目次【「遺贈による登記」の窓口】

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解説者「司法書士 中嶋 剛士」のプロフィール

司法書士 中嶋剛士(シホウショシ ナカシマコウジ)
司法書士中嶋剛士

❖「司法書士なかしま事務所」代表司法書士
❖名古屋市の法務大臣認定司法書士
❖依頼は“相続・相続対策”と“借金問題”が中心
❖司法書士実務は2011年から
❖特別研修のチューターを4年経験
❖テレビ出演:2021年3月30日:CBCテレビ[チャント!]
登録番号 愛知 第1924号
簡裁訴訟代理等関係業務 認定番号 第1318043号

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司法書士なかしま事務所_Google-のクチコミ(23)
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第1 遺贈による登記とは

1.遺贈による登記の特徴

遺贈書があった場合の登記申請期限

遺言書があった場合には、登記は、いつまでに行わなければならないのですか?

 遺言書があった場合のうち、当該遺言が①相続人に対する遺贈、②特定財産承継遺言であるときは、いずれの場合も、相続人は、遺言により不動産を取得したことを知った日から3年以内に遺言の内容を踏まえた登記申請をする義務を負うことになりました(令和6年4月1日以降に登記申請義務が生じることになります)。

 なお、登記申請義務があるにも関わらず、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処することとなっています。

遺言書があった場合の相続登記の申請義務(令和6年4月1日以降)
遺言書があった場合の相続登記の申請義務(令和6年4月1日以降)

遺贈による登記と相続登記の違い

遺贈による登記とは、どのような制度なのですか? 相続登記とは、何が違うのですか?

 遺贈による登記とは、亡くなった方から不動産をもらい受ける人に対する、登記という点で、相続登記と類似しています。

 もっとも、相続登記の場合には、不動産の所有権の移転の原因が「相続」を原因とするものであり、原則として、当該不動産をもらい受ける相続人が「単独で申請」をすることができます。

 一方で、遺贈による登記の場合には、不動産の所有権の移転の原因が「遺贈」を原因とするものであり、相続登記と異なり、当該不動産をもらい受ける人が「単独で申請」をすることができず(※1)、①遺言執行者がいる場合には、遺言執行者と当該不動産をもらい受ける人が「共同で申請」をすることになり、②遺言執行者がいない場合には、被相続人相続人全員と当該不動産をもらい受ける人が「共同で申請」をすることになります。

(※1)令和5年4月1日からの登記申請より、遺贈相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、不登法第60条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができることとされました(改正不登法第63条第3項)【民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取り扱いについて(令和5年3月28日付法務省民二第538 号)】。

図解_遺贈による登記と相続登記
図解_遺贈による登記と相続登記
遺言書の文言の解釈
遺言書の文言の解釈

「遺贈による登記」の注意点

Aさんが「Bさんに遺贈する」旨の遺言を作成しても、遺言執行者を定めていない場合には、Aさんの相続人全員の協力が必要になる。しかし、当該遺言に反対する相続人がいた場合には、裁判をした後でないと、遺贈による登記はできないこととなります。

一方で、Aさんが「Bさんに相続させる」旨の遺言を作成した場合には、左記のようなトラブルにはならない。もっとも、「相続させる」旨の遺言は、常に、使えるわけではない。不動産を遺言で相続させたい場合には、司法書士事務所にご相談ください。

遺贈でも単独申請できるか(令和5年4月1日施行)

遺贈による登記をする場合には、常に、共同申請になって、遺言者相続人の全員の協力が必要になるのですか?

 遺贈相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、令和5年4月1日より、不動産登記法60条(共同申請)の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができることになりました(不動産登記法63条3項)【民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取り扱いについて(令和5年3月28日付法務省民二第538 号)】。

【条文】不動産登記法63条

(判決による登記等)
第六十三条 第六十条、第六十五条又は第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
3 遺贈相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

【条文】不動産登記法附則(令和三年四月二八日法律第二四号)抄

(不動産登記法の一部改正に伴う経過措置)
第五条 第二条の規定(附則第一条各号に掲げる改正規定を除く。)による改正後の不動産登記法(以下「新不動産登記法」という。)第六十三条第三項、第六十九条の二及び第七十条の二の規定は、施行日以後にされる登記の申請について適用する。
2 新不動産登記法第七十条第二項の規定は、施行日以後に申し立てられる公示催告の申立てに係る事件について適用する。
3 新不動産登記法第百二十一条第二項から第五項までの規定は、施行日以後にされる登記簿の附属書類の閲覧請求について適用し、施行日前にされた登記簿の附属書類の閲覧請求については、なお従前の例による。

遺贈による登記の効果

遺贈による登記をすると、どのような効果があるのですか?

 遺贈による登記が完了すると、不動産の名義人となることことができ、当該不動産の所有権を第三者に主張することができます。

 具体的には、所有権者として、当該不動産を①売却したり、②贈与したり、③当該不動産に抵当権を設定すること、が可能になります。

2.遺贈による登記の報酬及び費用

遺贈による登記の報酬及び費用
遺贈による登記の報酬及び費用

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3.遺贈による登記の手続の流れ

遺贈による登記 の流れはどのようになるのでしょうか?

 一般的に下記のとおりとなります。

①お客様と司法書士が相談
 ご相談内容から最適な「遺贈による登記」の方法をご提案いたします。その上で,ご納得いただけたら「委任契約」を締結いたします。また,相続税対策を目的とした「配偶者居住権の設定等」の利用の場合には,司法書士に加え税理士も相談も一緒にご相談いたします。
【ご相談内容】
遺言書の内容の確認
遺言書の内容を確認させていただき、遺贈による登記ができるか否かを確認します。
○財産
…亡くなった方の財産についてお聞きします。なお、財産は原則として不動産のみですが、相続税の申告の必要か否かを判断するために他の相続財産についてもお聞きします。
法定相続人
法定相続人についてもお聞きします。具体的には、家族のこと(例えば、亡くなった人の子どもや兄弟は何人いるか、今現在、どこに住んでいるか)をお聞きします。
○税金等
…相続税の申告が必要な場合には,司法書士と税理士がお互いに協力してプランを練る必要があります。
【相談時に持ってきていただく資料等】
遺言書自筆証書遺言公正証書遺言など)
○ご相談者様の本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)
○印鑑(認印)
○取得できる場合には、亡くなった方の戸籍謄本・住民票の除票
○固定資産税の課税明細書又は評価証明書
②お客様が必要書類を収集
遺贈による登記をするためには下記の【必要書類】などが必要になります。
【必要書類】
受遺者(財産を受け取る方)の資料
 □住民票(本籍地あり)又は戸籍の附票
 □印鑑証明書
遺贈者(亡くなった方)の資料
 □遺言書
 □死亡記載のある戸籍謄本
 □住民票の除票(本籍地あり)又は戸籍の附票
 □登記済証(又は登記識別情報)
※平成26年6月20日以前に死亡されている場合、住民票の除票又は戸籍の附票が取得できないことがあります。この場合には、別途お手続が必要になる可能性があります。
■登記義務者の資料
遺言執行者がいない場合>
 □遺贈者の出生から死亡までの戸籍謄本
 □相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
遺言執行者がいる場合>
 □遺言執行者の印鑑証明書
■不動産に関する資料
 □固定資産の明細書または評価証明書
 □登記簿謄本(登記事項全部証明書)
※原則として、登記簿謄本は、事務所で取得させていただきます。
※固定資産の明細書がない場合には、当事務所で評価証明書を取得することができます。
③司法書士が遺贈による登記のための書類を作成
 ご依頼者様が集めていただいた資料に基づき,司法書士が遺贈による登記に関する書類を作成します。また、請求書も同時にお送りします。
④書類への押印、費用のお支払い
登記委任状をご依頼者様に確認いただき、ご署名・ご捺印をいただきます。また、請求書記載の振込先に請求書記載の金額のお振込みをお願いいたします
遺贈による登記の申請
【1】必要書類が事務所に届き
【2】ご入金の確認が取れ次第
【3】当事務所が相続登記の申請をします。
⑥不動産の権利証のお渡し
 登記が完了したら(登記申請日から約1週間~2週間後)、今回の相続登記により発行される「不動産の権利証」(登記識別情報通知)をご自宅にお送りいたします。

第2 遺贈による登記のQ&A

❖「相続登記」か「遺贈による登記」か

(1)相続人全員・包括遺贈【昭和38年11月20日民甲3119】

遺言者は、遺言者の財産を、受遺者である妻A及び子Bに、各2分の1の割合でを遺贈する」旨の遺言の場合には、遺贈するという文言ですので、登記原因は「遺贈」でしょうか? なお、遺言者法定相続人は、妻Aと子Bのみです。

原則としては、受遺者相続人であっても、遺言書において「遺贈する」とあれば、登記原因も「遺贈」ということになります。

もっとも、「包括遺贈」により相続財産の処分を受ける者が「相続人全員」である場合には、遺言書に「遺贈する」とあっても登記原因は「相続」となります。これは、相続人全員に対して遺贈することが相続分の指定に他ならないと判断されたと考えられています。

昭和38年11月20日民事甲第3119号民事局長電報回答

被相続人相続人中の一部の者に対し相続財産の全部を包括贈与する旨の遺言がある場合には、その者のために遺贈を登記原因として権利移転の登記をするが、その処分(贈与)を受けるものが相続人の全員である場合には、相続を登記原因として権利移転の登記をすべきである(昭和38年11月20日民事甲第3119号民事局長電報回答)

(2)相続人一部・遺贈【昭和48年12月11日民三8859】

遺言者は、受遺者相続人のうちの1人)に後記不動産を遺贈する」旨の遺言の場合には、相続人の一人に対するものであるので、登記原因は「相続」でしょうか?

受遺者相続人であっても、遺言書において「遺贈する」とあれば、登記原因も「遺贈」ということになります。

裁判例でも、「遺産全部を長男に包括遺贈する」旨の遺言公正証書により、当該長男から「相続」を原因とする所有権移転登記の申請があった場合に、登記官がこれを却下し、これを争った事案について、遺言書の文言に従い、遺産全部の包括遺贈の趣旨であると解すべきであって、当該申請を却下することは適法である旨判示(仙台高裁平成10年1月23日判決・判例時報1666号48頁)して、その取扱いを是認しています。

昭和48年12月11日民三第8859号民事局長回答

遺言者は、後記受遺者相続人のうちの1人)に後記不動産物件を遺贈する」旨の記載のある公正証書を添付した所有権移転の登記の登記原因は、「相続」ではなく「遺贈」とすべきである(昭和48年12月11日民三第8859号民事局長回答)。

(3)相続人以外・包括遺贈【昭和58年3月2日民甲1310】

遺言者は、遺言者の財産を、受遺者である妻A及び孫Cに、各2分の1の割合でを遺贈する」旨の遺言の場合には、遺贈するという文言ですので、登記原因は「遺贈」でしょうか? なお、遺言者法定相続人は、妻Aと子Bのみです。

「包括遺贈」により相続財産の処分を受ける者が「相続人全員」である場合には、遺言書に「遺贈する」とあっても登記原因は「相続」となります。

しかし、本件では、遺言者法定相続人は、妻Aと子Bとなります。したがって、法定相続人相続人でない者を受遺者とする包括遺贈があった場合になりますので、原則どおり、登記原因は「遺贈」となります。

昭和58年3月2日民事甲第1310号民事局第三課長回答

法定相続人相続人でない者を受遺者とする包括遺贈があった場合の登記原因は「遺贈」である(昭和58年3月2日民事甲第1310号民事局第三課長回答)

(4)相続人全員・特定遺贈【昭和58年10月17日民甲5987】

遺言者は、受遺者である妻A及び子Bに、各2分の1の割合で後記物件を遺贈する」旨の遺言の場合には、登記原因は「遺贈」でしょうか? それとも、「相続」でしょうか? なお、遺言者法定相続人は、妻Aと子Bのみです。

「包括遺贈」により相続財産の処分を受ける者が「相続人全員」である場合には、遺言書に「遺贈する」とあっても登記原因は「相続」となります。

しかし、本件の遺言書では、「特定遺贈」をしています。したがって、原則どおり、登記原因は「遺贈」となります。

昭和58年10月17日民事甲第5987号民事局第三課長回答

相続人全員に対して、各自に「後記物件を遺贈する」旨の遺言書に基づく登記原因は「遺贈」である(昭和58年10月17日民事甲第5987号民事局第三課長回答)。

質疑応答・登記研究429号126頁

共同相続人の各々に、相続財産の一部をそれぞれ贈与する旨の記載のある遺言書に基づく所有権移転の登記の登記原因は「遺贈」である(質疑応答・登記研究429号126頁)。

なお、この「相続人の全員に特定遺贈」した場合には、「相続人の全員に包括遺贈」した際の先例(昭和38年11月20日民事甲3119)の事情と異なり、遺言の文言上、相続分の指定あるいは遺産分割の方法の指定のいずれにも解することができないから、だと考えられています。

(5)「全て妻に渡す」旨の遺言【登記研究512号】

遺言書に「私のすべての財産は妻に渡す」旨の記載のある場合には、登記原因は「遺贈」でしょうか? それとも、「相続」でしょうか?

遺言の解釈に当たっては、できる限り遺言者の真意を探求すべきであるとされています。そして、「渡す」というのは、原則として、相続(相続分の指定あるいは遺産分割の方法の指定など)ではなく、遺贈の趣旨と解するのが相当であると考えられています。なお、この他にも「与える」とした場合も同様に「遺贈」と解すべきものと考えられています。

質疑応答・登記研究512号158頁

遺言書に「私のすべての財産は妻に渡す」旨の記載のある場合の所有権移転の登記原因は「遺贈」が相当である(質疑応答・登記研究512号158頁)。

(6)「長女に管理させる」旨の遺言【登記研究612号】

遺言書に「私のすべての財産は長女に管理させる」旨の記載のある場合には、登記原因は「遺贈」でしょうか? それとも、「相続」でしょうか?

「管理させる」は、財産の管理、すなわち保全を意図したものと判断せざるを得ず、「相続」や「遺贈」を登記原因とする所有権移転の登記を申請したとしても受理することができないと考えられます。

質疑応答・登記研究612号191頁

遺言書に「長女甲に管理させる」旨の記載のある場合に「相続」を原因とする所有権移転登記の申請は受理することができない(質疑応答・登記研究612号191頁)。

❖その他先例など

(1)遺贈の登記と相続登記の順番【登記研究523号】

被相続人名義の不動産について、全財産の2分の1は相続人Aに相続させ、残りの2分の1はXに贈与する」旨の遺言の場合、遺贈による登記をする前に、相続人Aは自らの持分のみの相続登記をすることができますか?

相続による登記と遺贈による登記を行わなければならない場合には、遺贈による登記をした後に、相続による登記を行わなければなりません。なぜならば、遺贈の登記をしないで、相続の登記を先にすると、相続として権利移転の効力が生じているのに、その一部についてのみ相続登記をするという結果となり、外観上相続人被相続人が相続不動産を共有することになるという実体法上あり得ない権利関係を公示するということになるからです。

質疑応答・登記研究523号139頁

被相続人名義の不動産について、全財産の2分の1は相続人Aに相続させ、残りの2分の1はXに贈与する旨の遺言書を添付し、Aより所有権の2分の1につき相続を原因とする所有権の移転登記の申請があった場合には、受理すべきではない(質疑応答・登記研究523号139頁)

なお、これは「共同相続人の一部の者が自己の相続分のみについて相続による所有権移転の登記をすることができない」とする先例(昭和30年10月15日民事甲第2216号民事局長電報回答)と同様の趣旨です。

昭和30年10月15日民事甲第2216号民事局長電報回答

共同相続人の一部の者が自己の相続分のみについて相続による所有権移転の登記をすることができない(昭和30年10月15日民事甲第2216号民事局長電報回答)

(2)遺贈の登記と分筆登記【昭和45年5月30日民甲435】

「A・B・C・D四筆の土地のうち、甲・乙に各495平方メートルを遺贈する」旨の遺言の場合、遺贈の登記をすることができるでしょうか。なお、A・B・C・D四筆の土地のそれぞれの広さは、A(200平米)・B(600平米)・C(200平米)・D(200平米)となります。

遺言執行者が、分筆登記をした後に、遺贈による登記をすることができると考えられます。

昭和45年5月30日民三第435号民事局長回答

A・B・C・D四筆の土地のうち、甲・乙に各495平方メートルを遺贈する旨の公正証書による遺言がなされ、遺言執行者がB地をB-1、B-2、B-3と三筆に分筆し、甲にB-2の土地を、乙にB-3の土地およびAの土地をそれぞれ遺贈するとする所有権移転登記申請がなされた場合、その申請は受理できる(昭和45年5月30日民三第435号民事局長回答)としている。

(3)分配を遺言執行者に一任【昭和34年5月6日民甲838】

「ある財産についてその受遺者およびその持分率を決定し残余の配分率を遺言執行者において決定すべき」旨の遺言の場合、遺贈の登記をすることができるでしょうか。

「ある財産についてその受遺者およびその持分率を決定し残余の配分率を遺言執行者において決定すべき」旨の遺言の場合、遺言者の意思が確認できるから、これに基づき遺言執行者が残余の配分を決定した上、遺贈の登記申請がされた場合、遺贈の登記をすることができます。

昭和34年5月6日民事甲第838号民事局長回答

ある財産についてその受遺者およびその持分率を決定し残余の配分率を遺言執行者において決定すべき旨の遺言遺言者の意思が確認できるから、これに基づき遺言執行者が残余の配分を決定した上、遺贈の登記申請がされた場合、これを受理して差し支えない(昭和34年5月6日民事甲第838号民事局長回答)としている。

なお、上記先例の約半年前には、同様の事例で、遺贈の登記をすることができないと判断されているものもある(昭和33年10月11日民事甲第2124号民事局長通達)。

【昭和33年10月11日民事甲第2124号民事局長通達】
受遺者およびその配分額の決定を遺言執行者に委ねた遺言は無効であると解すべきであるから、これに基づく遺贈の登記をすることができない(昭和33年10月11日民事甲第2124号民事局長通達)

(4)特定財産承継遺言と更正登記【令和5年3月28日民二538 】

法定相続分での相続登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記をいう。)がされている場合において、特定財産承継遺言が発見された場合には、どのような登記をすればよいですか

法定相続分での相続登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記をいう。)がされている場合において、特定財産承継遺言が発見された場合には、①登記原因及びその日付を「年月日【特定財産承継遺言の効力の生じた年月日】特定財産承継遺言」とする所有権更正登記をするか(令和5年3月28日付法務省民二第538 号)、②登記原因を「錯誤」とする抹消登記をすると考えられます。

【先例・通達】民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取り扱いについて(令和5年3月28日付法務省民二第538 号)

令和5年3月28日付法務省民二第538号 1.先例・通達名  民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取り扱いについて(令和5年3月28日付法務省民二…

(4)特定財産承継遺言と更正登記

(5)相続人が受遺者である遺贈と更正登記【令和5年3月28日民二538 】

法定相続分での相続登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記をいう。)がされている場合において、遺言相続人に対する遺贈が発見された場合には、どのような登記をすればよいですか。

法定相続分での相続登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記をいう。)がされている場合において、特定財産承継遺言が発見された場合には、①登記原因及びその日付を「年月日【遺贈の効力の生じた年月日】遺贈」とする所有権更正登記をするか(令和5年3月28日付法務省民二第538 号)、②登記原因を「錯誤」とする抹消登記をすると考えられます。

【先例・通達】民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取り扱いについて(令和5年3月28日付法務省民二第538 号)

令和5年3月28日付法務省民二第538号 1.先例・通達名  民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取り扱いについて(令和5年3月28日付法務省民二…

(5)相続人が受遺者である遺贈と更正登記

❖「遺贈による登記」の添付情報

(1)登記原因証明情報:遺言書

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、登記原因証明情報としては、「贈与」と同じように「遺贈があったことを報告する旨の書面」でよいでしょうか? それとも、遺言書そのものが必要でしょうか?

権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記原因証明情報を提供しなければならない(不動産登記法第61条)とされています。そして、「遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、登記原因証明情報として遺言書を添付する必要があります。

(2)登記識別情報(登記済証)

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、不動産の権利証である登記識別情報(又は登記済証)は必要でしょうか? 

登記権利者および登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供しなければならない(不動産登記法第22条)とされています。そして、「遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言者が所有権等を取得した際の登記識別情報または登記済証が必要となります。

質疑応答・登記研究222号64頁

遺贈」による所有権移転の登記の申請にも、登記義務者の権利に関する登記済証を添付すべきである(質疑応答・登記研究222号64頁)

(3)登記識別情報(登記済証)を紛失している場合

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、登記識別情報(又は登記済証)は必要とのことですが、遺言者がどこに保管していたかわからなく、探しても見つかりません。その場合には、どうすればよいですか? 

登記識別情報(登記済証)を紛失している場合には、事前通知制度本人確認情報制度で登記を行うことになります。

事前通知制度
遺贈を原因とする所有権移転登記の場合の事前通知は、遺言執行者がいる場合には遺言執行者に対して行われます。一方で、遺言執行者がいないときは、相続人全員に対して事前通知が行われます。
本人確認情報制度
遺贈を原因とする所有権移転登記の場合の本人確認情報制度は、遺言執行者がいる場合には遺言執行者に対しての本人確認情報が必要になります。一方で、遺言執行者がいないときは、相続人全員に対しての本人確認情報が必要になります。

(4)印鑑証明書【昭和30年8月16日民甲1734】

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、印鑑証明書が必要らしいですが、誰の印鑑証明書ですか? 

遺言執行者が、登記義務者として申請する場合には、法定代理人としての遺言執行者の印鑑証明書の添付を要し(昭和30年8月16日民事甲第1734号民事局長通達)、相続人が登記義務者として申請する場合には、相続人全員の印鑑証明書の添付が必要である。

昭和30年8月16日民事甲第1734号民事局長通達

遺言執行者が申請する場合には、法定代理人としての遺言執行者の印鑑証明書の添付を要する(昭和30年8月16日民事甲第1734号民事局長通達)。

(5)住所証明書

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、住民票の写し(又は戸籍の附票)が必要らしいですが、誰の住民票の写し(又は戸籍の附票)ですか? 

新たに登記名義人となる受遺者の住所を証する情報として、住民票の写し(又は戸籍の附票)を添付しなければなりません。オンライン申請をすることができる旨の法務大臣の指定 を受けた登記所においては、住民票コードを申請情報の内容とした場合には、住所証明書(住民票の写し等)の添付を省略することができます。

(6)資格証明書:遺言書【登記研究733号157頁】

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言執行者としての資格を証する書面には、遺言者の死亡を証する書面としての戸籍謄本のみでいいですか? 

遺言執行者が遺贈を登記原因とする権利移転の登記申請をする場合、遺言執行者としての資格を証する情報として、遺言書により遺言執行者が指定されている場合には、その遺言書遺言者の死亡が記載されている戸籍謄本が必要となります。

質疑応答・登記研究733号157頁

遺贈を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合、申請情報と併せて提供すべき登記原因証明情報は、登記名義人の死亡を証する情報のほかに、遺言書が必要である(質疑応答・登記研究733号157頁)。

(7)資格証明書:死亡記載戸籍【昭和59年1月10日民三150】

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言執行者としての資格を証する書面には、遺言のみでいいですか? 

遺言執行者が遺贈を登記原因とする権利移転の登記申請をする場合、遺言執行者としての資格を証する情報として、遺言書により遺言執行者が指定されている場合には、その遺言書遺言者の死亡が記載されている戸籍謄本が必要となります。

昭和59年1月10日民三第150号民事局長回答

遺贈による登記を申請するときは、家庭裁判所が選任した遺言執行者が申請人となる場合を除き、遺言執行者の代理権限を証する書面としての遺言者の死亡を証する書面の添付を要する(昭和59年1月10日民三第150号民事局長回答)

(8)資格証明書:裁判所で選任されたとき

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言執行者が裁判所で選任された場合、どのような書面が必要ですか? 

遺言執行者が裁判所により選任された場合には、遺言書および選任書が必要となります。

(9)資格証明書:遺言に基づく第三者の指定

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言執行者遺言に基づく第三者の指定により選任された場合、どのような書面が必要ですか? 

遺言に基づく第三者の指定により選任されている場合には、遺言書遺言者の死亡が記載されている戸籍謄本の他に指定書が必要となります。

(10)資格証明書:審判書があるとき【登記研究447号84頁】

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言執行者としての資格を証する書面として審判書があるときでも、被相続人の死亡記載のある戸籍謄本は必要ですか? 

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言執行者としての資格を証する書面として審判書があるとき、その審判書を添付すれば遺言者の死亡を証する書面としての戸籍謄本を添付する必要はない。

質疑応答・登記研究447号84頁

遺言執行者が、資格証明書として遺言書をもって遺贈の登記義務者となる場合には、遺言者の死亡を証する書面を添付すべきであり、遺言執行者が、家庭裁判所の審判により選任された場合には、その審判書を添付すれば右書面を添付する必要はない(質疑応答・登記研究447号84頁)。

(11)資格証明書:変更証明書【登記研究435号115頁】

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言執行者としての資格を証する書面に記載された遺言執行者の住所と添付された印鑑証明書の住所と一致しない場合は、その変更を証する書面の添付を必要ですか? 

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言執行者としての資格を証する書面に記載された遺言執行者の住所と添付された印鑑証明書の住所と一致しない場合は、その変更を証する書面の添付を必要です。

質疑応答・登記研究435号115頁

遺贈による所有権移転の登記申請を遺言執行者と受遺者が共同でする場合、遺言執行者の資格を証する書面として添付された遺言書に記載された遺言執行者の住所が添付された印鑑証明書の住所と一致しない場合は、その変更を証する書面の添付を必要とする(質疑応答・登記研究435号115頁)

(12)一般承継証明情報:相続人全員の戸籍

遺贈」を登記原因とする権利移転の登記を申請する場合、遺言執行者が選任されていない場合、登記義務者は遺贈者相続人全員になるようですが、どのような戸籍を添付しなければなりませんか? 

登記義務者が遺贈者相続人全員になる場合には、遺贈者法定相続人全員を明らかにするために、相続登記と同じように、遺贈者の出生から死亡までの戸籍謄本及び相続人全員の戸籍謄本が必要になります(不動産登記法第61条、第62条、不動産登記令第7条第1項第5号イ)。

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