令和2年(2020年)施行の法改正一覧

1.民法(債権法)の改正(施行期日:令和2年4月1日)

 平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が成立しました(同年6月2日公布)。

 民法のうち債権関係の規定(契約等)は,明治29年(1896年)に民法が制定された後,約120年間ほとんど改正がされていませんでした。今回の改正は,民法のうち債権関係の規定について,取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に,社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに,民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することとしたものです。

 今回の改正は,一部の規定を除き,平成32年(2020年)4月1日から施行されます。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html

2.民法(相続法)の改正(施行期日:令和2年4月1日)

 平成30年7月6日,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立しました(同年7月13日公布)。

 民法のうち相続法の分野については,昭和55年以来,実質的に大きな見直しはされてきませんでしたが,その間にも,社会の高齢化が更に進展し,相続開始時における配偶者の年齢も相対的に高齢化しているため,その保護の必要性が高まっていました。

 今回の相続法の見直しは,このような社会経済情勢の変化に対応するものであり,残された配偶者の生活に配慮する等の観点から,配偶者の居住の権利を保護するための方策等が盛り込まれています。このほかにも,遺言の利用を促進し,相続をめぐる紛争を防止する等の観点から,自筆証書遺言の方式を緩和するなど,多岐にわたる改正項目を盛り込んでおります。

 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の改正は,一部の規定を除き,2019年(平成31年)7月1日から施行されます。そして,配偶者居住権に関する部分は,令和2年4月1日に施行されます。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html

3.遺言書保管法の施行(施行期日:令和2年7月10日)

(1)法務局における自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度について

 法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号。以下「遺言書保管法」といいます。)は,高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み,相続をめぐる紛争を防止するという観点から,法務局における自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度を新たに設けるものです。

 遺言書保管法の施行期日は,施行期日を定める政令において令和2年7月10日(金)と定められました。なお,施行前は,法務局に対して遺言書の保管を申請することはできませんので,ご注意ください。

(2)法務局における遺言書の保管等に関する法律の概要

平成30年7月6日に成立し,同月13日に公布された遺言書保管法の概要は以下のとおりです。 

○ 遺言書の保管の申請

○ 遺言書保管官による遺言書の保管及び情報の管理

  •  保管の申請がされた遺言書については,遺言書保管官が,遺言書保管所の施設内において原本を保管するとともに,その画像情報等の遺言書に係る情報を管理することとなります(第6条第1項,第7条第1項)。

○ 遺言者による遺言書の閲覧,保管の申請の撤回

○ 遺言書の保管の有無の照会及び相続人等による証明書の請求等

○ 遺言書の検認の適用除外

  •  遺言書保管所に保管されている遺言書については, 遺言書の検認(民法第1004条第1項)の規定は,適用されません(第11条)。

○ 手数料

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

4.民事執行法の改正(施行期日:令和2年4月1日)

 令和元年5月10日,民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第2号)が成立しました(同月17日公布 )。

 民事執行法は,勝訴判決などを得た債権者が,その権利の実現を求めるための裁判手続を定めるものです。また,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律には,国際的な子の返還の執行手続に関する民事執行法の特則が定められています。

 今回の改正では,民事執行制度をめぐる最近の情勢に鑑み,(1)債務者の財産状況の調査に関する制度の実効性を向上させ,(2)不動産競売における暴力団員の買受けを防止し,(3)国内の子の引渡し及び国際的な子の返還の強制執行に関する規律の明確化を図るなどの改正をしています。

 なお,今回の改正は,原則として令和2年4月1日から施行されます。


http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00247.html

5.民法(特別養子縁組制度関係)の改正(施行期日:令和2年4月1日)

 令和元年6月7日,民法等の一部を改正する法律(令和元年法律第34号)が成立しました(同月14日公布)。

 特別養子制度は,家庭に恵まれない子に温かい家庭を提供して,その健全な養育を図ることを目的として創設された,専ら子どもの利益を図るための制度です。現在,児童養護施設等には,保護者がいないことや虐待を受けていることなどが原因で,多数の子が入所していますが,その中には,特別養子縁組を成立させることにより,家庭において養育することが適切な子も少なくないと指摘されています。そこで,特別養子縁組の成立要件を緩和すること等により,この制度をより利用しやすいものとする必要があります。

 今回の改正では,特別養子制度の利用を促進するために,特別養子縁組における養子となる者の年齢の上限を原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げるとともに,特別養子縁組の成立の手続を二段階に分けて養親となる者の負担を軽減するなどの改正をしています。

 今回の改正は,令和2年4月1日から施行されます。なお,施行の時点で,既に係属中の特別養子縁組の成立の審判事件については,引き続き改正前の民法及び家事事件手続法が適用されます。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00248.html

令和2年以降の法改正予定一覧

1.民法(成年年齢関係)の改正(施行期日:令和4年4月1日)

 平成30年6月13日,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立しました。

 民法の定める成年年齢は,単独で契約を締結することができる年齢という意味と,親権に服することがなくなる年齢という意味を持つものですが,この年齢は,明治29年(1896年)に民法が制定されて以来,20歳と定められてきました。これは,明治9年の太政官布告を引き継いだものといわれています。成年年齢の見直しは,明治9年の太政官布告以来,約140年ぶりであり,18歳,19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに,その積極的な社会参加を促し,社会を活力あるものにする意義を有するものと考えられます。また,女性の婚姻開始年齢は16歳と定められており,18歳とされる男性の婚姻開始年齢と異なっていましたが,今回の改正では,女性の婚姻年齢を18歳に引き上げ,男女の婚姻開始年齢を統一することとしています。このほか,年齢要件を定める他の法令についても,必要に応じて18歳に引き下げるなどの改正を行っています。

 今回の改正は,平成34年4月1日から施行されます。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html

2.今後改正される法律関係

(1)会社法等の改正

ア.会社法の一部を改正する法律について

 令和元年12月4日,会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)が成立しました(同月11日公布)。

 会社法は平成17年に制定され,平成26年に改正されました。平成26年の改正時に設けられた附則においては,平成26年改正法の施行後2年を経過した場合において,企業統治に係る制度の在り方について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて,社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとされていました。また,平成26年の改正後にも,会社法の更なる見直しについて,様々な指摘がされていました。

 今回の改正は,これらの指摘等を踏まえ,会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み,株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図るため,会社法の一部を改正するものです。

イ.会社法の一部を改正する法律の概要

○ 株主に対して早期に株主総会資料を提供し,株主による議案等の検討期間を十分に確保するため,株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し,株主に対し当該ウェブサイトのアドレス等を書面で通知する方法により,株主に対して株主総会資料を提供することができる制度を創設することとしています。

○ 株主提案権の濫用的な行使を制限するため,株主が同一の株主総会において提案することができる議案の数を制限することとしています。

○ 取締役の報酬等を決定する手続等の透明性を向上させ,また,株式会社が業績等に連動した報酬等をより適切かつ円滑に取締役に付与することができるようにするため,上場会社等の取締役会は,取締役の個人別の報酬等に関する決定方針を定めなければならないこととするとともに,上場会社が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合には,金銭の払込み等を要しないこととするなどの規定を設けることとしています。

○ 役員等にインセンティブを付与するとともに,役員等の職務の執行の適正さを確保するため,役員等がその職務の執行に関して責任追及を受けるなどして生じた費用等を株式会社が補償することを約する補償契約や,役員等のために締結される保険契約に関する規定を設けることとしています。

○ 我が国の資本市場が全体として信頼される環境を整備するため,上場会社等に社外取締役を置くことを義務付けることとしています。

○ 社債の管理を自ら行う社債権者の負担を軽減するため,会社から委託を受けた第三者が,社債権者による社債の管理の補助を行う制度(社債管理補助者制度)を創設することとしています。

○ 企業買収に関する手続の合理化を図るため,株式会社が他の株式会社を子会社化するに当たって,自社の株式を当該他の株式会社の株主に交付することができる制度を創設することとしています。

 改正会社法の原則施行期日は,「公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日」であるから,令和3年5月1日あたりであろう。
 また,その余の施行期日は,「公布の日から起算して3年6か月を超えない範囲内において政令で定める日」であるから,令和5年5月1日あたりであろう。(※「株主総会の参考書類等の電子提供措置」「支店の所在地における登記の廃止」に関する改正である。)
 商業登記法の一部改正の原則的な施行期日は,「公布の日から起算して1年3か月を超えない範囲内において政令で定める日」であるから,令和3年2月頃であろう。(※「印鑑の提出の義務付けの廃止」に関する改正である。)
司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00001.html

(2)民法・不動産登記法の改正

 近年,土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等を原因として,不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず,又は判明しても連絡がつかない土地(以下「所有者不明土地」という。)が生じ,その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じている。そのため,政府においては,経済財政運営と改革の基本方針2018等で,相続登記の義務化等を含めて相続等を登記に反映させるための仕組み,登記簿と戸籍等の連携等による所有者情報を円滑に把握する仕組み,土地を手放すための仕組み等について検討し,2020年までに必要な制度改正の実現を目指すとしている。

 現在,法制審議会で議論がされている。近々の中間試案のパブコメを経て,秋の臨時国会に改正法案が上程される方向である。

http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html

(3)親子法制の見直し

 現在,懲戒権,嫡出推定制度等の見直しについて,法制審議会で議論がされているところである。

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi0350004.html

商事法務:嫡出推定制度を中心とした親子法制の在り方に関する研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/cyakusyutsusuitei

(4)家族法関係

 共同親権をはじめとした家族法における諸々の論点について,議論が開始されている。

商事法務:家族法研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/kazokuhousei

(5)民事裁判手続のIT化

 民事訴訟法の改正について,今年2月にも法制審議会に諮問され,おおよそ2年にわたる審議がされる方向である。

商事法務:民事裁判手続等IT化研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/saiban-it

(6)担保法制の見直し

 動産譲渡及び債権譲渡を中心とした譲渡担保に関する法制の見直しに着手するようである。今後のスケジュールは,未定。

商事法務:動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/dou-tanpohousei

(7)仲裁法制の見直し

 昨年12月から研究会がスタートしている。

商事法務:仲裁法制の見直しを中心とした研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/tyusaiminaoshi