相続登記の手続きと各種申請方法の基本概要
Q1-1(自身に適した申請方法の選択)
《質問》父が亡くなり、実家の土地と建物を相続することになりました。法務局での手続きが必要と聞きましたが、平日は仕事で忙しく法務局に行く時間が取れません。どのような申請方法があるのでしょうか。
《回答》申請方法には、法務局の窓口へ直接提出する方法、書類一式を郵送する方法、パソコンからインターネットを利用してオンライン申請をする方法の3種類があります。ご自身の状況に合わせて選択していただくことになります。
注釈
①相続登記の申請方法と法律上の根拠について
不動産登記の申請手続きは、不動産の権利関係を公に示し、取引の安全を守るために不動産登記法等の法律によって厳格に規定されています。不動産登記法第16条により、登記の申請は原則として当事者からの申請に基づいて行われます。具体的な申請方法については、同法第18条において、電子情報処理組織を使用する方法(オンライン申請)と、申請情報を記載した書面を提出する方法(書面申請)の2つが定められています。さらに、書面申請を行う場合の手順として、直接法務局の窓口に持参する方法と、書留郵便等の送付による方法(郵送申請)が不動産登記規則第53条等によって認められています。したがって、実務上は「窓口申請」「郵送申請」「オンライン申請」の3つの選択肢が用意されていることになります。
令和6年4月1日より、所有者不明土地問題の解消を目的として相続登記が義務化され、相続により不動産の取得を知った日から3年以内に登記の申請をすることが義務付けられました。正当な理由なくこの義務を怠った場合には10万円以下の過料の適用対象となる可能性があります。そのため、これまで以上に速やかに手続きを進めることが求められます。平日に法務局へ足を運ぶ時間を確保することが難しい方にとっては、郵送申請やオンライン申請が有力な選択肢となります。しかし、オンライン申請には専用のソフトウェアや電子証明書の準備が必要となるなど、それぞれに利点と事前の準備事項が存在します。ご自身のIT環境の習熟度や、書類を収集する時間的余裕を総合的に考慮し、最も負担の少ない方法を選択していただくことが重要です。
②申請方法の比較表
| 項目 | 内容 |
| 窓口申請 | 管轄の法務局窓口へ直接出向いて、申請書と添付書類を提出する申請方法です。 |
| 窓口申請の利点 | 提出時に形式的な不備(押印漏れなど)がないか、窓口の担当者にその場で確認してもらえることがあります。 |
| 窓口申請の懸念点 | 平日の受付時間内(通常は午前9時から午後5時まで)に、法務局へ足を運ぶ必要があります。 |
| 郵送申請 | 申請書と添付書類一式を、書留郵便などで管轄の法務局に送付する申請方法です。 |
| 郵送申請の利点 | 平日の日中に法務局へ行く時間がなくても、自分のペースで書類を準備し、送付することができます。遠方の不動産を相続した場合に便利です。 |
| 郵送申請の懸念点 | 書留郵便等の郵送料金がかかります。書類に不備があった場合、法務局とのやり取りを電話や郵送で行うため、完了までに時間を要することがあります。 |
| オンライン申請 | パソコンと専用のソフトウェアを利用し、インターネット経由で申請データを送信する申請方法です。 |
| オンライン申請の利点 | 自宅から申請データの送信が可能であり、法務局へ出向く回数を減らすことができます。 |
| オンライン申請の懸念点 | 事前にマイナンバーカードなどの電子証明書の取得や、専用ソフトウェアのインストール、パソコンの設定など、IT環境の準備が必要となります。 |
③引用条文
(不動産登記法第18条)
登記の申請は、次に掲げる方法のいずれかにより、不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名又は名称、登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)を登記所に提供してしなければならない。
一 電子情報処理組織(登記所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この号において同じ。)と申請人又はその代理人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法
二 申請情報を記載した書面(法務省令で定めるところにより申請情報が記録された磁気ディスクを含む。)を提出する方法
窓口での相続登記申請の手順と注意点
Q2-1(窓口申請の特徴と事前の準備手順)
《質問》自分で法務局の窓口に行って申請書類を提出したいと考えています。窓口で直接手続きをする場合の具体的な手順や、気をつけるべきことを教えてください。
《回答》必要な書類を集めて申請書を作成し、対象の不動産がある地域を担当する管轄の法務局窓口へ提出します。管轄外の法務局では受け付けてもらえないため、事前に提出先を調べておく必要があります。
注釈
①窓口申請の具体的な手順と管轄法務局の原則について
法務局の窓口で相続登記を申請する場合、最も注意しなければならないのは「管轄」の確認です。不動産登記法第6条の規定により、登記に関する事務は、不動産の所在地を管轄する登記所(法務局、地方法務局、またはその支局・出張所)がつかさどると定められています。例えば、亡くなった方が東京都にお住まいであっても、相続する不動産が愛知県名古屋市にある場合は、名古屋市の対象地域を管轄する名古屋法務局等で手続きを行う必要があります。窓口で提出する際、登録免許税を納めるために収入印紙を申請書に貼付しますが、提出前に印紙に割印を押してはいけません。窓口で書類を提出した際、明らかな書類の不足がないか等の簡易な確認は行われますが、その場で法法的詳細審査が完了するわけではありません。審査は後日、登記官によって厳格に行われ、通常は数日から数週間後に完了します。審査完了予定日は窓口や法務局のホームページに掲示されていることが多いため、確認しておくことをお勧めします。なお、法務局の窓口対応時間は、土日祝日を除く平日の午前9時から午後5時までとされていることが一般的です。
②窓口申請の手順表
| 手順 | 内容 |
| 手順1:不動産の調査 | 登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、現在の登記名義人や不動産の正確な情報を確認します。 |
| 手順2:必要書類の収集 | 亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書などを集めます。 |
| 手順3:遺産分割協議書の作成 | 相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成して、全員が実印を押印します。印鑑証明書も用意します。 |
| 手順4:登記申請書の作成 | 法務局のホームページ等を参考に、登記申請書を作成します。 |
| 手順5:管轄法務局の確認 | 相続する不動産の所在地を管轄する法務局を調べます。 |
| 手順6:窓口での提出 | 管轄法務局の窓口に赴き、書類一式を提出します。その際、必要な額の収入印紙を貼り付けます(割印はしません)。 |
| 手順7:登記完了後の書類受領 | 登記完了予定日以降に再度窓口へ行き、登記識別情報通知や登記完了証を受け取ります。 |
③引用条文
(不動産登記法第6条第1項)
登記に関する事務は、不動産の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所(以下単に「登記所」という。)がつかさどる。
Q2-2(法務局の事前相談とウェブ登記手続案内)
《質問》初めての手続きで、書類の書き方が全くわかりません。法務局へ行けば、申請書の書き方や必要な書類について一から教えてもらうことはできるのでしょうか。
《回答》法務局には「登記手続案内」という無料の相談窓口があり、事前予約をすれば一般的な書き方を教えてもらえます。最近では、インターネットのビデオ通話を利用した「ウェブ登記手続案内」も普及しています。
注釈
①登記手続案内の利用とウェブ案内の仕組みについて
法務局では、登記申請をご自身で行おうとする一般の方々に向けて、登記手続案内という行政サービスを提供しています。これは、申請書の様式や必要書類の集め方などを無料で案内してくれる制度です。ただし、この案内はあくまで「一般的な手続きの説明」にとどまる点に留意する必要があります。個別の複雑な法律相談に応じることや、申請書を代わりに作成してくれるわけではありません。また、案内担当者が確認した書類であっても、実際に登記官が行う審査によって後日訂正を求められることがあります。
近年では、直接法務局へ赴かなくても、パソコンやスマートフォンを利用して自宅からビデオ通話で案内を受けられる「ウェブ登記手続案内」を導入している法務局が増加しています。例えば、名古屋法務局などでは、専用の予約サービス(法務局手続案内予約サービス)を通じて事前に日時を予約し、指定された時間にシステム(Webex等)にアクセスして説明を受ける仕組みが整備されています。ウェブ案内を利用することで、平日に窓口へ出向く時間や交通費の負担を軽減することができます。予約開始時間から一定時間(例えば20分間)が経過するか、説明が終了した時点で通信は切断される仕組みとなっているため、事前に質問事項をまとめておくことが推奨されます。
②ウェブ登記手続案内利用の手順表
| 手順 | 内容 |
| 手順1:事前準備 | 現在の登記内容が分かる登記事項証明書や、お手元にある関係書類をあらかじめご用意ください。 |
| 手順2:予約サイトへのアクセス | 管轄法務局のホームページから「法務局手続案内予約サービス」にアクセスします。 |
| 手順3:日時の予約 | 希望する日時を選択し、予約を完了させます。案内メール(招待状メール)を受信できるように設定を確認します。 |
| 手順4:当日のアクセス | 予約日時の開始5分前までに、指定されたシステムのリンクにアクセスし、待機します。 |
| 手順5:案内の受講 | 法務局の担当者から、画面越しに手続きの案内を受けます。時間は通常20分程度に制限されています。 |
| 手順6:終了と切断 | 案内が終了するか、予約時間が経過した時点で担当者が退室するため、アクセスを切断します。 |
③引用条文
※本項については、法務局の行政サービスとしての取り組みであり、直接的な根拠条文(不動産登記法など)は存在しないため、法務局の運用規程等に基づくものとなります。
郵送での相続登記申請の手順と注意点
Q3-1(郵送申請のメリットと書留等による送付のルール)
《質問》実家が遠方にあり、管轄の法務局に行くことができません。書類を郵送して相続登記の申請をしたいのですが、郵送の場合の手順や、書類の送り方についての注意点はありますか。
《回答》申請書と書類一式を封筒に入れ、表面に「不動産登記申請書在中」と赤字で明記し、書留郵便などで管轄の法務局へ送付します。戸籍謄本などを返却してほしい場合は、原本還付の手続きを併せて行う必要があります。
注釈
①郵送申請のルールと添付書類の原本還付の仕組みについて
郵送による登記申請は、不動産登記規則第53条第2項等によって正式に認められた申請方法です。郵送申請を行う際の大原則として、普通郵便ではなく、書留郵便やレターパックプラスなど、送付と受領の記録が残る確実な方法で送付する必要があります。これは、重要な個人情報を含む書類の紛失を防ぐための必須要件とされています。
また、相続登記においては、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や、遺産分割協議書、印鑑証明書など、大量かつ重要な書類を提出します。これらの書類は、銀行の口座解約など他の相続手続きでも使用することが多いため、法務局での確認後に返却してもらう「原本還付」という手続きを利用するのが一般的です(不動産登記規則第55条)。原本還付を受けるためには、提出する書類のコピーを作成し、そこに「原本に相違ありません」と記載した上で、申請書に押印したのと同じ印鑑で署名・押印し、原本と一緒に提出する必要があります。郵送申請の場合、書類に不備(補正事項)が見つかると、法務局から電話等で連絡が入ります。簡単な訂正であれば電話の指示に従って郵送で補正書を提出することも可能ですが、場合によっては直接窓口へ出向くよう求められることがあるため、申請書には平日の日中に繋がりやすい電話番号を記載しておく必要があります。
②郵送申請の手順表
| 手順 | 内容 |
| 手順1:書類の準備と確認 | 窓口申請と同様に、登記申請書とすべての添付書類(戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書など)を揃えます。 |
| 手順2:登録免許税の準備 | 必要な額の収入印紙を購入し、登記申請書の指定箇所に貼り付けます(割印はしません)。 |
| 手順3:原本還付の準備 | 返却してほしい書類のコピーを作成し、原本還付のための署名・押印を行います。 |
| 手順4:返信用封筒の同封 | 登記完了後に発行される「登記識別情報通知」や還付書類を郵送で受け取るための、切手を貼った返信用封筒やレターパック等をご用意ください。 |
| 手順5:郵送 | 封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と赤字で明記し、管轄法務局宛に書留郵便などで発送します。 |
| 手順6:補正の対応 | 万が一、書類に不備があり法務局から連絡があった場合は、指示に従い速やかに補正手続きを行います。 |
オンラインでの相続登記申請の手順と注意点
Q4-1(一般的なオンライン申請(特例方式)の仕組み)
《質問》自宅のパソコンからインターネットを使って相続登記の申請ができると聞きました。パソコン操作にはある程度慣れていますが、オンライン申請の具体的な手順を教えてください。
《回答》パソコンで専用の「申請用総合ソフト」を使い、申請データを法務局へ送信します。ただし、戸籍謄本などの添付書類はデータ送信後に直接持参するか、受付日から3日以内に法務局へ郵送で送付する必要があります。
注釈
①オンライン申請の特例方式と提出期限について
不動産登記のオンライン申請は、法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム」および専用の「申請用総合ソフト」を使用して行います。一般的に個人の方が利用する場合、申請書の情報(申請情報)はインターネットを通じてデータで送信しますが、戸籍謄本や遺産分割協議書、印鑑証明書などの添付書類は、紙の原本を提出しなければなりません。このように、申請データはオンラインで送信し、添付書類は別途書面で提出する方法を実務上「特例方式」と呼びます。
特例方式を利用する場合、オンラインで申請データを送信して法務局に受け付けられた日から起算して3日以内に、添付書類を法務局へ持参するか、郵送にて送付しなければならないという厳格な期限が設けられています。この期限を過ぎてしまうと、不動産登記法第25条の規定に基づき、登記申請が却下されるおそれがあるため、速やかな対応が求められます。また、登録免許税については、オンライン上で電子納付(インターネットバンキングやペイジー等を利用)を行うことが可能です。電子納付を行う場合は、申請日の翌日中に納付を完了する必要があります。オンライン申請は法務局へ行く手間を省ける一方で、事前のソフトウェアのインストールや、マイナンバーカード等の電子証明書の取得といった環境整備が必要となります。
②特例方式によるオンライン申請の手順表
| 手順 | 内容 |
| 手順1:環境の準備 | パソコンに「申請用総合ソフト」をインストールし、申請者情報の登録を済ませます。マイナンバーカード等の電子証明書も準備します。 |
| 手順2:書類の収集 | 窓口申請と同様に、戸籍謄本などの必要な紙の添付書類一式を集めておきます。 |
| 手順3:申請データの作成 | 申請用総合ソフト上で、登記の目的や不動産の情報、相続人の情報などを入力し、申請データを作成します。 |
| 手順4:電子署名の付与 | 作成した申請データに対し、マイナンバーカード等を用いて電子署名を付与します。 |
| 手順5:データの送信 | 申請データを管轄の法務局宛にオンラインで送信します。 |
| 手順6:添付書類の送付 | データ送信後、受付日から3日以内に、集めておいた紙の添付書類一式を法務局へ郵送または持参します。 |
| 手順7:登録免許税の納付 | インターネットバンキング等を利用して、指定された期限(電子納付の場合は申請日の翌日中)までに登録免許税を納付します。 |
③引用条文
(不動産登記法第25条)
登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。
(中略)
九 前各号に掲げる場合のほか、登記の申請が法令に違反するとき。
(※特例方式において定められた期間内に添付書面を提出しない場合、法令違反として却下の対象となります。)
Q4-2(完全オンライン申請とファストトラック化(優先処理))
《質問》最近、インターネットだけで手続きをすべて完了させると、通常よりも早く処理される制度が始まったというニュースを見ました。どのような制度なのか教えてください。
《回答》令和8年1月より、書類を郵送せず全て電子データで送信する「完全オンライン申請」を行った場合、原則3日以内に登記が完了する優先処理の試行が開始されました。ただし、高度なデジタル対応が必要となります。
注釈
①権利の登記の完全オンライン申請の優先処理(ファストトラック化)について
我が国では、所有者不明土地問題の解消に向けた相続登記の義務化(令和6年4月施行)や、住所・氏名変更登記の義務化(令和8年4月施行)に伴い、法務局での登記処理件数の急激な増加が見込まれています。これに対応し、手続の迅速化と利便性向上を図るため、法務局は「ファストトラック化」と呼ばれる優先処理の試行を開始しました。例えば、名古屋法務局本局では令和8年(2026年)1月19日からこの試行が導入されています。
この制度の最大の特徴は、申請情報だけでなく、添付情報をすべてPDF等の電磁的記録(電子データ)として作成し、電子署名を付与して送信する「完全オンライン申請」を利用した場合に限り、原則として申請の翌日から3業務日以内に登記手続きが完了するという点です。しかし、紙の書類を後から郵送する「特例方式」は、この優先処理の対象外とされています。さらに、登録免許税も電子納付でなければならず、共有者が10人未満であることなど、細かな条件が設定されています。紙の遺産分割協議書や戸籍謄本をすべて法的に有効な電子データとして整え、当事者全員の電子署名を付与する作業は、専門的な知識と環境を要します。そのため、一般の方が自身で行うには大きなハードルがあり、実務上は電子データの取り扱いに長けた専門家に委任して利用されることが想定されています。
https://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/page000001_01094.html
●不動産登記のファストトラック化(名古屋法務局など)
住所・氏名変更などの権利登記を完全オンラインで申請した場合、通常より優先的に処理し、原則「3営業日」以内の完了を目指す取り組みです。
●スーパー・ファストトラック・オプション(会社設立)
株式会社の設立において、定款認証から設立登記までをオンラインで完結させることで、登記申請から「24時間以内」の完了を目指す制度です。
②完全オンライン申請の優先処理の条件と比較表
| 項目 | 内容 |
| 対象となる申請方法 | すべての情報を電子データで送信する「完全オンライン申請」であること(紙を郵送する特例方式は対象外です)。 |
| 処理完了までの期間 | 原則として、申請の翌日から3日(業務日)以内に処理が完了します。 |
| 添付情報の形式 | すべての添付書類がPDF等の電磁的記録で作成され、作成者の電子署名が付与されている必要があります。 |
| 登録免許税の納付 | 収入印紙での納付ではなく、電子納付(インターネットバンキング等)されていることが要件となります。 |
| その他の制限事項 | 同一不動産への複数申請がないこと、共有者が10人未満であること、完了後の書面による通知を要しないことなど。 |
③引用条文
※本優先処理(ファストトラック化)の試行は、法務省および各法務局の運用方針等に基づく行政手続の迅速化措置であり、特定の条文に基づく新たな法律ではなく、既存の不動産登記法及び不動産登記規則における電子申請の枠組みを活用した運用上の仕組みとなります。
相続登記にかかる税金と免税措置の活用
Q5-1(登録免許税の計算と免税措置の適用条件)
《質問》相続登記にはお金がかかると聞きました。税金が免除される制度があるという噂を聞いたのですが、本当でしょうか。どのような場合に免除されるのか教えてください。
《回答》土地の相続登記をする際、一定の条件を満たすと登録免許税が免除される制度があります。この免税措置は令和9年3月31日まで延長されており、適用を受けるには申請書に免税の根拠条文を記載する必要があります。
注釈
①登録免許税の免税措置の概要と根拠条文について
不動産の相続登記を管轄の法務局に申請する際、国に納める税金として「登録免許税」がかかります。通常、相続による所有権移転登記の場合、対象となる不動産の価額(固定資産税評価額)の0.4%に相当する額を納付する必要があります。しかし、日本全国で深刻化している所有者不明土地問題を解消し、相続登記を促進するための政策の一環として、特定の要件を満たす場合にはこの登録免許税が免税(非課税)となる特例措置が設けられています。
具体的には、令和8年(2026年)4月1日の税制改正により条文が整理され、現在は租税特別措置法第84条の2の2に規定されています。大きく分けて以下の2つのケースが該当します。
一つ目は、「相続により土地を取得した方が、その土地の相続登記を完了する前に亡くなってしまった場合」です(同条第1項)。この場合、亡くなった方名義にするための相続登記にかかる登録免許税が免税されます。二つ目は、「不動産の価格が100万円以下の土地を相続により取得した場合」です(同条第2項)。
これらの免税措置は、令和9年(2027年)3月31日まで延長されることが決定しています。ここで非常に重要なのは、条件を満たしていれば自動的に税金が免除されるわけではなく、登記申請書の中に免税の根拠となる条文を明記しなければならないという点です。例えば、「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」と記載します。もしこの記載を忘れてしまうと、法務局は通常通り課税されるものとして処理を行ってしまいます。なお、これらの特例措置の対象となる不動産は「土地」に限定されており、家屋などの「建物」には適用されません。
②免税措置の適用要件と手続き表
| 項目 | 内容 |
| 対象となる不動産 | 「土地」のみに適用されます(建物には適用されません)。 |
| 免税ケース1 | 相続人が土地を取得し、相続登記をする前にさらに死亡した場合、その死亡した相続人名義への登記。 |
| 免税ケース2 | 固定資産税評価額が100万円以下の土地の相続登記。 |
| 適用期間 | 令和9年(2027年)3月31日までの申請に適用されます。 |
| 申請書への記載事項 | 申請書に「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」や「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」等の根拠条文を記載することが必須要件となります。 |
③引用条文
(租税特別措置法第84条の2の2第1項)
個人が、相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成三十年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。
相続登記の申請に必要な書類の集め方
Q6-1(戸籍謄本等の必要書類とその取得先)
《質問》相続登記にはどのような書類が必要ですか?市役所などで何を集めればよいか教えてください。
《回答》亡くなった方の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本、相続人全員の現在の戸籍謄本、不動産を誰が相続するか決めた遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、固定資産評価証明書などが必要となります。
注釈
①相続登記の添付情報(登記原因証明情報)と収集の要点について
相続登記を申請するためには、誰が正当な相続人であるか、そしてその不動産をどのように分割したかを法務局の登記官に客観的に証明するための書類を提出する必要があります。不動産登記法第61条では、これを「登記原因を証する情報(登記原因証明情報)」と定めています。
最も収集に手間と時間を要するのが、亡くなった方(被相続人)の「出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)」です。これによって、法的に有効な婚姻関係や親子関係を明らかにし、他に隠れた相続人(認知した子など)が存在しないことを証明します。過去に転籍や婚姻を繰り返している方の場合は、過去の本籍地を遡って複数の市区町村役場から古い戸籍を取り寄せる必要があります。
また、相続人全員で遺産分割の話し合いを行った場合は「遺産分割協議書」を作成し、全員が実印を押印した上で、それぞれの「印鑑証明書」を添付します。これにより、協議が相続人全員の真意に基づいて行われたことを証明します。さらに、新たに不動産を相続する方の現在の正確な住所を証明するための「住民票」や、登録免許税の計算根拠となる「固定資産評価証明書」も必須となります。これらの書類に一つでも不備や不足があると、法務局で登記手続きを進めることができません。
②必要書類と取得先の比較表
| 必要書類の名称 | 取得先・準備方法 |
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 被相続人の本籍地であった各市区町村役場(広域交付制度の利用も一部例外を除き可能です)。 |
| 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) | 最後に住民登録をしていた市区町村役場。 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の現在の本籍地がある市区町村役場。 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 各相続人が住民登録をしている市区町村役場。 |
| 遺産分割協議書 | 相続人同士で協議内容をまとめ、作成します(全員の実印での押印が必須です)。 |
| 不動産を取得する相続人の住民票 | 住民登録をしている市区町村役場。 |
| 固定資産評価証明書 | 対象となる不動産が所在する市区町村役場(東京都の場合は都税事務所)。 |
③引用条文
(不動産登記法第61条)
権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。
法定相続情報証明制度の仕組みと活用
Q7-1(法定相続情報証明制度を利用した負担軽減)
《質問》銀行の預金解約手続きでもたくさんの戸籍謄本を求められました。法務局でも同じものを出すとなると大変なのですが、何か良い方法はありますか。
《回答》法定相続情報証明制度を利用すると便利です。法務局に戸籍一式と家系図のような一覧図を提出すると、戸籍の代わりになる証明書を無料で複数枚発行してもらえます。これを銀行や登記の手続きに何度でも利用できます。
注釈
①法定相続情報証明制度の概要と利点について
相続が発生すると、不動産の相続登記だけでなく、銀行口座の解約、証券会社での名義変更手続き、自動車の相続など、様々な場面で「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本」と「相続人全員の戸籍謄本」の分厚い束の提出が求められます。これらの戸籍の束を複数の機関に同時に提出することはできず、一つの機関での手続きが終わって原本が返却されてから次の機関へ提出するという順番を取らざるを得ないため、全ての手続きが完了するまでに多大な時間がかかってしまうという課題がありました。
この国民の負担を軽減し、相続手続きを促進するために平成29年に創設されたのが「法定相続情報証明制度」です(不動産登記規則第247条)。この制度では、相続人が収集した戸籍謄本一式と、相続関係を家系図のように一覧にした図(法定相続情報一覧図)を作成して法務局に提出します。登記官が内容を確認し、間違いがなければ、偽造防止措置が施された専用の用紙に認証文を付した「法定相続情報一覧図の写し」を必要な枚数だけ無料で交付してくれます。この写しは公的な証明書として扱われるため、これを各種金融機関や他の法務局での手続きに提出することで、戸籍謄本の束を何度も出し直す手間を大幅に削減することができます。なお、法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがあれば、相続登記における戸籍謄本の提出も不要となります。
②法定相続情報証明制度の利用手順表
| 手順 | 内容 |
| 手順1:戸籍等の収集 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本などを集めます。 |
| 手順2:法定相続情報一覧図の作成 | 法務局の書式例に従い、被相続人と相続人の関係を示す「法定相続情報一覧図」を作成します。 |
| 手順3:申出書の記入 | 所定の申出書に必要事項を記入します。 |
| 手順4:法務局へ提出 | 管轄の法務局に対し、集めた戸籍謄本一式、法定相続情報一覧図、申出書、本人確認書類を提出します(郵送も可能です)。 |
| 手順5:一覧図の写しの交付 | 登記官の確認後、認証された「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます(手数料は無料です)。 |
| 手順6:各種手続きへの利用 | 交付された写しを、法務局での相続登記申請や、銀行などでの各種相続手続きに提出して利用します。 |
③引用条文
(不動産登記規則第247条第1項)
表題部所有者、登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人(以下この条において「表題部所有者等」という。)は、次項から第五項までの規定に定めるところにより、登記官に対し、次に掲げる事項を証明した書面(以下「法定相続情報一覧図の写し」という。)の交付を申し出ることができる。
一 当該表題部所有者等(相続人その他の一般承継人にあっては、被承継人。以下この条において「被相続人」という。)の氏名、生年月日、最後の住所及び死亡の年月日
二 当該被相続人の相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄
専門家への依頼を検討すべき状況
Q8-1(自分で行う場合と専門家に依頼する場合の判断基準)
《質問》インターネットで調べると自分で手続きできそうにも思えますが、専門家である司法書士に依頼するかどうか迷っています。どのような場合に依頼を検討するべきでしょうか。
《回答》平日に法務局や役所へ行く時間が取れない方や、戸籍の収集が難しい方、相続人の数が多い場合は依頼を検討されることをお勧めします。また、オンラインの優先処理を受けたい場合も専門家への依頼が適しています。
注釈
①専門家への委任が適している状況と背景について
不動産登記法第16条により、登記の申請は原則として当事者自身で行うことが認められており、ご自身で手続きを行えば費用を抑えられるという利点があります。しかし、手続きには法法的専門知識と多大な時間が必要となるため、ご自身の状況に合わせて専門家への委任を検討することが重要です。
具体的には、以下のような状況では専門家の関与が非常に有益です。第一に、相続人の関係が複雑な場合です。数次相続(相続手続きが終わる前にさらに相続人が亡くなった場合)が発生している場合や、兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続が発生している場合などは、収集すべき戸籍の量が膨大になり、一般の方がすべてを正確に集めきるのは困難を極めます。第二に、遺産分割の協議内容を法的に間違いのない形で書面(遺産分割協議書)に残したい場合です。不備のある遺産分割協議書を作成してしまうと、後日法務局で登記が受け付けられず、再度全員から実印をもらい直す事態に陥るリスクがあります。
第三に、令和8年1月から試行されている「完全オンライン申請による優先処理(ファストトラック化)」を利用したい場合です。前述の通り、この優先処理を受けるためには、委任状や遺産分割協議書などのすべての書類をPDF等の電磁的記録にし、マイナンバーカード等による電子署名を付与する必要があります。このような高度なIT環境の構築と電子公証の利用等は、日常的にこれらのシステムを取り扱っている司法書士でなければ対応が困難なため、迅速な処理を希望する場合は司法書士への委任が推奨されます。司法書士は、法定相続情報番号の利用や職務上の電子署名を活用し、円滑にオンライン申請を行うことが可能です。
②自身での申請と専門家へ委任する場合の比較表
| 検討項目 | 自身で申請する場合 | 専門家に依頼する場合 |
| 費用の負担 | 登録免許税と書類取得の実費のみで済むため、費用を抑えることができます。 | 実費に加えて司法書士への報酬(目安として数万円程度から)が発生します。 |
| 時間と手間 | 戸籍の収集、申請書の作成、法務局への相談や提出など、多くの時間と労力が必要となります。 | 複雑な戸籍の収集や書類作成、法務局とのやり取りを任せることができるため、大幅に時間を節約できます。 |
| 手続きの確実性 | 知識不足による書類の不備や、補正のための法務局への再訪問のリスクがあります。 | 法的知識に基づき正確な書類が作成されるため、手続きが円滑に進みます。 |
| 完全オンライン優先処理 | 高度な環境設定と電子署名の付与が必要なため、対応が非常に困難となります。 | 専門のシステムと職務上の電子署名等を利用し、優先処理(3日以内完了等)を受けることが可能となります。 |
③引用条文
(不動産登記法第16条)
第一項 登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託により、これをする。
第二項 前項の申請は、代理人によってすることができる。
「相続登記」の窓口 ー よくある質問 ー
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4.相続登記の必要書類
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- 相続登記のための住民票・戸籍の附票の取得方法と上申書
- 法定相続情報一覧図を作成するか否か
- 固定資産評価証明書とは?取得方法と登録免許税の関係
- 遺言書の種類と保管制度:公正証書遺言と自筆証書遺言の違い
- 【原本還付】必要書類の原本を返却してもらう方法とメリット
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