目次【相続と旧民法・旧戸籍法】

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第1 相続と旧民法・旧戸籍法

1.相続法の変遷の概要

図解_相続登記_相続と旧民法・旧戸籍法~相続法の変遷の概要
図解_相続登記_相続と旧民法・旧戸籍法~相続法の変遷の概要

2.相続人・相続分の変遷

 相続人及び相続分の変遷については、【[192]相続人・相続分の変遷(旧民法~現行民法)】をご覧ください。

3.戸籍の変遷

 戸籍の変遷については、【[193]戸籍の変遷(旧民法~現行民法)】をご覧ください。

戸籍の様式の一覧

  • 明治5年式戸籍(壬申(じんしん)戸籍)
  • 明治19年式戸籍
  • 明治31年式戸籍
  • 大正4年式戸籍
  • 昭和23年式戸籍
  • 現行戸籍(平成6年式戸籍)

4.旧民法の相続(明治31年7月16日から昭和22年5月2日)

 旧民法の相続(明治31年7月16日から昭和22年5月2日)については、【[0198]相続登記(家督相続と遺産相続)[明治31年~昭和22年]】をご覧ください。

[0198]相続登記家督相続遺産相続)[明治31年~昭和22年]

5.応急措置法の相続(昭和22年5月3日から昭和22年12月31日)

 応急措置法の相続(昭和22年5月3日から昭和22年12月31日)については、【[0199]応急措置法の相続[昭和22年]】をご覧ください。

第2 旧民法の用語集

1.「 家制度 ・ 戸主 ・ 家族 」に関する用語

(1) 家 (いえ)制度

家制度 とは、どのような制度ですか?

旧民法上の「家」とは、その構成員の中心的人物1名を「戸主」とし、その他の構成員を「家族」とし、その「戸主」と「家族」との権利義務によって法律上連結された親族団体です。旧民法上の「家」の制度のこと「家制度」といいます。旧民法上の「家」は戸主と家族からなり、戸主は家督相続により順次に継承されて、家は子々孫々まで引き継がれるものとされていました。当時の日本(明治時代の日本)は、「家」を国家構成の基本的な単位と位置づけ旧民法の基礎とした。そして、すべての国民はいずれかの「家」に所属し、どの「家」に所属するかにより身分や相続に関する影響があった。

(2) 戸主 (こしゅ)

戸主とは、なんですか?

戸主とは、家族の唯一の長(家長(かちょう))であり、戸主権を持ちます。旧民法施行前、明治政府の国家事業として、すべての国民を把握するため戸籍を作成することとなった。その際に、住所地において同居し、現実の生活を共にする構成員たる戸主とその家族を作成単位として戸籍を編製することとした。戸籍の上でも戸主として記載されることとなり、現行の戸籍の「筆頭者」と同じように戸籍の「索引的機能」がある。

戸主となる原因は、どのようなものがありますか?

戸主となる原因は、「家督相続」「分家」「一家創立」「廃絶家再興」があります。

(3) 戸主権 (こしゅけん)

戸主権とは、なんですか?

家には、その家長として戸主が存在し、戸主には家の統率者という役割と家を維持する責任がありました。戸主は、家族に対する私法上の一定の権限と義務を持ち、これを特に戸主権といいます。戸主権以外の権利もあり、これらの戸主の権利義務の地位と戸主のもつ財産は、いわゆる家督相続によって、次の戸主に承継されました。

戸主権(戸主の権限と義務)とされるもの

① 入籍に対する同意権 (旧民735など)

家族の子であって嫡出子でない者は戸主の同意がなければその家に入ることができない(旧民735)。つまり、家族の私生子や庶子の入籍には、戸主の同意が必要である。その他に親族入籍(旧民737)、引取入籍(旧民738)、転婚・転縁組(旧民741)の際の同意権などがある。

② 家族の去家に対する同意権 (旧民743)

他家相続、分家、廃絶家再興のために去家するには戸主の同意を要する。

③ 家族となる者の入籍を拒む権利 (旧民735など)

家籍の変動に対する同意権と表裏一体のものである。

④ 扶養義務 (旧民747)

戸主は家族に対して扶養義務を負う。但し、扶養義務者及び順序の規定もあり(旧民954、955)、戸主の扶養義務は補充的なものとされる。

⑤ 居所指定権 (旧民749)

家族は戸主の意思に反して居所を定めることはできない。

⑥ 家族を家籍から離籍(排除)する権利 (旧民749条3項など)

家族が戸主の居所指定に反したり、婚姻や養子縁組の不同意に反したりした場合の戸主の権利である。この離籍の影響として、妻は夫が離籍された場合は、これに従って自動的に離籍する(旧民745)。また、戸主の同意なく養子縁組したことにより養親が戸主より離籍された場合の養子は、養親に従って離籍する(旧民750条3項)。離籍された家族は一家創立をする(旧民742)。但し、法定推定家督相続人及び未成年者は離籍されない(旧民744、同749条3項但し書き)。

⑦ 婚姻・養子縁組に対する同意権 (旧民750)

家族が婚姻又は養子縁組をするには戸主の同意を得なければならない。

戸主権はどのような場合になくなりますか?

家督相続、廃家及び絶家によって戸主の地位を失ったときに、戸主権も喪失します。

(4) 戸主の戸主権以外の権利

戸主の戸主権以外の権利には、どのようなものがありますか?

戸主の戸主権以外の権利は、廃家(はいけ)をする権利(旧民762)、隠居(いんきょ)をする権利(旧民752乃至755)、法定推定家督相続人廃除権(旧民975)、家督相続人指定権(旧民979)、遺産相続権(旧民996条1項第三)などがあります。

(5) 女戸主 (にょこしゅ、おんなこしゅ)

女戸主とは、どのような戸主を指しますか?

女性の戸主を特に女戸主といいます。家制度では、男性が戸主になることが多く、女性が戸主になることが珍しかったが、女性が戸主になることもありました。

「女戸主」の特殊性

① 隠居と廃家

女戸主が隠居するには、年齢は問わなく、ただ完全な能力を持つ相続人が相続の単純承認をすればそれでよかった。女戸主が婚姻して他家に入るには、隠居するか、廃家するほかなかった。廃家は一家創立者であれば自由にできた。原則としては許されない場合でも、女戸主が婚姻するためであれば特に裁判所の許可を得て隠居または廃家ができた。

② 入夫婚姻

女戸主が戸主でいるままで婚姻するときは入夫婚姻といって、夫がその家に入った(入婿)。入夫婚姻の場合に女戸主が戸主の地位を留保しなければ入夫は当然に戸主となった。この留保をすれば女戸主は婚姻後も戸主の地位を失わず、夫の財産を使用収益する権利を有したが、婚姻後の共同生活の費用、子女の教育費などは女戸主が負担しなければならなかった。

③ 爵位

日本の華族制度では、女の襲爵は認められておらず、当主の没後女戸主となったため爵位を返上した例がある。たとえば1940年に死去した元内大臣で男爵の湯浅倉平の場合、本人没後妻が女戸主となったため爵位を返上している。

(6) 隠居 (いんきょ)

隠居とは、どのような制度ですか?

隠居とは戸主が自ら生前に戸主の地位を退き、戸主権を相続人に承継させ、その家の家族となることをいいます。戸主が隠居をすると家督相続が発生し、前戸主が有していた権利義務は、一身に専属するものを除いて新戸主に移転する。

退隠(たいいん)

退隠 とは、民法施行前の文言で、隠居のことです。

なぜ、隠居の制度があったのですか?

戸主の家督相続を戸主の死亡のみしか認めない場合、問題が生じるからです。具体的には、戸主が老衰や病気で戸主の責任を果たせなくなることや、他家に入らざるを得ないなどの事情が生じる場合もあります。それでもその家の戸主という地位を退くことができないとなると、その家にとって重大な支障が生じる場合があり又は分家が本家を守ることができないという事態が生じるおそれがあります。

隠居をするのに条件はありますか? 戸主の意思のみでできないのですか?

普通隠居、特別隠居、女戸主の隠居、法定隠居の全てに条件があり、隠居は、戸主の意思のみではできません。

隠居に条件があるのは、なぜですか?

隠居に条件を附す理由は、無制限に隠居を許すことにすると、戸主の義務を免れ安楽を貪る者や不生産者を増加させる原因になり、又戸主の債務を次の家督相続人に移して債権者を害する恐れを生じさせることになりかねないため、などとされていました。

隠居の手続は、隠居者だけでできるのですか?

隠居者と家督相続人が連名による署名をして、「戸籍吏(こせきり)」への届出する必要がありました(旧民757、旧戸115)。戸籍吏への届出に連名で署名をするのは、隠居だけが届出され、家督相続人が不在になることを防ぐ目的でした。

(7) 普通隠居

普通隠居とは?

普通隠居は、①(年齢)満六十年以上なること(旧民法752条)、②完全の能力を有する家督相続人が相続の単純承認を為すこと(旧民法752条)を条件に届出によって効力を生じる制度です。

(8) 特別隠居

特別隠居とは?

特別隠居は、戸主が疾病、本家の相続又は再興、その他やむを得ない事由があるときは、普通隠居の要件に該当しなくとも、裁判所の許可を得て隠居をすることができる制度です(旧民753、754)。但し、法定推定家督相続人がいないときはあらかじめ家督相続人となるべき者を定めて(旧民979)その者の承認を得ていることを要する。戸主が婚姻によって他家に入ろうとするときも同様である。普通隠居と同じように届出によって効力を生じます。つまり、裁判所の許可が効力要件ではありません。

(9) 女戸主の隠居

女戸主の隠居の条件は?

女戸主は、年齢にかかわらず隠居することができました(旧民755)。したがって、①「完全の能力を有する家督相続人が相続の単純承認を為すこと」のみで女戸主は隠居をすることができました。

(10) 法定隠居

法定隠居の条件は?

戸主が隠居届を出さずに他家に入る婚姻届を出した際に、戸籍吏(こせきり)が誤って受理してしまった場合は、その婚姻の日に隠居したものとみなすこととしました(旧民754条2項)。同様に、養子縁組届が誤って受理された際も、縁組の日に隠居したものとみなすこととされた(大審大正5.1.20)。この時、法定又は指定の家督相続人がいない場合は、家督相続人を選定しなければなりません(旧民944、982、985)。

(11) 財産留保(ざいさんりゅうほ)

財産留保とは、どのような制度ですか?

隠居による家督相続の場合、隠居者は生存しているので、財産の一部を隠居者に留保することを認めていました(旧民988)。財産留保は、第三者に対して明らかにするために確定日附のある証書ですべきとされていました(民施4条乃至8条)。留保された財産は、隠居者が隠居中に取得した財産と併せて遺産相続の対象となり、家督相続の対象にはならない。

(12) 去家(きょけ)

去家とは、どのような制度ですか?

去家とは、旧民法上、他家への入籍や分家などのため、戸主または家族が、その属する家の籍を脱することをいいます。現在の戸籍で言えば「除籍」ということになります。他の家族と家を異にすることにより、親族関係の終了や相続権の消滅など重大な効果を生じる規定も多くあります。

(13) 廃嫡(はいちゃく)

廃嫡とは、どのような制度ですか?

廃嫡とは、民法施行前において、法律上、推定相続人家督相続権が失われることを指していた。戸籍の事項欄に「明治28年6月7日願済廃嫡印」のような記載があれば、推定家督相続人たる地位を失っていることになります。ただし、廃嫡されても、指定又は選定家督相続人になることや、戸主と養親子関係となってその結果、家督相続人となることは妨げられませんでした。なお、廃嫡は、素行不良・父子対立・病弱などの理由により行われていたので、廃嫡はお家騒動に発展する典型的な要因のひとつであった。

(14) 家族 (かぞく)

旧民法上、家族とは、どのような意味ですか?

戸主の親族であってその家にある者及び配偶者を家族(旧民732)といいます。つまり、「家族」とは家を構成する者であって戸主以外の親族をいいます。

家制度上の「家族」

現在は「家族」を、「婚姻によって結びつけられている夫婦、およびその夫婦と血縁関係のある人々で、ひとつのまとまりを形成した集団」であるとする。しかし、家制度上の「家族」は、「家」のうちの「戸主でない者」という意味でした。

(15) 氏 (うじ)

氏とは、どのような意味ですか?

氏は「家」の名称です。戸主及び家族はその家の氏を称する(旧民746)としていました。

(16) 家ニ在ル(いえにある) 家ニ在ル者

氏とは、どのような意味ですか?

「家にある者」とは、所属の家を同じくする、すなわち戸籍を同じくすることを意味しています。「家にある者」は、推定家督相続人となるか否かなど、相続法上の法律効果に大きな影響をもたらすこととなる。

旧民法での考え方

旧民法時代の相続では「同じ戸籍にいる人でないと相続権はない」という考えでした。

(17) 生来の嫡出子 (せいらいのちゃくしゅつし)

生来の嫡出子とは、どのような意味ですか?

生来の嫡出子とは、生まれながらの嫡出子の意味です。これは、準正嫡出子に対する用語です。生来の嫡出子は、家の家系の者を優先させるための考え方の用語であり、例えば生来の者が女子の場合に、父たる戸主の後妻の連れ子である継子が男子であったとしても生来の女子が優先して家督相続人になる(大正5.3.17 民390 法務局長回答)ことになっていました。

準正とは

準正とは、非嫡出子(婚姻関係にない両親から生まれた子)が嫡出子(婚姻関係にある両親の子)の身分を取得することをいう。

(18) 家女 (かじょ)

家女とは、どのような意味ですか?

家女とは、「婚姻または婿養子縁組の際に養子からみて養家にいる女子」をいいます。戸籍に「家女」と記載されるのは、「戸主」からみて「家女」である場合(戸主が戸主になる前からその家にいた女子)となります。

(19) 分家(ぶんけ) 本家(ほんけ)

分家・本家とは、どのような意味ですか?

分家とは、家族が戸主権を脱してその家と同じ氏の一家を創立することをいいます。家族は、戸主の同意を得て、分家することができ(旧民743条1項)ます。甲家の家族が分家行為によって、その家を出て別に乙家を新立したとき、乙家は甲家に対し分家といい、甲家を乙家に対して本家という。乙家から丙家が分家したとき、丙家は甲家と乙家にとっても分家となり、甲家と乙家はどちらも丙家にとって本家となります。分家は、本家相続(旧民744条但し書き)の時などに大きな意味を持ち、法律上も密接な関係があった。なお、分家をするときは、届出書に、本家の戸主の氏名、本籍及びその戸主と分家の戸主との続柄、携帯入籍(旧民743条2項)させる家族の氏名及び生年月日、分家の戸主及び家族となる者の父母の氏名及び本籍を記載する(旧戸145)。

分家と不動産の取得時期

分家と共に本家から田畑等の財産の分割を受けることもあった。よって、分家の時期と分家の不動産の取得時期が一致することがある。

「分家」と「一家創立」の違い

分家と比較して、家族が戸主に離籍された場合や非嫡出子が父母共の戸主の同意を得られず両家に入れない時の「一家創立」の場合は、本家分家の関係は生じない。

(20) 脱籍 (だっせき)

脱籍とは、どのような意味ですか?

脱籍とは、戸籍から抜け落ちていること又は戸籍から抜くことといいます。抜け落ちていた場合に、「脱籍之処明治25年3月9日就籍上申聞届ヶ済印」などの記載がされ入籍することになっていた。

(21) 携帯入籍 (けいたいにゅうせき)

携帯入籍とは、どのような意味ですか?

携帯入籍とは、家族が分家をする場合において、戸主の同意を得て自分の直系卑属を分家の家族とすることをいいます(旧民743条2項)。明治35年4月25日以前は、この規定がなく、分家をする者が自分の子どもを連れて行く場合は、分家の手続が完了後に親族入籍(旧民737)の手続を経なければなりませんでした。親族入籍された直系卑属は、その家の嫡出子又は庶子である他の直系卑属がいないときに限って法定推定家督相続人たる地位を得る(旧民972条)ことになり、相続順位が劣後することとされていた。これにより、分家後、子どもが親族入籍する前に新たに子どもが生まれれば、親族入籍した子が長子であっても相続順位が下がるという問題があった(旧民972)。そこで明治35年4月25日から旧民法743条の2項と3項が追加され、分家と同時に自分の幼い子どもを入籍させることができることとしました。

(22) 親族入籍 (しんぞくにゅうせき) 自己入籍 (じこにゅうせき)

親族入籍・自己入籍とは、どのような意味ですか?

親族入籍とは、戸主の親族であって、他家にある者が戸主の同意を得てその家族として入籍することをいい、「自己入籍」ともいいます。ただし、その者が他家の家族であるときはその家の戸主の同意を要し、他の家の戸主であるときは廃家をしたうえでしなければなりません。親族入籍には入籍者本人の意思能力が必要であり、意思能力のない未成年者は入籍できず、法定代理人からの届出であっても受理されない(大正9.3.4 民事677 号民事局長回答)。

親族入籍(自己入籍)の要件

従前の家の「家族」が親族入籍をする場合

  • 入籍する家の「戸主の同意」
  • 従前の家の「戸主の同意」
  • 入籍者本人の意思

従前の家の「戸主」が親族入籍をする場合

  • 入籍する家の「戸主の同意」
  • 従前の家を「廃家」
  • 入籍者本人の意思

(23) 引取入籍 (ひきとりにゅうせき)

引取入籍とは、どのような意味ですか?

引取入籍とは、婚姻又は養子縁組によって他家Aに入った者が、他家Bにある自分の親族をA家に引き取って入籍させることをいいます(旧民738、旧戸138)。引取入籍は、戸籍の届出によって効力を生じます。引取入籍により婚家又は養家の家族としようとするときは戸主の同意及び配偶者又は養親の同意が必要です。

引取入籍と親族入籍の違い

引取入籍は引取者によって、親族入籍は入籍する者自身によって行われるという違いがある。

(24) 随従入籍(ずいじゅうにゅうせき) 随伴入籍(ずいはんにゅうせき)

随従入籍とは、どのような意味ですか?

随従入籍とは、夫が他家に入り又は一家を創立したときは妻もこれに従いその家に入る(旧民745)ことをいいます。夫婦同居の義務(旧民789)に併せて、法律上の夫婦同籍の義務でした。また、戸主が適法に廃家して他家に入るときは、その家族もその家に入る(旧民763)ことも随従入籍といいます。随従入籍は、随伴入籍(ずいはんにゅうせき)ともいいます。

随従入籍(随伴入籍)の制度趣旨

随従入籍(随伴入籍)の制度がある理由は、戸主が不在になれば、残された家族は随従するか一家を創立する以外になく、一家を創立するといたずらに無産の家を増加させるおそれがあるためです。

(25) 婚家(こんけ) 実家(じっか) 転婚(てんこん)

婚家・実家とは、どのような意味ですか?

妻は婚姻によって夫の家に入り、入夫及び婿養子は妻の家に入ります(旧民788)。婚姻により妻または夫が入った家を「婚家」といい、従来在籍していた家を「実家」といいます。婚家からさらに「転婚(てんこん)」した場合、新しい婚家を基準に、直前に在籍した家を「実家」といいます。実家の概念は、転婚もしくはさらに転婚したときにその後、離婚して復籍すべき戸籍はどこになるかを判断する際に重要となります。旧民法以前は、転婚する場合は一度実家に復籍することを必要としていたが、旧民法ではそれを不要とし、婚家及び実家の「戸主の同意」を得ることとしました(旧民741)。

(26) 養家(ようけ) 実家(じっか) 転縁(てんえん)

養家・実家とは、どのような意味ですか?

養子は縁組によって養親の家に入ります(旧民861)。養子縁組によって入った家を「養家」といい、養子が従来在籍していた家を「実家」といいます。養家から更に「転縁(てんえん)」した場合は、新たな養家を基準にして、その直前に在籍していた家を実家といいます。

(27) 廃家 (はいけ)

廃家とは、どのような意味ですか?

「廃家はその家を絶滅させる意思をもってする戸主権の任意の放棄である。」とされる。廃家は、戸籍法上の届出によって成立し(旧戸143)、それによって法律上の家を消滅させることです。家の規定の趣旨は、そもそも祖先の祭祀を絶えさせないことにあるため、家督相続によって戸主となった者は、本家を相続又は再興する場合その他正当な事由により裁判所が許可した場合以外に廃家することはできなかった(旧民762条2項)。これに対して、一家創立により新たに家を立てた者は自由に廃家をすることができた(旧民762条1項)。後日、その家が再興されたとしても、再興者は廃家の際の戸主権を承継するのではなく、原始的に戸主権を取得する。このことにより、廃家の際に不動産等の資産があっても再興者が家督相続することはない(昭和7.3.18 民甲216 号民事局長回答)

廃家の届出 と 他家入籍の届出 の時期

廃家の届出と他家入籍の届出は、同時にされなければならないとされていたが(大正8.3.14 大審院判決)、先例では必ずしも同時であることは必要でないとされ、廃家者が婚姻、縁組、親族入籍、本家相続などの他家入籍の届出が受理されたときに廃家の効力が生じるものとされていた(旧戸26)。これにより、廃家届の後、入籍届をして除籍されるまでの間は有籍者として扱い、戸主及び家族の身分に関する届出は廃家する戸籍に記載されることになる(大正5.9.11 民485号法務局長回答、大正5.2.3 民1901 号法務局長回答)。そのため、廃家届から除籍されるまで日数がかかっている戸籍が存在することとなる。戸主が適法に廃家して他家に入るときは、その家族も随従してその家に入る(旧民763)。

廃家者名義の不動産の帰属

廃家者の権利義務はその後も廃家者に属するものとされているため、廃家者が持っていた不動産は廃家後も同人の所有に属することになる。よって、廃家名義の不動産があることが判明したときは、廃家者が死亡したときに戸主か家族かを確認したうえで、家督相続遺産相続を登記原因として処理することになる。

(28) 絶家 (ぜっけ)

絶家とは、どのような意味ですか?

絶家とは、戸主を失い家督相続が開始したにもかかわらず、家督相続人がいないことが確定した場合にその家が断絶することです(旧民764、旧戸144)。絶家により家は消滅するので、家督相続人にならない家族がいる場合には、その者は一家を創立し絶家届をすることになる。

絶家と廃家の違い

  • 廃家は、「戸主の意思」により家が消滅すること
  • 絶家は、「法律上及び事実上自然」に家が消滅すること

絶家と財産の帰属

①財産がある家の絶家

財産のある家の戸主が死亡した場合で家督相続人がいないときには、相続財産について「相続人曠欠(こうけつ)」の手続をとる。これによって相続人のないことが確定して初めて絶家となり、相続財産は国庫に帰属する(旧民1051、1059)。

②財産がない家であって家族がいる場合の絶家

全家族が相続をしないという意思を決定したときに絶家する(昭和11.3.9 民事甲238 号民事局長)。財産がない場合にまで相続人曠欠の手続をとることに意味がなく、実際には、家族から財産がないことを証明した上で、絶家による一家創立の届出をする。

③財産がない家であって家族もいない場合の絶家

戸主を失ったときに即時に絶家するが、その手続は市町村長が、監督区裁判所の許可を得て、職権で絶家の記載をする(旧戸64条3項、39条2項)。

④絶家の無効

戸籍上、絶家になったにもかかわらず、後日戸主名義の財産が発見される場合がある。この場合、絶家は無効なものであるから、利害関係人は戸籍訂正許可の裁判や市町村長による戸籍訂正手続を経て原戸籍を復活させ、絶家の記載を消除したうえで、相続人曠欠の手続を執るべきである(旧戸39、大正5.3.18 民361 号法務局長回答)。

⑤新法施行後に絶家した戸主名義の不動産が見つかった場合

新法施行後に絶家した戸主名義の不動産が見つかった場合、登記上の先例では、【利害関係人が戸籍訂正許可の裁判や市町村長による戸籍訂正手続を経て原戸籍を復活させ、絶家の記載を消除したうえで、相続人曠欠の手続をする】ことなく、戸籍訂正前においても相続登記の処理をすることができるとされた(昭和33.5.12 民事甲950 民事局長心得回答、昭和35.2.3 民事甲259 回答、昭和38.5.2 民事甲1252 回答)。絶家後、妻が一家創立した場合や他家に子どもがいる場合などは、現在の法律に照らせば相続人となるべき者がいることになるが、旧民法上は家督相続人がいないこととして絶家とすることもあるわけであって、その場合は民法附則第25条第2項本文により、新法が適用されて相続登記をすることになる。

(29) 相続人曠欠 (そうぞくにんこうけつ)

相続人曠欠とは、どのような意味ですか?

相続人曠欠は、現行民法の「相続人の不存在」と同様です。

【条文】明治三十三年勅令第四百九号(相続人曠欠ノ場合ニ於テ国庫ニ帰属シタル財産ノ引渡ニ関スル件)

相続人曠欠ノ為国庫ニ帰属シタル財産ハ管理人ヨリ遅滞ナク被相続人ノ住所ヲ管轄スル地方行政官庁ニ引渡スヘシ但シ外国ニ在テハ領事又ハ貿易事務官ニ引渡スヘシ

(30) 廃絶家再興 (はいぜっけさいこう)

廃絶家再興とは、どのような意味ですか?

廃絶家再興は、廃家又は絶家した家の氏と家系を継承し、再興させることです(旧民740、743、762)。再興される家と再興する者の間には一定の関係が存在することが前提でした。再興は、単に家の家名を称することが認められるにすぎず、財産などを承継する家督相続にはあたりません。つまり、廃絶家した戸主名義の財産があったとしても、再興者にそれを相続する権利は認められません(大正2.7.7 大審院判決、昭和7.3.18 民甲216 号民事局長回答)。

再興と随従するか否か

①戸主が廃家して他の廃絶家を再興した場合

戸主が廃家して他の廃絶家を再興した場合は、廃家の家族は当然に再興された家に入り家族となります(旧民763)。

②家族たる夫が廃絶家を再興した場合

家族たる夫が廃絶家を再興した場合は、妻は夫に従って再興した家に入ります(旧民745、788)。

③家族が再興者になる場合

家族が再興者になる場合には、その直系卑属は当然に再興者の家族となるものではなく、親族入籍(旧民737)によることとなります(大正13.5.26 民8017 号民事局長回答)。よって、家族が再興者になる場合には、「再興者」と「再興者の(妻を除く)家族」の入籍時期が異なることとなります。これは、家族が再興者になった場合には、配偶者のためのような、直系卑属のための随従入籍の規定がないためである。

(31) 一家創立 (いっかそうりつ)

一家創立とは、どのような意味ですか?

一家創立とは、戸主の意思によらず、①法律上当然に一家が設立されることをいい、②一家創立によって戸主権を原始取得することになります。一家創立の原因は、次のとおりです。

一家創立の原因

  • 子の父母が共に知れないとき(いわゆる棄児(きじ)など)(旧民733条3項)。
  • 非嫡出子が父母の家に入ることができないとき(旧民735条2項)。
  • 婚姻、縁組によって他家に入った者が、離婚、離縁にあたって、その実家の廃絶のため復籍すべき家がないとき(旧民740条)。
  • 絶家に家族があるとき(旧民764条)。

また、一家創立者が新たな氏を定めることができたため、氏が変わることがあります。

【一家創立者が新たな氏を定めたときの記載例】
「大正15年5月5日甲野義太郎死亡家督相続人なきにつき、横浜市加賀町一丁目8番地において一家創立乙野氏を称する」

(32) 他家 (たけ) 他家相続 (たけそうぞく)

他家・他家相続とは、どのような意味ですか?

他家とは、ある家から見て、それ以外の家のことをいいます。

また、家族は、戸主の同意があるときは他家を相続することできます(旧民743条1項)。

(33) 本家相続 (ほんけそうぞく)

本家相続とは、どのような意味ですか?

法定の推定家督相続人は、他家に入ったり一家を創立したりすることはできません。これは、次の戸主権を担う者として自分の家を守る義務があるからです。しかし、本家は分家より重んぜられるべき存在であるという考えにより、本家を相続する必要があるときは、法定の推定家督相続人といえどもその分家を出て本家に入ることができます(旧民744条但し書き)。これを本家相続といいます。

(34) 旧民法上の婚姻

旧民法上の婚姻とは、どのような意味ですか?

旧民法上の婚姻は、現在の婚姻とは大きく異なる制度でした。まず、家族が婚姻をするには、戸主の同意を要し(旧民750)、妻は婚姻より夫の家に入り、入夫(にゅうふ)及び婿養子(むこようし)は妻の家に入る(旧民788)こととなっていました。婚姻は戸籍吏に届け出ることで効力を生じる(旧民775、旧戸100)ことは、現在の婚姻と同様です。

(35) 入夫婚姻 (にゅうふこんいん) 入夫 (にゅうふ)

入夫婚姻・入夫とは、どのような意味ですか?

女戸主との婚姻と共に夫がその家に入ることを「入夫婚姻」といい、その夫を「入夫」といいます。夫が女戸主の家に入ると入夫が新たな戸主となり、女戸主から入夫への家督相続が開始する。但し、当事者が婚姻届の際に入夫が戸主になることを届け出なかった場合には、夫は家族となり妻は女戸主のままとなり家督相続は開始しません(旧民736、旧戸100)。

(36) 旧民法上の離婚

旧民法上の離婚とは、どのような意味ですか?

旧民法上の離婚でも、夫婦は協議をもって離婚することができ(旧民808)ました。離婚によって当事者は互いに配偶者としての身分を失い(旧民729)、継親子(けいしんし)及び嫡母庶子(ちゃくぼしょし)の法定血族関係は消滅することになっていました。

夫婦が養子となり又は養子が養親の他の養子と婚姻している場合に、妻が離縁によってその家を去るときは、①夫は妻と離婚して家に残るか、②養親と離縁し妻と共に家をでるかを選択し、妻と離婚するときは夫の一方的行為によって離婚する(旧民876)になっていました。

なお、協議離婚は戸籍吏に届け出ることで効力を生じ(旧民810、775、旧戸104)、裁判離婚は、裁判の確定によって婚姻が解消することになっていました。

(37) 旧民法上の実子

旧民法上の実子とは、どのような意味ですか?

旧民法上の実子は嫡出子と非嫡出子に分類できます。さらに、非嫡出子は庶子(しょし)と私生子(しせいし)に分類できます。

図解_相続登記_相続と旧民法・旧戸籍法~実子・嫡出子・非嫡出子・庶子・私生子
図解_相続登記_相続と旧民法・旧戸籍法~実子・嫡出子・非嫡出子・庶子・私生子

(38) 庶子 (しょし)

庶子とは、どのような意味ですか?

庶子とは、婚姻関係にない男女から生まれた子であり、父から認知を受けた子をいいます。庶子となることで、父との関係で相続人の地位を得ることになります。庶子は、原則的に父の家に入ります(旧民733条)。父が家族であってその戸主の同意がなければ、出生当時の母の家に入ることになり、母が家族であってその戸主の同意がなければ、庶子は一家を創立することとなります。

庶子出生届 (しょししゅっしょうとどけ)

父が庶子の出生届をした時はその届出は認知届の効力を有する。父が戸主であるか、家族であっても戸主の同意があれば、その子は父の家の戸籍に入籍します(旧戸72条2項、83条)。

(39) 私生子 (しせいし)

私生子とは、どのような意味ですか?

私生子とは、婚姻関係にない男女から生まれた子であり、父から認知を受けていない子をいいます。私生子は、父から認知を受けていない子であるため母の家に入るが、母の家の戸主の同意が得られない場合は一家を創立する。父母共に判明しない子(いわゆる棄児(きじ)など)も一家を創立する。昭和17年3月1日の旧民法一部改正以降、「嫡出に非ざる子」と改称された。

(40) 縁女 (えんじょ)

縁女とは、どのような意味ですか?

縁女とは、幼少女を将来、自己の男子(通常は長男)の妻とする目的で入籍させることをいいます。家女をもって養子の縁女とする場合もありました。旧民法施行前の慣例としてあり、戸籍にも「縁女入籍」と記載された。旧民法施行後は戸主と事実上養親子関係にあった場合は、(旧)民法施行法により縁組の効力が認められることとなり、養子と同様に扱うこととなりました(民施68)。なお、縁女の制度は、(旧)民法施行(明治31年)によってなくなりました。

(41) 妾 (めかけ)

妾とは、どのような意味ですか?

妾とは、婚姻した男性が、妻以外にも囲う女性のことで、経済的援助を伴う愛人を指します。もっとも、明治時代の士族にあっては、男子をもうけることが至上命題であり、明治3年12月27日新律綱領(布告)によれば、妾は妻と共に夫の二親等の親族とされ配偶者と同等の地位を与えられていた。そして、妾の子は妻の子と同様、公生子(私生子の反対の意味)として扱われていた。また、妻も妾もまた、戸籍に登載があって効力が生じるものとされていた(明治8.12.9太政官達209 号、同日内務省指令)。

妾の廃止

明治15年旧刑法(明治13年7月12日太政官布告36号)の制定により、妻と同等の親族関係の制度を廃止したことにより妾制度は廃止され、一夫一婦制度に統一された。妾制度が廃止されて以降、妾そのものが配偶者としての法的地位を有しないこととなったため、妾の子は婚姻外の子として非嫡出子とされることとなる。

(42) 附籍 (ふせき)

附籍とは、どのような意味ですか?

生活困窮などの理由から他人の家に厄介になっていた者を、現実に居住していたという理由で、明治5年式戸籍にはそれらを附籍として記載していた。附籍者は戸主であれば戸主の地位をもち、家族であれば家族として籍を持ちつつ他家に附籍しており、附籍者自身の家が廃絶したわけではない。明治31年旧民法施行後は附籍が廃止され、従前の附籍者が戸主の時は一家創立すべきものとされ、他家の家族であるときはその家に復籍をさせ、附籍していた戸籍から除かれていくこととなった(明治31.7.23 民刑493 号回答)。

(43) 親族会 (しんぞくかい)

親族会とは、どのような意味ですか?

親族会とは、家督相続人を選定しなければならないようなその家にとって重要な事項を決定しなければならない場合に、利害関係人の請求によって裁判所が招集する親族の合議機関です(旧民944)。

(44) 除籍 (じょせき)

除籍とは、どのような意味ですか?

除籍とは、戸籍から戸籍内の者を除くことをいいます。また、全員が除かれた戸籍も除籍といいます。全員が除かれた除籍ができる原因は、① 家督相続により全員が除籍され新たな戸主の戸籍に入る場合、② 他の管轄地へ全員が住所を移転(転籍)する場合、③ 世帯全員の死亡その他の原因により全員が除籍された場合等があります。

(45) 戸籍の改製

除籍とは、どのような意味ですか?

戸籍の改製とは、戸籍の様式が法令に基づき改められた場合に、それまで従前の規定による様式でつくられていたものを新様式に改めるための編製替のことである。改製により新戸籍を編製する場合は、その時に在籍する者のみを新戸籍に移記することになっていたため、死亡、養子縁組、婚姻等によって除籍された者は移記されない。

(46) 原戸籍 (げんこせき)、 改製原戸籍 (かいせいげんこせき)

原戸籍(改製原戸籍)とは、どのような意味ですか?

原戸籍(改製原戸籍)とは、戸籍の改製によって従前の戸籍が消除され、新たな戸籍が編製された場合の、その除かれた従前の戸籍を指します。なお、原戸籍を「げんこせき」と呼ぶと、「現在戸籍(げんざいこせき)」と混同されやすいため、原戸籍を「はらこせき」、改製原戸籍を「かいせいはらこせき」と呼称していることが多い。

2.「 旧民法上の養子縁組 」に関する用語

(1) 旧民法上の養子縁組

旧民法上の養子縁組とは、どのような制度ですか?

養子縁組は、縁組届出の日から効力が生じ(旧民847、775、旧戸88)、縁組の日より養親の嫡出子たる身分を取得する(旧民860)制度です。したがって、養子と養親の間に相続権が発生することになります。

(2) 旧民法上の養子縁組の効果

旧民法上の養子は、どのような効果がありましたか?

① 養子の嫡出子たる身分・相続権

養子は、家督相続に関しては、嫡出子の身分を取得した日、つまり養子縁組成立の日に生まれたものとして法定推定家督相続人の順位に並びます(旧民860、970②)。

養子縁組成立の日に生まれたものとして

例えば、養家の中に昭和5年に出生し昭和15年に養女になった者Aと、Aより後の昭和7年に出生し、Aより先の昭和10年に養女になった者Bがいる場合に、法定推定家督相続人の順位を考える際には、実際に先に生まれたのはどちらかではなく、養子縁組成立の日が早い者の順位が先になるということになり、この場合はBが先順位の法定推定家督相続人ということになる。

養子の氏

養子は、単身者であっても夫婦であってもすべて縁組によって養親の家に入り、養親の氏を称します(旧民861、746)。

現行民法上の養子

現行民法上の養子は、婚姻をしている場合には、養親の戸籍に入ることはありません。また、婚姻によって「氏」を改めてた者は、養子になったからといって「氏」の変更はありません。

③ 養子と養親及びその血族との親族関係

養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日より血族間と同一の親族関係を生じます(旧民727)。例えば、養親の実子は養子から見て二親等、養親の兄弟姉妹は養子から見て三親等の法定血族となる。これらにより、各人の間に家督相続人遺産相続人になる可能性が生じることとなる。養子縁組後に出生した養子の直系卑属は、嫡出子であるか非嫡出子であるかに関わらず、養親及びその血族と六親等の範囲で自然の血族間と同一の親族関係が生じた。これに対して、養親及びその血族と養子の血族との間に養親子関係に基づく親族関係はは及ばない。すなわち、養親と養子の実父母兄妹との間には親族関係が生じることはない。

④ 養子縁組と代襲相続

縁組前に生まれた子に代襲相続権はないとされる。これに対して、縁組後に出生した養子の子は、家督相続及び遺産相続において養子の代襲相続人となる。また、養子夫婦の一方が養親の実子の場合には、養親と養子の子は実子を通して血族的に孫にあたるので、縁組前に生まれた子であったとしても代襲相続人となる。

(3) 旧民法の養子縁組の戸籍の記載

旧民法の養子縁組の戸籍の記載で気をつけることはありますか?

養子縁組に関する事項は、養親の事項欄に記載する必要がなく、養子の事項欄のみに記載することで足りるとされていた。よって、養親の欄からは養子たる相続人の特定はできないものの、養子は必ず養親の戸籍に入ったため、戸籍内の家族を調査すれば、事項欄や額書への記載、父母の欄の隣に養父母の欄が設けられるなどしているため判明しやすい。

(4) 遺言養子 (いごんようし)

遺言養子とは、どのような意味ですか?

遺言養子とは、遺言で養子にすることです。遺言で養子にする場合は、養親死亡のときから縁組の効力が生じます(旧民848)。

(5) 婿養子縁組 (むこようしえんぐみ)

婿養子縁組とは、どのような意味ですか?

① 婿養子縁組の制度

婿養子縁組とは、養子縁組と同時に養親の娘と婚姻する制度です。一人娘や姉妹のみの姉は法定推定家督相続人であり、妻は婚姻により夫の家に入るという規定と法定の推定家督相続人は他家に入ることができないという規定により、婚姻することができないこととなる(旧民788条1項、744条1項)(※女戸主の入夫婚姻)。この場合には、男を養子とし家族に迎え入れ、併せて戸内婚姻させるという方法をとることになるが、婿養子縁組は、それらを一度に行うことができる制度です。そして、婿養子は妻の家に入ることになる(旧民788条2項)。

※女戸主の入夫婚姻

法定推定家督相続人ではなく、女戸主になっている場合には、入夫婚姻という制度で婚姻することができる。

② 婿養子縁組の時の婿の相続順位

婿養子は、配偶者である家女の相続順位で相続人となり、他に法定推定家督相続人がある場合は、その者の順位を侵害することができない(旧民973)。例えば、この規定がなければ2人姉妹の二女と婚姻した婿養子が男子優先の規定により、姉妹に優先して法定推定家督相続人になることになる。ところが、この規定があることにより長女が法定推定家督相続人のままでいることができることになる。もし、長女も婿養子縁組をしたときは長女の婿養子が推定家督相続人となる。但し、その後姉妹に弟(戸主の長男)が生まれたときは、長男が優先で法定推定家督相続人となるとされる(明治44.2.18 民刑120 号民刑局長回答)。

(6) 養嗣子 (ようしし)・ 嗣子 (しし)

養嗣子(嗣子)とは、どのような意味ですか?

養嗣子は、いわゆる「跡継ぎのための養子」である。推定家督相続人がいないか廃嫡した場合に養子を嗣子として家督相続人に指定することであり、その旨を官庁に届け出て戸籍に記載することで効力が生じる。

(7) 養親子関係に基づく親族関係の消滅

養親子関係に基づく親族関係の消滅はどのような場合に、起こりますか?

養親子関係に基づく親族関係の消滅は、死亡・縁組の取消・離縁・養親の去家によって起こります。

① 死亡による親族関係の消滅

死亡によって当事者間の養親族関係は消滅するが、養子縁組自体は解消せず生存者間に存在する親族関係にも影響は及ぼさない。

② 縁組の取消による親族関係の消滅

一度成立した縁組関係は将来にむかって解消する(旧民852乃至859)。

③ 離縁による親族関係の消滅

  • 離縁によって、養子と養親の親族関係は終了する。
  • 養子は養親の嫡出子たる身分を失う。
  • 養子と養親の血族との法定血族関係は終了する。
  • 養子と養親の配偶者との継親子関係も終了する。
  • 養子は離縁によって実家に復籍し(旧民739)、実家における身分を回復する(旧民875条前段)。つまり実家における相続権が回復する。
  • 養子が戸主となった後は、隠居しない限り離縁することはできない(旧民874)

養子たる夫が離縁した場合の妻

妻は、離縁した夫に随従し養家を去り、妻と養親及びその血族との親族関係は終了する(旧民730条3項)。これに対して、妻自身が夫の養子縁組以前から養子であったときは、離縁した夫に随従しても養親及びその血族との法定血族関係は終了しない。

養子である妻の離縁

夫婦が養子となった場合又は養親に他の養子がいて養子同士が婚姻して夫婦になった場合に、妻が離縁によって養家を去るときは、夫は離縁と離婚の選択をしなければならない。夫が離縁を選択すれば、夫婦共に養家を去ることになり、夫が離婚を選択すれば、妻だけが養家を去ることになる(旧民876)。

④ 養親の去家による親族関係の消滅

旧民法730条2項において、養親が養家を去ったときは、その者及びその実方(じっかた)の血族と養子の親族関係は終了するとしている。これは、養親自身が他家から婚姻又は養子縁組等によってその家に入ってきた者である場合を前提としている規定であって、養親が養家を去って養子と家を異にすることになった場合には法定血族関係は終了するとしたものである。そもそも、養親と養子は家を同じくしていることが前提の関係であることがその理由である。例えば、養親A自身が他家から婚姻によってその家に入ってきた者である場合に、離婚により養家を去ったときは、養親A及びその実方の血族と、養子Bとの法定血族関係は消滅する。養親子関係が消滅する場合でも、養家に残してきた養親Aの血族(例えば実子C)とAの親族関係は終了しない。また、実子Cと養子B(戸籍上兄弟姉妹になっている)の関係に変更はないため、両名間の親族関係は存続したままとなる。なお、上記の旧民730条2項が適用される養親とは、養親自身が他家から縁組又は婚姻若しくは姻族として親族入籍をした者の場合等とされているので、去家した養親が、出生、認知などにより入籍した者であった場合は本規定の適用がない(大正14.12.21 民事10564 号回答)。また、養親の去家が本家相続、分家、廃絶家再興の場合にも、養親子関係は終了しない(旧民731)。

婚姻により他家から入った養母が離婚により家を去った場合

婚姻により他家から入った養母が離婚により家を去った場合は、養親子関係は終了するので、市町村長は職権をもって養子の戸籍に記載してあった養親の氏名と養親との続柄を抹消したうえ、養子の事項欄に、「年月日養母家を去りたるに付き年月日養親の氏名及び養親との続柄の記載抹消」と記載する(大正5.11.13 民第1556 号回答、大正13.7.14 民事第8408 号回答)。しかし、この先例以前には必ずしも戸籍に記載されていたわけではない。従前の養父母との縁組事項が改製後の戸籍にそのまま移記されていたものもある。このような場合は、法令の解釈から、養家を去った養親と養子との親族関係はないものと判断し、それを前提とした相続登記を申請することとなる。よって、戸籍を詳細に読み取り、本当に養親子関係が存続しているのか否かを判断する必要がある。

旧民法施行前に養親が養家を去ったときの養親子関係

明治31年民法施行前に、養親が養家を去った場合は養親が他家から入った者でなく、その家の生まれであったとしても、縁組は解消されるという慣例であったとされる。

(8) 応急措置法以降の養親子関係

応急措置法によって養親子関係はどのように変化したのですか?

① 応急措置法施行と旧民法中の去家

昭和22年5月3日の応急措置法施行日前に、養親の去家により消滅した養親子関係は、新法になっても回復しない(昭和24.6.23 民事甲1413 回答)。

② 応急措置法施行前後と代襲相続権

  • 旧民法中は、養親と養子が離縁して「養親」が去家した場合、養親と養子の縁組後に出生した直系卑属との祖父孫関係は消滅し、代襲相続権は発生しない。
  • 旧民法中は、養親と養子が離縁して「養子」が去家した場合、養親と養子の縁組後に出生した直系卑属が家を去らないときは、祖父孫関係は継続し(旧民730条3項)、代襲相続権が発生する。
  • 応急措置法施行後に養親と養子が離縁した場合、養親と養子の縁組後に出生した直系卑属との養親族関係は消滅し(昭和23.12.9 民事甲2228 号民事局長回答)、養親子関係に基づく代襲相続権は発生しない。

祖父孫関係と代襲相続権

ABCとも養子縁組関係で、戸主Aが養子Bを入籍させ、Bが戸主となり養子Cを入籍させた。その後Bが隠居し実家に戻りCが戸主となった。旧民法中であれば、この場合、養家を去ったB(Cにとって養親)とCの養親子関係は消滅するが、AとBの最初の養親子関係及びAとCの祖父孫関係は存続した。しかし、応急措置法施行によって、BとCの養親子関係を基にしたAとCの祖父孫関係は家を同じくしていたとしても消滅し、同法施行日以降Aの相続が開始した場合に、Cはその代襲相続人となれない(昭和28.6.7 民事甲第780 号民事局長回答)。

③ 新旧民法における離縁の効力の違い

旧民法当時は必要的夫婦共同縁組の原則から、養親の一方が死亡した後、養子が生存配偶者と離縁した場合は、その離縁の効力は死亡養親にも及ぶものとされた(大正8.1.8 民2335 号民事局長回答)。その場合、養子の戸籍の事項欄には生存養親との離縁のみが記載され、死亡養親との離縁の旨の記載はされない。それでも、養親両名との離縁の効力が生じていると解釈する必要がある。つまり、相続権はないということである。一方、養子縁組は旧民法当時であるが、昭和22年5月3日の民法応急措置法の施行以降に、生存養親とのみ離縁した場合は、死亡養親との縁組は継続することとなる。この場合、相続としては、死亡養親を介しての代襲相続の可能性や死亡養親のみの養子という立場で兄弟姉妹との相続権の発生の可能性があることを見落とさないよう留意する必要がある。

3.「 継親子 」に関する用語

(1) 継子 (けいし) 継親 (けいしん)

継子・継親とは、どのような意味ですか?

旧民法に定義はなく、判例に因れば、「継子とは配偶者の子にして婚姻の当時配偶者の家にありたる者又は婚姻中にその家に入りたる者を称す」(大正9.4.8 大審院判決)とされる。継親子関係とは、その継子との親の配偶者であって、子にとっては親でない者と子が家を同じくする場合の法定の親族関係を指す。典型的なものとしては、婚姻後子どもが生まれ、妻が死亡した後に再婚した時の、後妻と先妻の子どもとの関係が継親子関係となる。父の後妻を先妻の子から見て継母(けいぼ)、母の後夫を先夫の子から見て継父(けいふ)、それら継親から見て配偶者の子を継子(けいし)という。

(2) 継親子の要件

継親子の要件とは?

継親子の要件は、下記のとおりです。

  • 継親となる者は、継子となる者の父又は母(実親、養親、継親を問わない)の配偶者であること。
  • 継子となる者は、配偶者の子(嫡出子、養子、継子を問わない)であること。
  • 継親と継子は家が同じであること

(3) 継親子関係の効力

継親子関係の効力はどのようなものがありますか?

① 親族関係

継親と継子との間においては親子間におけるものと同一の親族関係を生ずる(旧民728)。親族関係を生じるのは、継親子関係を生じたときからである(大正4.10.25 民901 号法務局長回答)。

② 継子を通じて継親の孫

継親子関係成立後に出生した継子の子と継親との間には準血族の関係を生じ、継子の出生子は継親と家を同じくするときに限り、継子を通じて継親の孫となる(大正8.6.26 民841 号法務局長回答)。

③ 続柄は兄弟姉妹

継父母が継子の家において出生した継父母の実子との続柄は兄弟姉妹である(明治32.5.9民刑41 号民刑局長回答)。

④ 継親子関係と養親子関係の違い

養親子関係は養子と養親及びその血族との間において血族と同様の関係を生じるが、継親子関係は継親の血族には及ばない。例えば、養子は養親の父母の孫になるが、継子は継親の父母の孫になることはない。また、養親の実子は養子の兄弟姉妹になるが、前記③のような例外はあるが、継親の実子は継子の兄弟姉妹になることはない。

④ 継親子関係と家督相続及び遺産相続

親子間におけるものと同一の法律関係が生じるため、例えば、遺産相続に関しては継親に実子、養子がいるときはいずれも同順位の相続人となる。家督相続に関しては、被相続人の家における関係その他の事情を考慮して決すべきものとされた(大正11 訓2792)。

① 妻の連れ子たる継子と親族入籍の二男の場合は二男を相続人とする。
② 女戸主の先夫の子と入夫婚姻によって生じた二男の間では継子(先夫の子)が相続人となる。

(4) 家附の継子 (いえつきのけいし)

家附の継子とは、どのような意味ですか?

家附の継子とは、継子の中でもその家生来の者を意味する。家附の継子の中でも旧民法上、法定推定家督相続人であった者は、当然その家の跡を継ぐことを予定していた者ということになる。この場合、他家から来た継父が戸主となっていた場合において、そのまま新民法を迎えたときに継親子関係が消滅し相続権がなくなることで家附の継子に不利益が生じるが、それを解消するために民法附則により規定された。

(5) 継親子関係の消滅

継親子関係の消滅はどのような場合に、起こりますか?

① 継親子関係が消滅する場合

  • 一方当事者の死亡(継親と継子の関係は終了するが、生存者間に影響はない。)
  • 継親の離婚又は婚姻の取消(旧民729条1項)
  • 父又は母死亡後の継親の去家(旧民729条2項)
  • 養子である継子と養親である配偶者の離縁

② 継親子関係が消滅しない場合

  • 継親が配偶者と共に分家しても、継親子関係は消滅しない(大正5.11.10 民1420 号法務局長回答)。
  • 生存配偶者たる継親が廃家のうえ継子とともに他家に入った場合は、その家を去りたる時にあたらないため継親子関係は消滅しない(大正3.8.8 民1205 号法務局長答)。
  • 一度継親子関係が発生した後は、継子が婚姻、縁組等で他家に入っても継親子関係は消滅しない。継親と継子が家を同じくすることは継親子関係を発生させる要件ではあったが、存続の要件ではなかった(明治44.2.14 民刑24 民刑局長回答)。

③ 応急措置法施行による消滅

  • 継親子関係は応急措置法施行によって消滅し、直系姻族一親等の親族関係となった(昭和22.4.16 民事甲317 号通達)。よって、応急措置法施行日以降、継親子関係は適用されない。

4.「 嫡母庶子 」に関する用語

(1) 嫡母庶子(ちゃくぼしょし)

嫡母庶子とは、どのような意味ですか?

父が認知した非嫡出子を父との関係では庶子という(旧民827条2項)が、その父の妻であって、庶子の母でない者とが家を同じくする場合に両者の関係を嫡母庶子又は嫡母庶子関係という。嫡母とは、庶子の父の妻という意味であって、嫡出子の母という意味ではない。

(2) 嫡母庶子の要件

嫡母庶子の要件とは?

嫡母庶子の要件は、下記のとおりです。

  • 庶子の父が婚姻して妻がいること。
  • その妻と庶子が家を同じくしていること。

(3) 嫡母庶子の効力

嫡母庶子の効力はどのようなものがありますか?

① 親族関係

嫡母と庶子との間においては親子間におけるものと同一の親族関係を生じる(旧民728)。もっとも、嫡母の血族と庶子のとの間には親族関係は生じない。

② 要件充足時期の先後は問わない

婚姻の時期と夫の庶子と家を同じくする時期の先後は問わないため、夫が婚姻前に認知した庶子と妻との間には嫡母庶子の関係を生じる(明治45.4.15 民602 号民事局長通達)。

③ 後妻も庶子の嫡母となる

庶子の父がその妻(嫡母)死亡後に再婚した場合、その後妻も庶子の嫡母となる(大正7.6.15民133 号法務局長回答)。

④ 庶子を通じて嫡母の孫

嫡母庶子関係成立後に出生した庶子の子と嫡母との間には準血族の関係を生じ、庶子の出生子は嫡母と家を同じくするときに限り、庶子を通じて嫡母の孫となる。

④ 嫡母庶子関係と家督相続及び遺産相続

家督相続人の順位(旧民970)及び遺産相続分(旧民1004)などにおいては庶子としての限度で権利を享受する。

(4) 嫡母庶子関係の消滅

嫡母庶子関係の消滅はどのような場合に、起こりますか?

① 嫡母庶子関係が消滅する場合

継親子関係における内容に準じる(「養子である継子と養親である配偶者の離縁」を除く)。

② 嫡母庶子関係が消滅しない場合

継親子関係における内容に準じる。

③ 応急措置法施行による消滅

継親子関係における内容に準じる。

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