配偶者居住権のまとめ(4)

 平成31年4月17日より,少しずつ「配偶者居住権のQ&A」を作成しております(過去の記事の一覧)

 なお,配偶者居住権及び配偶者配偶者短期居住権の新設等の施行日は,2020年4月1日(令和2年4月1日)になります。



配偶者居住権の存続期間】配偶者居住権を譲渡(売買・贈与等),または相続することは可能でしょうか?
 配偶者居住権は,配偶者の居住権を保護するために特に認められた権利であり,帰属上の一身専属権とされています。したがって,配偶者居住権の帰属主体は配偶者に限定され,配偶者はこれを譲渡することができず(民法1032条2項),配偶者が死亡した場合には当然に消滅するため,相続の対象にもなりません(民法1036条において準用する597条3項) 。

配偶者居住権の性質】配偶者居住権は,賃貸借契約でしょうか?それとも使用貸借でしょうか?賃貸借契約であると,賃料が発生すると思いますが賃料は発生するのでしょうか?
 「法的性質については規定上特に明確にしていないが賃借権類似の法定の債権であると考えられる。もっとも,配偶者は遺産分割においてこれを取得する場合でも自己の具体的相続分において取得することになるから,その存続期間中に賃料の支払義務を負わず無償で使用することができるなど賃借権とも異なる性質を有している(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]14頁)」とされています。
 したがって,配偶者居住権が存続する限り,配偶者は無償で使用できますし,無償で使用できるという点からすると,使用貸借権に類似するのではないでしょうか。

配偶者居住権の性質】配偶者居住権の債権者と債務者は誰でしょうか?
 配偶者居住権の債権者は配偶者となります。また,債務者は,居住建物の所有者になります。なお,例えば,配偶者が遺贈により配偶者居住権を取得したが,居住建物については遺産共有状態にある場合には,債務者は配偶者を含む相続人全員ということになります。

配偶者居住権の存続期間】配偶者居住権の存続期間が定められた場合,存続期間を更新したり,延長することはできるでしょうか?
 配偶者居住権の存続期間が定められた場合,その延長や更新をすることはできません。配偶者居住権は配偶者がその建物を無償で使用することができる権利であるから,その財産評価額は基本的には配偶者居住権の存続期間が長くなるにしたがって高くになると考えられるが配偶者居住権の存続期間の延長や更新を認めることとすると配偶者居住権の財産評価を適切に行うことが困難になるためです(堂薗=神吉[2019年]概説改正相続法[初版]15頁)。

配偶者居住権の存続期間】配偶者居住権の存続期間が定められた場合,存続期間を更新をする方法はないのでしょうか?
 配偶者居住権の存続期間が終了した時点で,居住建物の所有者と配偶者との間で新たに使用貸借契約や賃貸借契約が締結をすれば,配偶者居住権の存続期間経過後も配偶者が居住建物に居住し続けられることになります。
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