目次【設立時の定款の作成方法】

第1 定款とは-わかりやすく詳しく解説

1.定款とは

(1)定款は会社の基本的な規則

定款とは何ですか?

定款は、会社、公益法人、社団法人、財団法人、各種協同組合等の法人の目的、組織、活動に関する根本となる基本的な規則です。これを書面若しくは電磁的記録に記載又は記録したものをいうこともあります。

(2)定款の記載事項

定款の絶対的記載事項

定款に必要な記載(絶対的記載事項)とは何ですか?

 株式会社の場合の、絶対的記載事項 (必ず記載しなければならない事項)は、次のとおりです。

株式会社の定款の絶対的記載事項

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  • 発起人の氏名又は名称及び住所

 なお、定款の記載事項には、①絶対的記載事項と②相対的記載事項と③任意的記載事項があります。①絶対的記載事項は、必ず記載しなければならない事項であり、②相対的記載事項は、効力を生じさせようとするには必ず定款に記載しなければならない事項であり、③任意的記載事項は、定款には,会社法の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項で会社法の規定に違反しないものを記載することができる事項です。


定款の相対的記載事項

定款の相対的記載事項とは何ですか?

株式会社の場合の、相対的記載事項 (効力を生じさせようとするには必ず定款に記載しなければならない事項)の例は、次のとおりです。

株式会社の定款の相対的記載事項の例

  • 現物出資をする者の氏名又は名称,出資の目的たる財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の種類及び数
  • 会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
  • 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
  • 株式会社の負担する設立に関する費用


(3)定款の形式

定款を書面で作成する場合の形式はどのような形式で作成するのですか?

定款の作成方法は、通常次のようにされています。書面による場合は、A4版の用紙に片面に横書きで記載し、表紙、本文、裏表紙の順に綴り、袋とじにするか、ステープラ(ホチキス)等で綴じます。表紙には、通常会社の商号等を記載します。字の大きさ等は、12ポイント、標準書体で印刷すると見やすくなります。定款原本には、発起人が署名又は記名押印し、各葉ごとに契印します(この契印に代えて、袋とじの場合には、つなぎ目に契印することでかまいません。)

(4)設立時の定款は誰が作成するか

定款は、誰が作成するのですか?

法人を設立する場合、会社であれば発起人、社団法人であれば社員、財団法人であれば設立者(以下、単に「発起人」として、説明します。)が定款を作成し、これに署名又は記名押印をすることになります。電子定款によるときは、定款をPDFファイルで作成し、電子署名をすることになります。作成日付は、記載するのが普通です。なお、その作成日付は、認証する日よりも以前の日になります。

(5)定款に英語を使用できるか

定款に英語を使用することはできるでしょうか?

定款に使用する言語は、日本語になります。英語、ドイツ語等が併記されている定款であっても、日本語の部分が正式の定款となり、外国語の部分は翻訳として扱われます

2.定款の認証とは

(1)定款の認証が必要な会社の種類

定款の認証とは何ですか?

 定款の認証とは、公証人が、正当な手続きにより定款が作成されたことを証明することをいいます。次のような法人の設立をするときには、公証人の認証を受ける必要があります(ただし、公証人の認証を受ける必要があるのは、設立当初の定款だけで、その後定款を変更するときは必要ありません。)。

公証人の認証を必要とする定款

  1. 株式会社
  2. 一般社団法人及び一般財団法人
  3. 税理士法人・司法書士法人・行政書士法人・土地家屋調査士法人・社会保険労務士法人・弁護士法人・監査法人・特許業務法人・特定目的会社・相互会社・金融商品会員制法人
  4. 信用金庫、信用中央金庫及び信用金庫連合会

 なお、いわゆる持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の定款については、公証人の認証を必要としません。

(2)定款の認証が必要な理由

公証人の認証が必要な理由は何ですか?

 設立当初の定款(原始定款ともいいます。)について、公証人の認証が必要とされるのは、①発起人が原始定款を作成したこと、②その内容の明確性を確保し、後日紛争になったときにその内容を確実に証明し、不正行為を防止することにあるためです。

(3)定款の認証の管轄

定款の認証は、どこの公証人でするのですか?

 定款の認証は、会社の本店の所在地を管轄する法務局又は地方法務局に所属する公証人しかできません(公証人法62条ノ2)。例えば、東京都内に本店を置く会社等の定款は、東京法務局所属の公証人(東京都内の公証役場の公証人になります。)が認証し、それ以外の他の地域に所属する公証人は認証できません。公証人の職務ができる区域は、その公証人の所属する法務局又は地方法務局の管轄区域による(公証人法17条)とされています。管轄区域外の公証人がした定款の認証については、無効となるので、くれぐれも本店の所在地の公証役場で認証を受けるようにしてください。

(4)公証役場の定款認証手数料

定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか?

株式会社を設立するのに、最低限必要な費用は次のとおりです。

公証役場の定款認証手数料

  • 認証手数料5万円
  • 謄本手数料1枚250円大体8枚2000円くらい
  • 印紙代4万円。ただし電子定款のときはなし
  • 設立登記に必要な登録免許税15万円か出資額の1000分の7のいずれか高い額。
  • このほか、募集設立の際には、払込保管証明書約2万5000円
  • これに加えて、代表者印の作成費用、印鑑登録証明書代がかかります。

定款認証手数料

 定款の認証の手数料は、1件5万円です(公証人手数料令35条)。これに加えて、通常、登記申請用の謄本を請求しますが、その手数料は、謄本1枚につき250円です。認証文も同じように計算します(手数料令40条)。定款の表紙(表・裏)については、原則として枚数に入れませんが、訂正印により本文の訂正がされているときは、本文の記載と同じものと扱って枚数に入れます。

印紙代

 株式会社や相互会社の定款の認証については、電子定款によらない場合には、収入印紙4万円を公証人保存原本に貼付します。なお、会社であっても電子定款による場合や特定目的会社の定款については、収入印紙は貼付する必要はありません。また、社団法人の定款や信用金庫の定款についても収入印紙は、貼付しません。

変更定款の場合

 変更定款の場合、手数料は手数料令では定められておりませんが、1件について私署証書の認証に準じて5,500円となります。この点は、認証を予定している公証役場にお問い合わせください。この場合、収入印紙は貼付しません。

(5)定款の認証後の変更

定款の認証を受けた後、創立総会において本店所在地を他の法務局又は地方法務局管内に変更したときは、改めて定款認証をし直す必要がありますか?

 定款の認証を受けた後、創立総会において本店所在地を他の法務局又は地方法務局管内に変更したときは、変更後の定款について改めてその本店所在地管内の公証人に認証を受けなければなりません。

 裁判所が変態設立事項について検査役の報告を受けた結果、不当と認めて決定をしたような場合には、公証人の認証を改めて受けることなく変更できます(会社法30条2項)。このほかの事項について、改めて、公証人の認証を得る必要があるかどうかは、認証を受けた公証人に問い合わせをしてください。

 なお、会社の目的を一部修正する場合や発起人の氏名の誤記を訂正する場合など、定款の変更する内容が軽微な場合には、先に認証した定款を事実上訂正し、初めからそのような定款であるとして扱うこともあります。定款の事実上の訂正で済ませることができるかどうかは、認証を受けた公証人に問い合わせをしてください。もっとも、発起人又は社員の交替は、定款変更手続によるか、新しく定款を作成する必要があります。

(6)代理人による定款認証手続

 代理人による定款認証の嘱託手続きを教えてください。

 定款認証の手続は、代理人によってすることもできます。発起人の一人が他の発起人の代理人となる場合や発起人全員が他の第三者に代理を嘱託することもできます。

 代理人となる人については、本人による場合と同様に本人であることを証明(印鑑登録証明書、運転免許証、パスポート等)する必要があり、かつ発起人から嘱託を受けていることを証明する委任状を提出することが必要です。実際には、委任する発起人全員の印鑑登録証明書を提出することになります。委任状の書式等については、認証を予定している公証役場にお問い合わせください。

3.定款認証の必要書類

定款認証にどのような書類が必要ですか

 定款認証の際には、次の書類が必要です。

定款認証の必要書類

  • 定款3通
  • 発起人の印鑑証明書
  • 会社が発起人の場合には、代表者の印鑑登録証明書のほかに会社の登記簿謄本

定款3通

 定款認証の嘱託には、定款(原本)2通を公証人に提出します(公証人法62条ノ3第1項)。公証人が認証をした上、このうち1通は役場保存用原本として保存し、もう1通を会社保存用原本として嘱託人に還付します。実務では、設立登記の申請の際には、認証を得た謄本1通が必要となるので、この分も入れて、通常は定款3通を提出することになります。
 定款中に訂正(挿入、削除)があるときは、その字数及び箇所を記載して作成し、作成者全員が訂正印を押捺する必要があります。訂正のための捨印があると、対応が容易になります。

発起人の印鑑登録証明書

 発起人の印鑑登録証明書は、発起人が人違いでないことの証明をすることが必要です。定款に記載された発起人の住所、氏名及び押印の正確性を確認できることや多くの場合、発起人が設立時の取締役等を兼ねることもあって、実務上は印鑑登録証明書の提出によっています。なお、印鑑登録証明書は発行後3か月以内のものに限られています。

会社が発起人の場合には、代表者の印鑑登録証明書のほかに会社の登記簿謄本

 会社が発起人の場合には、代表者の印鑑登録証明書のほかに会社の登記簿謄本が必要です。会社が発起人となる場合には、新しく設立する会社の発起人となることが発起人となる会社の目的の範囲内でなければなりません。具体的には、新会社の目的と同種の事業が掲げられていること(新会社の目的の一つと重なっていること)を確認することになります。

第2 Q&A 設立時の定款作成方法

1.商号

株式会社の文字は必要か

株式会社を設立したいと考えていますが、「ABCコーポレーション」という名前(商号)にしたいと思います。この場合に、株式会社という文字は古い感じがするので、株式会社という文字を入れたくないのですが、株式会社の文字を入れなくても会社設立はできますか?

株式会社の設立する場合、商号には、「株式会社」という文字を含むことが必要です。

商号に使える文字

株式会社を設立したいと考えていますが、「株式会社Mk-II」という名前(商号)にしたいと思います。この商号で、会社設立はできますか?

 商号には、漢字、ひらがな及びカタカナのほか、①ローマ字(A(a)からZ(z)までの大文字及び小文字)、②アラビア数字(0123456789)、③6種の符号(「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)及び「・」(中点))を使用することができます。これに対し、「α」(アルファ)、「Ⅲ」、「( )」(括弧)等は、商号に使用することができません。詳しくは、法務省のホームページ「商号にローマ字等を用いることについて」( http://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html )を御覧ください。

 上記③の6種の符号は、字句(日本文字を含む。)を区切る際の符号として使用する場合に限って用いることができ、商号の先頭又は末尾に用いることはできません。ただし、「.」(ピリオド)については、省略を表すものとして、商号の末尾に用いることもできます。

ローマ字を使用した法人の名称

ローマ字を使用した法人の名称を登記することができますか。

 商業登記規則第50条は,各種法人等登記規則等において準用されますので,会社以外の法人の名称中にローマ字を用いたものも,そのまま登記することができます。
 例えば,特定非営利活動法人がその名称を「NPO法人○○○」として登記することも可能です。

ローマ字と日本文字とを組み合わせた商号

ローマ字と日本文字とを組み合わせた商号を登記することができますか。

「ABC東日本株式会社」や「大阪XYZ株式会社」のように,日本文字とローマ字とを組合せた商号でも登記することができます。

ローマ字の大文字又は小文字

ローマ字のうち大文字又は小文字のどちらを商号に使用して登記することができますか。

大文字,小文字のどちらも商号に使用して登記することができます。

数字だけの商号

数字だけの商号を登記することは可能ですか。

例えば,「777株式会社」という商号を登記することも可能です。

株式会社を「K.K.」と言い換える

「株式会社」を「K.K.」,「Company Incorporated」,「Co.,Inc.」,「Co.,Ltd.」に代えて登記することは,可能ですか。

法令により商号中に使用が義務付けられている文字,例えば,会社の場合は,会社の種類に従い株式会社,合名会社等の文字を用いなければなりません(会社法第6条第2項)ので,これらを「K.K.」等に代えることはできません。

商号中に空白(スペース)

株式会社を設立したいと考えていますが、「株式会社ル クプル」という名前(商号)にしたいと思います。この商号で、会社設立はできますか?

商号中に空白(スペース)を用いることはできません。ただし、ローマ字の複数の単語の間を区切る場合には、これが許されています。

商号及び本店が同一の会社が既に存在する

株式会社を設立したいと考えていますが、私が考えた商号と同一ので商号で既に他人が登記した会社が、同じ住所(同一のビル)に既にあります。その場合、私は、会社設立はできますか?

登記された同一商号の会社の本店が同じ住所にあると、登記ができません。商号の調査については、法務省のホームページ「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について」( http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00076.html )を御覧ください。

2.目的

目的の数字

事業の目的に優劣をつけたくないので、下記のとおり登記したいのですが、可能でしょうか?

当会社は、次の事業を行うことを目的とする。

○○の製造及び販売
××の輸入及び販売
前各号に附帯又は関連する一切の事業

「目的」は、「1」、「2」、「3」等と記載するのが登記先例となっています。

目的に専門用語等を使用する

事業の目的に専門用語等を使用することは可能でしょうか?

 ローマ字による用語や専門用語等を使用する場合には,それらが一般に市販されている用語辞典に掲載されているなど,広く社会的に認知されているものでないときには,登記申請が受理されない場合もありますので,御留意ください。また,これらの場合には,ローマ字による用語や専門用語の後に括弧書きで当該用語を説明するなど,登記事項証明書を取得した方に理解しやすいものとなるように御留意ください。

目的と許認可申請

登記の目的で、気をつけなければならない点は、どのような点ですか?

 許認可の必要な事業を登記の目的とする場合です。

 具体的には、事業等を行うことについて官公庁等の許認可,登録,届出等(以下「許認可等」といいます。)が必要な場合や登記事項証明書の提出が必要な場合等には,定款に定める目的に問題がないかどうかを当該官公庁等に事前にお問い合わせをする必要があります。なお、登記申請が受理された場合であっても,許認可等の申請は受理されない場合がありますので,御留意ください。

3.本店所在地

定款に定める本店所在地は、具体的な住所地か

定款に定める本店所在地は、具体的な住所地でなければなりませんか?

 定款に定める本店所在地は、最小行政区画(市町村、東京都の特別区)の記載で足ります。将来、最小行政区画内で本店を移転した場合に、定款を変更しなくてもよいように、実務的には、最小行政区画の記載にとどめることが多いです

定款に定める本店所在地を最小行政区画にした場合

定款に定める本店所在地を最小行政区画にした場合、なにか問題はないのですか?

 定款に定める本店所在地を最小行政区画にした場合には,発起人の過半数により,「○丁目○番○号」等住居表示(未実施地域は地番)までの本店の所在場所を決定しなければなりません。

4.発行可能株式総数

発行可能株式総数とは

発行可能株式総数とは何ですか?

 会社がどれだけの株式を発行できるのかという枠であり、設立時当初に発行する株式数とは異なります。

発行可能株式総数はどのように定めるべきか

発行可能株式総数はどのように定めるべきですか?

 発行株式総数は、会社の将来の発展性を考慮し、通常、設立時発行株式数よりも相当程度多い数を記載します。

5.株式の譲渡制限

株式の譲渡制限の承認機関はどのように定めるべきか

株式の譲渡制限規定の承認機関の定め方は、小規模な会社の場合には、「取締役の承認」になっているようですが、株主総会を承認機関と定めてもよいでしょうか?

取締役の承認ではなく、株主総会の承認とすることもできます。なお、「当会社の承認」と記載した場合には、株主総会が承認機関になります。