です。
  4. 車の維持を最優先するならば、自己破産ではなく「任意整理」という手続きを選択する方が現実的です。

なぜ残価設定ローンの車は手放すことになるのか?

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相談者

《質問》そもそも残価設定ローンとは?

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司法書士

《回答》残価設定ローンは、数年後の下取り価格(残価)をあらかじめ車両本体価格から差し引き、残りの金額を分割で支払う仕組みです 。月々の支払額を抑えられるため人気がありますが、法的には大きな特徴を持っています。それは、ローンを完済するまでの間、車の所有権はディーラーや信販会社に「留保」されているという点です 。

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相談者

《質問》残価設定ローンで買った車は、自分の車ではないのですか?

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司法書士

《回答》契約者は車を日常的に使用し、保険やメンテナンスの責任を負う「使用者」ではありますが、法律上の「所有者」ではありません 。このため、多くの人が「自分の車」だと感じていても、法的な現実は異なります。自己破産のような法律手続きでは、この「誰が法的な所有者か」という点が絶対的な基準となり、日常的な使用感や感覚は考慮されません。この所有権留保は、ローン会社が代金未払いのリスクに備えるための強力な担保として機能しているのです 。

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相談者

《質問》自動車の所有権留保があると、どうなるの?

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司法書士

《回答》自己破産の手続きを開始すると、原則としてすべての債務の支払いを停止します。これには当然、残価設定ローンも含まれます 。支払いが停止されると、ローン契約の不履行となり、所有権留保特約が発動します。これにより、法律上の所有者であるローン会社は、「別除権」という破産手続きとは別の強力な権利を行使して、車両の引き揚げを要求できます 。この別除権は、他の一般債権者よりも優先される権利であり、破産管財人(破産者の財産を管理・処分する人)も、この引き揚げ要求に原則として応じなければなりません 。つまり、自己破産手続きが始まると、車は「破産者の財産」として処分されるのではなく、「ローン会社の財産」として所有者のもとへ返還される、という流れになります。これが、残価設定ローンの車が原則として手元に残せない根本的な理由です。

所有権留保があるかどうかの判断法?

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相談者

《質問》自動車の所有権留保があるかないか、わからないのですが、どうすればいいですか?

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司法書士

《回答》ご自身の車が所有権留保の対象となっているかを確認するには、まず自動車検査証(車検証)を見ることが最も簡単です。普通自動車の場合、車検証の「所有者の氏名又は名称」の欄に、ディーラーや信販会社(例:トヨタファイナンス株式会社など)の名前が記載されていれば、所有権留保が付いていると判断できます 。

注意

軽自動車の場合は、所有権留保が付いていても使用者本人の名義が所有者欄に記載されていることがあるため、車検証だけでは判断できません 。その場合は、ローン契約書を確認し、「所有権留保」に関する条項があるかどうかを調べる必要があります 。

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相談者

《質問》マイカーローンで自動車を購入したのですが、所有権留保はありますか?

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司法書士

《回答》銀行系のマイカーローンの場合は、車そのものを担保としない無担保ローンであることが多く、所有権留保が付いていないのが一般的です 。この場合、車の所有者は当初から本人名義になっているため、自己破産をしてもローン会社に車を引き揚げられることはありません。ただし、後述する「財産価値」の問題は残ります。このように、どの金融機関からどのような種類のローンを組んだかが、最初の大きな分かれ道となります。

自己破産でも車を残せる場合

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相談者

《質問》残価設定ローンの自動車は自己破産をすると場合、残せないのですか?

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司法書士

《回答》車を残すための最も現実的かつ正当な方法は、「第三者弁済」です 。これは、破産者本人ではなく、ご両親や兄弟、親しい友人など、第三者がその方の固有の財産(給与や預貯金など)から、残っている自動車ローンを一括で返済する方法です 。破産者本人の財産から返済すると、特定の債権者だけを優遇する「偏頗弁済」という禁止行為にあたりますが、第三者が自身の財産で肩代わりする分には、破産者の財産が減るわけではないため、原則として問題視されません 。この弁済によりローンが完済されれば、ローン会社の所有権留保は解除され、車の所有権を本人に移すことが可能になります 。ただし、この方法を実行する際には、資金の出所が本当に第三者のものであることを客観的に証明する必要があります。例えば、破産者が第三者にお金を渡して返済を依頼するような行為は、財産隠しとみなされる重大なリスクを伴います 。そのため、弁済は銀行振込など記録が残る形で行い、その原資が第三者固有のものであることを破産管財人に明確に説明できるようにしておくことが極めて重要です 。

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相談者

《質問》第三者弁済をすれば、残価設定ローンの自動車は残せるということですか?

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司法書士

《回答》第三者弁済によってローンを完済し、車の所有権が本人に移ったとしても、それで安心できるわけではありません。ここから第二のハードルが待ち受けています。ローンがなくなった車は、完全に「破産者本人の財産」として扱われるため、今度は自己破産における財産処分のルールが適用されるのです。多くの裁判所では、個別の財産の価値が20万円以下であれば、生活に必要な「自由財産」として手元に残すことが認められています 。したがって、第三者弁済後の車の査定額が20万円未満であれば、そのまま所有し続けることが可能です。しかし、車の査定額が20万円を超える場合は、その車は換価(売却)処分の対象となるのが原則です 。この場合、車を手元に残すためには、その査定額に相当する金銭を破産管財人に支払うことで、財産の中からその車を買い戻すような手続き(自由財産の拡張)が必要になることがあります 。つまり、第三者弁済は問題を二段階で解決する必要があるのです。第一段階でローンを完済し、第二段階で車両価値の問題をクリアする。もし車の価値が高ければ、ご家族はローン残債の支払いに加え、さらに車両価値相当額の支払いという二重の負担を強いられる可能性があることを、十分に理解しておく必要があります。

注意

極めて稀なケースですが、ローン会社側の手続き不備を突いて車を残せる場合があります。所有権留保が法的に有効であるためには、ローン会社がその権利を第三者(この場合は破産管財人)に主張できるための要件、すなわち「対抗要件」を備えている必要があります 。自動車の場合、この対抗要件は通常、車検証の所有者欄にローン会社の名前が登録されていることです 。もし何らかの理由で登録が本人名義のままになっているなど、ローン会社が対抗要件を備えていない場合、その所有権留保は破産管財人に対して無効となる可能性があります。その結果、破産管財人はローン会社の引き揚げ要求を拒否し、車を破産財団に組み入れることができます 。しかし、これは契約内容や判例の解釈が絡む非常に専門的かつ高度な判断を要する領域です。安易に自己判断せず、必ず法律の専門家に契約書と車検証を精査してもらう必要があります。

人生の再建を危うくする「絶対的禁止行為」

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相談者

《質問》残価設定ローンの自動車を絶対に残したいです。どうにかできませんか?

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司法書士

《回答》車を残したいという一心で、法律が固く禁じている行為に手を出してしまうと、借金の免除が受けられなくなるばかりか、犯罪に問われる可能性さえあります。

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相談者

《質問》残価設定ローンだけを先に完済してはいけませんか?

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司法書士

《回答》自己破産手続きの根底には、「債権者平等の原則」という大原則があります。これは、すべての債権者を公平に扱わなければならないというルールです。この原則があるため、破産を決意した後に、特定の債権者(この場合は自動車ローン会社)にだけ優先的に返済する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」として固く禁じられています 。「車だけは守りたい」という気持ちからローンを支払い続けることは、他の債権者への返済を停止している以上、著しく公平性を欠く行為です。これが発覚した場合、裁判所が借金の免除を認めない「免責不許可事由」の典型例とされ、自己破産が失敗に終わる最大の原因となります 。さらに、破産管財人はその返済を無効にする「否認権」を行使し、ローン会社に対して支払われた金銭の返還を求めることさえあります 。良かれと思った行為が、手続き全体を台無しにしてしまうのです。

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相談者

《質問》残価設定ローンだけを先に完済して、自動車を親族の名義にしてはいけませんか?

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司法書士

《回答》「財産隠し」になるのでダメです。自己破産の申し立て直前に、車を取られないようにと家族や友人の名義に書き換える行為がこれにあたります 。このような行為は、債権者の利益を害する「詐害行為」や「財産隠匿」とみなされ、免責不許可事由に該当します 。しかし、その影響はそれだけにとどまりません。悪質な財産隠しは「詐欺破産罪」という犯罪に該当する可能性があり、その場合は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科される重罪です 。そして、この罪は名義変更に協力した家族や友人も共犯として処罰の対象になりえます 。破産管財人は、破産者の財産状況を徹底的に調査する権限と義務を負っています。預金通帳の入出金履歴や過去の資産状況などから、不自然な名義変更は高い確率で発覚します 。軽い気持ちで行った名義変更が、ご自身だけでなく、協力してくれた大切な人をも巻き込む深刻な事態を招くことを、決して忘れてはなりません。

自己破産以外の選択肢

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相談者

《質問》残価設定ローンの自動車を絶対に残したいです。自己破産以外には方法はないですか?

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司法書士

《回答》借金問題の解決方法は、自己破産だけではありません。ご自身の最も優先したい目的が何かによって、選ぶべき手続きは変わってきます。「車の維持」が最優先事項であるならば、自己破産以外の選択肢を検討する方が賢明な場合があります。例えば、任意整理によって、借金問題の解決ができる可能性があります。

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相談者

《質問》任意整理とは、どのような手続ですか?

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司法書士

《回答》もし「どうしても今の車を手放したくない」ということが絶対条件であれば、「任意整理」が最も有効な解決策となる可能性があります。任意整理は、裁判所を介さず、司法書士などの専門家が代理人となって各債権者と個別に交渉し、将来利息のカットや返済計画の見直しを行う手続きです 。任意整理の最大の特徴は、交渉する相手(債権者)を自由に選べる点にあります 。したがって、自動車ローンは手続きの対象から外し、これまで通り支払いを継続する一方で、クレジットカードやカードローンなどの他の借金についてのみ返済の減額交渉を行う、という戦略が可能です 。これにより、所有権留保を発動させることなく、合法的に車を手元に残しながら、他の借金の負担を軽減することができます。

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相談者

《質問》個人再生という手続は、住宅ローンを残したまま手続ができるようですけど、自動車のローンにも適用できませんか?

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司法書士

《回答》個人再生には「住宅ローン特則」という制度があり、一定の条件下で自宅を残すことは可能ですが、自動車ローンには同様の特別な保護規定は存在しません 。

当事務所は、過払い金請求消滅時効の援用・任意整理自己破産個人再生を含む債務整理業務に15年以上のキャリアをもつ司法書士中嶋剛士が電話相談・面談・交渉、業務終了まで直接皆様の担当をさせて頂きます。安心してお任せ頂けたらと思います。

当事務所では債務整理に関する相談は初回無料ですので、他の事務所で任意整理を断れた場合でも、当事務所に相談してみて下さい。もし相談をご希望の皆様は、下記をクリックして気軽にお問合せ(メール・電話)ください。

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