民法166条~174条の2,724条,724条の2(消滅時効の時効期間)

1 新旧対照表

旧<平成32年(2020年)3月31日まで>

消滅時効の進行等)
第百六十六条 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2 前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。


(債権等の消滅時効
第百六十七条 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。


(定期金債権の消滅時効
第百六十八条 定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。
2 定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。


(定期給付債権の短期消滅時効
第百六十九条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。


(三年の短期消滅時効
第百七十条 次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。
一 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
二 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
第百七十一条 弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から三年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。


(二年の短期消滅時効
第百七十二条 弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から二年間行使しないときは、消滅する。
2 前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から五年を経過したときは、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。
第百七十三条 次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。
一 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
二 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
三 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権


(一年の短期消滅時効
第百七十四条 次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
一 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
二 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
三 運送賃に係る債権
四 旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
五 動産の損料に係る債権


(判決で確定した権利の消滅時効
第百七十四条の二 確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

新<平成32年(2020年)4月1日から>

(債権等の消滅時効
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。

3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。


(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効
第百六十七条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。


(定期金債権の消滅時効
第百六十八条 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。
二 前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。

2 定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。


(判決で確定した権利の消滅時効
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。


第百七十条 削除
第百七十一条 削除
第百七十二条 削除
第百七十三条 削除
第百七十四条 削除

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。


(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
第七百二十四条の二 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

2 改正のポイント

ポイント ①債権の消滅時効につき,「主観的起算点から5年」と「客観的起算点から10年」との長短2つの時効期間を設けた。
②商事消滅時効の廃止
③職業別の短期消滅時効の廃止
④不法行為による損害賠償請求権の長期期間制限の性質の変更(除斥期間から消滅時効
⑤定期金債権の時効期間は倍の「主観的起算点から10年」と「客観的起算点から20年」
⑥人の生命・身体侵害による損害賠償請求権の消滅時効は,債務不履行構成であれ不法行為構成であれ短期5年・長期20 年

3 解説

(1)起算点と時効期間とをまとめて規定するようになった

 改正前民法は,起算点と時効期間とを別々に規定していたが,改正後民法では,権利の種類毎に規定を分けた上で,起算点と時効期間とをまとめて規定することになった。

(2)債権の消滅時効につき,長短2つの時効期間を設けた

 債権の消滅時効につき,①主観的起算点から5年と②客観的起算点から10年との長短2つの時効期間を設けた。「権利を行使することができることを知った時から5年」という主観的起算点を設けた理由は,職業別の短期消滅時効を廃止することとのバランスを取ったものである(主観的起算点)。一方で,主観的起算点から進行する消滅時効だけでは,契約以外に基づく債権や,契約に基づくものであっても,条件・不確定期限付き債権や,付随義務違反に基づく債権等,権利を行使することができる状態にあっても,その認識がされないというものもあり得ることから,客観的起算点として「権利を行使することができる時」を定めた(客観的起算点)。

(3)確定期限付債権

 確定期限付債権の場合には,多くの場合,債権者は債権発生時に,いつから「権利を行使すること ができる」かを「知」る。そのため,期限が到来すれば,「権利を行使することができる」時(客観的起算点)とともに,主観的起算点も到来したと考えられ得る。そのため,期限到来時から5年で時効が完成するのが原則となる。

(4)不確定期限・停止条件付債権

 不確定期限・停止条件付債権の場合には,期限到来・条件成就によって「権利を行使することができる」ようになったとしても,債権者は「権利を行使することができることを知」らない可能性がある。その場合には,主観的起算点は,客観的起算点よりも後にずれ込むことになる。

(5)期限の定めのない債権

 期限の定めのない債権の場合には,債権発生時から「権利を行使することができる」が,債権者は「権利を行使することができることを知」らない可能性がある。この場合にも,主観的起算点は,客観的起算点よりも後にずれ込むことになる。

(6)商事消滅時効の廃止

 債権の短期消滅時効を5年としたことに伴い,商事消滅時効を定めていた商法522 条は廃止された。

(7)職業別の短期消滅時効の廃止

 改正前民法の職業別の短期消滅時効(改正前民法170~174)については,対象となる債権の選別を合理的に説明することが困難であるうえ,実務的にもどの区分の時効期間が適用されるのかをめぐって煩雑な判断を強いられているとの指摘(中間試案の補足説明67 頁)を踏まえて,削除された。

(8)「判決で確定した権利の消滅時効」は条文番号の変更のみ

 改正前民法174 条の2(判決で確定した権利の消滅時効)は,改正後民法169 条(判決で確定した権利の消滅時効)として存置。

(9)不法行為による損害賠償請求権の長期期間制限の性質の変更(除斥期間から消滅時効)

 不法行為による損害賠償請求権については,期間の変更はないが,判例(最判平成16年4月27日)上除斥期間と理解されてきた長期期間制限の性質を消滅時効として明文化(民法724 柱書・②)。

(10)定期金債権の時効期間は倍

 定期金債権の時効期間については,改正前民法下でも通常の債権の倍の時効期間が規定されていたことに鑑み(部会資料69A・6頁),通常の債権の倍である短期10 年・長期20 年とした(民法168)

(11)人の生命・身体侵害による損害賠償請求権の消滅時効

 「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」の消滅時効については,被侵害利益の重大性および侵害により通常の生活を送ることが困難になり,時効完成の阻止に向けた措置を期待することが適切ではない場合も多いこと等(部会資料63・8頁以下)から,長期消滅時効を20 年に修正(民法167→166Ⅰ②)。一方で,「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権」の消滅時効については,短期消滅時効を5年に修正(724の2→724①)。これにより,人の生命・身体侵害による損害賠償請求権の消滅時効は,債務不履行構成であれ不法行為構成であれ短期5年・長期20 年となり(166 条と724 条とで起算点についての文言は違うものの,実質的には同じ。),法的構成による期間制限の差はなくなる。

(12)「権利を行使することができる時」の意義

 改正前民法下の判例は,「権利を行使することができる時」の意義を,「権利の行使につき法律上の障害がない」時とするもの(大判昭和12・9・17 民集16-1435 等)と,「単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく,さらに権利の性質上,その権利行使が現実に期待のできるものである」時(最判昭和45・7・15 民集24-7-771 等)とするものの両方があり,学説も両者の間で分かれていた。改正後民法が「権利を行使することができることを知った時」を起算点とする短期消滅時効を設けていることからすると,「権利を行使することができる時」はより客観的に,法律上の障害の有無のみで判断することも考えられるところではあるが,改正後民法それ自体は,改正前民法下の解釈のどちらかのみを採用するということを予定していない。

(13)人損事故における物損の消滅時効

 人損事故において,自動車の修理費用等の物損にかかる損害も発生した場合に,この部分の損害賠償請求権の時効期間についても短期5年・長期20 年に修正されるのかについては,解釈上問題となり得る。

経過措置

 施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については,なお従前の例による(附則10Ⅳ)。

関連判例

最判昭和45年7月15日

事件番号 昭和40(行ツ)100
事件名 供託金取戻請求の却下処分取消請求
裁判年月日 昭和45年7月15日
法廷名 最高裁判所大法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等巻・号・頁 民集 第24巻7号771頁


【判示事項】
 一、弁済供託における供託金取戻請求が供託官により却下された場合と訴訟の形式
 二、弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効の起算点および期間
【裁判要旨】
 一、弁済供託における供託金取戻請求が供託官により却下された場合には、供託官を被告として却下処分の取消の訴を提起することができる。
 二、弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は、供託の基礎となつた債務について紛争の解決などによつてその不存在が確定するなど、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行し、一〇年をもつて完成する。
【参照法条】
 供託法1条ノ3,供託法8条2項,供託規則38条,民法166条1項,民法167条1項,民法496条1項,行政事件訴訟法3条2項,会計法30条