連載第4回:mints提出なのにFAX指示!?「期日直前の書面提出」がNGな理由と「ダウンロードの催促」の実務
連載第4回:mints提出なのにFAX指示!?
今回【連載第4回】は、前回の「被告事件の対応フロー」の続編として、実務で実際に直面した「mintsで答弁書を提出したにもかかわらず、裁判所から原告側へ連絡(FAX)してほしいと言われたケース」を取り上げます。
なぜデジタル化(フェーズ3)後も期日直前の提出はNGなのか、また、従来の「受領書の催促」に代わって必要となる「ダウンロードの催促」という新しい実務対応について解説します。
1. 発端:双方がmints利用なのに、なぜ裁判所から「原告へのFAX」を求められたのか?
前回の記事で解説したとおり、原告・被告の双方がmintsを利用(システム送達を受ける旨の届出を提出)している事件では、被告代理人がmints上に答弁書(PDF)をアップロードすれば、システムを通じて原告側へ自動的に通知メールが飛び、原告側がそれを閲覧・ダウンロードすることで受領が完了します。したがって、従来の「相手方へのFAX直送」や「受領書のやり取り」は不要です。
ところが先日、当事務所が被告代理人としてmintsで答弁書をアップロードした事案において、裁判所から連絡を受けた場面がありました。
その原因は、「答弁書の提出が第1回期日の1週間前を切っていたこと」、そして「原告側がmints上のデータをダウンロード(閲覧)していなかったこと」の2つが重なったためでした。
① 「直送」は相手方が閲覧・ダウンロードして初めて完了する
改正民訴法・民訴規則における電磁的記録のやり取りは、以下の2つに明確に分かれています。
- 裁判所による「システム送達」(訴状・判決書など): 相手方が閲覧・ダウンロードしない場合でも、通知メールの発出日から「1週間を経過した時」に送達の効力が生じます(民訴法109条の3第2項)。
- 当事者間の「システム直送(送付)」(答弁書・準備書面など): 答弁書や準備書面は「送達」ではなく、民事訴訟規則上の「直送(送付)」の対象です(民訴規則83条、47条の2第1項)。mintsを通じてシステム直送がされた場合、直送を受けた相手方は「閲覧または記録(ダウンロード)をした旨をファイルに記録しなければならない」と規定されており(民訴規則47条3項3号、47条の2第5項)、実務上は相手方がmints上でファイルを閲覧・ダウンロードした時点で受領記録がされ、直送が完了する仕組みになっています。
つまり、答弁書や準備書面のシステム直送においては、訴状などのシステム送達のような「1週間経過によるみなし到達」の規定がなく、相手方がmintsにログインして実際に閲覧・ダウンロードしない限り、いつまで経っても「直送が完了していない状態」が続いてしまうのです。
② そもそも「期日ギリギリの答弁書・準備書面の提出」がダメな理由
準備書面や答弁書は「相手方が準備をするのに必要な期間をおいて」提出しなければならず(民訴規則79条1項)、通常、第1回期日の呼出状では答弁書の提出期限が「期日の1週間前まで」と定められます(民訴法162条1項に基づく実務運用)。また、今回の法改正では審理の計画的進行を図るため、「定められた準備書面等の提出期間を徒過して提出した場合の説明義務」も新設されています(民訴法162条2項)。
期日の1週間前までに余裕をもって提出していれば、相手方も期日前に通知メールに気づいてダウンロードする時間があります。しかし、期日1週間前を切って(期日直前に)答弁書をアップロードすると、原告側がそれに気づかずダウンロードしないまま期日当日を迎えてしまうリスクが高まります。
3. 「受領書の催促」から「ダウンロードの催促」へ!裁判所の指示の真意とは
ここで重要なポイントがあります。 仮に、昔のように答弁書を原告へFAX送信したとしても、フェーズ3では「紙の受領書」をやり取りする制度自体がなくなっています。つまり、FAXで書面を送ったところで受領書が返ってくるわけではなく、結局は原告側がmints上でダウンロード(閲覧)してくれない限り、裁判所システム上の「未閲覧(直送未了)」の状態は解消されません。
したがって、期日直前に裁判所から「原告側にFAX等で連絡してほしい」と言われた場合、その実質的な意味は「書面をFAXして受領書をもらえ」ということではなく、「相手方がmintsを見ていないので、FAXや電話で『mintsからダウンロードしてください』と催促してほしい」という指示に他なりません。
かつての「受領書の催促」= 現在の「ダウンロードの催促」
- 書面・FAX時代(およびフェーズ2まで): 期日直前にFAX直送した際、相手方から受領書が返ってこなければ、電話等で「受領書を返送してください」と催促していました。
- mints時代(フェーズ3以降): 受領書は不要になりましたが、「相手方がmints上でダウンロード(閲覧)した履歴」が受領書代わりになります。そのため、期日直前に提出して相手方が未閲覧の場合は、電話やFAXで「mintsにアップロードしたのでダウンロードしてください」と催促する必要があります。
期日1週間前を切ってmints提出した際の実務対応
依頼者からの駆け込み受任などで、やむを得ず期日1週間前を切って答弁書や準備書面をアップロードした場合は、「mintsに上げたから終わり」と放置せず、必ず以下のフォローを行いましょう。
- アップロード後、速やかに相手方へ「ダウンロードの催促」をする
mintsにアップロードした直後(または翌日になっても動きがない場合)、相手方代理人の事務所へ電話やFAXで連絡し、「本日mintsに答弁書(準備書面)をアップロードしましたので、期日までにダウンロード(閲覧)をお願いいたします」と伝えます。相手方がログインして開いてくれれば、その瞬間にシステム直送が完了します。 - 期日極直前の場合は、FAXで書面自体も添えておく
期日当日や前日など、相手方代理人が外出中でmintsにすぐアクセスできない懸念がある場合は、「mintsにアップロード済みですのでダウンロードをお願いします。なお、期日直前のため念のため書面もFAXいたします」と送信票に書いてFAXしておけば、ダウンロードの催促と期日の空転防止(内容の事前共有)を同時に果たすことができます。
🎓 新人・受験生へのアドバイス
- 受験生の皆さんへ: デジタル化改正において、訴状などの「システム送達(民訴法109条の3)」と、答弁書や準備書面などの「システム直送・送付(民訴規則47条3項3号、47条の2第1項・第5項、83条)」の区別は非常に重要なポイントです。システム送達には「通知発出から1週間経過によるみなし送達」がありますが、システム直送は相手方が閲覧・記録(ダウンロード)してその旨がファイルに記録されることで完了します。「相手方がダウンロードしない限り直送が完了しない」という仕組みを、提出期間徒過の説明義務(民訴法162条2項)とあわせてしっかり整理しておきましょう!
- 新人司法書士の皆さんへ: 「フェーズ3で受領書が廃止されたから、もう相手方への催促業務はなくなった!」と思いきや、システム直送は相手方がダウンロードして初めて完了するため、期日直前の提出では「受領書の催促」が「ダウンロードの催促」に形を変えただけと言えます。まずは何より「期日の1週間前まで」に余裕をもって書面を提出することが大原則です。そして、どうしても期日1週間前を切ってしまったときは、裁判所から言われる前に、自分から相手方へ「ダウンロードのお願い」の連絡を入れることを事務所の鉄則にしておきましょう!


