【合格発表日】2021年版-司法書士試験に受かったら

【目次】司法書士試験に受かったら

 司法書士試験は、筆記試験に合格したら、その後に口述試験があるものの、事実上、司法書士試験に合格したことと同義です。したがって、本日は、司法書士試験受験生にとって、人生の分かれ道の日です。

 さて、司法書士試験の筆記試験に受かったらどうしたらよいでしょうか。

第1 これからの進路・就職活動

1.若くてお金の余裕がある人

 若くてお金に余裕がある人には、私は、司法試験を受験することを勧めます。

 なぜならば、若くして合格しているということは、司法書士試験に短期で合格しているということですので、今の司法試験であれば、(もちろん適正はあると思いますが…)合格する可能性が高いからです。実際に、私の周りでも何名か司法試験に合格しています。

 それに、仮に、合格しなくても司法書士の資格がなくなるわけではないので、若ければ数年間チャレンジしても、司法書士人生では全く問題はないと思われます。(むしろ、若い司法書士だと、信用がないように見られるので、独立するときには、少なくとも30代に見られる程度には老けておきたいです。)

 たしかに、司法書士の資格だけでも食っていけます。しかし、司法書士+司法試験は、非常に強いカードです。若ければ、その強いカードを持つチャンスがあります。(なお、田舎で開業予定の人の場合には、司法書士+土地家屋調査士という強いカードでも十分かもしれません。)

2.司法書士の実務経験を積みたい人

 司法書士試験の実務経験を積みたい人は就職活動をしなければなりません。

 それでは、どのような司法書士事務所が適切でしょうか。

 まずは、独立をいち早くしたいということであれば、中規模(司法書士3名程度以上~10名以下)又は小規模(司法書士1名又は2名)の事務所に就職することを勧めます。

 なぜならば、大規模事務所は分業化されているので、司法書士業の一部の仕事しか触らせてもらえないからです(そもそも、大規模事務所は、基本的に、不動産決済事務所なので、不動産決済以外の業務がほとんどなかったりするのですが…)。

 中規模、小規模の司法書士事務所であれば、良くも悪くも様々な実務経験が積み放題になります。

 なお、ネットでは、半年間くらいの実務経験で独立できるとの話もありますが、おそらく、半年程度で身につく業務は、不動産決済だけだと思います。

 私自身、司法書士試験にあと約10点で合格するレベル(つまり、司法書士試験の試験内容はほとんどのわかっている状態)で補助者として働き始めたのですが、そのときは毎日12時間くらい働いてましたが、半年経っても全然わからないことだらけでした。私自身は、だいたい2年経ったくらいから、“実務がわかってきた”という感じがおぼろげながら浮かんできました。

 要するに、最初は仕事を覚えるのに大変でした…

3.サラリーマンとして生活したい人

 司法書士試験に合格してサラリーマンとして生活したい人は、大規模事務所に就職することを勧めます。

 しかし、そもそも、司法書士に合格してサラリーマンとして生活したいと思っていること自体が間違いなのかもしれないので、人生の進路変更も視野に入れた方がいいかもしれません。

 なぜならば、サラリーマンとしての司法書士の収入は決して高くない上に、基本的には、勤務年数が長くなっても収入があまり増えないからです。

第2 新人研修・特別研修・認定考査

 司法書士に登録するための要件ではありませんが、司法書士試験に合格したら新人研修等が始まり、ほとんどの司法書士試験合格者がこの新人研修等に参加することになります。この新人研修等は非常に大事で同期と知り合いになれる(仲良くなれる)期間はこの間しかないと言っても過言ではありません。

【余談】私が、合格した頃は、東日本の合格者は東日本(つくば?)で、西日本の合格者は西日本(神戸)で集まって集合研修をしていました。したがって、司法書士試験の筆記試験に合格したら、まずはホテルの予約の争奪戦(研修会場に近いホテルがすぐに予約でいっぱいになるのです。)をしていました。しかし、最近は集合研修がなくなったので、そのようなことをしなくてもよいらしいですね。集合研修をすると、他府県の同期と仲良くなれるので、悪いことではないと思いますが、如何せん費用がかかりますし、新型コロナの時代になってしまったので、集合研修が再開されることはないでしょう。

1.新人研修

 司法書士の新人研修は、実は、各地域ごとに内容が異なります

 詳細は下記のとおりです。

新人研修
 「新人研修」は、今後1年以内に登録・入会を予定する資格者を対象に、司法書士として業務を行うために必要な、法律家としての執務姿勢と実務能力を身につけることを目的として実施しています。
研修対象者
 司法書士となる資格を有する者で1年以内に登録・入会を予定する者、他
研修の種類
1.中央研修
2.ブロック研修
3.司法書士会研修(配属研修)

主催/日本司法書士会連合会
企画/司法書士中央研修所、各ブロック会、各司法書士会
研修内容/登録・入会にあたって必要とされる講義と演習

https://www.kensyu.nisshiren.jp/Training/newface/index.jsp

 ポイントは、運営が、各ブロック会、各司法書士会に任されているわけではなく、企画が各ブロック会、各司法書士会に任されているという点です。

 したがって、新人研修を受講する地域(各司法書士会)によって、内容に非常に大きな差があります。私の時代は、わざわざ、「東京会の新人研修のテキストが良いテキストだ」ということで、東京会で新人研修を受講した人がいたほどでした。

2.特別研修

(1)特別研修とは

 特別研修(簡裁訴訟代理等関係業務を行うための特別研修(司法書士法第3条 第2項))は、認定司法書士になるために、受講しなければならない研修です。

 特別研修のチューターを長年(?)行っていた立場から、特別研修の注意点を述べるのであれば…

 特別研修は、「実践の場」であり、「講義を受講する場」ではない

 ということです。

 『民法も民事訴訟法も民事執行も民事保全も全部勉強したけど、裁判業務なんて、やったことないし、いきなり「訴状書け」と言われても、書けませんよ。何、言ってるんですか? フザケてるんですか? 訴状の書き方を教えて下さいよ。』という感じの方が毎年何人もいますが、諦めてください。

 特別研修のテキストは、基礎的な訴状等の書き方はわかっていることを前提としています。そして、特別研修のテキストは、ほとんど「原則側・被告側のそれぞれの言い分を読んで、①訴状書け、②答弁書書け、③準備書面書け、④その他の法的問題点は…」という問題しかないのです。しかも、特別研修のテキストは、司法試験合格後の司法研修所で使用されていた問題をほとんどそのまま流用して作られた問題とのことですので、簡単な問題ではないですし、すごく基礎的な問題でもないです。

 したがって、特別研修を受講する予定の方は、特別研修の開始までに、訴状等の書き方をある程度身につけておかなければなりません。そして、訴状等を書く(これを「起案」といいます。)には、①要件事実論と②訴状の形式的な起案方法を身につけておかなければなりません。

 具体的には、①要件事実論については、下記の書籍などで勉強しておきましょう。

 ②訴状の形式的な起案方法については、実務でも役に立ちますので、下記の書籍があるとよいです。

(2)起案の前提としての文章の作成術

 あと、特別研修のチューターをしているときには、受講生(特に、私よりも10歳も20歳も年配の方)に対し、なかなか言いにくかったのですが、文章を書くときは「5W1H」などの文章の基本を守っていただきたかったです。

 たしかに、司法書士試験では論文は問われていないので、文章を書く練習をしてきていないのかもしれません。しかし、司法書士の仕事をしていて「登記の申請書しか作らない」ということは、ほとんどないはずです。司法書士は、依頼者、不動産会社、銀行、法務局、裁判所などに対し、文章を通して様々なことを伝えなければなりません。

 そこで、(特に、過去に論文の練習をしてきていない人は、)「人に伝わる文章を書く」という練習をして欲しいです。

 特別研修では、特に【準備書面】で壊滅的な文章になっている人が多かったです。例えば、壊滅的な文章になっている準備書面では、①「誰が、いつ、誰に対し、どうしたか」という事実が不明瞭だったり、②「事実の主張」が「法的主張」と混ざり合った文章になっていて、「法的主張」なのか「事実の主張」なのかが不明瞭だったりする文章が多かったです。

 なお、「壊滅的な文章でも、空気を読めば、読めるじゃないか」という指摘をいただいたこともありますが、そのような壊滅的な文章は、基本的には、要件事実(=「事実の主張」)の記載として不適当になっているので、やはり、ダメです。壊滅的な文章になっている準備書面では、そもそも要件事実がどうなっているか判断できないので、チューターとしても準備書面をどう書くべきかをアドバイスできるような状況になかったのかが大変悔やまれました。

 そこで、よりよい特別研修にするためにも「文章力の基本」などの基本的な文章の作成方法の本を読んでみるのもよいと思います。

 また、文章は、可能な限り他人に添削をしてもらいましょう。自分では他人に伝わる文章を書けていると思っていても、他人には伝わりにくいということがよくあります。

3.認定考査

 認定考査については、下記の【認定考査マニュアル】を読んでください。

 【認定考査マニュアル】は、初学者向けのマニュアルではないですが、ある程度、勉強を進めた後に読んでいただけると役に立つはずです。

 なお、「要件事実ドリル(坂本龍治)」は、「認定司法書士への道[入門編] 」になっているようです。基本的には、 要件事実論のみでいうと、「完全講義 民事裁判実務の基礎〔第3版〕(上巻)→ 「 続 完全講義 民事裁判実務の基礎─要件事実・事実認定・演習問題 」→ 「認定司法書士への道[入門編] 」 → 「認定司法書士への道[実践編]」でよいのではないでしょうか。 もっとも、司法書士法や司法書士倫理の勉強をするには 「認定司法書士への道[理論編]」 も良書であるので買った方がよいです。

第3 さいごに

 最近の合格者の中には、Twitter上で本名で問題のある発言をして、袋叩きにあっている人もいます。

Twitter等で叩かれないように、①Twitterでは本名で登録しないこと、②Twitter上のアカウントは家族であってもバレないようにすること、③Twitterとリアルは完全に切り離すことを、おすすめします。これなら、アホなこと言っても、多くの場合は問題はないはずです。

 司法書士試験に合格して、万能感に浸りたくなることもあるでしょうが、多くの司法書士試験の合格者は自身がまだまだ勉強不足であることを自覚しておいた方がいいと思います。

 例えば、実務書を買ってみるといいかもしれません。

 私は、新人研修の配属研修で「合併」を任されましたので、もしかしたら、あなたも「合併」を任されるかもしれません。合併といえば、「合併ハンドブック〔第4版〕」です。私自身は補助者経験が3年ほどあったので、なんとか、配属研修中に「合併ハンドブック」を読み込んで書類を作成することができましたが、補助者経験なしの合格者の方には辛いかもしれません。試しに、大きな書店が近くにあるようでしたら、読んでみてください。なんで、合併だけで、こんな分厚い本を読まないといけないのかが少しはわかるはずです。

 もっとも、合併だと、実務でもあまり取り扱わないかもしれないので、日本全国どこにでもある相続登記はどうでしょうか。具体的には、試験では勉強しない「旧民法」の相続登記の勉強をすることがいいかもしれません。「事例でわかる 過去から現在の相続に関する法律と実務―明治、大正、昭和、平成、令和、旧民法施行前・旧民法・応急措置法・新民法・改正民法等」などは、実務では有名どころの書籍になります。


 なお、私の実務歴も、いつの間にか、10年を経過してしまい、もしかしたら中堅に入りかけているのかもしれません。しかし、実際は、今でもわからないことだらけです。最近、流行っている「ダニング=クルーガー効果」の底辺をずっと彷徨っている気がします。

ダニング=クルーガー効果
ダニング=クルーガー効果

 ということで、お互い頑張りましょう。

 また、くれぐれも、Twitterで袋叩きにならないよう、お気をつけください。

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