【試験】2021年版-司法書士試験の口述試験~まだ「口述試験」で消耗しているの?
【目次】司法書士試験の口述試験
前回も言いましたが、司法書士試験は、筆記試験に合格したら、その後に口述試験があるものの、事実上、司法書士試験に合格したことと同義です。
さて、司法書士試験の口述試験は落ちない試験だと言われていますが、本当でしょうか?
受験生の様子を見ていると、【まだ、「口述試験」で消耗しているの?】と思いますが、私自身も、口述試験を受けたときは、消耗していました。
第1 口述試験の概要
1.口述試験の内容
§7の1(2)及び(4)に掲げる事項について行います。
要するに、司法書士試験の筆記試験のうち、憲法・民法・刑法・商法・供託法・民事訴訟法・民事保全法・民事執行法は聞かれないということです。
§7 筆記試験の内容等
1 筆記試験の内容
(1) 憲法,民法,商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む。)及び刑法に関する知識
(2) 不動産登記及び商業(法人)登記に関する知識(登記申請書の作成に関するものを含む。)
(3) 供託並びに民事訴訟,民事執行及び民事保全に関する知識
(4) その他司法書士法第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力
【条文】司法書士法3条
(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
五 前各号の事務について相談に応ずること。
六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
イ 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ロ 民事訴訟法第二百七十五条の規定による和解の手続又は同法第七編の規定による支払督促の手続であつて、請求の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ハ 民事訴訟法第二編第四章第七節の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法(平成元年法律第九十一号)の規定による手続であつて、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ニ 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)の規定による手続であつて、調停を求める事項の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ホ 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二章第二節第四款第二目の規定による少額訴訟債権執行の手続であつて、請求の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
八 筆界特定の手続であつて対象土地(不動産登記法第百二十三条第三号に規定する対象土地をいう。)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の二分の一に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。
2 前項第六号から第八号までに規定する業務(以下「簡裁訴訟代理等関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができる。
一 簡裁訴訟代理等関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。
二 前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。
三 司法書士会の会員であること。
3 法務大臣は、次のいずれにも該当するものと認められる研修についてのみ前項第一号の指定をするものとする。
一 研修の内容が、簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力の習得に十分なものとして法務省令で定める基準を満たすものであること。
二 研修の実施に関する計画が、その適正かつ確実な実施のために適切なものであること。
三 研修を実施する法人が、前号の計画を適正かつ確実に遂行するに足りる専門的能力及び経理的基礎を有するものであること。
4 法務大臣は、第二項第一号の研修の適正かつ確実な実施を確保するために必要な限度において、当該研修を実施する法人に対し、当該研修に関して、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又は必要な命令をすることができる。
5 司法書士は、第二項第二号の規定による認定を受けようとするときは、政令で定めるところにより、手数料を納めなければならない。
6 第二項に規定する司法書士は、民事訴訟法第五十四条第一項本文(民事保全法第七条又は民事執行法第二十条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、第一項第六号イからハまで又はホに掲げる手続における訴訟代理人又は代理人となることができる。
7 第二項に規定する司法書士であつて第一項第六号イ及びロに掲げる手続において訴訟代理人になつたものは、民事訴訟法第五十五条第一項の規定にかかわらず、委任を受けた事件について、強制執行に関する訴訟行為をすることができない。ただし、第二項に規定する司法書士であつて第一項第六号イに掲げる手続のうち少額訴訟の手続において訴訟代理人になつたものが同号ホに掲げる手続についてする訴訟行為については、この限りでない。
8 司法書士は、第一項に規定する業務であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、これを行うことができない。
2.試験場
口述試験を実施する法務局ごとに,それぞれの局が指定した場所(口述試験受験票に記載されます。)で行います。指定された試験場以外の試験場では受験することができません。
私のときは、名古屋法務局の上の方の階で(たしか)「3部屋」に分かれて行いました(今は、合格者が少ないので、2部屋に分けて、行うかもしれませんね。)。
3.携行品・服装について
口述試験受験票及び筆記具(黒インクの万年筆又はボールペン)。なお,口述試験受験票は,筆記試験の結果発表後,口述試験を実施する法務局から本人に対して発送しますが,口述試験受験票が令和3年 10 月 20 日(水曜日)までに到着しない場合には,当該法務局の総務課まで問い合わせてください。
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服装については、やはりスーツがいいでしょうか? 持っているスーツが入らないのですが…どうすればいいでしょうか?
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スーツの人が多かったと思いますが、作業服の人(土地家屋調査士さん?)もいましたし、革ジャンにジーパンの人もいました。服装は、どんな格好でもよいと思います。特に女性は、仕事をする際にもスーツではない方が多いような気がしますので、問題ないと思います。
4.当日の流れ
以下、少し前(平成25年[2013年])の名古屋法務局の運用を覚えている限り書きます。
- ①集合
- ・集合時間は、午前組と午後組に分かれていました。
・受験生の住所地から試験会場(法務局)に近い人が午前で、遠い人が午後になっていました(もしかしたら、逆だったかもしれません)。
・午前組、午後組とも、それぞれの集合時間に集合して、口述試験の行い方の説明が始まります。
- ②くじ引き(→順番待ち)
- ・くじ引きで口述試験の順番を決めます。
・試験の順番が遅いと拘束時間が長くなるので、何かしら、本を持っていった方がよいと思います。
・順番待ちの間は基本的に自由ですが、みんな黙って、本を読んでいたと思います。
・私は、ほとんど何も持っていかなかったのに、待ち時間が長く、結構苦痛でした(他の合格者と話をしたり、他の合格者の顔をジロジロ見ることもできない状況でしたし…)。
- ③口述試験の開始
- ・口述試験は、面接形式によって実施されます。
・受験生1人に対して、面接官が2人おり、それぞれが受験生に質問する方式で実施されます。
・面接官は、多くの場合、質問に窮すれば助け船を出してくれます。
・試験時間は15分程度です。
・自分の場合は、(1)司法書士法→(2)不動産登記法→(3)商業登記法という順番で行われました。今でも、このような順番で行われるのではないでしょうか。
・午前組と午後組では、聞かれる質問自体が異なるようです。
・私の場合、私自身が司法書士補助者であることが面接官にわかったようで、2人の面接官が、面接官1「これで、大丈夫ですかね?」 面接官2「はい。」というやり取りをして質問が途中で打ち切りになったようです(追加の質問事項が用意されている感じでした。)。
- ④口述試験の終了→帰宅
- 口述試験が終わったら、個々に試験会場を後にします。
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口述試験で問われた内容に答えられなかったら、落ちることもあるんじゃないですか?
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私の年は、商業登記法は、「一般財団法人」についての質問でした。まさか、「一般財団法人」を聞かれると思わなかったので、全く準備をしていなかったので、質問事項に関してほとんど回答できませんでした。今でも「すみません。筆記試験のときには、覚えていたのですが。」という回答をしたのを憶えています。それでも、大丈夫でした。
また、私の同期は、「所有権保存登記ができる場合には、どのような場合がありますか」という質問で、全然答えられなくても、大丈夫でした(むしろ、よく司法書士試験に受かったな…と思いましたが)。
その他にも、おそらく、毎年珍回答や誤答などは沢山あるでしょうし、それでも、落ちた人は聞いたことがありません。
【面接時の状況】
これから商業登記について、聞きます。一般財団法人の機関を全て答えてください。
必要的機関として、理事・監事…任意的機関として、会計監査人…あれ、あとなんでしたっけ? 財団法人ですよね…
ほら、あれですよ、あれ。
すみません。筆記試験のときには、覚えていたのですが。
わからないですか…「ひ」?
評議員!
そう、それ!
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口述試験で落ちなかったら、口述試験は試験として成立していないような気がしますが?
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はい。口述試験は、試験としては、成立していないと思われます。
なぜならば、「午前組と午後組では、聞かれる質問自体が異なる」からです。その他にも、実際に、口述試験を受験してみれば、落とす(選別する)試験ではないということがわかると思います。
あえて言うならば、「本人確認をしている」程度ではないでしょうか。
第2 試験対策・勉強方法
1.いつものように問われる内容
いつものように問われる内容は、司法書士法1条・司法書士法2条・不動産登記法・商業登記法です。
なお、「午前組が司法書士法1条を聞かれると、午後組では司法書士法2条が問われる」「午前組が司法書士法2条を聞かれると、午後組では司法書士法1条が問われる」という傾向があるらしいです。
※そもそも、司法書士法1条・司法書士法2条も絶対に毎年問われるわけではないようですが…
2.司法書士法1条
【条文】司法書士法1条
(司法書士の使命)
第一条 司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。
丸暗記です。
3.司法書士法2条
【条文】司法書士法2条
(職責)
第二条 司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
丸暗記です。
4.不動産登記法・商業登記法
何が聞かれるかわからないので、司法書士試験の筆記試験の際に使っていたテキストや過去問を復習すべきでしょう。
口述試験までに勉強する時間がないとか、精神的に勉強する余裕がないとか色々と理由をつけて勉強しない方が多く、私自身も補助者をしていたので、ほとんど勉強していませんでしたが、勉強した方がよい、という事実は変わらないでしょう。
第3 さいごに
口述試験に関しては、いくら不安になっても仕方ないし、不安にならなくていいと言われますが、不安になりますよね。
予備校では「慌てず落ち着いて答えれば合格することが可能」「基本的に落ちることはない」と説明されることがある口述試験ですが、私は、「慌てても大丈夫ですし、落ち着いてなくても大丈夫ですし、全然答えられなくても大丈夫です」というのが、実情だと思います。
「当日、交通事故などにあわずに無事に試験会場まで到達すれば、合格する」と思ってもいいかもしれません。