事務所名で悩んでいます。カタカナのかっこいい名前にしようか、地名にしようか、それとも私の名前から事務所名をつけるべきでしょうか。
 事務所名(屋号)は、個人でいうところの姓名にあたり、事務所の顔ともいうべき大事な決定事項です。たしかに、事務所名(屋号)を付けることは強制されませんが、無ければ不便なことがありますし信用のためにもあった方が良いでしょう。どのような「事務所名(屋号)」にするか、もしかしたら一番悩むところかもしれません。事務所名は開業する人のこだわりや思いが込もっているだけに、最後まで迷う事項だと思います。また、効果的な屋号を付けることにより、戦略的な意図を示すことや、人々が抱く興味・注目を集めることもできます。

 司法書士事務所の屋号や商号は、主に下記のように分類されます。

①個人の姓名をつける

②事業内容をつける

③地名をつける

④好きな外国語をつける

 名刺を渡して挨拶するところや電話受けるときを想像してみると、イメージが湧きやすいでしょう。「○○司法書士事務所の○○です。」と声に出して言ってみるのもいいかもしれません。

 以下、具体的に、上記①~④について考えていきたいと思います。

第1 事務所名(屋号)の決定方法

1.個人の姓名をつける

 事業主名を含めると事業主の名前を覚えてもらいやすくなります。これは仕事上のやり取りの円滑化に効果が期待できます。また、自分のキャラクターをアピールしていきたい場合にも好ましいでしょう。読み方の難しい名字はひらがなにして覚えてもらったり、姓名の一部や縁起のよい漢字1文字を入れるといった工夫をしても面白いでしょう。ただし、あまり一般的な名字の場合は、ほかにも同じ商号の会社が存在する場合があるので、印象が薄くなりがちです。

 また、司法書士法人の場合には、このパターンは、将来的に代表者が名字の違う人に交代する場合などにどうするかという問題が生じます。

■司法書士法人出木杉事務所  ■野比のび太司法書士事務所

  なお、税務署へ提出する開業届出書類には屋号記入欄がありますが、これは、税務署が、個人事業者の使用する屋号を把握する目的であり、税務署に屋号の使用許可を得る訳ではありません。上記に書きましたように、屋号を用いることは原則自由であり、このことは、個人事業者としての届出とは直接関係のないことです。

 

2.事業内容を入れる

 事務所名(屋号)を見ただけで事業内容や取り扱っている商品が伝わるようにすると信頼感が増します。テレビコマーシャルなどをやっている大企業に比べて、個人事業主や中小企業の場合、商号や屋号を見ただけでは何の事業をしている会社かわからないことがあります。特に司法書士という職業は世間一般には、具体的にどのような仕事をしているか知られていません。たしかに、私自身、司法書士の仕事を説明するのに、非常に苦労しますし、私の親でさえ、私の仕事内容が全くわからないようなので、いわんや司法書士が身近にいない人をや、です。

 事業内容を事務所名(屋号)につけると、名刺を渡したときに説明をしなくても、事務所名(屋号)を見ただけで何の会社かわかってもらえるというメリットがあります。初対面の際に商談がスムーズに進みやすいですし、事務所の紹介の時間を節約することにもなります。

■司法書士法人セキュリティー・トラスト  ■司法書士ブックビルディング事務所

 

3.地名を入れる

 地域に密着して事業を展開していく場合は、地名を商号に入れると顧客に伝わりやすくなります。インターネットでの検索にも引っかかりやすくなりSEO対策にもなります。また、たとえば、名古屋で司法書士を探している人に対して、「司法書士法人出木杉事務所」と「司法書士法人名古屋事務所」だったら、「司法書士法人名古屋事務所」のほうが名古屋に根付いている司法書士という印象を与えることができます。さらに、事務所の場所がわかりやすくなるという利点もあります。事務所名(屋号)に「名古屋」とあるのに、大阪に事務所があるとは連想しづらいでしょう。逆に地域を特定したくないようであれば、株式会社のように、「株式会社○○ジャパン」のように広がりを持たせた言葉を事務所名(屋号)に入れるのも一案です。ただし、最初からあまり人風呂敷を広げて規模に見あわない名称にすると、かえって信用されないということもあるのでよく考えましょう。

■司法書士法人談合町事務所  ■司法書士猫ヶ洞事務所
■司法書士法人コナン・毛利・蘭事務所  ■司法書士剛田ジャパン事務所

 

4.好きな外国語をつける

 自分の好きな言葉を外国語にしたもの創業者の好きな言葉や業界用語を、英語やフランス語といった外国語にしたものを商号として使用するパターンです。お洒落で洗練された印象を与えます。珍しい商号だと初対面の人に興味を持ってもらえるので、商号に込められた思いを説明するうちに話が盛り上がるかもしれません。一方で、商号の意味がわからなかったり、読めなかったり、何をしている会社か伝わりづらいというデメリットもあります。

■司法書士法人エガリテ  ■司法書士オフサイド事務所

 

第2 事務所名(屋号)の決定には、何が大事か

1.発音しやすさ・聞き取りやすさ

 発音しやすさ・聞き取りやすさは、視点が違うだけでどちらもほぼ同じ意味なので1つとして考えてください。仕事上のやり取りをスムーズに行うために大事な要素です。何度も聞き直す・言い直す時間はお互いにとっての損失となります。例えば、司法書士の多田野さんは、事務所名を多田野司法書士事務所にすると、電話を受けるときに、「はい、タダの司法書士事務所です。」と応対することになってしまい非常に厳しい誤解を与えかねません。

 余裕があれば発音体感を意識してみるのも良いでしょう。要は心地よく聞こえる語感を意識してみるということです。

■司法書士法人リラックス  ■司法書士事務所TDN

 

2.短さ

 事務所名(屋号)を覚えてもらうために大事な要素です。仕事上のやり取りを円滑化することにも繋がります。ただし、短くしすぎると逆に分かりにくくなってしまうこともあるので注意してください。

■司法書士法人A  ■甲司法書士事務所

 

3.インパクト

 事務所の名前を覚えてもらうためには、印象深い名前にするのも一つの手です。もっとも、インパクトや印象深さのみを求めると、フザケているような印象を与えかねませんので細心の注意が必要です。

■司法書士法人ゼウス綜合法務事務所  司法書士コンビニエンス法務事務所