【NEWS】司法書士グループ企業の「国保逃れ」と二律背反(ジレンマ)

【NEWS】司法書士グループ企業の「国保逃れ」と二律背反(ジレンマ)

維新だけではなかった「国保逃れ」 司法書士グループ企業でも「節約術」疑惑 厚労省「看過できない状況」(東京新聞 2026年4月17日 17時30分)

 個人事業主らが法人の役員に就任し、高額な国民健康保険(国保)料の納付を避ける「国保逃れ」。昨年末に日本維新の会の地方議員の関与が発覚して問題となったが、水面下では「保険料節約術」として広まっていたことが、東京新聞の取材で分かった。

「登記を通じて取引の安全や信頼を支える立場の司法書士が、もし実態と合ってない役員登記をしているなら、登記制度そのものの信頼を損なう恐れがある」
 関西地方のある法律関係者が問題視するのは、兵庫県に拠点を置く司法書士グループ関連会社がホームページ上で公開している法人登記の役員欄。載っている役員14人はほとんどが司法書士。だが、それは実態のある役員なのか?という疑問が浮かんでいる。

(続きは↓)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/482236

はじめに

 近年、一部の政治家による報道を機に、国民健康保険料に対する社会的な関心が高まっています。そうした中、東京新聞の報道によって、法律の専門家である司法書士グループが株式会社を設立し、保険料負担を軽減するスキームを展開していた疑惑が報じられ、大きな波紋を呼んでいます。厚生労働省も実態把握に動き出している状況です。

そこで本記事では、長年グレーゾーンとして放置されてきたこの問題について、以下の3つのポイントから整理と考察を行います。

  1. 長年のグレーゾーン【社会保険料の軽減スキーム(国保逃れ)】の実態
  2. 司法書士業務において【株式会社が集客窓口となること】の法的論点
  3. ビジネス構造に潜む、逃れられない【致命的な矛盾(ジレンマ)】

① 「社会保険料軽減スキーム」を巡る議論

 国民健康保険(国保)は、前年の所得に応じて保険料が算定される。個人事業主にとって、所得増加に伴う保険料負担の増加は大きな経営課題となる。これを軽減する手法として、SNSや一部のコンサルタントの間で広く認知されてきたのが、法人格を活用したスキームである。

【スキームの概要】 個人事業とは別に、自身を役員とする小規模な法人(マイクロ法人など)を設立し、役員報酬を低額に設定する。その法人の役員として社会保険(健康保険・厚生年金)に加入することで、制度上、国保からは脱退の扱いとなる。結果として、個人事業側の所得がどれだけ多くても、健康保険料は法人の低額な役員報酬を基準に算定されるため、トータルの負担を抑えることができる。

批判的な視点:制度の趣旨への抵触と実態の欠如

 この手法に対し、制度の根幹を揺るがすものとして批判的な声が上がっている。 社会保険制度は、負担能力のある者が多く負担して全体を支え合う「応能負担・相互扶助」の理念に基づいている。そのため、意図的に負担を逃れる目的で法人を利用する行為は「法の抜け穴(バグ)」を突いたモラルハザードであるとの指摘がある。 また、設立された法人に社会保険加入以外の事業実態がない(ペーパーカンパニー状態である)場合、法人格の濫用にあたるのではないかという見方も強い。

肯定派の反論:法令に基づく適法な手続き

 一方、肯定派は「法令に則った適法な手続きである」と反論するだろう。 現行法上、個人事業主が別法人を設立すること自体は自由な経済活動として認められている。また、年金事務所などの行政機関へ適正に届出を行い、受理されている以上、正当な社会保険の加入要件を満たしており、「逃れ」と表現されるような違法行為には当たらないとの主張である。

【論点】形式的な合法性と「実態」の乖離

 この問題の最大の争点は、「形式的な手続きの適法性」にとどまらず、「株式会社としての経営実態が伴っているか」という点にある。つまり、「実態がある」と主張しても、それが株式会社本来の「利益を追求する事業」として成立しておらず、赤字を前提にしている(あるいは赤字を許容してまで低額な役員報酬に留めている)のであれば、それは「社会保険に加入するためのアリバイ作り」に過ぎないという見方が成り立つのだ。

 当事者はセミナー運営などの活動実態を主張するが、株式会社とは本来「営利(利益の追求)」を目的とする法人である。にもかかわらず、その事業が赤字であったり、役員報酬を最低等級(月額数万円程度)に抑えなければ成り立たないような経営状態を意図的に継続しているとすれば、営利企業として極めて不自然と言わざるを得ない。

 「事業として赤字を出してまで、あえて株式会社の役員としてその活動を続ける正当な理由があるのか」「それは社会保険の加入資格を維持するための『アリバイ作り(偽装)』に過ぎないのではないか」という厳しい見方も存在する。行政側がこの「実質的な事業性」の判断に対し、今後どのような基準を示すかが注目される。


② 司法書士業務における「株式会社による集客」の是非

 今回の報道に関連してもう一つ問題視されているのが、司法書士グループが「株式会社を窓口にして集客を行っていた」という点です。

 法律(司法書士法第73条など)では、資格を持たない者が利益目的で司法書士の業務を行うこと(非司活動)を厳しく禁じています。同時に、司法書士側も無資格者と提携して顧客の紹介を受けたり、報酬を分け合ったりすること(非司提携)が固く禁じられているため、この連携スキームそのものの適法性が問われています。

批判的な視点:実質的な「非司提携」や「名義貸し」の懸念

 司法書士業界や専門家からは、株式会社と司法書士法人が主導権の所在に関わらず、法律で禁じられた違法な提携状態にあるのではないかという強い懸念が示されています。具体的には、以下の2点が問題視されています。

不当な「中抜き」と違法な報酬分配: 顧客が支払う費用のうち、株式会社側が「紹介料」や「システム利用料」などの名目で実質的なマージンを抜き取っているのではないかという懸念です。士業は無資格者に紹介料を支払ったり、報酬を分配したりすることを厳格に禁じられています。利益追求の営利企業が間に入って利益を吸い上げる構造は、士業に絶対に求められる「独立性」や「顧客保護」のルールを根底から破壊してしまうという批判です。

窓口化による違法な「顧客誘引と提携」: 株式会社が「法律問題の窓口」として顧客を集め、そこから実際の法的手続きを提携する司法書士に回している構図です。仮に株式会社側が業務を完全に支配していなかったとしても、無資格の法人が士業の業務に関与し、連携して案件を誘導すること自体が「非司提携」に該当する可能性が高いと指摘されています。

肯定派の反論:業務の明確な分離による適法な連携

 これに対し肯定派の反論は、「業務の切り分けが行われており、非司活動には当たらない」と反論すると思われる。 株式会社が担っているのはマーケティング、システム提供、事務代行といった周辺業務に限られているという主張である。法的な判断や登記手続きといった司法書士の独占業務については、顧客と提携する司法書士が「直接」委任契約を結んでおり、無資格者が司法書士業務を行っている事実はないと説明すると考えられる。

【論点】ビジネスの構造がそもそも筋が悪い

 しかし、ここでの最大の争点は「そもそも、そんなに都合よく業務の切り分けができるのか?」という点にあります。

 株式会社側は「うちは司法書士事務所を支援する、純粋な裏方(B to B業者)です」と主張します。しかし現実には、その株式会社が自ら表舞台に立ち、法律知識を使ったセミナーを開催したり、Webサイトで初期の法律相談の窓口になったりと、一般の顧客(消費者)に向けて積極的な営業活動を行っています。

 株式会社の名前で、株式会社が法律の知識を使って消費者の悩みを引き出し、解決策を提示して案件を誘導している以上、「私たち株式会社は裏方の事務代行に過ぎません」「株式会社は、法的な業務には一切触れていません」という言い訳は、現実の活動実態と大きく矛盾しており、極めて筋が悪い(無理がある)と言わざるを得ないのではないでしょうか。

③ 【最大の論点】「保険料逃れ」か「非司活動」か。逃れられないジレンマ

 上記①②を総合すると、このグループ経営のスキームには、論理的に極めて不自然な「致命的な矛盾(ジレンマ)」が潜んでいることが浮かび上がる。

 株式会社とは本来、「営利(利益の追求)」を目的とする法人である。当事者が主張するように株式会社としての事業(セミナー運営など)に実態があるとするならば、以下のいずれかの矛盾に突き当たる。

  1. 利益を追求していない(赤字・極小利益)場合: もしその株式会社が、常に赤字であったり、役員報酬を最低等級(月額数万円程度)に抑えなければ成り立たないような経営状態を意図的に維持しているとすれば、営利企業として極めて不自然である。事業として赤字を出してまで株式会社を維持する理由は見当たらず、結局のところ**「社会保険の加入資格を維持するための『アリバイ作り(ダミー会社)』に過ぎないのではないか」**という批判を免れない。
  2. 利益を追求し、成立している場合: 逆に、株式会社本来の目的通り「利益を追求する事業」として成立し、十分な利益を上げているとしよう。では、その利益の源泉はどこにあるのか。もし、セミナー集客やコンサルティングを通じて顧客を獲得し、そこから株式会社が利益(マージン)を抜いた上で、実際の法的手続きを司法書士へ流しているとすればどうなるか。それは実質的に、無資格の営利法人が司法書士業務に介入・支配し、利益を得る「非司活動」および「非司提携(名義貸し)」そのものではないか、という強い疑義が生じる。

 つまり、「国保逃れのためのダミー会社ではない(=事業実態があり利益を出している)」と主張すればするほど、今度は「非司行為の温床になっている」という疑いが色濃くなるという、二律背反の構造に陥っているのである。


おわりに

 今回の一連の報道と議論は、社会保険制度における「負担の公平性」と、士業における「職務の独立性とコンプライアンス」という二つの重いテーマを投げかけている。

 当事者は法令遵守を主張し、形式的な「業務の切り分け」を強調している。しかし、ビジネスの全体構造と資金の流れを俯瞰したとき、そこに潜む倫理的・法的な矛盾は決して小さなものではない。

 今後、厚生労働省や法務省、そして司法書士会などの関係機関が、これらの事象に対してどのような見解や指導基準を示すのか、その動向が注視される。

お気軽にお問い合わせください。052-737-1666受付時間 9:30-19:30 [ 土・日・祝日も可 ]

メール・LINEでのご予約・お問い合わせはこちら お気軽にご連絡ください。

お問合せ・事務所アクセスなど

相談者

事務所はどこにありますか?

司法書士

〒464-0093
名古屋市千種区茶屋坂通二丁目69番地
茶屋ケ坂パークマンション504

になります。
Googleマップ
最寄りの駐車場

1階にオートロックがありますので、504[呼]を押してください。

相談者

認定司法書士ですか?

司法書士

はい。司法書士中嶋剛士は、愛知県司法書士会所属の認定司法書士です。

愛知県司法書士会のHP。会員番号1924、認定番号1318043

相談者

まずは「無料相談」でも大丈夫ですか?

司法書士

はい。初回のみ無料相談とさせていただいております。
ぜひ、司法書士なかしま事務所までご連絡ください。

※1 当事務所は、相続登記遺言・相続対策・遺産承継業務・相続放棄を含む相続業務に15年以上のキャリアをもつ司法書士中嶋剛士が電話相談・面談、業務終了まで直接皆様の担当をさせて頂きます。安心してお任せ頂けたらと思います。

※2 当事務所では相続に関する相談は初回無料です。もし相談をご希望の皆様は、下記をクリックして気軽にお問合せ(メール・LINE・電話)ください。

お気軽にお問い合わせください。052-737-1666受付時間 9:30-19:30 [ 土・日・祝日も可 ]

メール・LINEでのご予約・お問い合わせはこちら お気軽にご連絡ください。

解説者「司法書士 中嶋 剛士」のプロフィール

司法書士 中嶋剛士(シホウショシ ナカシマコウジ)
司法書士中嶋剛士

「司法書士なかしま事務所」代表司法書士
名古屋市の法務大臣認定司法書士
依頼は“相続・相続対策”と“借金問題”が中心
司法書士実務は2011年から
特別研修のチューターを4年経験
テレビ出演:2021年3月30日:CBCテレビ[チャント!]
登録番号 愛知 第1924号
簡裁訴訟代理等関係業務 認定番号 第1318043号

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)