【法改正】民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)について
目次:民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)
1.住所、氏名等の秘匿制度(令和5年2 月20 日施行)
訴えを提起したり、提起された方などがDVや犯罪の被害者であるケースなどで、その方やその法定代理人の住所、氏名等が相手方に知られることによって社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあるときは、裁判所の決定により、住所、氏名等を相手方にも秘匿することができる制度が創設されました。
住所、氏名等の秘匿制度とは
《質問》住所、氏名等の秘匿制度とは、どのような制度ですか。
《回答》当事者(訴えを提起したり、提起された方)等がDVや犯罪の被害者であるなど、当事者等や法定代理人が住所、氏名等を相手方に知られることによって社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあるときは、裁判所の決定により、住所や氏名等を相手方にも秘匿することができる制度です。
具体的には、裁判所の決定により、当事者等や法定代理人の住所や氏名を訴状等に記載しないことを認める措置や、住所や氏名等、これらを推知させる情報(事項)が記載された部分の閲覧等を制限する措置をとることができます。
住所、氏名等の秘匿制度が創設された背景
《質問》住所、氏名等の秘匿制度が創設された背景は、どのようなものですか。
《回答》現在の法令では、当事者や法定代理人の住所や氏名を訴状に記載しなければなりません。また、訴状以外にも、第三者が裁判所に提出した書面の中に、当事者等や法定代理人の住所や氏名が記載されている場合もあります。現在の法令では、相手方がこのような訴状や書面を閲覧等することを制限する制度はありませんでした。
そのため、例えば、性犯罪の被害者がその加害者を訴えるケースにおいて、被害者が作成した訴状を見て、加害者が、被害者の住所、氏名を知ってしまう事態があり得ました。また、例えば、DV等の被害者と加害者の間の訴訟において、被害者の住所調査の嘱託(依頼)を受けた第三者が提出した報告書の中に、被害者の住所等の情報が含まれていたために、加害者がその報告書を見て、被害者の住所を知ってしまう事態があり得ました。
そして、このような事態を危惧して、DV等の被害者が訴えの提起等をちゅうちょする場合があるとの指摘がありました。
住所、氏名等の秘匿制度をどう利用する?
《質問》住所、氏名等の秘匿制度は、どのように利用することができますか。
《回答》当事者等や法定代理人は、裁判所に対し、相手方にも秘匿してほしい住所、氏名等(秘匿事項)を書面(法律上は、秘匿事項届出書面と呼ばれています。)に記載した上で、秘匿決定の申立てをします。裁判所は、その要件(秘匿事項が相手方に知られることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること)がある場合には、秘匿決定をします。
秘匿決定がされると、訴状等には、住所、氏名を記載せずに裁判所が定める事項(代替事項)を記載すればよいことになります。提出されている秘匿事項届出書面についても、秘匿決定がされると秘匿決定の申立てをした方以外の者は見ることができません。
また、秘匿決定がされても、代替事項が記載されずに、住所や氏名等が記載された書面や、住所や氏名等を推知させる情報(ex. 住所の近くの学校の名前や、氏名を秘匿しているときの親戚の氏名)が記載された書面が提出されていることもあります。この場合には、その記載部分について、裁判所の決定により、秘匿決定の申立てをした方以外の者の閲覧等を制限することもできます。ただし、そのためには、秘匿決定の申立てとは別に、閲覧等の制限を求める申立てが必要となりますので、注意してください。
以上は、当事者等や法定代理人が秘匿の申立てをするケースですが、送達を実施するために、裁判所が被告等の住所等について調査嘱託を実施したケースでは、被告等の申立てがなくとも、裁判所は、その要件があると判断することができれば、その結果等の閲覧等を制限することもできます。
2.当事者双方がウェブ会議・電話会議により弁論準備手続期日・和解期日に参加する仕組み(令和5年3 月1 日施行)
裁判所に実際に出頭しなくても、ウェブ会議(映像と音声付きの方法)や電話会議を利用して弁論準備手続期日に参加することができるための要件が緩和され、また、和解期日でもウェブ会議や電話会議を利用することができるようになりました。
弁論準備手続について、どのような改正がされたのか
《質問》弁論準備手続について、どのような改正がされたのですか。
《回答》現在の法律では、ウェブ会議(映像と音声付きの方法)や電話会議を利用して弁論準備手続を実施するには、当事者のどちらか一方は裁判所に実際に出頭する必要がありましたが、改正法では、当事者双方ともに裁判所に実際に出頭せずに、ウェブ会議や電話会議により弁論準備手続に参加することができるようになりました。
また、改正法は、当事者が遠隔地に居住していないケースでも、ウェブ会議や電話会議を利用して、弁論準備手続に参加することができることも明確になるようにしています。
和解期日について、どのような改正がされたのか
《質問》和解期日について、どのような改正がされたのですか。
《回答》現在の法律では、ウェブ会議や電話会議により和解期日に参加することができませんでしたが、改正法では、和解期日についても、ウェブ会議や電話会議により期日に参加することができるようになりました。