目次【相続登記《「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書》】

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1.登記原因証明情報として住民票?

実務上、相続登記の登記原因証明情報として「戸籍」と「遺産分割協議書(+印鑑証明書)」に加え、“法定相続人全員の現住所を証する住民票の写し(本籍地の記載があるもの)”を添付するようですが、これはなぜですか?

遺産分割協議書の真実性を高めるためです。

たしかに、法令及び先例上は、遺産分割協議を経て相続登記を行う場合には、「戸籍」と「遺産分割協議書(+印鑑証明書)」のみで登記原因証明情報として足りることになっています。しかし、実務上、その遺産分割協議書の真実性を高めるために、“法定相続人全員の現住所を証する住民票の写し(本籍地の記載があるもの)”を追加します。なお、“法定相続人全員の現住所を証する住民票の写し(本籍地の記載があるもの)”は、「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書として使用されます。

【登記原因証明情報とは】
「登記原因証明情報」とは、登記の原因となった事実又は法律行為とこれに基づき現に権利変動が生じたことを証する情報のことをいいます。共同申請の場合には 、(電子)契約書等のほか、登記原因について記載又は記録された内容を、その登記によって不利益を受ける者(登記義務者)が確認し、署名若しくは押印した書面又は電子署名を行った情報が含まれます。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/000130975.pdf

相続登記の場合には、相続の原因ごとに登記原因証明情報が異なります。例えば、相続の原因が遺産分割協議であれば、遺産分割協議書(実印押印済み)と印鑑証明書と戸籍謄本と住民票などが必要になります。

2.「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書

「住民票の写し(本籍地記載あり)」は、「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書とのことですが、どういう理屈ですか?

図にすると、次のとおりです。

★「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書がある場
相続登記《「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書》がある場合
図解_相続登記_「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書がある場合
★「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書がない場合
相続登記《「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書》がない場合
図解_相続登記_「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書がない場合

説明に関しましては、以下、対話形式で説明します。

 

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相談者

なぜ、遺産分割協議書に“法定相続人全員の現住所を証する住民票の写し(本籍地の記載があるもの)”が必要なのでしょうか。相続人は印鑑証明書を添付するので、印鑑証明書の記載のある住所を見れば、住民票の写しは、不要なのではないでしょうか。

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司法書士

まず、「遺産分割協議書」には、相続人全員の①「氏名」と②「現住所」の記載、及び③「実印による押印」を記載します。①「氏名」と②「現住所」で人の特定、遺産分割協議書でモノの確認、③「実印による押印」で意思の確認をしています。そこで、それらを証明するために、「人の特定」として各相続人の現存性を証する「現在戸籍」、「意思の確認」として押印した実印の「印鑑証明書」を添付します。そして、「印鑑証明書」で、「現住所」の特定も可能です。

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相談者

あれ? やっぱり、「遺産分割協議書」と「戸籍謄本」と「印鑑証明書」で、人とモノと意思の確認はできているじゃないですか。なんで、「法定相続人全員の現住所を証する住民票の写し(本籍地の記載があるもの)」が必要なんですか?

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司法書士

…「戸籍謄本」と「印鑑証明書」だけで、「戸籍謄本に記載されている人」が、「印鑑証明書に記載されている人」と同一人物かどうかわかるでしょうか?

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相談者

戸籍謄本に記載のある人の氏名・生年月日は一致してますよね? それでは、いけないのですか?

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司法書士

はい。たしかに、印鑑証明書には、印鑑登録者の①印影、②現住所、③氏名、④生年月日が記載されています。そして、現在戸籍謄本には、①氏名、②生年月日、③本籍などが記載されています。したがって、「氏名」と「生年月日」が一致していることがわかり、十中八九、戸籍に記載されている人が、印鑑証明書に記載されている人と同一であると言えそうです。しかし、実務上、十中八九では心もとないので、さらに厳格に、一致させます。 そのために、住民票の写し(本籍地の記載があるもの)が使用されます。住民票の写し(本籍地の記載があるもの)には、住民登録をした者の①現住所、②氏名、③生年月日、④本籍などが記載されています。住民票の現住所・氏名・生年月日の記載は、印鑑証明書の現住所・氏名・生年月日の記載と原則的に一致しています。よって、印鑑証明書に記載されている人と住民票に記載されている人が同一人物だと証明できます。したがって、戸籍と印鑑証明書と住民票の写し(本籍地の記載があるもの)から、「氏名」と「生年月日」と「本籍地」が一致することになり、戸籍に記載されている人が、印鑑証明書に記載されている人と同一であると証明ができるというわけです。このように、

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相談者

つまり、遺産分割協議を経て相続登記を行う場合、登記原因証明情報としての住民票の写し(本籍地の記載があるもの)は、主に、現住所の特定として、使用されるわけではなく、戸籍と印鑑証明書との間を繋げるための証明書として使用されるというわけですね。

3.余談…本当に必要?

「戸籍」と「印鑑証明書」との間を繋げるための証明書としての「住民票の写し(本籍地記載あり)」は、今は、いらないと聞きましたが?

現在は、法定相続人全員の現住所を証する住民票の写し(本籍地の記載があるもの)」を要求する法務局も少なくなりましたが、2010年頃までの法務局では、法定相続人全員の現住所を証する住民票の写し(本籍地の記載があるもの)」を要求することもありました。今後、再度、法定相続人全員の現住所を証する住民票の写し(本籍地の記載があるもの)」を要求される時代がくる可能性もありますので、理屈だけでも覚えておいた方がよいでしょう。