目次【配偶者短期居住権とは-わかりやすく詳しく解説】
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メール・LINEでのご予約・お問い合わせはこちら お気軽にご連絡ください。第1 配偶者居住権とは
1.「配偶者居住権」の窓口
①配偶者居住権の特徴,②配偶者居住権のメリット,③配偶者居住権のデメリット,④配偶者居住権の報酬及び費用,⑤配偶者居住権の手続の流れ,については,【「配偶者居住権」の窓口】をご覧ください。
2.配偶者短期居住権の関連窓口
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メール・LINEでのご予約・お問い合わせはこちら お気軽にご連絡ください。第2 配偶者短期居住権のQ&A
1.配偶者短期居住権の性質
配偶者短期居住権とは
- 配偶者短期居住権とは,どのような制度なのですか?
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配偶者短期居住権は,配偶者が被相続人所有の建物に,その死亡(相続開始)から遺産の分割により建物の帰属が確定するなどの比較的短期の間,無償で住み続けることができる権利です。「配偶者居住権」と名称は似ていますが,全く別の制度ですので,注意が必要です。
配偶者短期居住権の発生事由
- 配偶者短期居住権は,どのような場合に発生しますか?
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配偶者短期居住権は,相続開始後の短期間,配偶者の従前の居住環境での生活保護しようとするものです。したがって,配偶者が,被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していたことを成立要件(保護要件)としています(民法1037条1項本文)
民法1037条
(配偶者短期居住権)
第千三十七条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
- 配偶者短期居住権は,配偶者居住権と同じように,居住建物を取得した第三者に対し,対抗(配偶者短期居住権の主張)をすることができますか?
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配偶者短期居住権は,下記の平成8年判例を参考にしつつ,被相続人の意思にかかわらず成立する法定の債権として構成したものであり,配偶者を債権者とし,居住建物取得者を債務者とする使用貸借類似の性質を有しています(民法1037条1項)。
このように配偶者短期居住権は,①あくまで債権であり,使用貸借類似の性質を有する権利として構成していること,②その存続期間は短期間に限定されるのが通常であることなどを考慮して,「配偶者居住権」と異なり対抗要件制度(「配偶者居住権の登記」)を設けることとはしていません。
したがって,居住建物取得者が,その居住建物の所有権または共有持分を第三者に譲渡した場合には,配偶者は配偶者短期居住権をその譲受人に対抗することができません(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]33頁)。
最三小判平成8年12月17日民集第50巻10号2778頁
2.配偶者短期居住権の要件(配偶者)
内縁の妻でも配偶者短期居住権は成立するか
- 配偶者短期居住権は,内縁の妻の場合にでも,発生しますか?
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配偶者短期居住権を取得することができる配偶者は,法律上の配偶者であることが必要です(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法27頁)。したがって,内縁の妻には,配偶者居住権を認められません。これは,「配偶者居住権」と同様です。
一定の婚姻期間は成立要件か
- 配偶者短期居住権は,婚姻期間の長短で効果が変わることはありますか?
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配偶者短期居住権は,婚姻期間によって,効果が変わることはありません。配偶者短期居住権は,民法903条4項とは異なり婚姻期間に関する要件は設けていません。なぜならば,①配偶者短期居住権がないことによって配偶者が受ける不利益は,婚姻期間の長短にかかわらず生じること,②配偶者短期居住権はその存続期間が比較的短期間に限定されており,相続開始前から配偶者が居住していた建物について成立するものであるから,配偶者短期居住権の成立により他の相続人が受ける不利益は比較的小さいからです。
民法903条
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
3.配偶者短期居住権の要件(建物)
相続人の財産に属したとは
- 居住建物が「被相続人の財産に属した」とは,どのような意味でしょうか?例えば,被相続人が共有持分しか所有していなかった場合にも,配偶者居住権は成立し,配偶者は無償で住むことができるのでしょうか?
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居住建物が「被相続人の財産に属した」とは,被相続人が,居住建物所有権または共有持分を有していたことを意味します。したがって,被相続人が共有持分しか所有していなかった場合にも, 配偶者居住権 は成立し,配偶者は被相続人の共有持分を取得したものに対し,その持分に応じた対価を支払うことなく居住建物を使用することができます。
借家に配偶者短期居住権は成立するか
- 被相続人及び配偶者が借家に居住していた場合に,配偶者短期居住権は成立するでしょうか?
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被相続人及び配偶者が借家に居住していた場合には,被相続人が賃料を負担し,配偶者自身は居住の対価を負担していなかったとしても, 配偶者短期居住権 は成立しません。なぜならば,この場合には,①配偶者は相続によって,その賃借権を他の共同相続人と準共有することになるから,賃借権の準共有持分に基づいて借家での居住を継続することができ,配偶者が他の共同相続人の負担部分を含めて賃料全額の弁済を続けている限り,配偶者の居住自体を保護されるからです。また,②借家に関して 配偶者短期居住権 を認めると,配偶者は,借家に無償で居住することまでを認めることになりますが,その場合,賃料を他の共同相続人に負担させることとなり,それは他の共同相続人の負担が過大なものになるからです。
有償で使用していた場合
- 配偶者が被相続人所有の建物を有償で使用していた場合には,配偶者短期居住権は成立しますか?
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配偶者短期居住権 が成立するためには,配偶者が居住建物を無償で使用していたことが必要です。なぜならば,居住建物を配偶者が有償で使用していた場合には,配偶者と被相続人との間に賃貸借等の契約関係があり,新たな権利を創設する必要性が乏しいからです。なお,当該賃貸借等の契約関係は,被相続人の死亡により,被相続人の契約上の地位が相続人に引き継がれて契約関係が継続します。
なお,「配偶者居住権」の成立要件には,「配偶者短期居住権」とは異なり,配偶者が被相続人所有の建物を無償で使用していたことの要件はありません。
長期入院の場合
- 被相続人の配偶者は,被相続人の「相続開始の時に無償で居住」とありますが,配偶者が長期入院をしている場合には,配偶者短期居住権は認められないのでしょうか?
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居住建物に居住していたと言えるためには,生活の本拠として現に居住の用に供していたことが必要です。配偶者が相続開始の時点で入院等のために一時的に被相続人の建物以外の場所に滞在していたとしても,配偶者の家財道具がその建物に存在しており,退院後はそこに帰ることが予定されているなど被相続人所有の建物が配偶者の生活の本拠としての実態を失っていないと認められる場合には,配偶者はなおその建物に居住していたということができ,配偶者短期居住権 の成立を認めることができます。これは,「配偶者居住権」も同様です。
無償で使用していた部分①
- 配偶者が,建物の2階部分を無償で使用し,1階部分である店舗も無償で使用していた場合には,配偶者短期居住権は成立しますか?
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建物に居住していたと言えるためには,建物の全部を居住のために使用している必要はなく,建物の一部を居住のために使用していれば足ります。これは「配偶者居住権」と同一です。 そして, 配偶者短期居住権 が成立するのは,配偶者が無償で使用していた部分であり,居住部分に限られません。したがって,居住建物の一部に居住したの部分で店舗を営んでいたが,いずれの部分も無償で使用していた場合には,その全部について 配偶者短期居住権 が成立します。
無償で使用していた部分②
- 配偶者が,建物の2階部分を居住用として無償で使用し,1階部分である店舗を有償で使用していた場合には,配偶者短期居住権は成立しますか?
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配偶者短期居住権 が成立するのは,配偶者が無償で使用していた部分であり,居住部分に限られません。したがって,配偶者が居住建物の一部を無償で使用し,他の部分を有償で使用していた場合には,無償で使用していた部分についてのみ 配偶者短期居住権 が成立し,有償で使用していた部分については 配偶者短期居住権 は成立しません。この有償部分については,従前の契約関係が継続し引き続き配偶者は有償で使用することになります。
4.配偶者短期居住権の要件(発生原因事実)
- 配偶者短期居住権は,どのような場合に発生するのでしょうか?
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配偶者短期居住権 は,配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していたことを成立要件(保護要件)としています(民法1037条1項)。
5.配偶者短期居住権の不発生事由
配偶者居住権が成立する場合
- 配偶者が相続開始時に居住建物の配偶者居住権を取得した場合にも,配偶者短期居住権は成立しますか?
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配偶者が相続開始時に居住建物の 配偶者居住権 を取得した場合には,配偶者短期居住権 は成立しません(民法1037条1項ただし書)。なぜならば,配偶者居住権 については,その登記を備えていない場合でも,配偶者短期居住権 と同等ないし,それよりも強い効力が認められているため,これに加えて 配偶者短期居住権 による保護を与える必要がないためです。
相続放棄・相続欠格・廃除と配偶者短期居住権
- 配偶者が相続開始時に居住建物の配偶者居住権を取得した場合にも,配偶者短期居住権は成立しますか?
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配偶者が相続を放棄した場合であっても 配偶者短期居住権 は成立します(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]30頁)。一方で,配偶者が欠格事由に該当し又は廃除により相続人でなくなった場合には 配偶者短期居住権 は成立しません(民法1037条1項本文)。なぜならば, 相続放棄 の場合には,配偶者の短期的な居住権を保護する必要性は存在するのに対し,欠格事由の場合や廃除により相続人でなくなった場合には,居住建物取得者の所有権を制約してまで配偶者の居住を保護することを正当化することが困難であるからです。
6.配偶者短期居住権の存続期間
配偶者短期居住権の存続期間の考え方
- 配偶者短期居住権の存続期間は,いつまでなのでしょうか?
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配偶者短期居住権 の存続期間は,①配偶者が居住建物について遺産共有持分を有している場合と,②配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合とで,異なります。 配偶者短期居住権 の消滅時期や消滅要件は,異なりますが,いずれも,被相続人が死亡してから6ヶ月を経過しなければ,配偶者短期居住権 を消滅させることができません。
配偶者が遺産共有持分を有している場合
- 配偶者が居住建物について遺産共有持分を有している場合の配偶者短期居住権の存続期間はいつまでなのでしょうか?
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居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合は, 配偶者短期居住権 の存続期間は,①遺産分割により居住建物の帰属が確定した日又は②相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日ということになります(民法1037条1項1号)。
- 居住建物を含む遺産の一部について一部分割がされた時も,民法1037条1項1号の「遺産分割により居住建物の帰属が確定した日」に含むと考えてよいのでしょうか?
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居住建物を含む遺産の一部について一部分割がされた時もその時点で存続期間が満了しする(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]31頁)と考えられています。
配偶者が遺産共有持分を有していない場合
- 配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合とは,どのような場合が考えられますか?
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配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合は。例えば,被相続人が配偶者以外の者に居住建物の遺贈や死因贈与をした場合,配偶者が「相続放棄」をした場合等があります。
- 配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合の配偶者短期居住権の存続期間はいつまでなのでしょうか?
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配偶者が居住建物について遺産共有持分を有していない場合の 配偶者短期居住権 の存続期間は,相続開始の時を始期とし,居住建物を取得者による 配偶者短期居住権 の消滅の申入れの日から6か月を経過する日を終期として存続します(民法1037条1項2号)。
- 居住建物が複数の者に遺贈された場合,各居住建物取得者が単独で配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができるでしょうか?
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居住建物取得者が複数いる場合(居住建物が複数の者に遺贈された場合など)には,その持分いかんにかかわらず,各居住建物取得者が単独で 配偶者短期居住権 の消滅の申入れをすることができ, 配偶者短期居住権 の消滅により配偶者の占有権原が喪失した場合には,各居住建物取得者は,単独で配偶者に対し居住建物の明渡しを求めることができる(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]32頁)と考えられてます。
7.配偶者短期居住権の建物所有者の法律関係
配偶者短期居住権と善管注意義務
- 配偶者短期居住権を取得した配偶者が,建物を管理する上で気を付けなければならないことはありますか?
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配偶者は,従前の用法に従い,善良な管理者の注意をもって,居住建物を使用しなければなりません(民法1038条1項)。この規定は, 配偶者短期居住権 は,他人の建物を無償で使用することができる権利であり,使用貸借と類似する性質を有することから,使用貸借に関する民法594条1項と同様の規律を設けることとしたものです。
民法594条
(借主による使用及び収益)
第五百九十四条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
損害賠償請求権等の期限(1年)
- 配偶者短期居住権を取得した配偶者が,その配偶者居住権を取得後に,大型犬を飼い始めて,家の柱がボロボロになり,また,糞尿等の放置で床が抜けてしまいました。配偶者に,損害賠償請求をしたいと考えていますが,期限はあるのでしょうか?
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配偶者の善管注意義務違反等による損害賠償請求権及び居住建物についての費用償還請求権は,居住用建物取得者が居住建物の返還を受けたときから1年以内に請求をしなければなりません(民法1041条において準用する民法600条1項)。これも使用貸借の規定を準用しています。
民法600条
(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第六百条 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
2 前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
居住建物を第三者に使用させたか否か
- 配偶者短期居住権を取得した配偶者を介護するために,配偶者の家族が同居をする場合には,居住用建物取得者の承諾を得ないと“無断で第三者に使用させた”ことになるのでしょうか?
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配偶者は,居住建物取得者の承諾を得なければ,第三者に居住建物の使用をさせることができません(民法1038条2項)。これも使用貸借と同様の規定となります。居住建物取得者の承諾なく使用させることができない「第三者」は,原則として,配偶者以外の者のことをいいます。もっとも,配偶者が家族等を占有補助者として同居させることは,第三者に使用させることに当たらない(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]33頁)ものと考えられています。したがって, 配偶者居住権 が成立した後に,配偶者を介護するためにその親族が配偶者と同居することになったとしても,これについて居住建物取得者の承諾を得ることは必要ありません。
民法1038条
(配偶者による使用)
第千三十八条 配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3 配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。
配偶者短期居住権と収益
- 被相続人の生前に,被相続人が居住建物の一部から収益(賃料収入等)を得ていた場合,配偶者短期居住権を取得した配偶者はその収益について受け取ることができるのでしょうか?
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配偶者短期居住権 については,配偶者に居住建物の使用権限のみ認め,収益権限は認めないこととしています(民法1037条1項)。なぜならば,配偶者短期居住権 は,配偶者の居住の権限を保護することを目的とする権利だからです。仮に,被相続人の生前に,被相続人が居住建物の一部から収益を得ていたのであれば,その収益については,相続分に従って各共同相続人に帰属させるのが相当と考えられるためです。なお,配偶者居住権 の場合には,「配偶者は,居住建物の所有者の承諾を得なければ,居住建物の改築若しくは増築をし,又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。」(民法1032条3項)としており,配偶者短期居住権 と異なります。
配偶者短期居住権と修繕義務
- 居住建物取得者は,配偶者短期居住権を取得した配偶者から,風呂釜の修理代金を請求された場合,その修理代金を支払わなければならないのでしょうか?
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配偶者短期居住権 では,使用貸借における貸主と同様に,居住用建物取得者は,配偶者に対し,建物を使用するのに適した状態にする義務(修繕義務等)までは負っておらず,配偶者が無償で居住建物を使用することを受忍すれば足ります。
居住建物取得者が配偶者に対し居住建物の使用を妨げた場合
- 居住建物取得者が居住建物を第三者に売却した場合,配偶者短期居住権を取得した配偶者は,当該第三者に対抗できないとのことですが,それでは,配偶者が保護されないのではないでしょうか?
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配偶者短期居住権 については,居住建物取得者は配偶者による居住建物の使用を妨げてはならない義務を負うことが明示されています(民法1037条2項)。したがって,居住建物取得者が居住建物を第三者に売却するなどしてこの義務に違反し,配偶者の使用を妨げた場合には,居住建物取得者は,配偶者に対して債務不履行責任を負うことになります。
配偶者短期居住権の贈与の可否
- 配偶者短期居住権を配偶者の子に譲渡することはできるでしょうか?
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配偶者短期居住権は譲渡をすることはできません(民法1041条において準用する1032条2項)。これは,「配偶者居住権」の規定を準用しています。
配偶者短期居住権の相続の可否
- 配偶者短期居住権は,配偶者短期居住権者が死亡した場合には,相続されますか?
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配偶者短期居住権 も帰属上の一身専属権であり,「配偶者居住権」と同様にその帰属主体は配偶者に限定され配偶者はこれを譲渡することができず,配偶者が死亡した場合には当然に消滅して相続の対象にならないこととしています(民法1041条において準用する1032条2項,597条3項)
8.配偶者短期居住権の第三者の法律関係
他の共有者に対する賃料等の支払い義務
- 被相続人が共有持分しか所有していなかった場合,被相続人が所有していなかった共有持分(他の共有持分)に応じた賃料相当額を,当該他の共有持分の所有者に対して支払わなければならないでしょうか?
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被相続人の生前から居住建物の共有持分を有していた他の共有者に対しては,被相続人が有していた占有権限に基づいて引き続き居住建物を使用することができます。他の共有者との関係では占有権限を設定した法律行為に基づいて対価が発生する場合には,その支払い義務は,居住建物の取得者が引き継ぐことになり,居住建物取得者が他の共有者に対して対価を支払う義務を負います。
もっとも,配偶者は居住建物の通常の必要費を負担するとされており(民法1041条において準用する1034条1項),居住建物を使用するために他の共有者に対して支払うべき対価は通常の必要費に該当すると考えられるから,居住建物取得者が他の共有者に対して対価の支払いをした場合には,配偶者は居住建物取得者に対してこれを償還しなければなりません。
なお,配偶者が他の共有者に対して,その支払いをした場合には求償関係は生じないことになります(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]28頁)。
民法1041条
(使用貸借等の規定の準用)
第千四十一条 第五百九十七条第三項、第六百条、第六百十六条の二、第千三十二条第二項、第千三十三条及び第千三十四条の規定は、配偶者短期居住権について準用する。
民法1034条
(居住建物の費用の負担)
第千三十四条 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
2 第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
9.配偶者短期居住権の消滅
配偶者短期居住権の消滅事由
- 配偶者短期居住権は,どのような場合に,消滅するのですか?
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配偶者短期居住権 は,①存続期間の満了(民法1037条1項),②居住建物取得者による消滅請求(民法1038条3項),③配偶者による 配偶者居住権 の取得(民法1039条),④配偶者の死亡(民法1041条において準用する民法597条3項),⑤居住建物の全部滅失等(民法1041条において準用する民法616条の2)等があります。
居住建物取得者による配偶者短期居住権の消滅請求
- 居住建物取得者による配偶者短期居住権の消滅請求は,どのような場合に行えるのですか?
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配偶者短期居住権 を取得した配偶者は,用法遵守義務や善管注意義務を負っており,配偶者がこれらの義務に違反した場合には,居住建物取得者は,その意思表示より 配偶者短期居住権 を消滅させることができます(民法1038条3項)。
民法1038条
(配偶者による使用)
第千三十八条 配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3 配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。
配偶者短期居住権の消滅請求と催告の可否
- 居住建物取得者による配偶者短期居住権の消滅請求をするためには催告が必要でしょうか?
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居住建物取得者による消滅請求は,使用貸借契約に関する民法594条3項と同様に,催告は必要ありません。
民法594条
(借主による使用及び収益)
第五百九十四条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
配偶者短期居住権の単独での消滅請求の可否
- 居住建物が共有である場合,各共有者は,それぞれ単独で配偶者短期居住権の消滅請求をすることができますか?
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居住建物が共有である場合,各共有者は,それぞれ単独で 配偶者短期居住権 の消滅請求をすることができます。これは,「配偶者居住権」の消滅請求と同様です。
配偶者が配偶者居住権を取得したとき,配偶者短期居住権が消滅する理由
- 配偶者が配偶者居住権を取得したとき,配偶者短期居住権が消滅するのは,なぜですか?
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配偶者短期居住権 は,配偶者が「配偶者居住権」を取得したときは,消滅します(民法1039条)。なぜならば,「配偶者居住権」については,その登記を備えていない場合にでも, 配偶者短期居住権 と同等ないしそれよりも強い効力が認められているからです。
配偶者短期居住権の消滅と引渡し
- 配偶者短期居住権が消滅したときには,居住建物所有者が複数いる場合,誰に居住建物を引き渡せばよいのでしょうか?居住建物所有者の全員に対して連絡して,引き渡さなければならないのでしょうか?
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配偶者短期居住権 が消滅したときは,配偶者は,居住建物取得者に対し,居住建物を返還しなければなりません(民法1040条1項)。そして,居住建物所有者が複数いる場合には,居住建物所有者のいずれかに返還すればよいです。なぜならば,居住建物所有者らの配偶者に対する各引渡請求権は不可分債権の関係にあるからです。したがって,居住建物所有者全員に対し連絡をして居住建物を引き渡すということはしなくてもよいです。
民法1040条
(居住建物の返還等)
第千四十条 配偶者は、前条に規定する場合を除き、配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物取得者は、配偶者短期居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2 第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
●対応地域とアクセス
(1)対応地域
当事務所は「全国対応」しております。また,原則として,主に下記の地域の方に関しましては,本人確認及び意思確認のために,面談を実施しております。(現在は,新型コロナウイルスの影響によりオンラインでの面談や郵送での本人確認についても対応しております。)
●名古屋市内全域
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