相続登記のやり直し(相続登記の抹消登記・贈与・交換の登記)
- 父が,祖父が亡くなったときの相続登記を自分で行ったようですが,どうやらA土地とB土地を間違って相続登記をしてしまったようです。A土地は,私どもが家を建てていますが,B家族の名義で,B土地は,B家族の家が建てられていますが,私の父の名義の土地になっています。どのようにしたら良いでしょうか?
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なるほど,相続登記を間違えてしまったようですね。このままでは,不動産を処分(売却・贈与等)することも,抵当権を設定することもできなく,不動産の価値が著しく減少している状態であるといえるので,どうにか解消しなければなりませんね。以下に,場合を分けてご説明いたします。
第1 相続登記の抹消と相続登記
1.相続登記の抹消登記とは
今回のような状況で,まず,最初に考えられることは,相続登記の抹消登記になります。抹消登記とは,登記記録又は登記簿上に現存する権利や登記事項(登記原因)が何らかの事情により消滅したか,又は原始的に不存在だった場合において,それを登記記録等から削除して実体に合致させることです。今回の場合は,原始的に登記原因が不存在であると考えられるため,相続登記の抹消をすることが考えられます。
相続登記の抹消登記をして,元の所有者名義の登記に戻し,その後に正しい相続登記をすれば,問題は解決されます。
2.メリット
相続登記の抹消登記のメリットは,上記のとおり,間違えた相続登記を消すことができる点にあります。
3.デメリット
相続登記の抹消登記のデメリットは,下記の事項が考えられます
□ 相続登記の抹消登記をしたものの,相続登記が何らかの事情でできなくなる
◇ 相続人が,多数になり,連絡がとれなくなる
◇ 相続人の中に,行方不明者がいる
◇ 相続人の中に,認知症(被後見人)になっているがいる
◇ 相続人の中に,未成年者がいる など
相続登記は,相続人全員の印鑑証明書や実印等が必要となってきますので,上記のように,印鑑証明書が発行できない場合であったり,実印を押印できない場合には,相続登記ができなくなります。
もっとも,その他の裁判手続をすれば,相続登記ができる場合がございますが,費用負担が膨大になります。
例えば,元所有者の相続人が,A土地の名義人とB土地の名義人しかいないのであれば,問題が起こりにくいと言えますが,それ以外に,上記のように,元所有者の相続人がいる場合には,事情が複雑になる可能性が非常に高くなります。したがって,事前に,相続登記ができるかどうかの確証を持ってない限り,相続登記の抹消登記は,すべきではありません。
第2 贈与の登記
1.贈与の登記とは
上記のように相続登記の抹消登記には,デメリットがありますので,そのデメリットを克服できない場合には,次に贈与の登記が考えられます。
2.メリット
贈与の登記のメリットは,相続登記の抹消登記と相続登記をしなくてもよくなることです。その結果,元所有者の相続人の全員に,連絡し,印鑑証明書や実印をお願いする必要がなくなります。
3.デメリット
贈与の登記のデメリットの一つは,相続登記と比べて,登録免許税が高くなることです。
また,贈与税が発生した場合には,非常に高額の贈与税を納めなければならなくなるため,そのようなリスクを理解した上で,贈与の登記をすべきです。
詳しくは,国税庁のHPで確認するとよいでしょう。
第3 交換の登記
1.交換の登記とは
上記のように相続登記の抹消登記及び贈与の登記には,デメリットがありますので,そのデメリットを克服できない場合には,交換の登記を検討すべきです。
2.メリット
交換の登記のメリットは,贈与の登記と同じように,相続登記の抹消登記と相続登記をしなくてもよくなることです。その結果,元所有者の相続人の全員に,連絡し,印鑑証明書や実印をお願いする必要がなくなります。
3.デメリット
交換の登記のデメリットの一つは,相続登記と比べて,登録免許税が高くなることです。
また,交換の登記では,不動産を交換するということで,譲渡所得税の等税金が発生します。もっとも,交換の特例を受ければ,譲渡所得税の課税が少なるなる可能性があります。
詳しくは,国税庁のHPで確認するとよいでしょう。