1.はじめに
はじめての不動産決済の立会であったり,久しぶりの不動産決済の立会のときは,非常に緊張します。そこで,不動産決済立会当日の手順【書面申請】をまとめました。
2.事前準備
- (1)不動産(モノ)・当事者(ヒト)の把握
- 取引立会いの前に不動産の特定,当事者および関係者の把握をします。
①当事者の確認
売主・買主・担保権者(金融機関・支店・担当者名)・代理人か否かの確認をします。
②所有者(売り主)の住所,氏名をチェック
住所・氏名変更(更正)等の名義変更があるかもしれません。もし,住所・氏名変更(更正)等の変更更正がある場合には,変更更正にかかる登記原因証明情報の手配をします。
③抵当権等の抹消登記
抵当権者に関しては,現存するものすべてをチェックします。また,連絡先及び担当者を確認します。
④融資の有無
融資がある場合には,設定先の金融機関,(根)抵当権者及び債権額(極度 額)・利息等を確認します。
⑤土地の地目
農地の場合,許可又は届出の手続は済んでいるか確認します。許可又は届出の手続は済んでいない場合には,可能であれば,決済日までに許可又は届出の手続をすることになります。
⑥公図
土地の売買で,公衆用道路等を不動産会社が見落としている場合もあります。不安なときは,公図を取得し,公衆用道路等も含めて売買するように,アドバイスします。
⑦建物図面・地積測量図・住宅地図
適宜気付いたことがあれば調べます。
- (2)不動産会社への連絡
- 今回の登記に関して必要書類をチェックしたい旨を伝え,FAX等で資料をもらう。FAXを頂いたら,すぐに連絡をして,色々気付いた事を伝える。なお,売主・買主の必要書類を,不動産会社・銀行を通して伝えるか,売主・買主に直接伝えるかは,不動産会社・銀行の担当者次第なので,その旨の確認をする。
【必要書類】
□ 売買契約書の写し:不動産会社より預かる
□ 登記事項証明書の写し:不動産会社より預かることが多い
□ 価格通知書または評価証明書等の写し:不動産会社より預かる
□ 公図,住宅地図,建物図面の写し:必要なら不動産会社より預かる
□ 登記識別情報又は登記済証の有無:売主または不動産会社に確認します
□ 印鑑証明書:売主または不動産会社に確認します
□ 住所証明書:買主または不動産会社に確認します
□ 身分証明書(運転免許証等)の写し:決済当日に,いただく
□ 登記義務者の実印
□ 登記権利者の認印
(設定がある場合には,買主は,登記義務者になるので実印)
□ 法人番号等の確認
□ 許可書・届出書・同意書など(農地法,裁判所の許可など)
- (3)抹消関係の金融機関に連絡する
- 抹消書類の確認のために,抹消関係の金融機関に連絡をします。なお,抹消書類の受け取りに関しては,債務者本人が金融機関に取りに行き,サイン(※実印が必要な場合もあり)をしなければならないので,決済立会後に一緒に取りに行くことが多いようです。なお,抹消の前提に移転をしなければならない場合もありますので,注意しましょう。
- (4)設定関係の金融機関に連絡する
- 設定関係の書類の確認のために,設定関係の金融機関に連絡をします。なお,設定書類の受け取りに関しては,事前に預かる場合と決済当日に預かる場合があります。事前に預かれない場合には,書類の確認の際に,問題がないか十分確認しましょう。
- (5)申請書・見積書の作成
- 申請書を作成して,初めて気付くこともあります。したがって,依頼を受けたら,すぐに申請書の作成に取り掛かりましょう。また,見積書の作成をします。見積書は,内容が決定次第,不動産会社と金融機関にFAXしておきましょう。
- (6)決済当日の準備
- 不動産決済は,準備が9割です。当日に慌てないためにも入念に準備をしましょう。
3.不動産決済立会当日の手順【書面申請】
- (1)最新の登記簿謄本・登記識別情報の確認
- 当日の朝に,事前の登記記録との権利変動がないかを最新の登記簿の確認をします。また,登記識別情報を提供して登記する場合には,登記識別情報通知・未失効照会をします。
- (2)立会場所である金融機関に到着
- 決済立会いの場合,開始予定時刻の15分~30分前には遅くても金融機関に到着します。関係者全員が集まっていれば,早めに開始できる場合がありますし,予想外に道が混んでいることもあるからです。
- (3)挨拶・名刺交換・本人確認
- 立会場所に到着後,まずは金融機関の融資担当者に挨拶(名刺交換)をします。なお,決済時間と買主名を告げると融資担当者につながりやすいです。また,不動産会社・売主・買主など初めてお会いする方がいる場合には挨拶(名刺交換)をします。
- (4)立会の説明
- 再度,売主,買主に自己紹介(司法書士である旨を説明)し,立会をする理由等の説明をします。説明内容としては,「司法書士が不動産売買の決済に立ち会い,人・モノ・意思を確認することで,①売主は確実に売買代金全額を買主から受け取る,②買主は確実にすべての担保権が抹消された所有権を手に入れる,③金融機関は確実に買主が取得した不動産に新たに担保権を設定する,というように,すべての関係当事者の目的を達成するお手伝いをし,不動産取引の安全を担保することができます。」
- (5)登記書類確認
- 登記名義人表示変更登記・(根)抵当権抹消登記・所有権移転登記・(根)抵当権設定登記の書類を説明しながら確認します。また,同時に,委任状や登記原因証明情報等に記名押印(又は署名捺印)をしてもらいます。さらに,さらに,売主・買主の本人確認をし,原本等の書類を預かります。
- (6)金額等の確認
- 売主の送金(振込)先・口座番号,支払い金額の内訳(振込・現金)を提示してもらいます(不動産会社が対応することが多いです)
- (7)出金伝票・振込伝票の記入等
- 買主に出金伝票・振込伝票を渡し,売主に振り込む金額(売買代金の残金+固定資産税・都市計画税の日割精算金),司法書士にお支払いする登記費用と登録免許税,媒介業者にお支払いする仲介手数料,その他の精算金,振込手数料を別々の伝票に記入してもらい,記名し,銀行届出印を押印してもらいます。売主に振り込む際の振込手数料は通常買主負担となります(不動産会社が対応することが多いです)。このように別々の伝票に記入する理由は,銀行通帳に各々の記録を残すためです。なお,金融機関によっては,全て買主の自筆で出金伝票や振込伝票を作成しなければならない場合がありますので注意が必要です。その他の場合は,事前にそれぞれの伝票の金額を書き込んでおくとスムーズに事が運びます。決済時の諸費用確認リストを基に,それぞれの伝票の金額が何の費用なのか買主に確認してもらいながら進めていきます。
- (8)司法書士による報告
- 司法書士が,銀行の担当者に移転書類等が問題なく揃った旨を報告します。それと同時に,不動産会社が作成しました出金伝票と振込伝票,銀行通帳を渡します。銀行通帳は買主から直接,銀行担当者に渡すようにします。その際,銀行担当者に現金で出金する伝票(登記費用や仲介手数料等)を指示して下さい。また,銀行担当者に振込伝票のコピーを2部依頼して下さい。一部はこちらの控えで,もう一部は売主に渡して下さい。場合によっては売主側(根)抵当権者も一部要求されることがありますので,その場合は3部コピーしてもらって下さい。
- (9)融資の実行と送金
- 融資の実行と送金が完了するまで通常30分以上の時間がかかります。売主から買主に引継するべきことがあればその間に執り行います(※決済時の諸費用確認リストや相手業者の引渡完了確認書,マンション管理規約・使用細則の手交など。司法書士から買主に説明事項(登記識別情報通知書の内容・発送日程等について)がある場合も,この間に行います)。
- (10)出金・送金完了後の処理
- 出金・送金が完了しましたら,銀行担当者から銀行処理済みの伝票と現金が買主に渡されます。買主に伝票ごとの処理を確認していただきます。現金で準備しました登記費用(司法書士への報酬料も含む)を司法書士に直接渡してもらい,司法書士は買主に領収書をお渡しします。振込票を売主に提示し(コピーを渡す),売主より売買代金の残金と固定資産税・都市計画税の日割精算金の領収書をもらいます。建物の引渡しを伴う場合は,鍵の引渡しも済ませます。
- (11)完了報告
- 売主,買主,媒介(仲介)業者,司法書士に本日決済が無事完了した旨と終了の挨拶(「本日は誠におめでございます。」など)をして終了です。
- (12)登記申請
- 金融機関担当者に御礼の挨拶をして金融機関を出ます。事務所に戻れるときは戻り,その日のうちに管轄法務局で登記申請をします。
- (13)受領書のFAX
- (根)抵当権設定の受領書を,設定した取扱銀行に送ります。