民法96条(詐欺又は強迫)★

191114民法(債権法)改正

1 新旧対照表

旧<令和2年(2020年)3月31日まで>

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

新<令和2年(2020年)4月1日から>

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

2 改正のポイント

ポイント ①第三者詐欺の要件の変更(相手方が詐欺の事実を知らなかったことについて過失があった場合にも取消しを認めることになった)
②第三者保護要件(善意無過失)の明文化

3 解説

(1)第三者詐欺の要件の変更

  改正前民法においては,第三者詐欺の場合には,被欺罔者は,相手方の悪意を立証しなければ意思表示の取消しを主張することができなかった(改正前民法96Ⅱ)。もっとも,自らに帰責性のある心裡留保の場合にさえ,相手方に過失があれば無効主張を認めるのに,帰責性の弱い第三者による詐欺の場合に,相手方に過失があっても取消しを認めないのは均衡を欠く(中間試案の補足説明28 頁参照)ことになる。そこで,第三者による詐欺の場合について,相手方が詐欺の事実を知らなかったことについて過失があった場合にも取消しを認めることになった。

(2)相手方の代理人等の詐欺については規定せず

 相手方の媒介受託者や代理人による詐欺は相手方本人による詐欺と同様に扱う旨の規定が中間試案では設けられていたが,このような規定を置くことで,他の者は全て「第三者」として扱う方向の解釈がされかねないことから,立法化は見送られた(上の場合は96 条1項の問題となる。)。

(3)第三者保護規定(善意無過失)に変更

 民法96 条3項の第三者保護規定について,第三者に善意「無過失」を要求した。これは,通説の考えを明文化したものである。

(4)沈黙による詐欺については規定せず

 沈黙による詐欺に関しても,立法化も検討されたが,一般原則を掲げることの困難,詐欺の枠組みで処理しようとすると二段の故意のうち特に一段階目の立証が困難になることの指摘(部会資料12-2・43~44 頁参照)等から,中間試案の時点で見送られた。

(5)強迫については改正せず

 強迫については規定の改正はない。

経過措置

 施行日前にされた意思表示については,なお従前の例による(附則6Ⅰ)。

(意思表示に関する経過措置)
第六条 施行日前にされた意思表示については、新法第九十三条、第九十五条、第九十六条第二項及び第三項並びに第九十八条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 施行日前に通知が発せられた意思表示については、新法第九十七条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

関連判例

なし

191114民法(債権法)改正