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「配偶者居住権」の窓口

「配偶者居住権」の窓口・報酬・費用

目次-Contents



第1 配偶者居住権のメリット

1 配偶者を保護することができる

2 配偶者居住権で相続税の節税

(1)配偶者居住権等の評価の考え方

(2)敷地を使用する権利等の評価の考え方

(3)配偶者居住権者の消滅時の計算

【配偶者居住権者の死亡による配偶者居住権の消滅】
 配偶者が死亡した場合には、民法の規定により配偶者居住権が消滅することとなります。この場合、居住建物の所有者はその居住建物について使用収益ができることとなりますが、民法の規定により(予定どおり)配偶者居住権が消滅するものであり、配偶者から居住建物の所有者に相続を原因として移転する財産はありませんので、相続税の課税関係は生じません(配偶者居住権の存続期間が終身ではなく、例えば10年といった有期で設定されて存続期間が満了した場合も、同様に贈与税の課税関係は生じません。)。
令和元年度税制改正の解説(財務省主税局税制第一課主税調査官等)

【合意解除等による配偶者居住権の消滅】
 配偶者居住権の存続期間の満了前に何らかの事由により配偶者居住権が消滅することとなった場合には、居住建物の所有者は期間満了前に居住建物の使用収益ができることとなります。これは、配偶者居住権が消滅したことにより所有者に使用収益する権利が移転したものと考えられることから、相続税法第 9条の規定により配偶者から贈与があったものとみなして居住建物の所有者に対して贈与税が課税されるものと考えられます。
令和元年度税制改正の解説(財務省主税局税制第一課主税調査官等)

POINT

□ 民法改正により配偶者を守るための配偶者居住権の制度が創設された。
□ 配偶者居住権及び配偶者配偶者短期居住権の新設等の施行日は,2020年4月1日(令和2年4月1日)
□ 配偶者居住権を設定することによって,相続税の節税効果が期待できる(令和元年7月22日時点における財務省主税局税制第一課主税調査官等の考え)。

第2 配偶者(長期)居住権のQ&A

1.配偶者居住権の性質

配偶者居住権とは


【配偶者居住権の性質】配偶者居住権とは,どのような権利なのですか?
 配偶者居住権とは,被相続人の配偶者が,相続開始の時に被相続人所有の建物に居住していた場合に,当該配偶者が,遺産分割,遺贈または死因贈与により,その建物の全部について使用及び収益をすることができる権利となります。

性質は賃貸借か使用貸借か


【配偶者居住権の性質】配偶者居住権は,賃貸借契約でしょうか?それとも使用貸借でしょうか?賃貸借契約であると,賃料が発生すると思いますが賃料は発生するのでしょうか?
 「法的性質については規定上特に明確にしていないが賃借権類似の法定の債権であると考えられる。もっとも,配偶者は遺産分割においてこれを取得する場合でも自己の具体的相続分において取得することになるから,その存続期間中に賃料の支払義務を負わず無償で使用することができるなど賃借権とも異なる性質を有している(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]14頁)」とされています。
 したがって,配偶者居住権が存続する限り,配偶者は無償で使用できるため,賃料は発生しません。また,無償で使用できるという点からすると,配偶者居住権は,使用貸借権に類似する権利なのではないでしょうか。

債権者と債務者


【配偶者居住権の性質】配偶者居住権の債権者と債務者は誰でしょうか?
 配偶者居住権の債権者は配偶者となります。また,債務者は,居住建物の所有者になります。なお,例えば,配偶者が遺贈により配偶者居住権を取得したが,居住建物については遺産共有状態にある場合には,債務者は配偶者を含む相続人全員ということになります。

2.配偶者居住権の要件(配偶者)

内縁の妻


【配偶者居住権の成立要件】配偶者には,内縁の妻は含まれるのでしょうか?
配偶者居住権の「配偶者」(民法1028条1項)は,法律上被相続人と婚姻をしていた配偶者をいい,内縁の配偶者は含まれません(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法11頁)。配偶者居住権は,基本的には,遺産分割等に選択肢を増やす趣旨で創設したものであるが,内縁の配偶者はそもそも相続権を有していないことや,内縁の配偶者を権利主体に含めることとすると,その該当性をめぐって紛争が複雑化,長期化するおそれがあるからです。

3.配偶者居住権の要件(建物)

被相続人名義の建物


【配偶者居住権の成立要件】配偶者居住権の目的となる建物は,被相続人名義の建物でないといけないのでしょうか?
配偶者居住権の目的となる建物は,相続開始の時点において,被相続人の財産に属した建物でなければなりません(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法11頁)。したがって,被相続人が賃借していた建物に配偶者が居住していた場合には,配偶者居住権は成立しません

共有の建物でもよいか


【配偶者居住権の成立要件】配偶者居住権の目的となる建物は,被相続人名義の単有の建物でないといけないのでしょうか?共有の建物の場合には,常に,配偶者居住権を認めることはできないのでしょうか?
配偶者居住権の目的となる建物は,原則として,相続開始の時点において,被相続人の財産に属した,被相続人の単有の建物でなければなりません。したがって,被相続人が建物の共有持分を有していたに過ぎない場合には,原則として,配偶者居住権を成立させることはできません(民法1028条1項ただし書)。もっとも,居住建物が夫婦の共有になっている場合には,配偶者居住権が認められます。

被相続人が長期入院していた場合


【配偶者居住権の成立要件】被相続人の配偶者は,被相続人の「相続開始の時に居住していた」とありますが,配偶者が長期入院をしている場合には,配偶者居住権は認められないのでしょうか?
配偶者が相続開始時点では入院していたために,その時点では自宅である居住建物にいなかった場合であっても,配偶者の家財道具がその建物に存在しており,退院後はそこに帰ることが予定されていた場合のように,その建物が配偶者の生活の根拠として実態を失っていないと認められる場合(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法12頁)には,配偶者居住権は認められます。

生活の拠点が複数で遠隔地の場合


【配偶者居住権の成立要件】私と妻は,長年,夏は札幌のマンションで住み,冬は沖縄の海が見える家で住んでいます。私は,妻のために札幌のマンションと沖縄の家に配偶者居住権を与えたいと思いますが可能でしょうか?
生活の本拠は通常一箇所であることが多いと思われるが,一定の期間,例えば半年ごとに生活の拠点を変えているような場合には,例外的に生活の本拠が複数認められることもありえるのものと考えられ,このような場合でも被相続人所有の建物に居住していた時は,複数の建物について配偶者居住権が成立することもあり得る(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法12頁)と考えられます。

生活の拠点は一箇所だが複数物件に配偶者居住権を設定可能か


【配偶者居住権の成立要件】公道に接している家とその裏側にある公道に接していない家があります。公道に接している家は,建物としては古く何かと不便ですので,公道に面していない裏側の建物を主に生活の拠点とし,公道に接している家は郵便の受領のためや家財道具を収納するために使用しています。この場合,両方の家に配偶者居住権をつけることはできるのでしょうか?
生活の本拠は一箇所であっても例えば二棟の建物を一体として居住の用に供していた場合等については二棟の建物について配偶者居住権が成立することもあり得る(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法12頁)と考えられます。

店舗兼住宅


【配偶者居住権の成立要件】私と妻は,2階建ての建物で,1階を駄菓子屋の店舗として使用し,2階を居住用として使用しています。この場合,この家に配偶者居住権をつけることはできるのでしょうか?
配偶者が建物全部を居住の用に供していたことは要件とされていません。したがって,配偶者が被相続人所有の建物を店舗兼住宅として使用していた場合であっても,配偶者が建物の一部を居住の用に供していたのであれば,「居住していた」という要件を満たす(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法12頁)ことになります。

4.配偶者居住権の要件(発生原因事実)

配偶者居住権の要件事実


【配偶者居住権の成立要件】配偶者居住権は,常に発生する権利ですか?例えば,私の自宅を前妻の子に渡したいと考えていますが,後妻である現在の妻が亡くなるまでは,自宅は妻が使って欲しいと考えています。
 配偶者居住権は,配偶者の居住権を保護するために認められた法定の権利で,その発生原因となる法律行為についても法定することとし,これを遺産分割,遺贈または死因贈与の三つに限定しています。したがって,今回の場合,遺言などで,配偶者居住権の設定をしておく方がよいと思います。

配偶者居住権と特別受益


【配偶者居住権の成立要件】配偶者居住権の贈与は,配偶者に対する特別受益に該当しないのですか?
 配偶者が,遺産分割により配偶者居住権を取得する場合には,原則として,他の遺産を取得する場合と同様に自らの具体的相続分の中からこれを取得することになります。また,遺贈または死因贈与により配偶者居住権を取得する場合には特別受益に該当することになります(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法14頁)。
 もっとも,配偶者居住権の遺贈または死因贈与がされた場合には,民法903条4項の規定が準用されるため(民法1028条3項),婚姻期間が20年以上の夫婦間において配偶者居住権の遺贈または死因贈与がされた場合には,これらの遺贈または死因贈与は原則として特別受益とは取り扱われないこととなります(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法14頁)。

配偶者居住権と遺産分割審判(調停)


【配偶者居住権の成立要件】亡夫の前妻の子が,配偶者居住権の設定につき,反対しています。この場合,遺産分割の調停や審判によって配偶者居住権を発生させることはできますか?
  民法1028条1項1号の遺産分割には遺産分割の審判も含まれるから,他の相続人が反対してる場合あっても審判によって配偶者に配偶者居住権を取得させることも可能です。
 遺産分割の請求を受けた家庭裁判所は,共同相続人の間で配偶者に配偶者居住権を取得させることについて合意が成立している時か,または,配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要であると認めるときに限り配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の審判をすることができることとしています(民法1029条)

配偶者居住権と遺言


【配偶者居住権の成立要件】配偶者居住権を“遺言”で設定する場合に,気をつけなければならないことはありますか?
 被相続人が遺言によって配偶者に配偶者居住権を取得させるためには“遺贈”によることを要します。特定財産承継遺言,いわゆる相続させる旨の遺言の家遺産分割方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人または数人に承継させる旨の遺言(民法1014条2項参照)によることはできないこととしています。
 これは仮に,特定財産承継遺言による取得を認めることとすると,配偶者が配偶者居住権の取得を希望しない場合にも配偶者居住権の取得のみを拒絶することができずに相続放棄をするしか他ないこととなり,かえって配偶者の利益を害するおそれがあること 配偶者居住権の取得には一定の義務の負担を伴うことになるが一般に遺産分割方法の指定について負担をすることはできないとかいされていること等を考慮したものです。(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法14頁)
 このため,遺言者があえて配偶者居住権を目的として特定財産承継遺言をしたと認められる場合には,その部分は無効ということになるが,通常は遺言者があえて無効な遺言をすることは考え難い。したがって,例えば相続させる旨の遺言により遺産の全部を対象として各遺産の帰属は決められ,その中で配偶者に配偶者居住権を相続させる旨が記載されていた場合でも,少なくとも配偶者居住権に関する部分については以上の趣旨であると解するのが遺言者の合理的意思に合致するものと考えられる(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法14頁)。

配偶者居住権と死因贈与


【配偶者居住権の成立要件】民法1028条1項には,死因贈与はあげられていませんが,配偶者居住権を目的とする死因贈与はできるのですか?
 被相続人は,その生前に配偶者との間で配偶者居住権を目的とする死因贈与契約を締結することもできます。民法1028条1項各号には死因贈与はあげられていませんが,死因贈与については民法554条においてその性質に反しない限り遺贈に関する規定が準用されることから1028条1項各号に列挙しなかったにすぎず死因贈与による配偶者居住権の成立を否定する趣旨ではありません(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法11頁)。

5.配偶者居住権の存続期間

存続期間


配偶者居住権は,いつまで続くのでしょうか?
原則として配偶者の終身の間となります。もっとも,配偶者居住権の存続期間を遺産分割,遺贈または死因贈与において別段の定めをした場合には,その期間までとなります。

存続期間の伸長・更新


【配偶者居住権の存続期間】配偶者居住権の存続期間が定められた場合,存続期間を更新したり,延長することはできるでしょうか?
 配偶者居住権の存続期間が定められた場合,その延長や更新をすることはできません。配偶者居住権は配偶者がその建物を無償で使用することができる権利であるから,その財産評価額は基本的には配偶者居住権の存続期間が長くなるにしたがって高くになると考えられるが配偶者居住権の存続期間の延長や更新を認めることとすると配偶者居住権の財産評価を適切に行うことが困難になるためです(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]15頁)。

存続期間の事実上の延長方法


【配偶者居住権の存続期間】配偶者居住権の存続期間が定められた場合,存続期間を更新をする方法はないのでしょうか?
 配偶者居住権の存続期間が定められた場合,その延長や更新をすることはできません。もっとも,配偶者居住権の存続期間が終了した時点で,居住建物の所有者と配偶者との間で新たに使用貸借契約や賃貸借契約が締結をすれば,配偶者居住権の存続期間経過後も配偶者が居住建物に居住し続けられることになります。

存続期間中の配偶者の死亡


配偶者居住権の存続期間中に配偶者が死亡した場合には,存続期間中は,配偶者の相続人が当該配偶者居住権を相続するということでしょうか?
 配偶者居住権の存続期間は,原則として配偶者の終身の間とされており (民法1030条本文),遺産分割等において別段の定めをした場合でも,存続期間中に配偶者が死亡したときは,配偶者居住権は消滅します(民法1036条において準用する民法597条3項)。したがって,配偶者が配偶者居住権の存続期間中に死亡した場合には,当然に,当該配偶者居住権が消滅しますので,配偶者居住権は相続しません。

6.配偶者居住権と建物所有者の法律関係

(1)配偶者居住権の処分・相続

売買・贈与・相続


配偶者居住権を譲渡(売買・贈与等),または相続することは可能でしょうか?
配偶者居住権は,配偶者の居住権を保護するために特に認められた権利であり,帰属上の一身専属権とされています。このため配偶者居住権の帰属主体は配偶者に限定され,配偶者はこれを譲渡することができず(民法1032条2項),配偶者が死亡した場合には当然に消滅するため,相続の対象にもなりません(民法1036条において準用する597条3項) 。

(2)配偶者居住権の使用・収益

事後的な使用方法の変更①


【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者は,その居住建物を増築したり,バリアフリー化することはできないのですか?
 配偶者は,居住建物の所有者の承諾を得なければ第三者に居住建物の使用又は収益をさせたり居住建物の増改築をしたりすることはできないこととしています(民法1032条3項) 。
 したがって,増築に関しては,建物所有者の承諾がなければ,行えないことになります。バリアフリー化に関しましても,改築とみなされるほどのものであると,建物所有者の承諾が必要だと考えられますが,取り外し可能な軽度のバリアフリー化であれば,建物所収者の承諾がなくても,問題はないと考えられます。

事後的な使用方法の変更②


【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者は,その居住建物の一部を新たに営業のために使用することはできますか?具体的には,配偶者の死亡後,配偶者居住権を取得した後に2階建ての1階で喫茶店を開きたいと考えていますが,可能でしょうか?
 配偶者の居住権を保護するという制度です。したがって,相続開始前には配偶者が使用していなかった部分や居住の用に供していなかった部分についても事後的に居住の用に供することは妨げられないこととしており,その限度では従前の用法を変更することを認めることとしています。
 もっとも,配偶者は,従前の用法に従い善良な管理者の注意をもって,居住建物の使用及び収益をしなければなりません(民法1032条1項)。したがって,居住の用に供していた部分を営業の用に供することは用法遵守義務違反となります。

建物所有者の修繕義務の有無


【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者は,建物の所有者に対し,水道管修理・風呂釜の修理・電気設備等の修理をするように請求できますか?
 賃貸借契約における賃貸人と異なり,居住建物の所有者は,配偶者に対し建物の使用及び収益をするのに適した状態にする義務(修繕義務)までは負っておらず,配偶者が無償で居住建物を使用することを受忍すれば足りると考えられています。

建物所有者の修繕の可否


【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者が,その居住建物を修繕をしない場合には,建物所有者は,修繕をすることはできるのでしょうか?
 居住建物の所有者は,その配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしない時に修繕をすることができます(民法1033条2項)。

修繕についての建物所有者の承諾の要否


【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者は,その居住建物を修繕する際には,建物所有者の承諾等は必要なのでしょうか?
 居住建物修繕が必要な場合には,まず,配偶者において修繕することができます(民法1033条1項)。したがって,配偶者居住権を取得した配偶者は,その居住建物を修繕する際には,建物所有者の承諾は不要です。これは居住建物の修繕について,最も利害関係を有しているのは,実際に居住建物を使用している配偶者であり,居住建物の所有者は,配偶者に対して修繕義務を負わず,居住建物の通常の必要費となる修繕費用は,配偶者の負担となることから配偶者の修繕の一時的な権限を付与することとしたものです(民法1034条1項)。

配偶者の建物所有者に対する通知義務①


【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者が,その居住建物を修繕する場合には,配偶者は,その旨を建物所有者に伝える必要はありますか?
 配偶者が自ら修繕をする場合には,配偶者が自らが修繕をする旨の通知をする必要にかけることから,通知を要しないこととしている(民法1033条3項)

配偶者の建物所有者に対する通知義務②


【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者が,その居住建物を修繕をできない場合には,配偶者は,その旨を建物所有者に伝える必要はありますか?
 居住建物の所有者に修繕の機会を与えるために,賃貸借に関する民法615条と同様に居住建物が修繕を要し又は居住建物について権利を主張する者があるときは,配偶者は,建物所有者に対し遅滞なくその旨を通知しなければなりません。
 なぜならば,配偶者が居住建物について必要な修繕をしない場合に,建物の保存のために居住建物所有者において修繕をしたいという場合も多いと考えられるが,居住建物の所有者は,実際に建物建物を使用しておらず修繕を要する状態になっていることに気づかないこともあるからです。
 もっとも,建物所有者が,居住建物が修繕を要し又は居住建物について権利を主張する者があることを既に知っている場合には,通知をする必要にかけることから,これらの場合には,通知を要しないこととしています(民法1033条3項)。

建物所有者の配偶者に対する損害賠償請求権


配偶者居住権を取得した配偶者が,居住建物の管理を十分にしなかったため,居住建物が雨漏りをしており,当該居住建物の柱が腐食しています。この場合に,配偶者に対し,損害賠償請求をすることができるのでしょうか?
 配偶者の善管注意義務違反等による損害賠償請求権及び居住建物についての費用償還請求権は,居住建物の所有者が居住建物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければなりません(民法1036条において準用する民法600条1項)。

敷地を利用できるか


【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者は,建物の敷地である庭を使用することはできますか?
 配偶者は,配偶者居住権に基づき居住建物の使用及び収益をする場合にはそれに必要な限度で敷地を利用することができます。

居住建物所有者の承諾の要否


【使用及び収益】配偶者居住権を取得した配偶者は,居住建物の自由に使用してもよいのでしょうか?例えば,配偶者の友人に賃貸をして,収益を上げる事はできるでしょうか?
 配偶者居住権は,無償で居住建物の使用及び収益をすることができる権利となりますが,使用貸借権の借主と同様に,配偶者は,居住建物所有者の承諾を得なければ,“第三者”に居住建物を使用又は収益させることはできないこととしています(民法1032条3項) 。

収益とは


【使用及び収益】居住建物の収益とは,具体的にはどういうことでしょうか?例えば,二階建て居住建物の一階部分で駄菓子屋を営んでいるのですが,配偶者居住権を設定すれば,配偶者は,その駄菓子屋を継続させることはできるのでしょうか?
 居住建物の収益とは。居住建物を賃貸して利益を上げることなどを言います。利益を得るための活動を行う場所として居住建物を使用すること(居住建物の一部で小売店や飲食店を営業すること)は,基本的には収益に当たらないと解されます(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]15頁)。

配偶者居住権が及ぶ範囲


【使用及び収益】区分所有建物でないアパートの一室が被相続人と配偶者の居住のために使用され,他の部屋は被相続人が第三者に賃貸をしていた場合には,配偶者居住権が及ぶ範囲は,アパートの一室なのでしょうか?
 区分所有建物でないアパートの一室が被相続人と配偶者の居住のために使用され ,他の部屋は被相続人が第三者に賃貸をしていたというケースの場合,配偶者居住権はアパート全体について成立します。これは,①建物の一部について登記をすることを認めることが技術的に困難であること,また,②建物の一部について配偶者居住権が成立することを認めると,配偶者は居住建物全体についての配偶者居住権を取得することよりも低い評価額で配偶者居住権を取得することができることになり,配偶者居住権を執行妨害目的等で利用されるおそれがあること等を考慮したものです。

配偶者は賃料を受領できるか


【使用及び収益】区分所有建物でないアパートの一室が被相続人と配偶者の居住のために使用され,他の部屋は被相続人が第三者に賃貸をしていた場合に,その第三者から受領していた賃料は,配偶者居住権を取得した配偶者が取得することになりますか?
 第三者から収受している賃料については,当該賃貸借契約にかかわる賃貸人の地位を承継する者が取得することとなり,通常は居住建物所有者が取得することになるものと考えられます。なぜならば,①賃借人たる第三者は既に被相続人から引き渡しを受けていることから配偶者は当該第三者に対しては配偶者居住権を対抗することができないことになる(借地借家法31条)ことと,②配偶者居住権の成立と,すでに成立している賃貸借契約上の地位の承継は,別の問題であることからです。

居住建物の固定資産税の納税義務者①


居住建物の固定資産税は,建物所有者が支払うのでしょうか?それとも,配偶者居住権を取得した配偶者が,居住建物の固定資産税を支払うのでしょうか?
 配偶者は居住建物通常の必要費を負担します(民法1034条1項)。通常の必要費とは,使用貸借に関する民法595条1項に規定する通常の必要費と同一と考えられています。したがって,通常の必要費には居住建物保存に必要な通常の修繕費用の他,居住建物やその敷地の固定資産税等が含まれるものと考えられます(最二小判昭和36年1月27日集民48号179頁)

事件番号  昭和33(オ)310
事件名  家屋明渡請求
裁判年月日  昭和36年1月27日
法廷名  最高裁判所第二小法廷
裁判種別  判決
結果  棄却
判例集等巻・号・頁  集民 第48号179頁


         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人諏訪栄次郎の上告理由第一点について。
 論旨は「D及び同Eは真実本件家屋を被上告人に譲渡したものであつて、虚偽仮装のものではなく、また、信託法一一条違反のものでもない」旨の原審(及びその引用する第一審判決)の認定を争うのであるが、右原審(及びその引用する第一審判決)の認定は、その挙示する証拠関係に照し、首肯することができ、その間所論のごとき違法はない。
 同第二点について。
 論旨は、原判決が、被上告人の上告人に対する本訴明渡請求は権利の濫用というを得ない旨判断したことを非難するのであるが、原審認定の事実関係のもとでは、被上告人の本訴明渡請求をもつて権利の濫用とはいい難い。所論はひつきよう、原審の事実認定を争うか、または、原審の認定しない事実を前提として原判決を非難するものであつて、採用するを得ない。
 同第三点について。
 論旨は、「Dが本件家屋を被控訴人(被上告人)に売り渡したことは、Eの住居を不安ならしめる意思を有したものとは勿論認められず、また、不安ならしめるものとも認められないから、本件家屋の処分行為が未成年者Eと利益相反の行為と認められない」旨の原審の認定判断を非難するに帰する。
 しかし、右原審の認定は、その挙示の証拠に徴し、肯認することができる。のみならず、本件の事実関係は、本件家屋がDとその子Eの共有に係るものであり、Eが未成年者であるため、親権者たるDが同人の法定代理人としてその持分を同時に被上告人に売り渡したというのであつて、右売渡行為自体から見て、親権者の代理行為が親権者のために利益であつて、未成年者のために不利益な結果を生ずるものと認め得る場合ではないから、本件のごとき場合には、民法八二六条を適用すべきではないと解するを相当とする。従つて所論は採用できない。
 同第四点について。
 論旨(一)(二)について。屋根の葺替費用を有益費とし、勝手、湯殿の工事費用を通常の必要費又は有益費であるとした原審の認定判断は、その挙示の証拠関係に照し、首肯し得られる。所論は採用できない。
 論旨(三)について。民法一九六条二項により占有者が有益費の償還を請求するためには、有益費の支出によつて生じた価格の増加が現存する場合に限るのであるから、上告人が右事実の主張立証をしない本件において原判決が「現存価格につき主張立証がないから、有益費の償還請求を認め得ない」旨判示したのは相当であつて、所論は採用できない。
 論旨(四)について。建物の占有者が建物の敷地の地代及び建物の固定資産税を支払つたとしても、右の如き地代及び固定資産税はいずれも建物の維持保存のために当然に支出ぜらるべき費用ではあるが、右は民法五九五条一項の「通常の必要費」に属するものというべきであるから、上告人は右支出につき償還請求権を有しないことになり、従つて、原審が留置権を否定したのは結局相当であつて、論旨は採用できない。
 同第五点について。
 原判決に所論のごとき上告人の主張しない抗弁事実につき判断した違法があるとしても、何ら原判決に影響を及ぼすこと明かな法令違背とはいえないから、所論は採用の限りでない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

居住建物の固定資産税の納税義務者②


居住建物の固定資産税を建物所有者が支払ってしまった場合,配偶者居住権を取得した配偶者に請求をすることができるのでしょうか?
 固定資産税納税義務者は,固定資産の所有者とされているため,配偶者居住権が設定されている場合でも,管轄の税務署等に届出をしない限り,建物所有者が納税義務者になります。もっとも,配偶者は居住建物通常の必要費を負担します(民法1034条1項)ので,居住建物の所有者は固定資産税を納付した場合には配偶者に対して求償することができることになります。

7.配偶者居住権と第三者の法律関係

配偶者居住権の第三者対抗要件(登記)


配偶者居住権を第三者に主張するには,どのようにすればよいでしょうか?
配偶者居住権を第三者に対抗(主張)をするには,配偶者居住権の登記をしなければなりません。

配偶者居住権と建物の引渡しの関係


建物賃借権の場合には,賃借権の登記がなくても,建物の引渡しがあったときは,その後その建物について第三者に対抗(主張)することができはずですが,配偶者居住権では引渡しは第三者に対抗するための要件ではないのですか?
 配偶者居住権では,建物の賃借権と異なり,居住建物引き渡しを対抗要件とすることとはしていません(借地借家法31条参照)。
 なぜならば,配偶者居住権は相続開始時に配偶者が居住建物に居住していたことがその成立要件とされているため,居住建物の引き渡しを対抗要件とすると,建物の外見上は何の変化もないことになり,公示手段として極めて不十分なものになるものと考えられるからです。
 また,配偶者居住権は無償で居住建物を使用することができる権利であるから,配偶者が対抗要件を取得した後に居住建物所有権を譲り受けた者や居住建物を差し押さえをした債権者等の第三者は,賃借権の場合とは異なり存続期間中は建物使用の対価すら取得することができないこととなるため第三者に権利の内容を適切に公示すべき必要性が高いからです。

配偶者居住権に引渡し猶予は適用されるか否か


配偶者居住権が設定されるより前の順位で抵当権設定登記があり,当該建物につき,当該抵当権に基づいて競売されたとき,配偶者居住権を取得した配偶者は,建物の競売における買受人の買受けの時から6か月間は,建物の引渡しを猶予されるのでしょうか?
 配偶者居住権については,民法395条1項の抵当建物使用者の引渡しの猶予の適用はありません。なぜならば,配偶者居住権は無償で居住することができる権利であるからです。したがって,配偶者居住権が抵当権に対抗することができない場合に,居住建物が抵当権に基づいて競売されたときは,競落人は配偶者に対して直ちに居住用建物明け渡しを請求することができることになります。

8.配偶者居住権の財産評価

配偶者居住権の財産評価をするときとは


配偶者居住権の財産評価をする必要がある場合とは,どのような場合でしょうか?
 まず,被相続人の死亡時に,被相続人に関する相続税の計算のときに必要になります。
 また,配偶者が遺産分割において配偶者居住権を取得する場合には,他の遺産を取得する場合と同様を自らの具体的相続分においてこれを取得することになりますが,その遺産分割をする際に,配偶者居住権の財産評価を行う必要があります。
 さらに,配偶者が遺贈や死因贈与によって,配偶者居住権を取得した場合,他に遺産分割の対象となる財産があれば,特別受益(民法903条)との関係で配偶者の具体的相続分に影響を与える場合がありますが,他に遺産分割の対象となる財産がない場合にも遺留分侵害額を算定する際には,配偶者居住権の財産評価を行う必要があります。

配偶者居住権の財産評価の計算方法の種類


配偶者居住権の財産評価の計算方法には,どのようなものがありますか?
 配偶者居住権の財産評価の計算方法には,大きく分けて3つの方法があります。①公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会の計算方法,②平成31年度税制改正大綱の計算方法,③法制審議会民法(相続関係)部会第19回会議における計算方法,となります。

公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会の計算方法


公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会の計算方法とは,どのような計算方法なのでしょうか?
 公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会は,配偶者居住権の評価方法の一つのあり方として,「配偶者居住権の価額は,居住建物の賃料相当額から配偶者が負担する通常の必要費を控除した価額に,存続期間に対応する年金原価率を乗じた額である」とする考え方を示しています。

平成31年度税制改正大綱の計算方法


平成31年度税制改正大綱の計算方法とは,どのような計算方法なのでしょうか?
 平成31年度税制改正大綱の計算方法は下記のとおりです。

【平成31年度税制改正大綱】
民法(相続関係)の改正に伴い、次の措置を講ずる。
① 相続税における配偶者居住権等の評価額を次のとおりとする。
 イ 配偶者居住権
建物の時価-建物の時価×(残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
 ロ 配偶者居住権が設定された建物(以下「居住建物」という。)の所有権 建物の時価-配偶者居住権の価額
 ハ 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利
土地等の時価-土地等の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
 ニ 居住建物の敷地の所有権等
土地等の時価-敷地の利用に関する権利の価額
(注1)上記の「建物の時価」及び「土地等の時価」は、それぞれ配偶者居住権が設定されていない場合の建物の時価又は土地等の時価とする。
(注2)上記の「残存耐用年数」とは、居住建物の所得税法に基づいて定められている耐用年数(住宅用)に1.5を乗じて計算した年数から居住建物の築後経過年数を控除した年数をいう。
(注3)上記の「存続年数」とは、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める年数をいう。
 (イ)配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間である場合 配偶者の平均余命年数
 (ロ)(イ)以外の場合 遺産分割協議等により定められた配偶者居住権の存続期間の年数(配偶者の平均余命年数を上限とする。)
(注4)残存耐用年数又は残存耐用年数から存続年数を控除した年数が零以下となる場合には、上記イの「(残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数」は、零とする。

法制審議会民法(相続関係)部会第19回会議における計算方法


法制審議会民法(相続関係)部会第19回会議における計算方法とは,どのような計算方法なのでしょうか?
 法制審議会民法(相続関係)部会第19回会議における計算方法とは,「居住建物及びその敷地の価値から配偶者居住権の負担付の各所有権の額を控除した額を配偶者居住権の価額とする方法」となります。

9.配偶者居住権の消滅

配偶者居住権の消滅事由


配偶者居住権はどのような場合に,消滅するのでしょうか?
 配偶者居住権の消滅原因としては,①居住建物所有者による消滅請求(民法1032条4項),②存続期間の満了(民法1036条において準用する民法597条1項),③配偶者の死亡(民法1036条において準用する民法597条3項),④居住建物の全部滅失等(民法1036条において準用する民法616条の2)などがあります。
民法1032条

(配偶者による使用及び収益)
第千三十二条 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
2 配偶者居住権は、譲渡することができない。
3 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
4 配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。

民法1036条

(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)
第千三十六条 第五百九十七条第一項及び第三項、第六百条、第六百十三条並びに第六百十六条の二の規定は、配偶者居住権について準用する。

民法597条

(期間満了等による使用貸借の終了)
第五百九十七条 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

民法616条の2

(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了)
第六百十六条の二 賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。

配偶者居住権の消滅請求


配偶者居住権を得た配偶者が,勝手に,居住建物を増築したのですが,その場合には,居住建物の所有者は,当該配偶者に対し配偶者居住権の消滅請求をすることができるでしょうか?
 配偶者が,民法1032条1項または民法1032条2項の規定に違反した場合,つまり,用法遵守義務や善管注意義務に違反した場合や居住建物の所有者の承諾を得ずに第三者に使用収益をさせ又は増改築をした場合には,居住建物所有者は,配偶者に対して相当の期間を定めて是正の催告を行い,この期間内に是正をされない時は配偶者に対する意思表示によって,配偶者居住権を消滅させることができます。
 したがって,配偶者居住権を得た配偶者が,勝手に,居住建物を増築した場合,居住建物の所有者は,当該配偶者に対し配偶者居住権の消滅請求をすることができます。

配偶者居住権の消滅請求のための是正の催告


配偶者に対する配偶者居住権の消滅請求の場合には,常に,“是正の催告”は必要なのでしょうか?
 配偶者に対する配偶者居住権の消滅請求の場合には,常に,“是正の催告”は必要となります(民法1032条4項)。
 なぜならば,①配偶者は,自らの具体的相続分において,配偶者居住権を取得しており,その意味では,権利取得の対価を負担していることや,②配偶者居住権は審判での設定も認められているなど,必ずしも当事者間の信頼関係に基づくものとは言えないためです(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法23頁)。
 なお,配偶者短期居住権の消滅請求(民法1038条3項)の場合は,是正の催告は必要的なものではありません。
民法1038条

(配偶者による使用)
第千三十八条 配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3 配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。

配偶者居住権の消滅請求と配偶者居住権の譲渡


配偶者居住権を得た配偶者が,勝手に,配偶者居住権を譲渡したのですが,その場合には,居住建物の所有者は,当該配偶者に対し配偶者居住権の消滅請求をすることができるでしょうか?
 配偶者居住権の譲渡禁止を定める民法1032条2項に違反しただけでは,建物所有者は配偶者居住権の消滅請求をすることができませんが,実際に,第三者が使用収益をした場合には,配偶者居住権の消滅請求をすることができます(民法1032条)。なぜならば,配偶者居住権の譲渡禁止に違反しただけでは,第三者に使用収益をさせていない段階では,居住建物所有者に実害は生じていないものとも考えられ,配偶者居住権の消滅請求を認めるまでの必要性に乏しいと考えられるからです。
 なお,これは賃貸借の場合(民法612条参照)と同様です。
民法612条

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

保存行為による配偶者居住権の消滅請求


居住用建物が共有である場合には,各共有者はそれぞれ単独で配偶者居住権の消滅請求をすることができるでしょうか?
 居住用建物が共有である場合には,各共有者はそれぞれ単独で配偶者居住権の消滅請求をすることができるものと考えられています。配偶者居住権は,配偶者の居住の権利を保護するために特に認められた法定の権利であり,配偶者の義務違反によって居住建物価値が毀損することを防ぐために配偶者居住権の消滅請求をすることは保存行為(民法252条ただし書)にあたると考えられるからです(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法23頁)。
民法252条

(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

配偶者居住権の消滅の効果


配偶者居住権が消滅した場合には,どのような効果がありますか?仮に,居住建物の持分を配偶者が取得している場合にでも,配偶者居住権が消滅したことをもってして,居住建物の返還義務を負いますか?
 配偶者居住権が消滅した場合には,配偶者は,居住建物の返還義務を負います(民法1035条1項本文)。もっとも,配偶者が居住建物の共有持分を有する場合には,配偶者は共有持分につき建物を占有することができることから,配偶者居住権が消滅したことを理由とする返還義務は負わないことになっています(民法1035条ただし書き)
民法1035条

(居住建物の返還等)
第千三十五条 配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2 第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。

配偶者居住権の消滅と原状回復①


配偶者居住権が消滅した後の原状回復はどのようにすればよいでしょうか?例えば,相続開始後に居住建物にエアコンを新たに設置した場合には,そのエアコンを持っていってよいのでしょうか?
 配偶者が,相続開始後に居住建物に付属させたものがある場合には,配偶者は,これを収去する権利を有し,義務を負います(民法1035条2項において準用する民法599条1項及び2項)。したがって,当該エアコンに関しては,配偶者は持っていってよいと考えられます。

配偶者居住権の消滅と原状回復②


配偶者居住権が消滅した後の,原状回復はどのようにすればよいでしょうか?例えば,相続開始後に,飼い始めた犬が居住建物の柱を噛んで損傷した場合には,当該柱のキズは直さないといけないでしょうか?
 居住建物について相続開始後に生じた損傷がある場合には,配偶者は,通常の使用によって生じた居住建物損傷及び居住建物の経年劣化を除き原状回復義務を負います(民法1035条2項において準用する621条)。したがって,配偶者は,当該柱については原状回復義務があるため柱のキズを直すべきです。
民法599条

(借主による収去等)
第五百九十九条 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
2 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
3 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

第3 配偶者短期居住権のQ&A

1.配偶者短期居住権の性質

配偶者短期居住権の発生事由


配偶者短期居住権は,どのような場合に発生しますか?
 配偶者短期居住権は,相続開始後の短期間,配偶者の従前の居住環境での生活保護しようとするものです。したがって,配偶者が,被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していたことを成立要件(保護要件)としています(民法1037条1項本文)
民法1037条

(配偶者短期居住権)
第千三十七条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。


配偶者短期居住権は,配偶者居住権と同じように,居住建物を取得した第三者に対し,対抗(配偶者短期居住権の主張)をすることができますか?
 配偶者短期居住権は,下記の平成8年判例を参考にしつつ,被相続人の意思にかかわらず成立する法定の債権として構成したものであり,配偶者を債権者とし,居住建物取得者を債務者とする使用貸借類似の性質を有しています。(民法1037条1項)
 このように配偶者短期居住権は,①あくまで債権であり,使用貸借類似の性質を有する権利として構成していること,②その存続期間は短期間に限定されるのが通常であることなどを考慮して,配偶者居住権と異なり対抗要件制度を設けることとはしていません。
 したがって,居住建物取得者が,その居住建物の所有権または共有持分を第三者に譲渡した場合には,配偶者は配偶者短期居住権をその譲受人に対抗することができません(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法33頁)。

事件番号  平成5(オ)1946
事件名  土地建物共有物分割等
裁判年月日  平成8年12月17日
法廷名  最高裁判所第三小法廷
裁判種別  判決
結果  破棄差戻
判例集等巻・号・頁  民集 第50巻10号2778頁


【判示事項】
 遺産である建物の相続開始後の使用について被相続人と相続人との間に使用貸借契約の成立が推認される場合
【裁判要旨】
 共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される。
【参照法条】
 民法249条,民法593条,民法703条,民法898条,民訴法185条


 主    文
     原判決中、上告人ら敗訴の部分を破棄する。
     前項の部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人小室貴司の上告理由第一点について
 一 本件上告に係る被上告人らの請求は、上告人ら及び被上告人らは第一審判決添付物件目録記載の不動産の共有者であるが、上告人らは本件不動産の全部を占有、使用しており、このことによって被上告人らにその持分に応じた賃料相当額の損害を発生させているとして、上告人らに対し、不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求として、被上告人ら各自の持分に応じた本件不動産の賃料相当額の支払を求めるものである。
 二 原審の確定した事実関係の概要は、(一) Dは昭和六三年九月二四日に死亡した、(二) 被上告人B1はDの遺言により一六分の二の割合による遺産の包括遺贈を受けた者であり、上告人ら及びその余の被上告人らはDの相続人である、(三)本件不動産はDの遺産であり、一筆の土地と同土地上の一棟の建物から成る、(四) 上告人らは、Dの生前から、本件不動産においてDと共にその家族として同居生活をしてきたもので、相続開始後も本件不動産の全部を占有、使用している、というのである。
 三 原審は、右事実関係の下において、自己の持分に相当する範囲を超えて本件不動産全部を占有、使用する持分権者は、これを占有、使用していない他の持分権者の損失の下に法律上の原因なく利益を得ているのであるから、格別の合意のない限り、他の持分権者に対して、共有物の賃料相当額に依拠して算出された金額について不当利得返還義務を負うと判断して、被上告人らの不当利得返還請求を認容すべきものとした。
 四 しかしながら、原審の右判断は直ちに是認することができない。その理由は、次のとおりである。
  共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。けだし、建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。
  本件についてこれを見るのに、上告人らは、Dの相続人であり、本件不動産においてDの家族として同人と同居生活をしてきたというのであるから、特段の事情のない限り、Dと上告人らの間には本件建物について右の趣旨の使用貸借契約が成立していたものと推認するのが相当であり、上告人らの本件建物の占有、使用が右使用貸借契約に基づくものであるならば、これにより上告人らが得る利益に法律上の原因がないということはできないから、被上告人らの不当利得返還請求は理由がないものというべきである。そうすると、これらの点について審理を尽くさず、上告人らに直ちに不当利得が成立するとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決中上告人ら敗訴部分は破棄を免れない。そして、右部分については、使用貸借契約の成否等について更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻すこととする。
  よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    大   野   正   男
            裁判官    尾   崎   行   信

2.配偶者短期居住権の要件(配偶者)

内縁の妻でも配偶者短期居住権は成立するか


配偶者短期居住権は,内縁の妻の場合にでも,発生しますか?
 配偶者短期居住権を取得することができる配偶者は,法律上の配偶者であることが必要です(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法27頁)。したがって,内縁の妻には,配偶者居住権を認められません。これは,配偶者居住権も同様です。

一定の婚姻期間は成立要件か


配偶者短期居住権は,婚姻期間の長短で効果が変わることはありますか?
 配偶者居住権は,婚姻期間によって,効果が変わることはありません。配偶者居住権は,民法903条4項とは異なり婚姻期間に関する要件は設けていません。なぜならば,①配偶者短期居住権がないことによって配偶者が受ける不利益は,婚姻期間の長短にかかわらず生じること,②配偶者短期居住権はその存続期間が比較的短期間に限定されており,相続開始前から配偶者が居住していた建物について成立するものであるから,配偶者短期居住権の成立により他の相続人が受ける不利益は比較的小さいからです。
民法903条

(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

3.配偶者短期居住権の要件(建物)

相続人の財産に属したとは


居住建物が「被相続人の財産に属した」とは,どのような意味でしょうか?例えば,被相続人が共有持分しか所有していなかった場合にも,配偶者居住権は成立し,配偶者は無償で住むことができるのでしょうか?
 居住建物が「被相続人の財産に属した」とは,被相続人が,居住建物所有権または共有持分を有していたことを意味します。したがって,被相続人が共有持分しか所有していなかった場合にも,配偶者居住権は成立し,配偶者は被相続人の共有持分を取得したものに対し,その持分に応じた対価を支払うことなく居住建物を使用することができます。

借家に配偶者短期居住権は成立するか


被相続人及び配偶者が借家に居住していた場合に,配偶者短期居住権は成立するでしょうか?
 被相続人及び配偶者が借家に居住していた場合には,被相続人が賃料を負担し,配偶者自身は居住の対価を負担していなかったとしても,配偶者短期居住権は成立しません。
 なぜならば,この場合には,①配偶者は相続によって,その賃借権を他の共同相続人と準共有することになるから,賃借権の準共有持分に基づいて借家での居住を継続することができ,配偶者が他の共同相続人の負担部分を含めて賃料全額の弁済を続けている限り,配偶者の居住自体を保護されるからです。また,②借家に関して配偶者短期居住権を認めると,配偶者は,借家に無償で居住することまでを認めることになりますが,その場合,賃料を他の共同相続人に負担させることとなり,それは他の共同相続人の負担が過大なものになるからです。

有償で使用していた場合


配偶者が被相続人所有の建物を有償で使用していた場合には,配偶者短期居住権は成立しますか?
 配偶者短期居住権が成立するためには,配偶者が居住建物を無償で使用していたことが必要です。なぜならば,居住建物を配偶者が有償で使用していた場合には,配偶者と被相続人との間に賃貸借等の契約関係があり,新たな権利を創設する必要性が乏しいからです。なお,当該賃貸借等の契約関係は,被相続人の死亡により,被相続人の契約上の地位が相続人に引き継がれて契約関係が継続します。

長期入院の場合


被相続人の配偶者は,被相続人の「相続開始の時に無償で居住」とありますが,配偶者が長期入院をしている場合には,配偶者短期居住権は認められないのでしょうか?
 居住建物に居住していたと言えるためには,生活の本拠として現に居住の用に供していたことが必要です。配偶者が相続開始の時点で入院等のために一時的に被相続人の建物以外の場所に滞在していたとしても,配偶者の家財道具がその建物に存在しており,退院後はそこに帰ることが予定されているなど被相続人所有の建物が配偶者の生活の本拠としての実態を失っていないと認められる場合には,配偶者はなおその建物に居住していたということができ,配偶者短期居住権の成立を認めることができます。

無償で使用していた部分①


配偶者が,建物の2階部分を無償で使用し,1階部分である店舗も無償で使用していた場合には,配偶者短期居住権は成立しますか?
 建物に居住していたと言えるためには,建物の全部を居住のために使用している必要はなく,建物の一部を居住のために使用していれば足ります。これは配偶者居住権と同一です。 そして,配偶者短期居住権が成立するのは,配偶者が無償で使用していた部分であり,居住部分に限られません。したがって,居住建物の一部に居住したの部分で店舗を営んでいたが,いずれの部分も無償で使用していた場合には,その全部について配偶者短期居住権が成立します。

無償で使用していた部分②


配偶者が,建物の2階部分を居住用として無償で使用し,1階部分である店舗を有償で使用していた場合には,配偶者短期居住権は成立しますか?
 配偶者短期居住権が成立するのは,配偶者が無償で使用していた部分であり,居住部分に限られません。したがって,配偶者が居住建物の一部を無償で使用し,他の部分を有償で使用していた場合には,無償で使用していた部分についてのみ配偶者短期居住権が成立し,有償で使用していた部分については配偶者短期居住権は成立しません。この有償部分については,従前の契約関係が継続し引き続き配偶者は有償で使用することになります。

4.配偶者短期居住権の要件(発生原因事実)


配偶者短期居住権は,どのような場合に発生するのでしょうか?
 配偶者短期居住権は,配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していたことを成立要件(保護要件)としています(民法1037条1項)。

5.配偶者短期居住権の不発生事由

配偶者居住権が成立する場合


配偶者が相続開始時に居住建物の配偶者居住権を取得した場合にも,配偶者短期居住権は成立しますか?
 配偶者が相続開始時に居住建物の配偶者居住権を取得した場合には,配偶者短期居住権は成立しません(民法1037条1項ただし書)。なぜならば,配偶者居住権については,その登記を備えていない場合でも,配偶者短期居住権と同等ないし,それよりも強い効力が認められているため,これに加えて配偶者短期居住権による保護を与える必要がないためです。

相続放棄・相続欠格・廃除と配偶者短期居住権


配偶者が相続開始時に居住建物の配偶者居住権を取得した場合にも,配偶者短期居住権は成立しますか?
 配偶者が相続を放棄した場合であっても配偶者短期居住権は成立します(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法30頁)。一方で,配偶者が欠格事由に該当し又は廃除により相続人でなくなった場合には配偶者短期居住権は成立しません(民法1037条1項本文)。なぜならば,相続放棄の場合には,配偶者の短期的な居住権を保護する必要性は存在するのに対し,欠格事由の場合や廃除により相続人でなくなった場合には,居住建物取得者の所有権を制約してまで配偶者の居住を保護することを正当化することが困難であるからです。

6.配偶者短期居住権の存続期間

配偶者短期居住権の存続期間の考え方


配偶者短期居住権の存続期間は,いつまでなのでしょうか?
 配偶者短期居住権の存続期間は,①配偶者が居住建物について遺産共有持分を有している場合と,②配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合とで,異なります。配偶者短期居住権の消滅時期や消滅要件は,異なりますが,いずれも,被相続人が死亡してから6ヶ月を経過しなければ,配偶者短期居住権を消滅させることができません。

配偶者が遺産共有持分を有している場合


配偶者が居住建物について遺産共有持分を有している場合の配偶者短期居住権の存続期間はいつまでなのでしょうか?
 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合は,配偶者短期居住権の存続期間は,①遺産分割により居住建物の帰属が確定した日又は②相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日ということになります(民法1037条1項1号)。

居住建物を含む遺産の一部について一部分割がされた時も,民法1037条1項1号の「遺産分割により居住建物の帰属が確定した日」に含むと考えてよいのでしょうか?
 居住建物を含む遺産の一部について一部分割がされた時もその時点で存続期間が満了しする(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法31頁)と考えられています。

配偶者が遺産共有持分を有していない場合


配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合とは,どのような場合が考えられますか?
 配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合は。例えば,被相続人が配偶者以外の者に居住建物の遺贈や死因贈与をした場合,配偶者が相続放棄をした場合等があります。

配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合の配偶者短期居住権の存続期間はいつまでなのでしょうか?
 配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合の配偶者短期居住権の存続期間は,相続開始の時を始期とし,居住建物を取得者による配偶者短期居住権の消滅の申入れの日から6か月を経過する日を終期として存続します(民法1037条1項2号)。

居住建物が複数の者に遺贈された場合,各居住建物取得者が単独で配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができるでしょうか?
 居住建物取得者が複数いる場合(居住建物が複数の者に遺贈された場合など)には,その持分いかんにかかわらず,各居住建物取得者が単独で配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができ,配偶者短期居住権の消滅により配偶者の占有権原が喪失した場合には,各居住建物取得者は,単独で配偶者に対し居住建物の明渡しを求めることができる(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法32頁)と考えられてます。

7.配偶者短期居住権の建物所有者の法律関係

配偶者短期居住権と善管注意義務


配偶者短期居住権を取得した配偶者が,建物を管理する上で気を付けなければならないことはありますか?
 配偶者は,従前の用法に従い,善良な管理者の注意をもって,居住建物を使用しなければなりません(民法1038条1項)。この規定は,配偶者短期居住権は,他人の建物を無償で使用することができる権利であり,使用貸借と類似する性質を有することから,使用貸借に関する民法594条1項と同様の規律を設けることとしたものです。

損害賠償請求権等の期限(1年)


配偶者短期居住権を取得した配偶者が,その配偶者居住権を取得後に,大型犬を飼い始めて,家の柱がボロボロになり,また,糞尿等の放置で床が抜けてしまいました。配偶者に,損害賠償請求をしたいと考えていますが,期限はあるのでしょうか?
 配偶者の善管注意義務違反等による損害賠償請求権及び居住建物についての費用償還請求権は,居住用建物取得者が居住建物の返還を受けたときから1年以内に請求をしなければなりません(民法1041条において準用する民法600条1項)。

居住建物を第三者に使用させたか否か


配偶者短期居住権を取得した配偶者を介護するために,配偶者の家族が同居をする場合には,居住用建物取得者の承諾を得ないと“無断で第三者に使用させた”ことになるのでしょうか?
 配偶者は,居住建物取得者の承諾を得なければ,第三者に居住建物の使用をさせることができません(民法1038条2項)。これも使用貸借と同様の規定となります。居住建物取得者の承諾なく使用させることができない「第三者」は,原則として,配偶者以外の者のことをいいます。もっとも,配偶者が家族等を占有補助者として同居させることは,第三者に使用させることに当たらない(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法33頁)ものと考えられています。したがって,配偶者居住権が成立した後に,配偶者を介護するためにその親族が配偶者と同居することになったとしても,これについて居住建物取得者の承諾を得ることは必要ありません。

配偶者短期居住権と収益


被相続人の生前に,被相続人が居住建物の一部から収益(賃料収入等)を得ていた場合,配偶者短期居住権を取得した配偶者はその収益について受け取ることができるのでしょうか?
 配偶者短期居住権については,配偶者に居住建物の使用権限のみ認め,収益権限は認めないこととしています(民法1037条1項)。なぜならば,配偶者短期居住権は,配偶者の居住の権限を保護することを目的とする権利だからです。仮に,被相続人の生前に,被相続人が居住建物の一部から収益を得ていたのであれば,その収益については,相続分に従って各共同相続人に帰属させるのが相当と考えられるためです。
 なお,配偶者居住権の場合には,「配偶者は,居住建物の所有者の承諾を得なければ,居住建物の改築若しくは増築をし,又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。」(民法1032条3項)としており,配偶者短期居住権と異なります。

配偶者短期居住権と修繕義務


居住建物取得者は,配偶者短期居住権を取得した配偶者から,風呂釜の修理代金を請求された場合,その修理代金を支払わなければならないのでしょうか?
 使用貸借における貸主と同様に,居住用建物取得者は,配偶者に対し,建物を使用するのに適した状態にする義務(修繕義務等)までは負っておらず,配偶者が無償で居住建物を使用することを受忍すれば足ります。

居住建物取得者が配偶者に対し居住建物の使用を妨げた場合


居住建物取得者が居住建物を第三者に売却した場合,配偶者短期居住権を取得した配偶者は,当該第三者に対抗できないとのことですが,それでは,配偶者が保護されないのではないでしょうか?
 配偶者短期居住権については,居住建物取得者は配偶者による居住建物の使用を妨げてはならない義務を負うことが明示されています(民法1037条2項)。したがって,居住建物取得者が居住建物を第三者に売却するなどしてこの義務に違反し,配偶者の使用を妨げた場合には,居住建物取得者は,配偶者に対して債務不履行責任を負うことになります。

配偶者短期居住権の贈与の可否


配偶者短期居住権を配偶者の子に譲渡することはできるでしょうか?
 配偶者短期居住権は譲渡をすることはできません(民法1041条において準用する1032条2項)。

配偶者短期居住権の相続の可否


配偶者短期居住権は,配偶者短期居住権者が死亡した場合には,相続されますか?
 配偶者短期居住権も帰属上の一身専属権であり,配偶者居住権と同様にその帰属主体は配偶者に限定され配偶者はこれを譲渡することができず,配偶者が死亡した場合には当然に消滅して相続の対象にならないこととしています(民法1041条において準用する1032条2項,597条3項)

8.配偶者短期居住権の第三者の法律関係

他の共有者に対する賃料等の支払い義務


被相続人が共有持分しか所有していなかった場合,被相続人が所有していなかった共有持分(他の共有持分)に応じた賃料相当額を,当該他の共有持分の所有者に対して支払わなければならないでしょうか?
 被相続人の生前から居住建物の共有持分を有していた他の共有者に対しては,被相続人が有していた占有権限に基づいて引き続き居住建物を使用することができます。他の共有者との関係では占有権限を設定した法律行為に基づいて対価が発生する場合には,その支払い義務は,居住建物の取得者が引き継ぐことになり,居住建物取得者が他の共有者に対して対価を支払う義務を負います。
 もっとも,配偶者は居住建物の通常の必要費を負担するとされており(民法1041条において準用する1034条1項),居住建物を使用するために他の共有者に対して支払うべき対価は通常の必要費に該当すると考えられるから,居住建物取得者が他の共有者に対して対価の支払いをした場合には,配偶者は居住建物取得者に対してこれを償還しなければなりません。
 なお,配偶者が他の共有者に対して,その支払いをした場合には求償関係は生じないことになります(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法28頁)。
民法1041条

(使用貸借等の規定の準用)
第千四十一条 第五百九十七条第三項、第六百条、第六百十六条の二、第千三十二条第二項、第千三十三条及び第千三十四条の規定は、配偶者短期居住権について準用する。

民法1034条

(居住建物の費用の負担)
第千三十四条 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
2 第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

9.配偶者短期居住権の消滅

配偶者短期居住権の消滅事由


配偶者短期居住権は,どのような場合に,消滅するのですか?
 配偶者短期居住権は,①存続期間の満了(民法1037条1項),②居住建物取得者による消滅請求(民法1038条3項),③配偶者による配偶者居住権の取得(民法1039条),④配偶者の死亡(民法1041条において準用する民法597条3項),⑤居住建物の全部滅失等(民法1041条において準用する民法616条の2)等があります。

居住建物取得者による配偶者短期居住権の消滅請求


居住建物取得者による配偶者短期居住権の消滅請求は,どのような場合に行えるのですか?
 配偶者短期居住権を取得した配偶者は,用法遵守義務や善管注意義務を負っており,配偶者がこれらの義務に違反した場合には,居住建物取得者は,その意思表示より配偶者短期居住権を消滅させることができます(民法1038条3項)。

配偶者短期居住権の消滅請求と催告の可否


居住建物取得者による配偶者短期居住権の消滅請求をするためには催告が必要でしょうか?
 居住建物取得者による消滅請求は,使用貸借契約に関する民法594条3項と同様に,催告は必要ありません。

配偶者短期居住権の単独での消滅請求の可否


居住建物が共有である場合,各共有者は,それぞれ単独で配偶者短期居住権の消滅請求をすることができますか?
 居住建物が共有である場合,各共有者は,それぞれ単独で配偶者短期居住権の消滅請求をすることができます。これは,配偶者居住権の消滅請求と同様です。

配偶者が配偶者居住権を取得したとき,配偶者短期居住権が消滅する理由


配偶者が配偶者居住権を取得したとき,配偶者短期居住権が消滅するのは,なぜですか?
 配偶者短期居住権は,配偶者が配偶者居住権を取得したときは,消滅します(民法1039条)。なぜならば,配偶者居住権については,その登記を備えていない場合にでも,配偶者短期居住権と同等ないしそれよりも強い効力が認められているからです。

配偶者短期居住権の消滅と引渡し


配偶者短期居住権が消滅したときには,居住建物所有者が複数いる場合,誰に居住建物を引き渡せばよいのでしょうか?居住建物所有者の全員に対して連絡して,引き渡さなければならないのでしょうか?
 配偶者短期居住権が消滅したときは,配偶者は,居住建物取得者に対し,居住建物を返還しなければなりません(民法1040条1項)。そして,居住建物所有者が複数いる場合には,居住建物所有者のいずれかに返還すればよいです。なぜならば,居住建物所有者らの配偶者に対する各引渡請求権は不可分債権の関係にあるからです。したがって,居住建物所有者全員に対し連絡をして居住建物を引き渡すということはしなくてもよいです。

第4 配偶者居住権の登記のQ&A

1.登記の目的


配偶者居住権の設定のときの,登記の目的は,どのように登記すべきでしょうか?
 配偶者居住権の設定のときの,登記の目的は,「配偶者居住権設定」と登記すべきでしょう(令和元年7月22日時点での見解)。

2.登記原因及び日付


配偶者居住権の設定のときの,登記原因及び日付は,どのように登記すべきでしょうか?
 配偶者居住権の設定のときの,登記原因及び日付は,「令和○年○日○日設定」と登記すべきでしょう(令和元年7月22日時点での見解)。

3.存続期間の定め


配偶者居住権の存続期間の定めは,どのように登記すべきでしょうか?
 ①配偶者居住権の登記の登記事項であるその存続期間について別段の定めがない場合には「存続期間配偶者の死亡時まで」,②別段の定めがある場合には 「存続期間 令和2年何月何日から何年(又は「令和2年何月何日から令和22年何月何日まで」)又は配偶者の死亡時までのうち,いずれか短い期間」と公示することが相当であると考えられています(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法24頁)。

4.申請人

配偶者居住権の登記は共同申請か単独申請か


配偶者居住権の登記申請は,配偶者居住権を取得した配偶者が単独で行うのですか?それとも,配偶者居住権を取得した配偶者と建物所有者が共同で登記申請を行うのですか?
 原則として,配偶者居住権の設定の登記は,配偶者と居住建物所有者とが共同して申請しなければなりません(不動産登記法60条)。
 もっとも,配偶者が遺産分割に関する審判や調停によって配偶者居住権を取得したときはその審判書や調停調書には,配偶者が単独で配偶者居住権の設定の登記手続きをすることはできるように所用の記載がされるのが通常であるから,配偶者は,その審判書や調停調書に基づき,単独で配偶者居住権の設定の登記の申請をすることができます(不動産登記法63条1項)。
 なお,遺産分割に関する審判や調停によらずに,遺贈又は死因贈与により配偶者居住権を取得した配偶者は,居住建物所有者が登記の申請に協力しない場合には,配偶者は居住建物の所有者に対して登記義務の履行を求める訴えを提起することができ(民法1031条1項),これを認容する判決が確定すれば配偶者はその判決に基づき単独で登記の申請をすることができます(不動産登記法63条1項)。

5.添付情報


配偶者居住権の設定のときの,添付情報(添付書面)はどのようなものが必要ですか?
 配偶者居住権の設定のときの,添付情報(添付書面)は,①登記原因証明情報,②登記識別情報,③印鑑証明書,④代理権限証明情報が必要であると考えられます(令和元年7月22日時点での見解)。

6.登録免許税

配偶者居住権の登録免許税


配偶者居住権の設定の登記の登録免許税はいくらですか?
 平成31年度税制改正大綱によると,配偶者居住権の設定の登記について、居住建物の価額(固定資産税評価額)に対し 1,000 分の2の税率により登録免許税を課税することになりそうです。

 配偶者居住権の変更をするときの,登記の目的は,「○番配偶者居住権変更」と記載する。

第5 配偶者居住権の変更登記のQ&A

1.登記の目的


配偶者居住権の変更のときの,登記の目的は,どのように登記すべきでしょうか?
 配偶者居住権の変更のときの,登記の目的は,「○番配偶者居住権変更」と登記すべきでしょう(令和元年7月22日時点での見解)。

2.登記原因及び日付


配偶者居住権の変更のときの,登記原因及び日付は,どのように登記すべきでしょうか?
 配偶者居住権の変更のときの,登記原因及び日付は,「令和○年○月○日変更」と登記すべきでしょう(令和元年7月22日時点での見解)。

3.変更後の事項


配偶者居住権の変更のときの,変更後の事項は,どのように登記すべきでしょうか?
 配偶者居住権の変更のときの,変更後の事項は,「特約 第三者に居住建物の使用収益をさせることを許す」等と登記すべきでしょう(令和元年7月22日時点での見解)。

4.申請人

5.添付情報


配偶者居住権の変更のときの,添付情報(添付書面)はどのようなものが必要ですか?
 配偶者居住権の変更のときの,添付情報(添付書面)は,①登記原因証明情報,②登記識別情報,③印鑑証明書,④代理権限証明情報が必要であると考えられます(令和元年7月22日時点での見解)。

6.登録免許税


配偶者居住権の変更のときの登録免許税はどのくらい必要でしょうか?
 配偶者居住権の変更のときの,登録免許税は,変更登記の原則に従い,不動産1個につき,1,000円が必要であると考えられます(令和元年7月22日時点での見解)。

第6 配偶者居住権の抹消登記のQ&A

1.登記の目的


配偶者居住権の抹消のときの,登記の目的は,どのように登記すべきでしょうか?
 配偶者居住権の抹消のときの,登記の目的は,「○番配偶者居住権抹消」と登記すべきでしょう(令和元年7月22日時点での見解)。

2.登記原因及び日付


配偶者居住権の抹消のときの,登記原因及び日付は,どのように登記すべきでしょうか?
 配偶者居住権の抹消のときの,登記原因及び日付は,「令和○年○月○日配偶者居住権者死亡」等と登記すべきでしょう(令和元年7月22日時点での見解)。

3.申請人

「配偶者の死亡」と単独申請の可否


配偶者居住権は,配偶者居住権が消滅した場合に,建物所有者の単独申請で配偶者居住権の抹消登記を申請することができるでしょうか?
 不動産登記法69条では,権利が人の死亡によって消滅する旨が登記されている場合において,当該権利がその死亡によって消滅したときは,登記権利者が単独で当該権利にかかる権利に関する登記の抹消申請することができることとされています。そして,配偶者居住権の登記においては,配偶者居住権の存続期間として別段の定めの有無に関わらず,配偶者の死亡時が終期として必ず登記記録に記録されることから,配偶者居住権が配偶者の死亡によって消滅する旨が登記されているものと理解することができます。したがって,配偶者の死亡によって配偶者居住権が消滅した場合には,登記権利者である建物居住の所有者は不動産登記法69条に基づき単独で配偶者居住権の設定の登記の抹消を申請することができると考えられます(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法24頁)。
不動産登記法69条

(死亡又は解散による登記の抹消)
第六十九条 権利が人の死亡又は法人の解散によって消滅する旨が登記されている場合において、当該権利がその死亡又は解散によって消滅したときは、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができる。

不動産登記法60条

(共同申請)
第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

「存続期間の終了」と単独申請の可否


配偶者が死亡せず,配偶者居住権がその存続期間が終了したために消滅した場合には,建物所有者の単独申請で配偶者居住権の抹消登記を申請することができるでしょうか?
 配偶者の死亡以外の原因(存続期間の定めがある場合に,存続期間の終期が経過した場合など)によって,配偶者居住権が消滅した場合には,居住建物の所有者及び配偶者は,不動産登記法60条に基づき共同で配偶者居住権の設定の登記を抹消を申請することになります。

「合意解除」と単独申請の可否


配偶者居住権の設定を受けた配偶者と建物所有者との合意により配偶者居住権を消滅させることになった場合には,建物所有者の単独申請で配偶者居住権の抹消登記を申請することができるでしょうか?
 配偶者の死亡以外の原因(建物所有者との合意により配偶者居住権を消滅させる場合など)によって,配偶者居住権が消滅した場合には,居住建物の所有者及び配偶者は,不動産登記法60条に基づき共同で配偶者居住権の設定の登記を抹消を申請することになります。

4.添付情報


配偶者居住権の抹消のときの,添付情報(添付書面)はどのようなものが必要ですか?
 配偶者居住権の抹消のときの,添付情報(添付書面)は,①登記原因証明情報,②登記識別情報,③代理権限証明情報,④一般承継情報が必要であると考えられます(令和元年7月22日時点での見解)。

5.登録免許税


配偶者居住権の抹消のときの登録免許税はどのくらい必要でしょうか?
 配偶者居住権の抹消のときの,登録免許税は,抹消登記の原則に従い,不動産1個につき,1,000円が必要であると考えられます(令和元年7月22日時点での見解)。


●対応地域とアクセス

1.対応地域

 配偶者居住権の相談及び登記手続に関しましては,『全国対応』しております!

 また,主に下記の地域の方に関しましては,本人確認及び意思確認のために,面談を実施しております。

●名古屋市内全域

(東区・千種区・名東区・守山区・緑区・昭和区・瑞穂区・天白区・北区・中村区・中区・西区・中川区・熱田区・南区・港区[相生山・赤池・新瑞橋・荒畑・池下・一社・今池・いりなか・岩塚・植田・大須観音・大曽根・覚王山・金山・上社・黒川・上飯田・上小田井・神沢・上前津・亀島・川名・車道・国際センター・御器所・栄・桜本町・桜山・塩釜口・志賀本通・市役所・自由ヶ丘・浄心・新栄町・神宮西・砂田橋・庄内緑地公園・庄内通・浅間町・総合リハビリセンター・高岳・高畑・千種・茶屋ヶ坂・築地口・鶴里・鶴舞・伝馬町・東海通・徳重・中村区役所・中村公園・中村日赤・名古屋・名古屋港・名古屋大学・ナゴヤドーム前矢田・鳴子北・西高蔵・野並・八田・原・東別院・東山公園・久屋大・日比野・平針・吹上・伏見・藤が丘・平安通・星ヶ丘・堀田・本郷・本陣・丸の内・瑞穂運動場西・瑞穂運動場東・瑞穂区役所・港区役所・妙音通・名城公園・本山・八事・八事日赤・矢場町・六番町])

●愛知県全域

(春日井市・あま市・日進市・長久手市・みよし市・北名古屋市・清須市・小牧市・瀬戸市・尾張旭市・津島市・愛西市・弥富市・東郷・大治・蟹江・豊山・春日・大口・扶桑・阿久比・一宮市・稲沢市・江南市・岩倉市・犬山市・豊明市・半田市・常滑市・知多市・内海・東浦・武豊・大府市・東海市・知多市・岡崎市・刈谷市・知立市・碧南市・安城市・高浜市・豊田市・西尾市・豊橋市・豊川市・蒲郡市・幸田・新城市・鳳来[名古屋・金山・鶴舞・千種・大曽根・新守山・勝川・春日井・神領・高蔵寺・定光寺・古虎渓・中村区役所・名古屋・国際センター・丸の内・久屋大通・高岳・車道・今池・吹上・御器所・桜山・瑞穂区役所・瑞穂運動場西・新瑞橋・桜本町・鶴里・野並・鳴子北・相生山・神沢・徳重])

●岐阜県全域

(岐阜市・羽島市・各務原市・山県市・瑞穂市・本巣・羽島市・大垣市・海津市・養老郡・不破郡・安八郡・揖斐郡・関市・美濃市・美濃加茂市・可児市・加茂郡・可児郡・多治見市・中津川市・瑞浪市・恵那市・土岐市[多治見・土岐・瑞浪・釜戸・武並・恵那・美乃坂本・中津川])

●三重県全域

(桑名市・いなべ市・木曽岬・東員・四日市市・菰野・朝日・川越・鈴鹿市・亀山市・津市・松阪市・多気・明和・伊勢市・鳥羽市・志摩市・玉城・度会・南伊勢・大紀・伊賀市・名張市・尾鷲市・紀北・熊野市・御浜・紀宝)

2.アクセス

(1)所在地

〒464-0093
名古屋市千種区茶屋坂通二丁目69番地
茶屋ケ坂パークマンション504
【地下鉄名城線『茶屋ヶ坂駅』から徒歩2分】
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司法書士なかしま事務所(茶屋ケ坂パークマンション504)

(2)ルート

【公共交通機関でお越しの方】

①名古屋市内からのルート
・地下鉄名城線『茶屋ヶ坂駅』から徒歩2分
②名古屋市外からのルート
・JR中央本線『大曽根駅』
 →地下鉄名城線『大曽根駅』
 →地下鉄名城線『茶屋ヶ坂駅【無料相談・全国対応・ネット申込み可】 』から徒歩2分

【車でお越しの方】

・近隣のコインパーキング①【MAYパーク】
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愛知県名古屋市千種区茶屋坂通2-68

・近隣のコインパーキング②【アイペック駐車場】
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愛知県名古屋市千種区茶屋が坂2丁目1−【無料相談・全国対応・ネット申込み可】 22

●不動産登記の管轄法務局

愛知県(名古屋法務局)

名古屋法務局 本局

名古屋市の内(中区,東区,北区,中村区,西区,千種区,昭和区),西春日井郡豊山町,清須市,北名古屋市

名古屋法務局 熱田出張所

名古屋市の内(熱田区,南区,中川区,港区,瑞穂区,緑区),豊明市

名古屋法務局 名東出張所

名古屋市の内(名東区,守山区,天白区),日進市,長久手市,愛知郡東郷町

名古屋法務局 春日井支局

春日井市,瀬戸市,犬山市,小牧市,尾張旭市,丹羽郡(大口町,扶桑町)

名古屋法務局 津島支局

津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(蟹江町,飛島村,大治町)

名古屋法務局 一宮支局

一宮市,稲沢市,江南市,岩倉市

名古屋法務局 半田支局

半田市,常滑市,大府市,東海市,知多市,知多郡(阿久比町,武豊町,南知多町,美浜町,東浦町)

名古屋法務局 岡崎支局

岡崎市,額田郡幸田町

名古屋法務局 刈谷支局

刈谷市,知立市,安城市,碧南市,高浜市

名古屋法務局 豊田支局

豊田市,みよし市

名古屋法務局 西尾支局

西尾市

名古屋法務局 豊橋支局

豊橋市,田原市

名古屋法務局 豊川出張所

豊川市,蒲郡市

名古屋法務局 新城支局

新城市,北設楽郡(設楽町,東栄町,豊根村)

三重県(津地方法務局)

津地方法務局 本局

津市,亀山市

津地方法務局 鈴鹿出張所

鈴鹿市

津地方法務局 四日市支局

四日市市,三重郡朝日町,川越町,菰野町

津地方法務局 伊賀支局

伊賀市,名張市

津地方法務局 松阪支局

松阪市,多気郡多気町,明和町,大台町,度会郡大紀町

津地方法務局 桑名支局

桑名市,いなべ市,桑名郡木曽岬町,員弁郡東員町

津地方法務局 伊勢支局

伊勢市,鳥羽市,志摩市,度会郡度会町,玉城町,南伊勢町

津地方法務局 熊野支局

熊野市,南牟婁郡御浜町,紀宝町

津地方法務局 尾鷲出張所

尾鷲市,北牟婁郡紀北町

岐阜県(岐阜地方法務局)

岐阜地方法務局 本局

岐阜市,羽島市,各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,羽島郡(岐南町,笠松町),本巣郡(北方町)

岐阜地方法務局 八幡支局

郡上市

岐阜地方法務局 大垣支局

大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町,関ケ原町),安八郡(神戸町,輪之内町,安八町),揖斐郡(揖斐川町,池田町,大野町)

岐阜地方法務局 美濃加茂支局

美濃加茂市,可児市,関市,美濃市,加茂郡(坂祝町,富加町,川辺町,八百津町,七宗町,白川町,東白川村),可児郡(御嵩町),下呂市のうち金山町

岐阜地方法務局 多治見支局

多治見市,土岐市,瑞浪市

岐阜地方法務局 中津川支局

中津川市,恵那市

岐阜地方法務局 高山支局

高山市,飛騨市,大野郡(白川村),下呂市(金山町を除く)



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