登記識別情報の事前チェック

 登記申請の義務者が提供する登記識別情報を事前にチェックをする方法としては、二通りの方法があります。

 (1)登記識別情報そのものを法務局に提供して「有効性を確認」する方法と、(2)情報そのものは提供せず物件と受付番号等で特定して「不通知でないこと、失効していないこと」を確認する方法があります。後者はいわゆる「未失効証明」と呼ばれている方法です。

 

有効証明

 有効証明の最大の弱点は、登記識別情報が必要であるということです。それゆえ、実務上、有効証明は、ほとんど使用されません。

 不動産登記規則第68条ⅠⅡは、下記のように定めています。

(登記識別情報に関する証明)
第六十八条  令第二十二条第一項 に規定する証明の請求は、次に掲げる事項を内容とする情報(以下この条において「有効証明請求情報」という。)を登記所に提供してしなければならない。
一  請求人の氏名又は名称及び住所
二  請求人が法人であるときは、その代表者の氏名
三  代理人によって請求をするときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
四  請求人が登記名義人の相続人その他の一般承継人であるときは、その旨及び登記名義人の氏名又は名称及び住所
五  当該登記識別情報に係る登記に関する次に掲げる事項
イ 不動産所在事項又は不動産番号
ロ 登記の目的
ハ 申請の受付の年月日及び受付番号
ニ 第三項第一号に掲げる方法により請求をするときは、甲区又は乙区の別
六  第十五項の規定により同項に規定する情報を提供しないときは、その旨及び当該情報の表示
2  前項の証明の請求(登記識別情報が通知されていないこと又は失効していることの証明の請求を除く。)をするときは、有効証明請求情報と併せて登記識別情報を提供しなければならない。第六十六条の規定は、この場合における登記識別情報の提供方法について準用する。

 

不失効証明

 不動産登記事務取扱手続準則第40条では、下記のように定めています。

第40条 登記官は,令第22条第1項に規定する登記識別情報に関する証明の請求があった場合において,提供された登記識別情報が請求に係る登記についてのものであり,かつ,失効していないときは,請求に係る登記を表示した上,「上記の登記について平成何年何月何日受付第何号の請求により提供された登記識別情報は,当該登記に係るものであり,失効していないことを証明する。」旨の認証文を付すものとする。ただし,有効であることの証明ができないときは,次の各号に掲げる事由の区分に応じて,それぞれ当該各号に定める認証文を付して,有効であることの証明ができない理由を明らかにするものとする。
(1) 請求に係る登記があり,かつ,当該登記の登記名義人についての登記識別情報が失効していないが,当該登記の登記名義人についての登記識別情報と提供された登記識別情報とが一致しないとき。 「上記の登記について平成何年何月何日受付第何号の請求により提供された登記識別情報は,正しい登記識別情報と一致しません。」
(2) 請求に係る登記があるが,当該登記の登記名義人についての登記識別情報が通知されず,又は失効しているとき。 「上記の登記に係る登記識別情報が通知されず,又は失効しています。」
(3) 請求に係る登記があるが,請求人が登記名義人又はその一般承継人であることが確認することができないとき。 「別添の登記に係る平成何年何月何日受付第何号の登記識別情報に関する証明の請求については,請求人は,請求人としての適格があると認められません。」
(注)別添として,請求情報又は請求情報を記載した書面を添付する。
(4) 請求に係る登記がないとき。 「別添の登記に係る平成何年何月何日受付第何号の登記識別情報に関する証明の請求については,請求に係る登記はありません。」
(注)別添として,請求情報又は請求情報を記載した書面を添付する。
(5) 前各号の場合以外の理由により証明することができないとき。 これらの例にならって,例えば,登記手数料の納付がないなど具体的な理由を認証文に示して明らかにするものとする。
2 第126条第1項の規定は,前項の証明の請求書を受け付けた場合について準用する。

 

[疑問]分筆後の登記識別情報の不失効証明請求

 ある土地の分筆後の登記識別情報は、分筆前の従前の土地の取得のときの登記識別情報を使用します。したがって、分筆後の登記識別情報の不失効証明請求をする際の、不動産の表示は、従前の土地の所在・地番で請求するとも考えられます。しかしながら、従前の土地ではなく、分筆後の土地の不動産の表示で登記識別情報の不失効証明請求が可能なようです。たしかに、分筆は、合筆と異なり閉鎖される登記簿がなく、従前の土地の登記簿が、分筆後の一筆の登記簿に流用されます。したがって、その流用された一筆の土地については、分筆後の不動産の表示で登記識別情報の不失効証明請求が可能であると考えられなくもないです。しかし、従前の登記簿を流用されていない土地についても、分筆後の不動産の表示で登記識別情報の不失効証明請求が可能なようです。

 このような実務上の運用からすると、「分筆後に登記識別情報の失効の申出をする場合には、分筆後の不動産の一部を指定してできる」という結論になりそうですが、これでいいのでしょうか。非常にわかりにくい制度です。