配偶者居住権のまとめ(6)

 平成31年4月17日より,少しずつ「配偶者居住権のQ&A」を作成しております(過去の記事の一覧)

 なお,配偶者居住権及び配偶者配偶者短期居住権の新設等の施行日は,2020年4月1日(令和2年4月1日)になります。



【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者は,その居住建物の一部を新たに営業のために使用することはできますか?具体的には,配偶者の死亡後,配偶者居住権を取得した後に2階建ての1階で喫茶店を開きたいと考えていますが,可能でしょうか?
 配偶者の居住権を保護するという制度です。したがって,相続開始前には配偶者が使用していなかった部分や居住の用に供していなかった部分についても事後的に居住の用に供することは妨げられないこととしており,その限度では従前の用法を変更することを認めることとしています。
 もっとも,配偶者は,従前の用法に従い善良な管理者の注意をもって,居住建物の使用及び収益をしなければなりません(民法1032条1項)。したがって,居住の用に供していた部分を営業の用に供することは用法遵守義務違反となります。

【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者は,その居住建物を増築したり,バリアフリー化することはできないのですか?
 配偶者は,居住建物の所有者の承諾を得なければ第三者に居住建物の使用又は収益をさせたり居住建物の増改築をしたりすることはできないこととしています(民法1032条3項) 。
 したがって,増築に関しては,建物所有者の承諾がなければ,行えないことになります。バリアフリー化に関しましても,改築とみなされるほどのものであると,建物所有者の承諾が必要だと考えられますが,取り外し可能な軽度のバリアフリー化であれば,建物所収者の承諾がなくても,問題はないと考えられます。

【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者は,その居住建物を修繕する際には,建物所有者の承諾等は必要なのでしょうか?
 居住建物修繕が必要な場合には,まず,配偶者において修繕することができます(民法1033条1項)。したがって,配偶者居住権を取得した配偶者は,その居住建物を修繕する際には,建物所有者の承諾は不要です。これは居住建物の修繕について,最も利害関係を有しているのは,実際に居住建物を使用している配偶者であり,居住建物の所有者は,配偶者に対して修繕義務を負わず,居住建物の通常の必要費となる修繕費用は,配偶者の負担となることから配偶者の修繕の一時的な権限を付与することとしたものです(民法1034条1項)。

【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者が,その居住建物を修繕をしない場合には,建物所有者は,修繕をすることはできるのでしょうか?
 居住建物の所有者は,その配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしない時に修繕をすることができます(民法1033条2項)。

【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者が,その居住建物を修繕をできない場合には,配偶者は,その旨を建物所有者に伝える必要はありますか?
 居住建物の所有者に修繕の機会を与えるために,賃貸借に関する民法615条と同様に居住建物が修繕を要し又は居住建物について権利を主張する者があるときは,配偶者は,建物所有者に対し遅滞なくその旨を通知しなければなりません。
 なぜならば,配偶者が居住建物について必要な修繕をしない場合に,建物の保存のために居住建物所有者において修繕をしたいという場合も多いと考えられるが,居住建物の所有者は,実際に建物建物を使用しておらず修繕を要する状態になっていることに気づかないこともあるからです。
 もっとも,建物所有者が,居住建物が修繕を要し又は居住建物について権利を主張する者があることを既に知っている場合には,通知をする必要にかけることから,これらの場合には,通知を要しないこととしています(民法1033条3項)。

【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者が,その居住建物を修繕する場合には,配偶者は,その旨を建物所有者に伝える必要はありますか?
 配偶者が自ら修繕をする場合には,配偶者が自らが修繕をする旨の通知をする必要にかけることから,通知を要しないこととしている(民法1033条3項)
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