【判例】婚姻費用分担審判において、夫と民法772条の推定を受けない嫡出子との間の父子関係の存否を審理判断することなく、上記父子関係に基づく夫の扶養義務を認めた原審の判断に違法があるとされた事例(最二小決令和5年5月17日)

目次【最二小決令和5年5月17日】

判事事項

婚姻費用分担審判において、夫と民法772条の推定を受けない嫡出子との間の父子関係の存否を審理判断することなく、上記父子関係に基づく夫の扶養義務を認めた原審の判断に違法があるとされた事例

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92090

裁判要旨(当職作成)

 夫は、婚姻後に妻が出産し戸籍上夫婦の嫡出子とされている子であって民法772条による嫡出の推定を受けないもの(以下「推定を受けない嫡出子」という。)との間の父子関係について、嫡出否認の訴えによることなく、その存否を争うことができる。そして、訴訟において、財産上の紛争に関する先決問題として、上記父子関係の存否を確定することを要する場合、裁判所がこれを審理判断することは妨げられない(最高裁昭和50年(オ)第167号同年9月30日第三小法廷判決・裁判集民事116号115頁参照)。このことは、婚姻費用分担審判の手続において、夫婦が分担すべき婚姻費用に推定を受けない嫡出子の監護に要する費用が含まれるか否かを判断する前提として、推定を受けない嫡出子に対する夫の上記父子関係に基づく扶養義務の存否を確定することを要する場合であっても異なるものではなく、この場合に、裁判所が上記父子関係の存否を審理判断することは妨げられないと解される(最高裁昭和39年(ク)第114号同41年3月2日大法廷決定・民集20巻3号360頁参照)。本件子は、戸籍上抗告人と相手方の嫡出子とされているが、相手方が抗告人との婚姻の成立の日から200日以内に出産した子であり、民法772条による嫡出の推定を受けない。そうすると、本件において、抗告人の本件子に対する本件父子関係に基づく扶養義務の存否を確定することを要する場合に、裁判所が本件父子関係の存否を審理判断することは妨げられない

 ところが、原審は、本件父子関係の存否は訴訟において最終的に判断されるべきものであることを理由に、本件父子関係の不存在を確認する旨の判決が確定するまで抗告人は扶養義務を免れないとして、本件父子関係の存否を審理判断することなく、抗告人の本件子に対する本件父子関係に基づく扶養義務を認めたものであり、この原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない

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