【NEWS】円建てステーブルコイン「JPYC」と相続

日本円ステーブルコイン「JPYC」が秋に発行開始か、月内に資金移動業の登録で=報道

金融庁が月内にもJPYC社を資金移動業者として登録し、今秋に日本初の円建てステーブルコインとして「JPY Coin(JPYC)」が発行開始されると日経新聞が8月17日に報じた。

この報道についてJPYC社の代表取締役である岡部典孝氏に取材したところ「金融庁から登録されたタイミングでプレスリリースと記者会見を予定している」との回答を得た。発行されれば国内における「1号電子決済手段」として発行されるステーブルコインの初の事例になる。

※2025.8.18 17:19追記、 同日17:00にJPYC社は資金移動業者の登録が完了したことを発表した。詳細は下記の「関連リンク」より。

(続きは↓)

https://news.yahoo.co.jp/articles/31111730b2e811ba94b961b8d42076663350e5c5

ステーブルコインJPYCのイメージ

 現代社会において、相続財産の形は多様化の一途を辿っています。従来の不動産や預金、有価証券に加え、ビットコインやNFT(非代替性トークン)に代表される「デジタル資産」が、個人の財産ポートフォリオに占める割合は無視できないものとなっています。これらのデジタル遺産は、その特性ゆえに相続の現場で新たな課題を生み出し、従来の相続手続きでは対応しきれない複雑な問題を引き起こすことが少なくありません。

 特に、近年注目されているのが、法定通貨と価格が連動するように設計されたステーブルコインです。2023年6月に改正資金決済法が施行され、ステーブルコインが「電子決済手段」として法的に明確な位置づけを得たことは、この新しいデジタル通貨が社会に浸透していくための大きな一歩となりました 。直近では、国内初の円建てステーブルコインである「JPYC」が、資金移動業者としての登録を受ける方針であるとの報道があり、日本のデジタル通貨の未来を拓く動きとして大きな注目を集めています 。

 しかしながら、法整備が進む一方で、デジタル資産の相続に関する実務上の課題は山積しています。故人が保有していたデジタル資産の発見の難しさ、複雑な手続き、そして税務上の落とし穴など、予期せぬトラブルの温床となるリスクが存在します 。こうした新しい形の相続に直面した際、法的な知見と実務経験を持つ専門家のサポートが不可欠となります。

 本記事では、金融庁によるJPYCの承認方針という最新の動向を入り口に、暗号資産とステーブルコインの相続が持つ固有の論点を深く掘り下げて解説します。故人がデジタル資産を保有していたご家族、あるいは将来に備えて生前対策を検討されている方々が、安心して相続手続きに臨めるよう、具体的な情報と実践的なアドバイスを提供します。


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新時代の決済手段「円建てステーブルコイン」とは?

↓このページの内容↓

1.そもそもステーブルコインとは

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相談者

《質問》そもそもステーブルコインとは、なんですか?

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司法書士

《回答》ステーブルコインは、価格の変動を最小限に抑えるよう設計された暗号通貨の一種です。主に法定通貨(例: 米ドル、日本円)等に価値を連動するように設計されています。

ステーブルコインは、価格の変動を最小限に抑えるよう設計された暗号通貨の一種です。主に法定通貨(例: 米ドル、日本円)やコモディティ(例: 金などの商品)などの安定した資産に価値を連動(ペッグ)させることで、ボラティリティを低減します。主な種類には、以下のものがあります:

  • 1:1担保型: 発行額と同等の資産(現金や債券)を裏付けとする。例: USDT (Tether)、USDC (USD Coin)、JPYC。
  • 過剰担保型: 発行額以上の資産を担保とする。主に暗号通貨を基盤。例: DAI。
  • 無担保型(アルゴリズム型): アルゴリズムで価格を制御し、担保なし。例: 過去のテラUSD (UST、2022年に暴落)。
  • コモディティ連動型: 商品に連動。例: PAXG (金連動)。
  • ラップドトークン: 他の暗号通貨を異なるブロックチェーンで扱えるようにしたもの。例: WBTC (ラップドビットコイン)。

これにより、ステーブルコインはブロックチェーン上で法定通貨のような安定した価値を提供します。

2.ステーブルコインのメリット・デメリット

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相談者

《質問》ステーブルコインは新しい技術・新しい制度ですが、メリット・デメリットはなんですか?

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司法書士

《回答》ステーブルコインの主なメリットは、価格の安定性と実用性にあります。一方で、デメリットは、信用リスクやセキュリティリスクなどがあります。

ステーブルコインの主なメリットは、価格の安定性と実用性にあります。以下にまとめます:

  • 価格安定性: ボラティリティが低いため、日常取引や貯蓄に適しており、暗号通貨市場のリスクを軽減。
  • 国際送金・支払いの容易さ: 国境を越えた低コスト・高速送金が可能で、従来の銀行システムより効率的。金融包摂を促進し、発展途上国での利用が増加。
  • DeFi(分散型金融)統合: 貸し借りや取引プラットフォームで活用し、流動性を高める。
  • アクセシビリティ向上: ブロックチェーン技術により、誰でもアクセスしやすく、サイバーセキュリティや税務コンプライアンスを強化。
  • 取引の橋渡し役: 他の暗号通貨間の交換をスムーズにし、フィアット通貨のデジタル版として機能。

これらの利点により、ステーブルコインは暗号通貨エコシステムの基盤として機能しています。

一方で、ステーブルコインにはいくつかのリスクと欠点があります:

  • 信用リスクとデペッグの可能性: 裏付け資産が十分でない場合や、発行者の不正で価格連動が崩れる(例: 2022年のテラUSD暴落)。無担保型は特に脆弱。
  • 規制・コンプライアンスの課題: 民間発行のため、政府の凍結や監査不足が発生しやすく、マネーロンダリングや詐欺の懸念。
  • セキュリティリスク: ハッキングや盗難で資産が失われる可能性。
  • 消費者保護の不足: 伝統的な通貨より保護が薄く、システム全体の安定性に影響を与える場合がある。
  • 集中リスク: 発行者が大手企業(例: Tether社)に偏るため、単一障害点が生じやすい。

これらのデメリットは、2022年の市場事件で顕在化し、規制強化の動きを促しています。

3.暗号資産(ビットコインなど)との違い

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相談者

《質問》ステーブルコインと暗号資産(ビットコインなど)との違いはなんですか?

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司法書士

《回答》主な違いは、価格安定性です。また、法的な位置付けとしては、ステーブルコインは金銭相当であるのに、暗号資産(ビットコインなど)は単に資産と位置付けられると考えられることです

ステーブルコインとビットコインの主な違いは、目的と特性にあります。以下に比較表でまとめます:

項目ステーブルコインビットコイン
価格安定性法定通貨などにペッグされ、変動が少ない。需要供給で大きく変動(ボラティリティ高)。
目的支払い手段や価値保存、取引の橋渡し。デジタルゴールドのような価値保存、投資。
裏付け資産(フィアットや商品)で担保。なし(プルーフ・オブ・ワークによる)。
取引コスト・速度低コスト・高速で日常取引向き。変動費で遅延が発生しやすい。
リスクデペッグや規制リスク。価格暴落リスクが高い。
使用例DeFi、国際送金、フィアット代替。長期保有、投機。

ビットコインは価値の保存や投資に特化し、価格が相場に左右されるのに対し、ステーブルコインは安定した取引ツールとして機能します。たとえば、ビットコインの価格が急落しても、ステーブルコインは米ドルに近い価値を維持します。

4.ステーブルコインがなぜ話題になっているか

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相談者

《質問》ステーブルコインがなぜ話題になっているのですか?

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司法書士

《回答》暗号通貨市場の課題を解決し、実世界でのユースケースを拡大するためです。また、アメリカのGENIUS法の成立により、ステーブルコインがさらに注目されることになりました。

ステーブルコインが話題になっている理由は、暗号通貨市場の課題を解決し、実世界でのユースケースを拡大するためです。主なポイント:

  • ボラティリティ対策: ビットコインなどの変動を避け、日常的な支払いや送金に使えるため、暗号通貨の採用を促進。2025年現在、市場規模は拡大中。
  • グローバル決済の革新: 伝統的な銀行システムの非効率(高コスト・遅延)を解消し、クロスボーダー取引を容易に。特に発展途上国での金融包摂が進む。
  • DeFiとWeb3の基盤: 貸付、取引、NFTなどで必須のツールとなり、エコシステムの成長を支える。
  • 規制の進展: 各国で規制枠組みが整備され(例: EUのMiCA規制)、信頼性が高まる。2025年時点で、米ドル連動型が主流。
  • 技術進化: ブロックチェーンやスマートコントラクトの改善で、無担保型のリスク低減や新種の登場が期待される。結果として、ステーブルコインは暗号通貨を「実用的」なものに変え、普及を加速させる。
  • 2025年に米国で成立したステーブルコイン規制に関する包括的な法律であるGENIUS法が成立したことにより、ステーブルコイン全体の合法性を高め、米ドルのデジタル化を推進することになったこと

これにより、ステーブルコインは暗号通貨の「ブリッジ」として、将来的に伝統金融と融合すると考えられます。

5.アメリカのGENIUS法とは

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相談者

《質問》アメリカのGENIUS法とは、なんですか?

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司法書士

《回答》GENIUS法は、2025年に米国で成立したステーブルコイン規制に関する包括的な法律です。

GENIUS法は、米国でステーブルコインの規制枠組みを確立するための法案です。正式名称は「Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act」で、ステーブルコインの発行、監督、準備金、開示、執行などに関するルールを定めています。この法案は、ステーブルコイン市場の成長を支えつつ、米国におけるデジタル資産のリーダーシップを確立することを目指しています。

主な内容は以下の通りです:

  • 発行者の制限: 米当局(連邦準備制度理事会や通貨監督庁など)の認可を受けた事業者のみが、米国人を対象としたステーブルコインを発行可能。発行額が100億ドル以下の小規模事業者も対象。
  • 準備資産の要件: 発行額の100%相当を米ドル、短期国債、銀行預金などの高流動性資産で裏付けなければならない。透明性のための定期的な財務開示と監査が義務付けられる。
  • その他の規制: 制裁遵守、消費者保護、利息支払いの禁止(安定性を保つため)。また、ステーブルコインを証券から除外し、SECではなく金融当局の管轄とする。
  • 外国発行体への影響: 米国内利用については曖昧さが残るが、米発行体が優位になる可能性が高い。

GENIUS法に適合するステーブルコイン主要な例としてUSDC(USD Coin)があり、これはCircle社とCoinbase社が共同で発行するステーブルコインで、1 USDC = 1米ドルの価値を維持するよう、米ドルや短期国債などの資産で裏付けられています(USDCはすでに米ドルベースの準備資産を100%保有する構造を持っており、法案の要件に適合しています)。これにより、USDCは規制準拠の「合規ステーブルコイン」として市場シェアを拡大する可能性が高く、機関投資家や決済用途での採用が進むと予想されます(競合のUSDT(Tether)などと比較して、USDCの透明性が高い点が法的に有利に働くとされています)。

GENIUS法の成立は、ステーブルコイン全体の合法性を高め、米ドルのデジタル化を推進する一方で、非準拠発行者の排除を促す効果があります。

2件のソース

6.円建てステーブルコイン「JPYC」承認方針の背景

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相談者

《質問》円建てステーブルコイン「JPYC」が金融庁から承認方針の報道を受けた法的背景は?

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司法書士

《回答》2023年6月に施行された改正資金決済法が直接的な法的背景にあります 。この法改正により、ステーブルコインは「電子決済手段」として法的に明確な位置づけを与えられました 。

JPYC社が金融庁から資金移動業者としての登録を受ける方針であるとの報道は、2023年6月に施行された改正資金決済法が直接的な法的背景にあります 。この法改正により、ステーブルコインは「電子決済手段」として法的に明確な位置づけを与えられました 。これにより、銀行、信託会社、または資金移動業者のいずれかが、裏付け資産を保全することを条件に、ステーブルコインを発行できるようになりました 。

従来、暗号資産は投機的な「資産」として認識され、その法規制は主に利用者保護やマネーロンダリング対策に焦点が当てられてきました 。しかし、改正資金決済法がステーブルコインを「決済手段」と再定義したことは、その法的な位置づけを「投機商品」から「決済インフラ」へと根本的に変化させたことを意味します。この法的な地位のパラダイムシフトは、将来的には相続手続きにおいて、従来の価格変動の激しい暗号資産とは異なり、より現金や預金に近い扱いを受ける可能性を示唆しています。

JPYCは、その価値を日本円に連動させるように設計された国内初の円建てステーブルコインであり、この新しい法制度の下での発行は、日本におけるデジタル通貨の社会実装に向けた重要な一歩となります 。この承認方針は、単に特定の銘柄が認められるというだけでなく、価格が安定したデジタル通貨が、信頼できる法的枠組みの中で広く利用されるようになるための基盤を築くものとして、非常に大きな意義を持っています 。

7.改正資金決済法における「電子決済手段」の定義とは?

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相談者

《質問》「電子決済手段」とは具体的にどのようなものを指し、どのような特徴がありますか?

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司法書士

《回答》改正資金決済法で新たに定義された「電子決済手段」とは、電子情報処理組織を用いて移転可能な通貨建資産を指します 。これは、単なる暗号資産とは異なり、その価値が日本円や米ドルなどの法定通貨に連動していること、そして有価証券や電子記録債権などに該当しないことが要件とされています 。

この法制度は、発行者と仲介者を明確に区別し、それぞれに異なる規制を課す仕組みを導入しています 。例えば、信託会社が特定信託受益権の形でステーブルコインを発行したり、資金移動業者が為替取引債務に係る債権として発行したりします。また、電子決済手段等取引業者は、これらの電子決済手段の取引や移転の仲介を行います 。

こうした法令が発行者と仲介者の役割や規制を明確にしたことは、ユーザーにとって「誰が、どのようなルールで」このデジタル資産を扱っているのかを把握する上で極めて重要です。この透明性と法的確実性が、デジタル資産に対するユーザーの信頼性を根本的に向上させると考えられます 。これにより、これまで価格変動や法的保護の不確かさから暗号資産に懐疑的だった層、特に相続対策を検討する高齢層が、安心して利用できる土壌が整いつつあります。

8.ステーブルコイン発行者と仲介者に課される規制と義務

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相談者

《質問》ステーブルコインを発行・仲介する事業者は、どのような法的規制と義務を負いますか?

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司法書士

《回答》ステーブルコインを発行・仲介する事業者には、厳格な法的規制と義務が課されます。

ステーブルコインを発行・仲介する事業者には、厳格な法的規制と義務が課されます。例えば、JPYC社が登録を目指す資金移動業者には、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)のための態勢整備が求められます 。

加えて、発行者には利用者の資金を適切に管理する義務があり、信託会社等への金銭信託(利用者区分管理金銭信託)などにより、顧客の財産と自己の固有財産とを明確に区分して管理することが義務付けられています 。これは、仮に発行者が倒産した場合でも、利用者の資金が保全される可能性を高めるための重要な措置です。

こうした規制は、単に利用者保護を目的とするだけでなく、相続実務においても大きな意味を持ちます。従来の暗号資産取引には、ハッキングや取引所の破綻といったリスクが存在し、これらの事態は相続人にとって予期せぬ「負の遺産」となる可能性を秘めていました 。しかし、ステーブルコインが厳格な法的規制下で発行されることで、こうした発行者側の倒産リスクが軽減され、相続人が「負の遺産」を背負うリスクを減らすことができるのです。これらの規制は、ステーブルコインを単なる暗号資産とは一線を画す、金融インフラとしての信頼性を担保する重要な基盤となっています。

9.利用者が知っておくべきJPYCのメリットとリスク

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相談者

《質問》JPYCを利用する上での主なメリットと、注意すべきリスクは何ですか?

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司法書士

《回答》JPYCは、価格が円に連動しているため、ビットコインなどの暗号資産と比べて価格変動リスクが極めて低いという明確なメリットがあります 。一方で、利用者が認識しておくべきリスクも存在します。具体的には、JPYCはデータであるので、ハードウェアウォレットやペーパーウォレットに保管されたJPYCは、秘密鍵やリカバリーフレーズがなければ事実上アクセス不能になる(お金として利用できるなくなる)というリスクです。

円建てステーブルコイン「JPYC」と相続

1.ステーブルコインは遺産分割の対象になりますか?

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相談者

《質問》ステーブルコインは円に連動していますが、遺産分割協議は必要ですか?

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司法書士

《回答》ステーブルコインの管理している場所が、取引所とウォレットで結論が異なると予想されます。具体的には、取引所に保管されているステーブルコインは当然に遺産分割の対象になり、ウォレットに保管されているステーブルコインは当然に遺産分割の対象にはならないと考えられます。

この論点は、現在の日本の法律実務における重要な未確定点です。相続財産であっても、金銭その他の可分債権(すぐに分割できる債権)は、遺産分割の対象にならず、各相続人の法定相続分に応じて当然に分割承継されると考えられてきました 。かつては、預金もこの可分債権に含まれていましたが、2016年の最高裁判例により、遺産分割の対象となることが確定しました 。

ステーブルコインは、その価値が法定通貨に連動している点で現金に準ずる性質を持つ一方で、依然としてブロックチェーン上に存在する「デジタル資産」としての特性も併せ持ちます。この法的な位置づけが今後どのように確定していくかは、今後の判例や法解釈に委ねられています。この法改正後の「相続のグレーゾーン」は、相続人間での協議を複雑化させ、トラブルの温床となる可能性を秘めています。なお、法的な位置づけに関わらず、相続人全員の合意があれば、ステーブルコインを遺産分割協議に含めることは可能です 。

2.ステーブルコインの相続手続きは暗号資産とどう異なりますか?

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相談者

《質問》ステーブルコインの相続手続きは、ビットコインなどと比べて何が違うのでしょうか?

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司法書士

《回答》ステーブルコインの相続手続きの基本的な流れは、ビットコインなどの暗号資産と類似すると予想されます。もっとも、相続後の換金や分割がよりシンプルになる可能性が高いという点で異なります。

ステーブルコインの相続手続きの基本的な流れは、ビットコインなどの暗号資産と類似すると予想されます。具体的には、故人が利用していた取引所や発行元に連絡し、必要書類を提出するという手順を踏みます。しかし、価格が円に連動しているという性質上、相続後の換金や分割がよりシンプルになる可能性が高いという点で異なります。

従来の暗号資産では、価格の急激な変動から、相続人が売却するタイミングや分割方法について協議が難航することがあります 。一方で、ステーブルコインは価値が安定しているため、価格変動に起因する争いが起こりにくく、相続手続きがより円滑に進むことが期待できます。また、今後、発行者である信託会社や資金移動業者が、従来の暗号資産交換業者とは異なる、より金融機関に近い相続手続きプロセスを確立する可能性があり、これによって手続きの複雑さや時間的負担が軽減されるかもしれません。

3.ステーブルコインを相続する際の留意点は?

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相談者

《質問》価格が安定しているステーブルコインの相続では、どのような注意点がありますか?

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司法書士

《回答》ステーブルコインの相続は、ビットコインのような暗号資産と比較すると、その価値が法定通貨に連動しているため、複雑な市場価格の変動を考慮する必要がほとんどないと考えられますが、今後の情報には注意すべきです。

ステーブルコインの相続税評価は、その価値が法定通貨に連動しているため、ビットコインのような暗号資産のように複雑な市場価格の変動を考慮する必要がほとんどないと考えられます。また、相続開始日における円換算の価格を基に評価されることになるでしょう 。また、相続後にステーブルコインを売却する際の税務上の注意点も、暗号資産とは異なると考えられます。暗号資産の場合、相続開始日から売却日までの間に価格が大きく変動し、その差額に対して所得税が課されるリスクがありますが、価格が安定しているステーブルコインでは、この所得税課税のリスクが低いというメリットがあります。また、将来的には、異なる種類のステーブルコインを交換した際に課税を繰り延べる「課税繰延制度」が議論されている点も、相続人にとって重要な情報となります 。

比較項目一般的な暗号資産(例:ビットコイン)ステーブルコイン(例:JPYC)
価格変動性高い。価格が大きく変動する。低い。法定通貨に連動し、価格が安定している。
遺産分割の法的性質未確定。財産権として遺産分割協議の対象となることが一般的。未確定。現金・預金に準じる性質から、可分債権となる可能性も。
相続税評価相続開始日時点の時価(終値)で評価。複数の取引所がある場合は選択可能。相続開始日時点の時価(円換算)で評価。価格変動リスクはほぼない。
相続後の売却時の税務売却益は雑所得として課税。相続税の取得費加算の特例は適用外。売却益はほぼ発生しない(価格変動が少ないため)。所得税課税のリスクは低い。

4.生前対策でトラブルを未然に防ぐ方法とは?

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相談者

《質問》ステーブルコインの相続に備えて、生前にどのような対策をしておくべきですか?

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司法書士

《回答》保有している取引所やウォレットの情報、IDを遺族に分かりやすく残しておくことが極めて重要です 。

価格が安定しているステーブルコインであっても、相続における基本的な課題は暗号資産と共通しています。その存在がデジタルな情報としてのみ存在するため、相続人が見つけにくいという問題は依然として残ります 。

生前に相続トラブルを未然に防ぐためには、まず、保有している取引所やウォレットの情報、IDを遺族に分かりやすく残しておくことが極めて重要です 。また、法定相続分とは異なる割合で分割したい場合や、特定の相続人にすべてを承継させたい場合は、遺言書を作成しておくことが最も確実な方法です 。遺言書がない場合、遺産分割協議が必要となり、相続人全員の合意を得るまでに時間と労力を要する可能性があります 。

5.故人が保有していた暗号資産・ステーブルコインの発見方法

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相談者

《質問》故人が暗号資産・ステーブルコインを保有していたか、どのように調査すれば良いですか?

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司法書士

《回答》暗号資産・ステーブルコインは物理的な実体を持たないため、「デジタル遺産」の発見は非常に困難です 。しかし、その存在を知らなかったとしても法的には相続財産として認識され、相続税の課税対象となります 。この「発見の困難性」と「課税義務」の間の乖離は、デジタル遺産相続における最大の落とし穴の一つです。

相続人が予期せぬ税務調査や追徴課税のリスクに直面する根本的な原因となるため、徹底した調査が求められます 。調査は、物理的な手掛かりとデジタルな手掛かりの両面から進めることが重要です 。

  • 物理的な手掛かり:
    • 確定申告書: 過去の確定申告書に、暗号資産の取引履歴が記載されている場合があります。
    • 取引報告書: 暗号資産取引所から郵送される取引報告書や年間取引報告書が、遺品の中にないか探します。
    • 銀行口座やクレジットカードの利用明細: 取引所への入金や、特定のサービスへの支払い履歴から、暗号資産取引の痕跡を見つけることができます 。
    • 金庫や貸金庫: ハードウェアウォレットやリカバリーフレーズ(シードフレーズ)を紙に印刷したものが、金庫などに保管されていることがあります 。
  • デジタルな手掛かり:
    • スマートフォンのアプリ履歴: 故人のスマートフォンに、取引所やウォレットのアプリがインストールされていないか確認します 。
    • メールの受信ボックス: 取引所からの通知、登録確認メール、取引完了メールなどが残っていないか確認します 。
    • ブラウザのブックマーク・履歴: ウェブブラウザのブックマークや履歴に、特定の取引所のサイトがないか確認します 。

以下に、デジタル遺産調査のチェックリストを示します。

調査項目具体的な確認方法
物理的な手掛かり故人のPCやスマホ、書類棚、金庫を確認する。確定申告書、取引報告書、銀行口座の入出金明細、クレジットカードの利用明細などをチェックする。
デジタルな手掛かり故人のPCやスマホのアプリ一覧を確認する。メールボックスで「仮想通貨」「暗号資産」「ビットコイン」などのキーワードで検索する。ブラウザのブックマークや閲覧履歴を確認する。
ウォレットハードウェアウォレット(USBメモリやカード型)や、数字と英字の羅列が書かれた紙(ペーパーウォレット、リカバリーフレーズ)が、貸金庫や家庭内金庫に保管されていないか探す。
その他友人や家族で、生前にデジタル資産について話していた相手がいないか聞き取りを行う。

6.取引所とウォレット、それぞれの手続きの違いは何ですか?

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相談者

《質問》暗号資産の相続手続きは、取引所に預けていた場合とウォレットで自己管理していた場合で異なりますか?

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司法書士

《回答》暗号資産の相続手続きは、故人が資産をどこに保管していたかによって大きく異なります。

具体的には、下記のとおりです。

  • 取引所の場合:
    • 故人が利用していた取引所に連絡し、相続手続きを進めます 。
    • 取引所から送付される書類(相続届など)に、戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書などの必要書類を添えて提出します 。
    • 取引所は、相続開始日時点の残高証明書を発行し、相続人がそれに基づいて遺産分割協議を行います 。
    • 協議がまとまった後、取引所の規約に従い、暗号資産を現金に換金して代表相続人の銀行口座に払い戻すか、暗号資産のまま相続人の口座へ移管します 。
  • ウォレット(自己管理)の場合:
    • ウォレット(ハードウェアウォレット、ペーパーウォレットなど)に保管された暗号資産は、取引所の介入を期待できません。この場合、資産にアクセスするためには、ウォレットのパスワードや秘密鍵、リカバリーフレーズといった情報が絶対的に必要となります 。
    • これらの情報が不明な場合、資産の存在は確認できても、事実上アクセスは不可能となります 。この状態は「セルフGOX」とも呼ばれ、せっかく見つけた資産も引き出すことができないという深刻な事態に陥ります。

取引所が関与する場合、手続きは煩雑ながらも、法的な枠組みに沿って進めることができます 。しかし、ウォレットでの自己管理は、相続人にも「自己責任」が求められることになります 。司法書士の役割は、単に手続きを代行するだけでなく、遺品の中から秘密鍵の手がかりを見つけるための専門的な助言や、資産に負債が含まれていた場合の相続放棄・限定承認といった法的選択肢を提示することにまで拡大します。

7.暗号資産はなぜ相続税の課税対象になるのですか?

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相談者

《質問》ビットコインなどの暗号資産は、相続財産として相続税の課税対象になりますか?

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司法書士

《回答》結論として、ビットコインなどの暗号資産は、不動産や預金と同様に相続財産と見なされ、相続税の課税対象となります 。

結論として、ビットコインなどの暗号資産は、不動産や預金と同様に相続財産と見なされ、相続税の課税対象となります 。その根拠は、民法上の「財産に属した一切の権利義務」に該当し、資金決済法においても「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」として規定されているためです 。

たとえ故人が取引所を利用していたか、ウォレットで自己管理していたかにかかわらず、その存在が確認できれば課税対象となります 。相続税は、被相続人の全財産の合計額が、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円 × 法定相続人数)を超える場合に課税されます 。相続人はこの基準に基づき、納税義務の有無を判断する必要があります。

トラブル事例から学ぶデジタル遺産対策

1.デジタル遺産が「負の遺産」になる?

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相談者

《質問》デジタル資産が借金や負債を含む場合、相続放棄は可能ですか?

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司法書士

《回答》デジタル資産が借金や負債を含む場合、相続放棄は可能です。

暗号資産は、保有者がレバレッジ取引(FX取引)や信用取引を行っていた場合、市場の急激な変動によって多額の負債が発生し、「負の遺産」となる可能性があります 。このような場合、相続人はその負債を引き継ぐ義務を負うことになります。

負債を負わないためには、相続人が相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ「相続放棄」の申述を行う必要があります 。この3ヶ月という期間は、デジタル資産の調査には非常に短い時間であり、故人がどの取引所を利用していたか、ウォレットに資産があるかどうかを特定するだけでも期間内に完了できないことがあります 。この場合、家庭裁判所へ「相続の承認または放棄の期間伸長」の手続きを行うことで、調査期間を延長することができます 。詳細は、下記のとおりです。

「相続放棄」の窓口

目次【「相続放棄」の窓口】 第1 相続放棄とは-わかりやすく詳しく解説 第2 相続放棄のメリット・デメリット ★相続放棄のメリットとデメリットの一覧 第3 費用(報…

2.相続手続き後に新たなデジタル資産が見つかったら?

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相談者

《質問》相続手続きが完了した後に、故人の新たなデジタル資産を発見した場合、どうなりますか?

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司法書士

《回答》相続手続き、特に遺産分割協議が終了した後に、故人の新たなデジタル資産が発見された場合、原則として遺産分割協議のやり直しが必要となります 。

相続人全員が再度集まり、新たに発見された資産を含めて分割方法について協議し、遺産分割協議書を再作成する必要があります 。課税面では、新たな財産が加算されることで相続税の納税額が増加し、すでに法定納期限を過ぎていた場合は、延滞税や過少申告加算税が課されるリスクがあります 。デジタル遺産は「見つけにくい」という特性を持つため、見落としが原因で予期せぬ税務調査を受けたり、意図的な財産隠しと判断された場合は重加算税が課される可能性もあるため、適切な申告が極めて重要となります 。

3.海外取引所の利用やハードウェアウォレットの相続は難しいですか?

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相談者

《質問》海外の暗号資産取引所や、ハードウェアウォレットに保管された資産の相続はどのように行いますか?

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司法書士

《回答》故人が海外の暗号資産取引所を利用していた場合、各国の法律や規制、手続きの慣習が異なるため、その相続手続きは国内取引所と比べて格段に難航する可能性が高いです 。

故人が海外の暗号資産取引所を利用していた場合、その相続手続きは国内取引所と比べて格段に難航する可能性が高いです 。各国の法律や規制、手続きの慣習が異なるため、現地の法律に精通した専門家の協力が不可欠となることがあります。

また、ハードウェアウォレットやペーパーウォレットに保管された資産は、秘密鍵やリカバリーフレーズがなければ事実上アクセス不能であり、相続手続きを行うことができません 。これらの重要な情報は、物理的な金庫や隠された場所に保管されていることが多いため、遺族は慎重に遺品を調査する必要があります 。秘密鍵やリカバリーフレーズを紛失したり、見つけられなかったりした場合、その資産は事実上失われたものとなり、法的にも引き出すことは極めて困難です。

4.生前対策として「デジタル遺産リスト」はどのように作成すべきですか?

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相談者

《質問》遺族が困らないよう、生前にどのようなデジタル遺産の整理をしておけば良いですか?

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司法書士

《回答》遺言書の検認を司法書士事務所に頼むメリットには、下記のメリットがあります。

遺族が困らないようにするためには、生前に遺産を「見つけ」「アクセスし」「手続きする」ための手がかりを残しておくことが何よりも重要です 。デジタル遺産の相続手続は非常に難解になりやすいので、安全かつ網羅的な「デジタル遺産リスト」の作成をすべきといえます。

具体的には、「デジタル遺産リスト」には、保有するデジタル資産の「種類(ビットコイン、イーサリアム、JPYCなど)」、「保管場所(取引所名やウォレットの種類)」、そして「アクセスするためのヒント」を記載します 。ここで重要なのは、パスワードや秘密鍵そのものをリストに直接記載しないことです。代わりに、それらを保管している場所(例:貸金庫、家庭内金庫の特定の引き出しなど)を記すなど、セキュリティに配慮した方法で作成すべきです。このリストをエンディングノートや遺言書に添えておくことで、相続人はデジタル資産の存在を容易に特定し、その後の手続きを円滑に進めることができます。

「遺言」の窓口

第1 遺言とは-わかりやすく詳しく解説 1.遺言の特徴 2.遺言のメリット 3.遺言のデメリット 4.遺言の報酬及び費用 5.遺言の手続の流れ 第2 遺言のよくあるQ…

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