第1 不動産の調査方法

 相続財産としての不動産の特定には様々な方法が考えられます。 (1)権利書(登記済証、登記識別情報)、(2)登記簿謄本、(3)固定資産税の請求書(納税通知書)の確認、(4)固定資産課税台帳から不動産を特定する方法などです。

 多くの場合、(1)権利書(登記済証、登記識別情報)、(2)登記簿謄本及び(3)固定資産税の請求書(納税通知書)のみで被相続人の全ての不動産を特定できますが、被相続人非課税不動産(公衆用道路、私道、墓地、大昔に建てられた建物など)の存在が疑われるときは、(4)固定資産課税台帳を取得して調査をします。

 

第2 固定資産課税台帳(名寄帳)

 固定資産課税台帳(いわゆる「名寄帳」)とは、地方税法第380条第1項の規定により、市町村が、固定資産の状況及び固定資産税の課税標準である固定資産の評価を明らかにするために備えなければならない台帳です。

 固定資産課税台帳の写しには、その市町村内で被相続人が所有する不動産が記載されています。市町村によっては、非課税不動産(公衆用道路、私道、墓地、大昔に建てられた建物など)については、固定資産税の請求書(納税通知書)に記載されていない場合があるので、できるだけ固定資産課税台帳そのものを確認すべきです。

 もっとも、市町村によっては、固定資産課税台帳の写しの交付をしてもらえない場合もあります(※1)し、また、課税漏れ等により、固定資産課税台帳に記載されていない不動産もある場合があるので、相続人からの聞き取りや権利書等の確認も同時に行うべきです。

 ※1 名古屋市は固定資産課税台帳(名寄帳)の写しの交付は行っておりません。

 

第3 調査漏れの場合

 非課税不動産(公衆用道路、私道、墓地、大昔に建てられた建物など)については、調査漏れにより、相続登記が未了の場合があります。しかし、当該非課税不動産の相続登記をしていなかった場合、仮に、当該非課税不動産(例えば、公衆用道路や私道)をその隣接する不動産とともに売却するときに、当該非課税不動産の相続登記を前提として行わなければならないので困ります。つまり、相続登記をせずに放置しておいた場合と同様のリスク(時の経過により相続人が増え、その結果、相続人が行方不明・判断能力がなくなっている・未成年者が現れる等のリスク)が顕在化してくるのです。