目次【相続放棄と登記手続】

解説者「司法書士 中嶋 剛士」のプロフィール

司法書士 中嶋剛士(シホウショシ ナカシマコウジ)
司法書士中嶋剛士

❖「司法書士なかしま事務所」代表司法書士
❖名古屋市の法務大臣認定司法書士
❖依頼は“相続・相続対策”と“借金問題”が中心
❖司法書士実務は2011年から
❖特別研修のチューターを4年経験
❖テレビ出演:2021年3月30日:CBCテレビ[チャント!]
登録番号 愛知 第1924号
簡裁訴訟代理等関係業務 認定番号 第1318043号

アクセス・口コミ

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「相続放棄」の窓口

目次【「相続放棄」の窓口】 第1 相続放棄とは-わかりやすく詳しく解説 第2 相続放棄のメリット・デメリット ★相続放棄のメリットとデメリットの一覧 第3 費用(報…

★「相続放棄の費用」「相続放棄の手続きの流れ」は、【「相続放棄」の窓口】へ

相続放棄と登記手続-わかりやすく詳しく解説

相続放棄と登記手続
ポイント_相続放棄と登記手続

1.相続放棄の効力と登記手続

(1)相続放棄の効力

相続放棄とは、どのような制度ですか?

相続人は、自己のために相続が開始されたことを知った時から3ヶ月以内に管轄の家庭裁判所に対し相続放棄の申述をし、これが受理されることにより遺産の承継を全面的に拒否することができます(民法938条・939条)。

(2)相続放棄の効力に関しての制度改正

相続放棄は、昭和37年頃に改正され、効力に変更があったとされていますが、どのような変更があったのですか?

昭和37年法律第40号(昭和37年7月1日施行)の民法改正法により、①相続が昭和37年7月1日より前に発生した場合には、相続放棄をした者の相続分は他の相続人の当時の法律上の相続分に応じて帰属することになり、②相続が昭和37年7月1日に発生した場合には、相続放棄をした者は初めから相続人とならないので、他の相続人のみで法定の相続分により相続することになりました。

昭和37年法律第40号(昭和37年7月1日施行)の民法改正

  • 改正前民法939条2項において「数人の相続人がある場合において、その一人が放棄したときは、その相続分は、他の相続人の相続分に応じてこれに帰属する」と規定していた。
  • 改正後民法939条は、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と改めた。

2.相続登記未了の場合の相続放棄

(1)相続登記(相続登記未了・相続放棄)

相続登記未了の場合】相続登記がされていない場合に、相続人のうちの一人が相続放棄をしたとき、相続登記では、どのような登記をして、どのような書類が必要ですか?

相続登記未了の場合】相続登記未了の場合に相続放棄した場合は、家庭裁判所の「相続放棄申述受理通知書」(又は「相続放棄申述受理証明書」など)を登記原因証明情報として戸籍謄本等とともに提供して、相続放棄した者以外の者の名義への所有権移転登記を行うことになります。なお、この手続は、昭和37年の民法改正の前後で変更ありません。

★相続登記の必要書類一覧表(法務局提出)

【目次】相続登記の必要書類一覧表 第1 相続登記の必要書類一覧表 第2 相続登記の必要書類をわかりやすく説明 1.法定相続による場合 (1)登記原因証明情報(平成1…

3.相続登記がなされている場合の相続放棄

(1)持分移転・相続の放棄【昭和26年12月4日民甲2268】

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日より前に開始した相続に関する相続放棄があったとき、相続登記では、どのような手続が必要ですか?

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日より前に開始した相続に関する相続放棄があったとき、「相続の放棄」を登記原因として、当該放棄者の持分移転の登記が必要です。

昭和26年12月4日民事甲第2268号民事局長通達

昭和37年7月1日より前に開始した相続に関する相続放棄については、その相続分が、他の相続人の相続分に応じて帰属する、と規定するので、「相続の放棄」を登記原因として、当該放棄者の持分移転の登記をすることになる(昭和26年12月4日民事甲第2268号民事局長通達・登記関係先例集下1709頁)。

(2)持分移転・相続放棄取消【昭和29年1月26日民甲174】

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日より前に開始した相続に関する相続放棄があり、その後、相続放棄が詐欺により取り消されたとき、相続登記では、どのような手続が必要ですか?

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に昭和37年7月1日より前に開始した相続に関する相続放棄があり、その後、相続放棄が詐欺により取り消されたとき、相続放棄取消」を登記原因として、持分移転登記が必要です。

昭和29年1月26日民事甲第174号民事局長回答

相続の放棄が詐欺により取り消された場合も「相続放棄取消」を登記原因として、持分移転によるとする(昭和29年1月26日民事甲第174号民事局長回答・登記関係先例集下2161頁)。

(3)所有権移転・相続の放棄【昭和33年4月15日民甲771】

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日より前に開始した相続に関する相続放棄があり、相続人全員が相続放棄した場合相続登記では、どのような手続が必要ですか?

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日より前に開始した相続に関する相続放棄があり、相続人全員が相続放棄した場合、登記原因を「相続の放棄」、日付を相続放棄申述の受理審判の告知の日として、第二順位相続人のために所有権移転登記が必要です。

昭和33年4月15日民事甲第771号民事局長心得回答

相続登記後、相続人全員が相続放棄した場合についても、相続登記を抹消することなく、登記原因を「相続の放棄」、日付を相続放棄申述の受理審判の告知の日として、第二順位相続人のために所有権移転登記をする(昭和33年4月15日民事甲第771号民事局長心得回答・登記関係先例集追加編Ⅱ256頁)。

(4)所有権更正・相続放棄【令和5年3月28日民二538】

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日以後に開始した相続に関する相続放棄があり、相続人の一部が相続放棄した場合相続登記では、どのような手続が必要ですか?

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日以後に開始した相続に関する相続放棄があり、相続人の一部が相続放棄した場合、登記原因を「年月日相続放棄(相続の放棄の申述が受理された年月日)」とする所有権更正登記が必要です。

令和5年3月28日法務省民二第538号

法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化

(1)法定相続分での相続登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記をいう。以下同じ。)がされている場合において、次に掲げる登記をするときは、所有権の更正の登記によることができるものとした上で、登記権利者が単独で申請することができるものとする。
二 他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記

(2)(1)の所有権の更正の登記の申請において、申請情報の内容とする登記原因及びその日付は、次の振り合いによるものとする。
イ (1)二の場合
 「年月日【相続の放棄の申述が受理された年月日】相続放棄

(3)の所有権の更正の登記の申請をする場合に提供する登記原因証明情報としては、次のようなものが該当する。
イ (1)二の場合
 相続放棄申述受理証明書及び相続を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

(5)所有権抹消・錯誤【昭和52年4月15日民三2379】

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日以後に開始した相続に関する相続放棄があり、相続人全員が相続放棄した場合相続登記では、どのような手続が必要ですか?

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日以後に開始した相続に関する相続放棄があり、相続人全員が相続放棄した場合、登記原因を「錯誤」とする、相続登記の抹消登記が必要です。

昭和52年4月15日民三第2379号民事局第三課長回答

第一順位法定相続人甲・乙・丙の相続登記後、その登記前に甲・乙・丙全員が相続放棄している場合には、第二順位法定相続人丁のための相続登記をするには、その前提として、甲・乙・丙と丁との共同申請により甲・乙・丙名義の相続登記を「錯誤」を登記原因として抹消の登記をすべきである。この場合には、丁の相続人であることを証明する書面及び甲・乙・丙が相続放棄及び甲・乙・丙が相続放棄した書面を提供する(昭和52年4月15日民三第2379号民事局第三課長回答・登記関係先例集Ⅵ188頁)。

(6)所有権更正・相続放棄取消【平成28年6月8日民二386】

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日以後に開始した相続に関する相続放棄があり、その後、相続放棄が詐欺により取り消されたとき、相続登記では、どのような手続が必要ですか?

相続登記がなされている場合】相続登記がなされている場合に、昭和37年7月1日以後に開始した相続に関する相続放棄があり、その後、相続放棄が詐欺により取り消されたとき、相続放棄取消」を登記原因として、所有権の更正登記が必要です。

平成28年6月8日民二第386号民事局長通達

相続人の単有名義に登記した後、放棄の申述受理の審判が取り消された場合には「相続放棄取消」を登記原因として所有権の更正登記によるとされている(平成28年6月8日民二第386号民事局長通達・不動産登記記録例集№199)。

申請書相続放棄取消
登記の目的○番所有権更正
原因令和○年○月○日 相続放棄取消
(※ 相続放棄取消しの審判の確定日)
更正後事項共有者 持分2分の1 A
    持分2分の1 B
申請人欄権 利 者  B
義 務 者  A
申請書_相続放棄取消

4.「二重の相続資格」と「相続放棄」

[0403]相続資格の重複

第1 代襲相続人かつ養子 ●「孫かつ養子」の資格の重複【昭和26年9月18日民事甲第1881号民事局長回答】 第2 配偶者かつ兄弟姉妹 ●「配偶者かつ兄弟姉妹」の資格の重複…

(1)弟かつ養子【昭和32年1月10日民甲61】

弟であり養子であるAが、兄であり養父であるBの相続につき、養子として相続放棄をした場合には、弟としても相続放棄をしたと考えるのでしょうか?

弟であり養子であるAが、兄であり養父であるBの相続につき、養子として相続放棄をした場合には、弟としても相続放棄をしたと考えます。

昭和32年1月10日民事甲第61号民事局長回答

二重に相続資格を有する者の相続放棄について、先順位の放棄の効果が後順位の相続に及ぶか否かについての実務の取扱いは、①次順位の兄弟としての身分を有する養子が相続を放棄したときは、次順位たる兄弟としての相続権を放棄したと解する(昭和32年1月10日民事甲第61号民事局長回答・登記関係先例集追加編Ⅱ2頁)。

【参考:平成27年9月2日民二第362号民事局民事第二課長回答】今般、配偶者及び妹としての相続人の資格を併有する者から相続による所有権の移転の登記が申請され、相続を証する情報として、戸(除)籍の謄本及び相続放棄申述受理証明書のほか、配偶者として相続の放棄をしたことを確認することができる相続放棄申述書の謄本及び妹としては相続の放棄をしていない旨記載された印鑑証明書付きの上申書が提供されました。相続人の資格を併有する者の相続の放棄は、いずれの相続人の資格にも及ぶものとして取り扱うものとされている(昭和32年 1 月10日民事甲第61号民事局長回答)ところではありますが、昭和37年 7 月 1 日から施行された家事審判規則の一部を改正する規則(昭和37年最高裁判所規則第 4 号)による改正前の家事審判規則(昭和22年最高裁判所規則第15号)は、相続の放棄の申述書の記載事項として、「被相続人との続柄」を要求していなかったことを踏まえると、上記民事局長回答は、いずれの相続人の資格をもって相続の放棄をしたものかが明らかではない場合における登記の取扱いを示したものであり、特定の相続人の資格をもって相続放棄をしたことが添付情報上明らかである場合とは事案を異にするものと考えられます。

(2)養子かつ代襲相続人【昭和41年2月21日民三172】

孫であり養子であるAが、祖父であり養父であるBの相続につき、養子として相続放棄をした場合には、代襲相続人としても相続放棄をしたと考えるのでしょうか?

養子としての相続の放棄は、代襲相続人としての相続の放棄を含むと考えます。

昭和41年2月21日民事三発第172号民事局第三課長回答

養子としての相続の放棄は、代襲相続人としての相続の放棄を含む(昭和41年2月21日民事三発第172号民事局第三課長回答・登記関係先例集追加編Ⅳ675頁)。

(3)配偶者かつ姉【平成27年9月2日民二362】

配偶者であり姉(養子縁組により姉)であるAが、配偶者であり弟(養子縁組により弟)であるBの相続につき、配偶者として相続放棄をした場合には、としても相続放棄をしたと考えるのでしょうか?

配偶者であり姉(養子縁組により姉)であるAが、配偶者であり弟(養子縁組により弟)であるBの相続につき、配偶者として相続放棄をした場合には、相続人の資格が併存するので、姉としても相続放棄をしたとは考えられません。

平成27年9月2日民二第362号民事局民事第二課長回答

配偶者と姉としての相続人の資格を併存する者から、配偶者として相続放棄をしたことの相続放棄受理証明書のほか、配偶者としてのみ放棄したことが確認できる相続放棄申述書の謄本及び姉としては相続放棄していない旨記載された上申書の添付があれば、姉の相続登記申請が認められる(平成27年9月2日民二第362号民事局民事第二課長回答・本誌820号95頁)。

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