【実務】この裁判は,ぜひ最高裁まで争っていただきたい

 認知症などの人の成年後見人になった司法書士による横領が相次いだため、業界団体が2015年から会員に後見制度利用者の財産状況や通帳の開示を求め、チェックを始めた。しかし、利用者への説明はない。プライバシー保護のため、司法書士が報告を拒否し、訴訟に発展したケースも出ている。不正防止とプライバシー保護の間で揺れている。 報告制度を導入したのは「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」(東京都)。

 東京都内の女性司法書士は担当する被後見人に、センターに通帳を見せることのメリット、デメリットを説明したうえで、意向を聞いた。担当する13人のうち、8人が見せたくないと答えた。

 女性司法書士は8人分を報告しなかったところ、今年3月、センターから業務改善命令を受けた。従わないとセンターを除名され、家庭裁判所への推薦を得られず、新規の後見業務ができない可能性がある。16年は11人が除名された。センターが家裁に提出する推薦名簿は約6200人の司法書士が掲載され、約4万件の後見業務を受けており、影響は大きい。

 このため、女性司法書士は6月23日、センターに対して、「報告は成年被後見人等のプライバシー権を侵害する。報告をしなかったことで除名されるのは無効」と、東京地裁に提訴した。

 女性司法書士が後見人を務める60代男性と保佐人になった70代女性に話を聞くところを取材した。男性は通帳の残高などの数字を理解できない。それでも言葉をかみ砕けば、会話はきちんとできる。「本人が何も言っていないんだから嫌だ」と言い、女性司法書士が「あなたのためにということでも?」と尋ねると顔の前で手を振り「見られない方がいい」とはっきり言った。女性も「見せない」と拒否した。重ねて「お金が無くならないように、見張るって言っても?」と尋ねると「知らない人にはいや」と答えた。

 司法書士の質問に、保佐を受ける女性は、情報を報告することについて「いやです」と書いた

 女性司法書士は「私が取り扱っている他人の情報を、本人の了解なく出せというのは納得できない。センターは了解を得るために努力をすべきだ」という。代理人の内田明弁護士は「本人が知られたくないことを情報提供されるのは問題だ。プライバシーを侵害している」と話す。

 成年後見業務に詳しい、佐藤彰一国学院大教授(権利擁護)は「後見人は職務上、守秘義務を負っている。目的や本人の同意に関わらず、家庭裁判所に開示を求める手続きをし、許可を得られて初めて閲覧できるもの」としたうえで「本来、不正を監督すべき役割は家裁」と指摘する。

 https://mainichi.jp/articles/20170629/ddm/013/040/004000c

 やっと,裁判をしてくれたのですね。なんで,プライバシーが大事だと主張している人は,裁判をしないのか不思議でした。

 私としては,『“成年後見業務に詳しい、佐藤彰一国学院大教授”が指摘しているとおり,「本来、不正を監督すべき役割は家裁」だが,その家裁が成年後見人等の不正を全て監督することは,家裁の裁判官や事務官(を雇う予算)の少なさから考えると,事実上不可能であり,公益社団法人であるリーガルサポートが,その不正の監督の一部を担うことによって,後見の実務が回っている』と考えているので,通帳の開示は,問題がないと思います。

 この裁判は,ぜひ最高裁まで争っていただいて,今後の司法書士業務と後見業務に,決着をつけてもらいたいですね。

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