商号変更

 会社の名称(会社法では「商号」といいます)は、会社の顔ともいうべき大事な決定事項です。商号は会社をつくる人のこだわりや思いが込もっているだけに、非常に迷う人が多くいます。
 参考までに、商号を決める際のパターンをいくつか紹介します。それぞれにメリット/デメリットがあるので、目的にあった商号を考えましょう。

1.個人の姓名をつける

 商号に創業者や代表者の姓名をつけて、自分のキャラクターをアピールするという方法があります。読み方の難しい名字はそれだけで、アピールポイントになります。もっとも、読み難い漢字ですと、ひらがなにして覚えてもらったり工夫が必要となります。一方で、あまり一般的な名字の場合は、ほかにも同じ商号の会社が存在する場合があるので、印象が薄くなりがちです。また、個人の姓名をつけた場合には、将来的に代表者が名字の違う人に交代する場合などにどうするかという問題が生じます(もっとも、ブランド化して、個人の名前を死後も使い続ける会社も存在します)。

2.業種、事業内容を入れる

 商号に業種や事情内容を入れることは非常に重要です。仮に、商号に業種や事情内容が入っていない場合、商号を見ただけでは何の事業をしている会社かわからないことがあります。商号に業種や事業内容を入れておくと、名刺を渡したときに説明をしなくても、商号を見ただけで何の会社かわかってもらえるというメリットがあります。初対面の際に商談がスムーズに進みやすいですし、自己紹介の時間を節約することにもなります。

3.地名を入れる

 BtoCの業種ですと、商号に地名を入れることは非常に大事になります。地名を商号に入れると、地域に密着して事業を展開していくことが、顧客に伝わりやすくなります。また、インターネットでの検索にも引っかかりやすくなります。一方で、全国展開する予定であったり、BtoCの業種であっても、ネット関係の業種ですと、地名を入れることで対象が絞られてしまうおそれがあります。

4.外国語を使う

 創業者の好きな言葉や業界用語を、英語やフランス語といった外国語にしたものを商号として使用するパターンです。お泗落で洗練された印象を与え、珍しい商号だと初対面の人に興味を持ってもらえるので、商号に込められた思いを説明するうちに話が盛り上がるかもしれません。一方で、商号の意味がわからなかったり、読めなかったり、何をしている会社か伝わりづらいというデメリットもあります。

【声に出してみる】

 商号は、何度も声に出して、チェックしてみましょう。名刺を渡して挨拶するところを想像しながら、声に出してチェックするのもよいでしょう。この声に出してチェックする、ということは非常に大事なことです。頭で考えたり、文字にするだけではわからない、デメリットが存在するかもしれないからです。
 極端な話をすると、例えば、多田野司法書士さんがいるとします。多田野司法書士さんは、自分の姓を事務所名にして、多田野司法書士事務所を開設しました。声に出してチェックしなかったのでしょう。そんな多田野司法書士の事務所にはじめて電話が鳴りました。多田野司法書士は、ハキハキした声で、電話に出ました。「はい、お電話ありがとうございます。タダの司法書士事務所です。」『おたくはタダの事務所なんですか?』「はい、タダの事務所です。」『そうか、じゃあ、あんたのとこに決めた!』「(?)はい、ありがとうございます。それでは・・・」っとなる可能性もあるのです。

 

ご依頼の流れ

1.事前相談・お見積り
 会社の定款など確認すべきことがございますので、まずはご連絡ください。ご連絡方法は、電話、メール、FAX等で対応しております。
2.打ち合わせ
 (1)商号には一定のルールがあります。また(2)登記をする際に使用できない文字もあります。さらに、(3)同じ住所で同じ商号の会社は登記できないなどの規制があります。 打ち合わせをしながら、じっくりと商号を考えていきましょう。
3.書類作成及び委任状に押印
 商号変更可能か、調査し、書類を作成します。書類が完成しましたら、委任状に押印をいただきます。この時に登記費用をお支払いただきます。
4.登記申請
 当事務所が登記を申請いたします。
5.登記完了
 登記はおおむね1週間前後で完了します。
6.書類のお渡し
 登記が完了しましたら登記関係書類をお客様にお渡しいたします。

 

商号変更の注意点

 まず、株式会社であれば、必ず商号の一部として「株式会社」という文字を使用しなければなりません。株式会社であるのに「合同会社」と表示するなど、ほかの種類の会社と誤認される名称を登記することもできません。さらに、「K.K.」,「Company Incorporated」,「Co.,Inc.」,「Co.,Ltd.」という文字を使用することはできません。これらの表記は、英語表記として、定款に定めます。

 また、一定の業種においては必ず使用しなければならない文字があります。銀行や信託銀行、保険会社などは、法律上、その業種を表す文字を商号の中に使用しなければなりません。また、逆に、それらの業種ではない会社が、「銀行」「信託」「保険」などといった文字を使用することはできません。

 さらに、文字については、漢字、平仮名、片仮名、ローマ字、数字を使用することができますが、()や「」などの記号は原則として使用ができません。

 なお、従来の商法では同一市区町村内で同業種の会社が同一または類似の商号を登記することはできませんでしたが、会社法では、この規制がなくなったため、まったく同じ住所でなければ同一または類似の商号を登記することができます。

 当然のことながら、公序良俗に反する商号は使用できません。また、不正な目的をもって他社と同一または類似の商号やブランド名を使用した場合には、商号の差止請求や損害賠償請求を受ける可能性がありますのでご注意ください。