配偶者居住権のまとめ(14)
平成31年4月17日より,少しずつ「配偶者居住権のQ&A」を作成しております(過去の記事の一覧)。また,令和元年5月14日より配偶者短期居住権に入りました。
なお,配偶者居住権及び配偶者配偶者短期居住権の新設等の施行日は,2020年4月1日(令和2年4月1日)になります。
- 配偶者短期居住権を取得した配偶者を介護するために,配偶者の家族が同居をする場合には,居住用建物取得者の承諾を得ないと“無断で第三者に使用させた”ことになるのでしょうか?
- 配偶者は,居住建物取得者の承諾を得なければ,第三者に居住建物の使用をさせることができません(民法1038条2項)。これも使用貸借と同様の規定となります。居住建物取得者の承諾なく使用させることができない「第三者」は,原則として,配偶者以外の者のことをいいます。もっとも,配偶者が家族等を占有補助者として同居させることは,第三者に使用させることに当たらない(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法33頁)ものと考えられています。したがって,配偶者居住権が成立した後に,配偶者を介護するためにその親族が配偶者と同居することになったとしても,これについて居住建物取得者の承諾を得ることは必要ありません。
- 居住建物取得者は,配偶者短期居住権を取得した配偶者から,風呂釜の修理代金を請求された場合,その修理代金を支払わなければならないのでしょうか?
- 使用貸借における貸主と同様に,居住用建物取得者は,配偶者に対し,建物を使用するのに適した状態にする義務(修繕義務等)までは負っておらず,配偶者が無償で居住建物を使用することを受忍すれば足ります。
- 被相続人の生前に,被相続人が居住建物の一部から収益(賃料収入等)を得ていた場合,配偶者短期居住権を取得した配偶者はその収益について受け取ることができるのでしょうか?
- 配偶者短期居住権については,配偶者に居住建物の使用権限のみ認め,収益権限は認めないこととしています(民法1037条1項)。なぜならば,配偶者短期居住権は,配偶者の居住の権限を保護することを目的とする権利だからです。仮に,被相続人の生前に,被相続人が居住建物の一部から収益を得ていたのであれば,その収益については,相続分に従って各共同相続人に帰属させるのが相当と考えられるためです。 なお,配偶者居住権の場合には,「配偶者は,居住建物の所有者の承諾を得なければ,居住建物の改築若しくは増築をし,又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。」(民法1032条3項)としており,配偶者短期居住権と異なります。
- 居住建物取得者による配偶者短期居住権の消滅請求をするためには催告が必要でしょうか?
- 居住建物取得者による消滅請求は,使用貸借契約に関する民法594条3項と同様に,催告は必要ありません。
司法書士なかしま事務所
司法書士 中嶋 剛士
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