【先例・通達】施設に現に赴いた司法書士によるテレビ会議を用いた本人確認情報の作成について(令和5年3月30日付法務省民二第555号)

令和5年3月30日付法務省民二第555号

1.先例通達名等

 施設に現に赴いた司法書士によるテレビ会議を用いた本人確認情報の作成について(令和5年3月30日付法務省民二第555 号)

2.PDFなど

重要項目まとめ【令和5年3月30日付民二555 】

1.前提となる現行制度

 申請人(登記義務者)が、登記識別情報を(失念した等の理由で)提供できない場合において、資格者代理人が申請人と面談を行い、(本人確認を行った上で作成した)本人確認情報を登記申請時に提供し、登記官がこれを相当と認めたときは、事前通知手続が省略される(不動産登記法第23条第4項)。

2.問題点

 不動産登記法第23条第4項(不動産登記規則72条)上では、本人確認情報の作成のための本人確認をする際には、「資格者代理人が申請人と対面にて面談を行う(申請人と面識がない場合には、対面で身分証の提示を求める。)。」以外の方法はない。

 しかし、医療機関・高齢者施設では、新型コロナウイルス感染症対策として、入居者と外部の者との直接的な面会を制限する傾向にあり、対面が困難な状況にある。

【条文】不動産登記法23条

事前通知等)
第二十三条 登記官は、申請人が前条に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、同条に規定する登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨を通知しなければならない。この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。
2 登記官は、前項の登記の申請が所有権に関するものである場合において、同項の登記義務者の住所について変更の登記がされているときは、法務省令で定める場合を除き、同項の申請に基づいて登記をする前に、法務省令で定める方法により、同項の規定による通知のほか、当該登記義務者の登記記録上の前の住所にあてて、当該申請があった旨を通知しなければならない。
3 前二項の規定は、登記官が第二十五条(第十号を除く。)の規定により申請を却下すべき場合には、適用しない。
4 第一項の規定は、同項に規定する場合において、次の各号のいずれかに掲げるときは、適用しない。
一 当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるとき。
二 当該申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては、その権限を証する情報)を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について、公証人(公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第八条の規定により公証人の職務を行う法務事務官を含む。)から当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるとき。

【条文】不動産登記規則72条

(資格者代理人による本人確認情報の提供)
第七十二条 法第二十三条第四項第一号の規定により登記官が資格者代理人から提供を受ける申請人が申請の権限を有する登記名義人であることを確認するために必要な情報(以下「本人確認情報」という。)は、次に掲げる事項を明らかにするものでなければならない。
一 資格者代理人(資格者代理人が法人である場合にあっては、当該申請において当該法人を代表する者をいう。以下この条において同じ。)が申請人(申請人が法人である場合にあっては、代表者又はこれに代わるべき者。以下この条において同じ。)と面談した日時、場所及びその状況
二 資格者代理人が申請人の氏名を知り、かつ、当該申請人と面識があるときは、当該申請人の氏名を知り、かつ、当該申請人と面識がある旨及びその面識が生じた経緯
三 資格者代理人が申請人の氏名を知らず、又は当該申請人と面識がないときは、申請の権限を有する登記名義人であることを確認するために当該申請人から提示を受けた次項各号に掲げる書類の内容及び当該申請人が申請の権限を有する登記名義人であると認めた理由
2 前項第三号に規定する場合において、資格者代理人が申請人について確認をするときは、次に掲げる方法のいずれかにより行うものとする。ただし、第一号及び第二号に掲げる書類及び有効期間又は有効期限のある第三号に掲げる書類にあっては、資格者代理人が提示を受ける日において有効なものに限る。
一 運転免許証(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第九十二条第一項に規定する運転免許証をいう。)、個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。)、旅券等(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号に規定する旅券及び同条第六号に規定する乗員手帳をいう。ただし、当該申請人の氏名及び生年月日の記載があるものに限る。)、在留カード(同法第十九条の三に規定する在留カードをいう。)、特別永住者証明書(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)第七条に規定する特別永住者証明書をいう。)又は運転経歴証明書(道路交通法第百四条の四第五項(同法第百五条第二項において準用する場合を含む。)に規定する運転経歴証明書をいう。)のうちいずれか一以上の提示を求める方法
二 国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証、私立学校教職員共済制度の加入者証、基礎年金番号通知書(国民年金法施行規則(昭和三十五年厚生省令第十二号)第一条第一項に規定する基礎年金番号通知書をいう。)、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳又は戦傷病者手帳であって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか二以上の提示を求める方法
三 前号に掲げる書類のうちいずれか一以上及び官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに準ずるものであって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか一以上の提示を求める方法
3 資格者代理人が本人確認情報を提供するときは、当該資格者代理人が登記の申請の代理を業とすることができる者であることを証する情報を併せて提供しなければならない。

3.新たな面談方法による本人確認情報の作成方法

実施に必要な条件

  1. ウェブ会議によっても、対面の面談と変わらない意思疎通ができること。
  2. 施設側の要請に基づくものであり、感染拡大防止等、申請人と直接面談ができない合理的理由があること。
  3. 資格者代理人と申請人との間に面識がない場合には、事前に申請人の身分証(運転免許証等)原本の提示を受けること。
  4. 同一施設内(資格者代理人は施設に現に赴く)で、かつ、施設の職員又は申請人の家族の同席の下で行われること(具体的な面談事例は以下のとおり。)。

想定事例

  1. 同一施設内の別室で、施設の職員の同席の下、テレビ会議等による面談を行い、当該施設の職員から、申請人本人に相違ない旨の回答を受けた場合
  2. 同一施設内の別室で、申請人の家族の同席の下、テレビ会議等による面談を行い、当該申請人の家族から、申請人本人に相違ない旨の回答を受けた場合
  3. 同一施設内の別室で、テレビ会議等による面談を行い、自宅等から同時接続している当該申請人の家族から、申請人本人に相違ない旨の回答を受けた場合
施設に現に赴いた司法書士によるテレビ会議を用いた本人確認情報の作成について(令和5年3月30日付法務省民二第555号)

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